ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~   作:リドリー@犬小屋

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年末年始はインフルエンザで寝ていました。
今年のインフルは感染力が高いようですので、
みなさまもお気を付けください。
本年もよろしくお願いいたします。

次回は来週の木曜日23時頃を予定しております。



第六十八話閑話 放棄された不死

 

ザボエラ達が破壊神シドーと激闘を繰り広げていた時。

大魔宮(バーンパレス)の玉座の間では、悪魔の目玉を介して、

大魔王たちがヨミカイン遺跡群での激しい戦いを観戦していた。

 

機嫌がよい大魔王バーンは、ワインで口を湿らせて側近たちに知識を披露していた。

 

 

「この破壊神とやら、見たことがあるぞ。

勇者ロトの子孫たちの世界で、ハーゴンという邪教の徒が世界に降臨させようとしていた存在だ」

 

「その世界でもこれほどの巨体であったのですか大魔王様?」

 

 

マキシマムの問いに興が乗っている大魔王バーンは丁寧に答える。

 

 

「いや、その折よりも、はるかに巨大な姿だな。

ああいった悪魔であるとか邪神の類は、呼び出す世界で様相が異なるのだ。

故に同名であっても油断はせぬことが肝要であろうな」

 

「おお! 流石は大魔王様、深い知識にこのマキシマム感服いたしました!」

 

 

マキシマムは素直な尊敬の声をあげた。

その声に満足し、魔力で映し出された映像を指差して、

話を続ける大魔王バーン。

 

 

「見よ。アークデーモンは我らも見知った存在ではあるが……。

シドーの呼び出した彼奴らは、極大爆烈呪文(イオナズン)を使っておるぞ?」

 

「おお! まさしく。大魔王様の仰せの通りですな。

……むむむ!? 吾輩思いましたぞ、大魔王様!」

 

「ふむ、なにか?」

 

「我が軍のアークデーモンも、修練させてやればよいやもしれませぬ。

異世界のアークデーモンができるなら、

我が世界のアークデーモンができぬはずはございません!」

 

 

大魔王はマキシマムのその言葉に、一瞬、虚を突かれた顔をする。

ミストバーンは大魔王が気分を害したのかと心配したが、

事実はその逆であることは、大魔王の朗らかな笑い声で明らかになった。

 

 

「ふっ……ふははははははっ!! マキシマム、その言やよし!

余ですら思考が硬直してしまっていたのかもしれぬな……。

やはり、最大の敵はできぬと諦めてしまう、己自身の心という事だな。

ミストバーンよ」

 

 

魔力で映し出される戦いに見入ってしまっていたミストバーンは、

若干、不意を突かれた感じで大魔王に答えた。

 

 

「……ハッ! なんでございましょうか大魔王様」

 

「アークデーモンが極大爆烈呪文(イオナズン)を使えるようになれば、

それはよい戦力強化になろう。ハドラーに命じて前線で戦わせてやるよう取り計らえ」

 

「かしこまりました」

 

 

大魔王とミストバーンの会話の途中で、不意に映像が途切れてしまった。

映像を受信している悪魔の目玉の話では、

現地の悪魔の目玉が死んだのではないかという事である。

 

 

「ふむ。激しい戦い故、致し方あるまい」

 

 

恐縮する悪魔の目玉にも、上機嫌な大魔王は鷹揚に彼らの不始末を許した。

新たな悪魔の目玉が映像を映し出し、そこには四本の腕に爆烈エネルギーを宿し、

極大爆烈呪文(イオナズン)の魔法力を前面に集結しているシドーの姿が映った。

そして、凄まじい閃光と共に、再度映像が切れてしまう。

 

なんらかのバックファイアがあったのか、映像を映していた悪魔の目玉も、

こと切れて塵となってしまった。

 

 

「状況が分からぬのは歯がゆいな。ミストバーンよ」

 

「ハッ」

 

「シャドーを送り、事の顛末を見届けさせよ」

 

「仰せのままに大魔王様」

 

 

ミストバーンが分身であるシャドーを呼び出し、現地へ急行させた。

戦い自体は既に終わっており、破壊神シドーは倒された後であったという。

 

分かる範囲の報告を聞いた大魔王はこういった。

 

 

「あの破壊神シドーとやらは、いまの余、単身では勝てぬ相手であろう」

 

「だ、大魔王様、それは──」

 

「よい、よいのだミストバーン。厳然たる事実を認めようではないか」

 

 

満足げな大魔王は二人の側近に言って聞かせるように話し始める。

 

 

「マキシマムは知らぬだろうが、余には切り札があってな。

それを使えば恐らくは、シドーにも勝てよう。だが、容易に切れるものではない。

故にいまの余では勝てぬと、そう評したのだ」

 

「左様でございましたか……。しかし、なんといいますか、吾輩には……。

その、大魔王様は楽しそうにしていらっしゃるように見えまして……」

 

「マキシマム! 無礼だぞ!」

 

 

思わず叱責するミストバーンを鷹揚に宥める大魔王。

 

 

「両名にだけ話すが、余は嬉しいのだ。

ここ二千年ほどの間、余は挑戦者となるような事も無かった。

如何なる戦いも常に確定された勝利。流石に勝利の美酒も、味が濁ろうというもの」

 

「……バーン様……」

 

「ミストバーンが赴けば事足りる事も多く、

余が出向けば勝敗は議論の余地すらなかったゆえな」

 

 

上機嫌な様子でワインを飲みながら大魔王は話を続けた。

 

 

「いま取り組んでいる秘儀が済み次第、余も魔界へ赴き、

ハドラーと轡を並べて戦いに興じようと思っておる」

 

「だ、大魔王様!? お戯れがすぎますぞ!」

 

 

慌てるミストバーンにマキシマムが神妙な顔で言う。

 

 

「なに、ミストバーンよ。吾輩とお前がいるではないか。

我が配下の超金属(オリハルコン)兵団もいる。大魔王様は必ず守り通せようものよ!」

 

「ふはははははっ! マキシマムの言う通りだぞミストバーンよ。

それに、余も久しぶりに戦場の空気を味わいたくなってきた」

 

 

困惑して何と言って諫めるべきか考えていたミストバーンの機先を制するように、

冥竜王ヴェルザーが軍門に下るという報が届いた。

 

 

 

 

数日後、魔界にある大魔王城(バーンキャスル)

研究施設が数多く立ち並ぶ第四宮廷に、ひと際巨大なドーム状の施設が存在していた。

外観は無骨そのものであり、内装はシンプルで機能性だけが追求された構造である。

そして、内部の殆どが巨大な水槽であり、その中で凄まじい威圧感を放つドラゴンが眠っていた。

 

左右五本ずつ、十本の長さの違う角を生やし、長大な翼は折りたたまれている。

濃い紫色の鱗は、まるで魔界の宝玉の様であり、

美しさと見るものに落ち着かない恐怖感を与えた。

垣間見える爪は、一本一本が大木のごとき太さで、振るわれれば大柄なトロルや、

サイクロプスなどの巨人の魔物ですら、容易く(ほふ)られるであろう剣呑さを見せている。

 

その水槽の前にミストバーンが静かに眺めており、一歩下がってデスカールが控えている。

その数歩後ろに、眠りに就く竜──魔王軍六大軍団が一つ、超竜軍団軍団長であり、

冥竜将となったヴェルザーの部下、バズズが控えていた。

バズズはベリアル、アトラス、バズズの三将の中でも、呪文や呪法に通じている。

 

主君が天界の精霊に魂を封印され、新しい肉体を得られない事が分かった時に、

竜の(ドラゴン)騎士バランに破壊されたヴェルザーの肉体を回収。

禁呪法を駆使して肉体を修復して、バズズは長らく保存していたのだ。

いつの日か、封印されたままでもその肉体を操作し、

冥竜王ヴェルザーとしての力が振るえる可能性に賭けて。

 

その日が来ることはなく、結局のところ、大魔王バーンの軍門に下ってしまったのだが……。

 

 

 

ヴェルザーが宿敵(ライバル)である大魔王に膝を屈した原因は、

彼が数年に渡って囚われ解呪の見込みもなかった、

天界の精霊による強力な封印に()るものであった。

新参のヴェルザー十二魔将の過半数が離反し、統制が取れなくなってしまった原因も、

ヴェルザーその人が力を発揮することができないことが遠因だったとも言えるであろう。

 

その忌々しい封印を、大魔王バーンは如何にして解くことに成功したのか……?

石像と化した冥竜王ヴェルザーを目の前にして解析した上で、

大魔王が立てた解呪の為の方策は、意外なものであった。

曰く、封印はヴェルザーが持つ魂の不死性を鍵としているのではないか、と。

狡猾な天界の精霊は、ヴェルザーの持つ魂の不死性を鍵とした封印を施したため、

ヴェルザー自身が最大の切り札を捨てぬ限り、

封印は解けないという悪辣な手を使った可能性がある……、

という事だった。

 

事ここにいたり、冥竜王ヴェルザーは決断した。

彼が冥竜王とあだなされる由来たる、魂の不死性を捨てたのである。

その後、大魔王バーンが封印を解き、バズズが確保していたかつての肉体に魂を戻したのだ。

 

現在、魂の適合と疲弊した体力の回復を、蘇生液に浸ることで行っている。

その前で、静かに水槽内のヴェルザーの肉体を仰ぎ見て一言も発さないミストバーン。

大魔王バーンの側近であるが、沈黙を旨とするミストバーンが喋らないので、

自然とその場の会話はデスカールとバズズの両者が行っていた。

 

 

「バズズ。お前たち三将はヴェルザー殿の配下となり、超竜軍団を率いるのだ」

 

「心得た。ヴェルザー様が回復し次第、魔界へ降り立ち、

かつてのヴェルザー軍を集めようではないか。

ところで、竜族を糾合する許可はどうなっている」

 

「好きにするがよい。偉大なる大魔王様は許されている。

勿論、理解しているだろうが、大魔王様に反旗を翻そうなどとは考えぬ事だ」

 

 

忌々しそうに首を縦に振るバズズ。

そこでいままで一切喋らなかったミストバーンが、

水槽内のヴェルザーの心臓あたりを指差してポツリと言った。

 

 

「……黒の核晶(くろ コア)……」

 

 

そのミストバーンの言葉一つで、室内の空気が異様に重くなっていく。

冥竜将ヴェルザーの復元された肉体の心臓の辺りには、

魔界でも最悪の爆弾──黒の核晶(くろ コア)──が埋め込まれているのだ。

大魔王バーンの魔力によって、いつでも爆発させることができる。

 

非常に凶悪な爆弾でありヴェルザー陣営の者達は、

その強力さを骨身にしみて知りつくしていた。

かつて、竜騎将バランとの戦いで、ヴェルザーが実際に使用した際には、

魔界の彼の支配大陸の一つが、消え去ってしまうほどの威力を見せたからだ。

 

ミストバーンがデスカールを軽く一瞥し、

デスカールは彼の意志を汲んで、バズズに念押しをした。

 

 

黒の核晶(くろ コア)の存在。

いつ如何なる時も忘れぬように心せよバズズ。」

 

「も、勿論だ! それよりも、外様の我らとて功績を立てられれば、

魔王軍内部で勢力を築くこともできるというのは本当か?」

 

 

バズズの問いにミストバーンは応えず、代わりにデスカールが返答に応じた。

 

 

「その通りだ。大魔王バーン様は、実力を証明してみせる事に重きを置いている。

忠誠を持ち、己が有能さを示すことができれば、栄耀栄華は思いのままだ」

 

「その言葉、しかと覚えておく」

 

 

デスカールにそう返答するバズズの目には、

悔しさと共に栄達を勝ち取ろうという野心が垣間見えた。

ミストバーンはそれを見逃さず、内心で大魔王バーンの見込み通りになったことを喜ぶと同時に、

大魔王がそこまで彼らの心情を洞察したという事実に敬服するのだった。

 

 

 

ヴェルザーが元の肉体に魂を移動させ、身体が慣れてから魔界へと旅立つ。

それから一週間余りが経過したが、ドラゴンを糾合するという成果はあまり芳しくはなかった。

 

魔界で竜族に檄を飛ばしたものの、元のヴェルザー軍のドラゴンですら、

集まったのはかつての3割程度。

 

この芳しくない状況には、理由があったのだ。

ヴェルザー十二魔将の新参たちが、キングヒドラやグラコス二世の計略で暴発し、

大魔王領へ侵攻したことなど、その後の戦いで数を減らしているからだ。

 

それに知恵のないドラゴンたちは魔物としての、強い者に従うという本能を優先する。

魔界の強豪の下についたり、逆に新たな魔界の強豪として一勢力を築いたりで、

盟主たるヴェルザーが戻っても彼の下には帰参しなかったのだ。

 

それに魔界は広大であり、便利な通信手段が確保されているわけではない。

通達がすぐに行き渡るわけもなく、冥竜王ならぬ冥竜将ヴェルザーは、

肩慣らしとばかりに軍勢を率いて勢力を潰しながら、不愉快さを当たり散らす様に残忍に戦った。

 

その有様に配下の者達は怯えるものもいたが、その強さは健在だと喜ぶものもおり、

超竜軍団の結束は高まっていった。

 

 

 

ある日、南方の奥地で覇を唱える魔物がおり、それを叩き潰した冥竜将ヴェルザーは、

妙に強い邪気を感じ取り、探させていた。

 

配下のベリアルが慌てて舞い戻り、ヴェルザーにこう告げた。

 

 

「ヴェルザー様。

恐らくは邪気の源を発見いたしましたが、近寄らぬ方がよろしいかと」

 

「どういうことだベリアルよ? オレの手に余るとでもいうのか!」

 

「いえ、その……我ら悪霊の神々の盟主たる方の御首級(みしるし)でございます」

 

 

その報を聞いて狂喜したヴェルザーは現地へ赴き、

醜悪にして酸鼻な姿の破壊神シドーの首と対面した。

冥竜王ヴェルザーは、知恵あるドラゴンとして呪文にも精通しており、

魔界でも暗黒呪文(ドルマ)系に精通しており、アンデッドなどを操る闇の呪法も得意としていた。

 

その中で悪魔たちが住む闇の世界との交信を行い、強力な配下として契約を結び、

最高峰の悪霊の神々たるベリアル、バズズ、アトラスを己が麾下に招いたのだった。

 

実はその時に破壊神シドーを招こうという事も考えていたのだが、

それを果たすことはできず、無念な思いを抱いたこともあった。

 

 

「随分な姿だな、破壊神シドーよ。破壊神が破壊されるとは、良い面の皮だ」

 

「……貴様……」

 

「魔界の論理は弱い者は強い者に従わねばならぬということだ!

貴様もその論理に従うがよいシドー!!」

 

 

言うが早く、その顎で破壊神シドーの首を食らい、引きちぎり飲み干したヴェルザー。

するとヴェルザーの身体が怪しく光り輝き、腹部に穴が空いて、血が噴き出した。

 

 

「ヴェルザー様!!」

 

「ぐおおお……あ、慌てるな。飲み込んだシドーが、オレを支配しようとしている。

周囲を固めてオレを守れ、ベリアル。いや、それとも、かつての盟主の仇を討つか?」

 

「いえ……この状況となれば、シドー様が勝つか、ヴェルザー様が勝たれるか分かりませぬ。

なれば、私めは勝者に従いまする」

 

「それでよい。それこそが、強者が弱者を従える魔界の──」

 

 

次はヴェルザーの首の辺りに穴が空き、血が噴き出して言葉が途切れた。

破壊神シドーを飲み込んだ冥竜将ヴェルザーの支配合戦は数時間に及び、

いつしかバズズとアトラスもやってきて周囲を守っていた。

 

時折、ヴェルザーの身体に穴が空き血が噴き出していたのが止まって、

生きている事は確認できるが微動だにしなくなってから、

ベリアル以下三将は身じろぎもせず見守っていた。

 

 

「どちらが勝ったと思うか?」

 

 

バズズの問いに、アトラスはシドーではないかと言い、

ベリアルはヴェルザーが勝ったかもしれないと答えた。

みな、己の言葉に自信があるようで、自信を持ち切れぬところがあった。

 

すると、むくりと起き上がったヴェルザーの肉体が紫色の光を発し、

脇の辺りから二本の腕が生えてきた。

まとう妖気がより濃く、邪悪さを帯びて周囲に広がる。

 

三将を代表して、ベリアルが眼前の存在に語り掛けた。

 

 

「我らが主は、冥竜将ヴェルザー様か? それとも、破壊神シドー様か?

お答えいただきたく、伏してお願い奉る」

 

 

頭を垂れる三将に対し、その存在は毒の息を吐きながら答えた。

 

 

「我は冥竜将ヴェルザー。いずれ、冥竜王の称号を取り戻さんと欲する者。

そして、必ずや大魔王バーンを倒し、冥竜神ヴェルザーとして魔界も地上も、

いずれ天界すらも支配してくれる!」

 

 

その言葉と共に噴出する強大な魔法力と、凄まじい邪気に、

悪霊の神々と呼ばれた三者は地面に伏せて、恭順のしるしを示した。

 

 




独自設定

黒の核晶(くろ コア)
ハドラーに埋め込まれるはずの黒の核晶です。

ヴェルザーの封印
ヴェルザーの情報が少ないので、彼が何をできて何ができないか分からない所があります。
ですので、封印の解除とかが苦手な可能性もありますし、ヴェルザー一族に生き残りがおらず、
そういった天界の精霊の封印を解くという作業ができる部下が残っていないとも考えられます。
本作ではヴェルザーが生得で持ち合わせている、魂の不死性に封印をかけて、
それがある限り自由になれない、捨てれば解けるという封印を、
天界の精霊に施されたという設定にしました。
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