ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~ 作:リドリー@犬小屋
2025/01/19 追記
PCが壊れてしまいまして、次回更新を再来週の木曜日、
1月30日にさせていただきます。
破壊神シドーとの戦いから一カ月ほどたったある日。
ロン・ベルク殿が私を訪ねてきてくれた。
用事自体は別にあるそうだが、シドー戦のおりの
ベンガーナ方面における戦いの様子を説明してくれた。
ホルキンス殿の見事な戦いぶりと、アキーム率いる戦車隊と、
ベンガーナ戦士団の連携が大したものだったという話を聞くことが出来た。
「良い話を聞かせていただきました。
しかし、やはり、破壊神シドークラスが出現すると、
ベンガーナのモンスターまで邪気で凶暴化するものなのですな」
「あれは厄介だったな。
だが、あのおかげで、ヨミカインでのっぴきならぬ事態が発生していると思い、
クロコダインに急いで助勢に行けと送り出せたのだが……」
「何か破邪呪文で邪気を防ぐことができればよいのですがな」
「
逆に破邪呪文の光の魔法陣を中心に、外側へ邪気を払う波動を放つ呪文でもあればいいが……」
それだ……。
恐らく魔王軍侵攻時に、大魔王が邪気を放って地上のモンスターを凶暴化させる。
凶暴化したモンスターたちは、魔王軍の戦力になってしまうわけだ。
それを防げるだけでもよいだろう。
その後は、ボリクスの剣の状況であるとか、ギュータの鍛冶村など、
それ以外の近況も聞いてみたが、最後に興味深い話を耳にすることができた。
「実は最近、なかなか見込みのある男がギュータにやってきてな」
「ほう、それは鍛冶の方ですかな?」
「ジャンクという男だ。
ランカークスという村にいたらしいが、ギュータの鍛冶の発展ぶりを耳にして見学に来た」
私は驚きの為に、ロン・ベルク殿の言葉を繰り返すしかできなかった。
「ランカークスのジャンク殿……ですか」
「腕前はギュータの鍛冶職には及ばないがセンスがいい。
あと、酒の趣味がオレと合うんだ。鍛冶の腕は、いずれいい線まで行くぞ。
人の寿命の中で、オレの技をどれほど修められるか楽しみだ」
ロン・ベルク殿が多弁な時は機嫌のいい時だな。
やはり、原作同様、ジャンクとはウマが合うようである。
さらに、ギュータを気に入ってか、ランカークスから引っ越してくるという。
しかし、ポップが家族ごとやってきてギュータに住むというのか。
なんとも奇縁と言うべきだろうか。原作の運命力とでもいうべきなのか……。
いままで、ランカークスにポップが住んでいるのに、コンタクトを取らなかったのは、
原作で言う彼の一般人性を考えると、私には遠慮があったというのが大きい。
私はポップの才能を高く買っているし、最終決戦における最大の功労者だ。
だが、彼が高い才能を持っているからと言って、過酷な戦いへ無理に連れ込むのは良くはない。
例えば、アバン殿やマトリフ殿は放っておいても、新しい魔王軍が侵攻すれば、
戦いの場に立つことになるだろう。
しかし、ポップは別にそういう生き方でもないし、才能があるからと言って、
一般人として暮らしている彼を無理やり魔法使いにするのは抵抗があったのだ。
きっと、修行させれば伸びる可能性はあるが、彼が高い成長性があるからと言って、
私が過度に干渉して、人生を変えるような選択を押し付けていいのだろうか……
という思いがあり、私はランカークスへ訪れる事を躊躇っていた。
とはいうものの、ギュータに来たのは何かの縁だろう。
これを機会に、いずれ直接会って話をしてみたくはある。
ロン・ベルク殿がヨミカイン魔導図書館に数日滞在して、
数冊の鉱石に関する本を借りて行き、ギュータへ帰った後、
私はパプニカにやってきていた。
私の身長が伸びてしまったので、折角、仕立ててもらったばかりの、
パプニカの法衣のサイズが合わなくなってしまったのだ。
それゆえ私の身長に合わせて、再度仕立ててくれていた法衣が、
完成したという知らせを受けて、ボリクスを連れてやってきたのである。
この前、仕立ててもらったばかりなのに、今度もパプニカ四賢者なのだから、
法衣くらいパプニカで用立てるとのことで、また1ゴールドも請求されなかった。
いずれ、何かパプニカで面倒な事が起きた時に、助力を請われる可能性を考えたが、
本当に何か国難が起きたら、助けたいとは思っている。
ただ、政治闘争とかが起こった場合、私はそれほどそちらの分野に明るくはないので、
力にはなれないのではないかという危惧があるのだが。
新しいパプニカの法衣は、前の法衣と同じ色で、ちょっとしたマフラーがついていた。
数代前のパプニカ王がまとっていた法衣に似ているらしく、
畏れ多いと遠慮したが、レオナ姫は"ひいひいお爺様なんて、誰も顔知らないから平気よ。
肖像画もお父様の私邸にあるくらいだし" と言ってはいたが……。
「ええやん。かっこええで
「このカッコイイおじいさまが、これから300年経つとあの小さいザボさんになるのねぇ……」
「前の小さい
新しい法衣に袖を通した私を前に、レオナ姫とボリクスが好きな感じに言ってくれている。
マトリフ殿がやってきたので、私は彼にロン・ベルク殿から聞いた話をした。
その上で、前大戦でも起こったように、魔王クラスの邪気に当てられて、
モンスター達が凶暴化してしまうなら、対策をしてみようという話をしてみた。
邪気に対して抵抗しようということだ。
「破邪の洞窟に眠ってるっつー、大破邪呪文か……。
そいつを使いてぇという、おめーさんの考えを聞かせてくれよザボエラ」
「習得の際に試練があり危険ですが、
広範囲に聖なる力を放つものですな。
利点としては魔物を弱らせる力や、邪気に当てられて正気を失ったモンスターを、
正気に戻すことができます」
「つまり、ザボさんが言いたいことは、ベンガーナで起きたようなことの再来を防ぎたいのね?
前面に魔王軍の魔物たちと戦っている最中に、
在野のモンスターが邪気に当てられて横合いを撃たれるとかを?」
まだ10歳のはずなのだが、子供の頃からの聡明さが翼を生やして飛ぶがごとく、
才走った事を話す様になってきてるなレオナ姫は。
魔法兵団に従軍する際に、お飾りでいるのは嫌だと戦術を学んだという事だったが。
「左様です。レオナ姫は聡明ですな。単純に敵戦力の不意の増加を防げますし、
なにより魔王クラスの放つ邪気で、魔王軍は戦力を幾らでも地上のモンスターから補充できる。
敵戦力の不意の増加を絶つべく、事前に手を打った方がよいのではないかと考えましてな」
「まぁ、有効性は分かるんだが、今の今までやってないってのは、何か理由があるんだよな。
さっき言ってた、習得の際の試練って辺りがネックか?」
「
魂の正しさを証明できねば、恐らく命を失うことになりましょう」
「……魂の正しさ、ねぇ……。
原作のレオナ姫ならできたのだが、現時点の姫では確証がないからな。
あの状況で決意を固めていたレオナ姫だからこそ、成功できた可能性もある。
だからこそ、私がやってもいい。
私の魂が正しいのかはともかくとして、あの時レオナ姫に話しかけたのは、
破邪の洞窟のシステムから推測すると、人間の神の残留思念である可能性が高い。
つまり、彼なら便宜を図ってくれるのではないか、という考えもあるのだ。
あと、もう一つの件を話してみるか。
ピラァ・オブ・バーンで六芒星魔法陣を作り、
大魔王バーンの計画にヒントを得た手なのだが……。
現在あるオーザムの風の神殿、カールの火の神殿、デルムリン島の大地の神殿、
パプニカの水の神殿、あともう一つの神殿を作り上げて、五芒星魔法陣を作り上げる事で、
中心にある
そうしてやれば、オーザム、ギルドメイン、ラインリバー、ホルキアの全ての大陸を、
聖なる力で覆えるのではないかと言う話だ。
原作でも大魔王バーンの力の低下を招くという事にはならなかったが、
魔界の魔物達に勝てたのは
さらに邪気に当てられて地上のモンスターが無制限に魔王軍の兵力を補充する、
という現象に対してストップをかけられるのは大きい。
「面白い話だが、あと一つの神殿はどうすんだ?
地水火風の四精霊の神殿を建てたが、他に精霊がいるってのかい?」
「五芒星を作るとなるとリンガイアに神殿を作る必要がでてきますな。
その場合、彼の地では聖母信仰があります。大々的に聖母を祀る神殿を創ってはどうですかな」
「なるほど……。リンガイアだとチュゴナ村に聖母の像が置かれていたな。
恐らくは人間の神の従属神だったのかもしれねぇが……」
ヨミカイン魔導図書館でその記述を見つけた時には驚いたが、
リンガイア地方で信仰されている聖母については、
逸話の数々から考えると、恐らくは精霊ルビスなのではないかと思っている。
四精霊との均衡も考えれば、五芒星を作る起点とするなら精霊がいいのは確かだろう。
この件は
「ところで、こないだ
おめぇさん気になることを言いかかってたよな」
「お気づきでしたかな。
手が四本以外にも神域呪文を使うための方策があると言いたかったのです」
「ほーん。
ボリクスの問いに私はこう答えた。
なんらかの秘儀で腕を増やして、大魔王の鬼眼の力のような強制進化などに頼れば、
シドーのように単体で使う事もできるだろう。
私が言いたいのは、極大呪文が使える者同士が、協力して極大呪文を合わせ、
神域呪文を作り上げればいいのではないかと言う事だ。
もう一つはまだ私自身には無理なのだが、二つの魔法陣で極大呪文を使う事ができれば、
私一人で神域呪文を使う事が可能だが、即実現可能ではないので後回しで良いだろう。
「よっしゃ、イオ系だったら極大呪文が使えるやつが三人ここにいる。
バルジ島の手前にある水の神殿で、海に向けてぶっ放てばいいんじゃねぇか?」
「ちょっと、海にも生き物がいるんだから気を付けてくださいよマトリフ!」
「バカ野郎。オレだってそのくらい気を使うってもんだぜ。
空にでも向けて撃てばいいだろ?」
水の精霊オーチェが膨れているが、マトリフ殿はいそいそと準備を整えている。
よほど、神域呪文に挑戦できることが楽しみらしい。
レオナ姫の外出許可も取って、我々五人は水の神殿へ向かった。
下手に水平方向に撃てば、バルジ島を吹き飛ばしてしまう可能性もある。
私とマトリフ殿は何もない空方向へ向けて撃つため、
魔力量を調整して天空方向へ
二つの
ただ、その反動というか、魔力の圧力とでもいうべき力が、私に強くのしかかってきている。
手の中で暴れ回るそれを制御することに集中していると、マトリフ殿も状況は同じなのか、
額に汗しながら私に話してきた。
「ちきしょう!
制御が難易度高いぜ……とんでもねぇじゃじゃ馬だぜこいつぁ!」
「確かに……。魔力を六割程度に抑えますかな。試射ですし」
「おう、そんくらいにしとくか。トリガーはそっちに任せるぜザボエラ!」
「参りますぞ!
シドーの
通常の
実際にシドーの
初めて目の当たりにしたレオナ姫は、ポカーンと口をあけて、大慌てする水の精霊と共に、
硬直して言葉にもならなかった。
「ザボエラ。どのくらい魔力持っていかれた?」
「大体、
「その計算、間違ってねぇな。オレも同じ答えだぜ」
お互いで所感を交換し合ったが、私もマトリフ殿も疲労感が強い。
途中でお互いに魔法力をセーブして、簡単に言うと攻撃魔力を減らし、
暴走しない範囲の強さで呪文を合成して放った。
「現時点だと制御できる範囲の魔力で六割ってとこか?」
「ですな。恐らく全力でやれば、いまの我々では制御しきれぬでしょう」
「まったくだ、ちがいねぇぜ。
その言葉を聞いた水の精霊オーチェが、我々を見て指をさして言った。
「あ、あれで、六割の威力ってことですか!?」
「師匠、これはかなり危険な呪文ね。
極大呪文使える人、誰かれ構わず教えていいわけないわ」
水の精霊とレオナ姫が驚いている。
レオナ姫の言う事は尤もなのだが、前提がおかしくはある。
そもそも、極大呪文を使える人間があまりいないのだ。
パプニカでいえば、アポロとレオナ姫、マトリフ殿。あと、魔法兵団に二人いるらしい。
神域呪文は使ってみた感覚では、呪文パワーの制御難易度が恐ろしく高い。
極大呪文を両手で使うのは、荒れ狂う魔法力の強さを、
両手を使って制御するためだ。
パワーを低くすれば制御できるが、そうでないと自分が呪文の威力に焼き尽くされそうになる。
六割の魔力で
ただ、話し合った結果、呪文に習熟すれば、技術で威力を制御できそうではある。
もっとも
今回の場合は
他人の魔法力と同じ強さに合わせるだけなのだ。
気心が知れている相手なら、このようにぶっつけ本番で可能なくらいの難易度ではある。
この世界では初めての試みなので、じっくりやっていこうという話になった。
切り札が増えるのは良い事なので、マトリフ殿はアポロとレオナ姫に、
レオナ姫はあからさまにゲンナリした顔をしていたが、
パプニカを守るためなら手を尽くすわと最後には腹をくくった。
丁度いいのでマトリフ殿に
それを維持し続けるのがなかなか厳しいという話をした。
呪文の効果範囲の拡大と、持続時間の拡大を同時に行うのだから。
「ボリクスに聞きましたら、ドラゴン族は
展開も維持も楽だそうでしてな」
「それなのにおめぇさんはなんでヴェルザーに負けちまったんだ。
それとも、奴さんは
マトリフ殿の質問に、ボリクスは頭を掻きながら面白くなさそうに答える。
「あー、それなー。
ヴェルザーもドラゴンやから、うちが作った雨雲を
「なるほど。上手くいかねぇもんだな」
話し合った結果、広範囲に雷雲を作る呪文を新しく作った方がいいのではと言う結論に至った。
水の精霊であるオーチェに尋ねて、精霊が喜びそうな詠唱を教えてもらい、
この場で新しい
「世界に散らばるあまたの水と風の精霊たちよ。我が声に耳を傾けたまえ!
私が解き放った
試しにマトリフ殿が
マトリフ殿は口笛を吹いて、自分も習得しておくかとつぶやいた。
私は水の精霊に礼を言う。
「ふむ……お前さんのアドバイスのおかげじゃ、オチェアーノよ」
「私は精霊でも上位の存在ですからね。人間が作る呪文の精霊への働きかけ方は下手ですし。
ちゃんと、私の言う事を聞いて作れば、こんなものですよ」
胸をそらせて自慢げにいう水の精霊を、レオナ姫がからかっているが、
流石に今回は素直に彼女の精霊としての力に感服するしかなかった。
その後、マトリフ殿が水の精霊に、精霊へ働きかける方法のコツを真剣な顔で尋ねていた。
彼女は高位の精霊ではあるが、魔法使いではないので、細かい理論は分からないようで、
水の精霊が若干、気圧されているところがあるように見られた。
「いよーし! いっちょ、景気のいい雷雲があるんやから、
「ちょっとやめてください! あれは上から下へ叩きつける呪文でしょ!
海の生き物が死ぬからやめて!!」
ボリクスを必死な顔で止める水の精霊の姿に、みなが笑いをこらえきれなかった。
他人事のように笑っていたレオナ姫が、その後すぐ
マトリフ殿にビシバシ喝を入れられており、
水の精霊オーチェが指をさして笑っていたのはまた別の話である。
独自設定
聖母
現在連載中の勇者アバンと獄炎の魔王で登場した、
恐らくはヒュンケルがマァムを「聖母だ」というシーンの為だけに登場した存在と思われます。
ただ、その聖母の像の周囲には、聖なる力が張り巡らされ、
邪気で凶暴化したモンスターが近寄れなくなるという、
不可思議な現象が確認されました。
聖母について考えた結果、不死鳥ラーミアが訪れるんだからと、
ルビスじゃないかなーという設定にしました。
多分、違うでしょうし、原作ではこれ以上広がらない話だと思います。
前提条件が
ただ、魔法力を高めすぎるとその威力が制御できず、術者ごと吹き飛ぶ可能性があります。
呪文エネルギーの制御の方に気を使う呪文ですね。
バックファイアが怖くない強靭な肉体(シドー)にはとても向いている呪文です。
ラナトレンタ……唱えるだけで1km四方が雷雲で覆われる。
トレンタはイタリア語で30という意味で、
海外のスタバにある国内で言うベンティより一個上のサイズの意味です。
ザボエラの新しい法衣
【挿絵表示】