ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~   作:リドリー@犬小屋

83 / 117

次回は来週の木曜日23時頃を予定しております。



原作前(ダイの大冒険本編の3年前)
第七十二話 テラン城の隠し書庫


 

原作開始三年前の年が始まった。

精霊ルビスから聞かされた話は、去年の内にヨミカイン魔導図書館に仲間たちを集め、

私が依頼された二つの事について説明をした。

一つは不死鳥ラーミアの話と、もう一つは破壊神の力を宿した者の存在だ。

違う世界の神と邂逅して聞いたという突飛な話でもあるので、

私自身が信頼を得てなかったら信じてもらえなかったであろう話だ。

 

聞いた皆もまず驚きを隠しきれずにいたが、

それが収まってからは質問攻めにあった。

最終的にマトリフ殿が"正直なところオレ一人だったら頭を抱えてた話だ。

だが、いまは右を向いても左を向いても頼れる連中ばかりだろ?

なんとかしてやろうじゃねぇか。頼んだのが女神(美人)ってのも景気がいいぜ!"

と最後は冗談めかして話を締めて、みな各々に行動している。

 

勿論、神の尺度の話であったり、この世界の神が既に死んでいるという事は隠している。

ただ、マトリフ殿やアバン殿は察している雰囲気はあったのだが……。

 

そのアバン殿は大破邪呪文(ミナカトール)を習得しようと、

年明けに破邪の洞窟へ潜っておりまだ戻ってきていない。

レイラ殿、マァムが同行している。おそらくは現地でホルキンス殿も合流することだろう。

 

マトリフ殿は神域呪文の研究と修行を続けている。

魔法兵団は魔法力の溜めに時間がかかるが、極大呪文が使えるものが何人かでたという。

伝承や秘伝に詳しいマトリフ殿は、リンガイアに出来た聖母ルビスの神殿の建築が終わったので、

現役の三賢者を退いたパルナス殿と一緒に、何度か祭事を行って体裁を整えている所だ。

 

ロン・ベルク殿には不死鳥についての重大な話を説明してある。

いまだ絶えず燃え続ける不死鳥のかがり火が、

変化を示したらすぐに持ってきてくれるという約束をしておいた。

ボリクスの剣については、最近、覆っている繭が解けかかっているという話だ。

これについても何かあったら連絡がすぐ来るようになっている。

もっとも、ボリクスが暇があれば見に行っているので、

繭が解けたらすぐ私のもとに持ってきて見せてくれるだろう。

 

ポップについてそれとなく聞いてみたが、どうやらかなりの数の呪文と契約できたそうで、

魔法使いとして有望だという話だった。

チョコマが喜んで呪文を教えようとしたが、父親のジャンクに反対されたという。

"こんな怖がりに呪文なんて危ない"と言って、修行を許可してくれないらしい。

 

初歩の瞑想(メディテーション)を続けてはいるそうで、

鍛冶に有効な火炎呪文(メラ)地爆呪文(ジバリア)を覚えたそうだが、

それ以上の攻撃呪文はだめだと言われているという話だ。

 

ポップについては瞑想(メディテーション)を続けているだけでもいいだろうとは思っている。

何度も言うがポップが成長したのは、魔王軍の侵攻によって環境が切羽詰まったことと、

アバン殿の死で頼る存在がいなくなってしまって状況が予断を許さなくなったこと。

クロコダイン、ヒュンケル戦によって、彼自身が心から勇気を絞り出して戦う。

そんな、ポップが心の底から本気になる機会が必要なのだ。

 

 

日々を忙しく過ごす中、テラン城からメタッピーが手紙を届けてくれた。

送り主はテランのフォルケン王である。

手紙の内容を確認し、私は瞬間移動呪文(ルーラ)でテラン城へやってきた。

 

城の衛兵とも顔なじみであり、すぐに取り次がれ案内の者が来る。

道も覚えているので王の間まで私一人で行ってもいいのだが、

私はヨミカイン魔導図書館館長とパプニカ四賢者の一人という職責がある。

両方とも名誉職ではあるが、ある程度の職位があるため、

案内の人間に先導してもらうという形式が伴ってくるのだ。

先導の者について行きながら、テランも様変わりしたものだと思いを馳せた。

 

現在、テランの人口は2000人に達している。

もはや訪れた時の150人という寂れた有様はない。

原作の未来においては50人まで人口が減るはずだったが、いまでは街道も整えられた。

空き家どころか空き村が点在していたが、それも全て入植している。

それどころか、家が足りないので各村で新規に家を作っているくらいだ。

 

北の漁港ウルス村はすでに街の規模にまで拡大している。

いまや海上貿易の拠点の一つとして、

オーザムとリンガイアの荷を多く蓄える倉庫を幾つも抱えていた。

 

そのウルスに隣接するギュータではあらゆる技芸の達人たちが、

新しくテランの国民になった者たちに、希望があれば技術を伝授している。

 

フォルケン王も自らテラン国内を北へ南へ訪れては、国民にその知識を惜しみなく分け与え、

周辺国からも賢王の名で讃えられ、尊敬されているという。

 

そのようなテランの変化を考えながら歩き、王の間に到着する。

待っていたフォルケン王と何人かの書記官や兵士たちと共に、

最近発見された隠し書庫の調査に同行した。

 

何があったかという話は、一週間前に遡る。

やや大きめの地震が起こった際に、

いままで何もなかったはずの壁が崩れ倒れてきたらしい。

危うかったので咄嗟に、フォルケン王が気を込めた拳で粉砕したそうだ。

 

粉砕した壁の向こう側に、隠し通路がありその奥に書庫があったという。

その書庫には古びた本や、巻物が大量に所蔵されたいたらしい。

書庫へ立ち入った王がまず見つけたのが大破邪呪文(ミナカトール)についての書である。

それを見たフォルケン王が私にいの一番に連絡をしてくれて、

今回、隠し書庫の整理を手伝う事となった。

 

久しぶりに出会ったフォルケン王は、また気を充実させており、

背が高くなった私よりやや小柄だが、たくましい肉体は年齢を感じさせないものがある。

 

歴史関係の書が多く、テランを訪れた竜の(ドラゴン)騎士についての記述も見られた。

さらに大破邪呪文(ミナカトール)についての補足の書が幾つか見つかる。

古代では呪術で加工した魔法玉を用いて、五人の人間に持たせて発動させたという。

これは今回、アバン殿が既に輝聖石を用意しているので、使う必要がない技術だ。

 

原作でも思っていたことだが、大破邪呪文(ミナカトール)の書に書かれていた、

強く清らかな精神をもった五人の人間に必要な精神。

 

『勇気』、『慈愛』、『闘志』、『正義』、『純真』

 

がちょっと偏っているのではないかという事だ。

もっと言えば、強く清らかな精神の範囲が狭いのではないだろうかとは思っていた。

メタ的にいえば、ダイたちアバンの使徒に合わせたものだということだろうが。

 

その必要な精神についての記述が、発掘した本から見つかったのだ。

古代の文字で記されていたが、フォルケン王に習っていたので私も読める。

そこに大破邪呪文(ミナカトール)を最大に発揮する際に必要な、

五人が持つ精神について幾つかの別種の記述が見られたのだ。

 

ただ、古い本で紙の劣化による破損などがあり、

読めたのは仁・義・礼・智・信というものだけである。

もしも、勇気・慈愛……の方に適格者がいなければ、仁義礼智信で人選してもいい。

しかし、書物を読み解いた私の最初の感想は、南総里見八犬伝……?

というものだったのは黙っておいたが。

 

そして、太古に存在したやり方の一つとして、五芒星を描く起点に、

破邪呪文(マホカトール)を施してやると、大破邪呪文(ミナカトール)の強さを更に高められるという。

幸いすでに地水火風の神殿は破邪呪文(マホカトール)を敷いてある。

既に完成した聖母ルビスの神殿も、リンガイアに許可を得て、

破邪呪文(マホカトール)を敷くべきだろうという事になった。

 

フォルケン王がいくつかの古文書の解読作業を進めておいてくれるという。

私は今日得た情報について、まとめて写本を作ってくれるよう依頼しておいた。

 

 

「そちらはすぐにでも執り行い、届けさせるように致しましょう。

ところで今回の古文書は解読して本にした場合、

ヨミカイン魔導図書館に所蔵していただけるのでしょうか?」

 

「勿論です。それが何かありましたかな?」

 

「子供の頃からいつか、ヨミカインに所蔵されるような本を記したかったのです」

 

 

フォルケン王はその見事な髭を満足そうに撫でながらこう言った。

 

 

こんなに喜んで貰えるなら、他にもフォルケン王の知恵を本にしてはどうですと提案してみる。

すると、何を本にするか悩んでしまったので、

もし日記でもつけていたらそれを本にしてみてはと提案してみた。

 

なんと、8歳の頃から日記を欠かさずつけているそうなので、

一人の王の人生を知ることができるから本としてまとめてはどうかと言ってみる。

フォルケン王は大層喜んで古文書の解読の後に取り掛かりますと、

まるでスキップするような歩みで去っていった。

 

 

 

数日後、用事があって訪れた研究室で、ザムザが憂鬱そうな顔をしているので話を聞く。

どうやら、何度計算してもグレゴリーアの残りの寿命が、

魔族の基本的なそれの三分の一程度になってしまうらしい。

 

魔族は千年生きられるというが、つまりそれは人間換算だと百歳だ。

百歳に達する人間などそうそういないように、魔族も魔界では戦いに明け暮れるせいか、

平均寿命だと四・五百年と言ったところらしい。

 

ボリクスと一緒にいたグレゴリーアに、ザムザは泣き出しそうな表情でその話をした。

グレゴリーアはボリクスの頭をポンポンしてから、

立ち上がりザムザの肩をバンバン叩いて大笑いした。

 

 

「あのねぇ……アタシはあそこで死んでる運命だったのさ。

あんたのホムンクルスがなけりゃね。

三百年しか生きられないじゃなくて、三百年も生きられるなら御の字さ」

 

「母上……申し訳ありません……」

 

「グレ姉の言う通りやザムザ。あんまり真面目すぎるとハゲるで自分?」

 

 

ザムザはグレゴリーアとボリクスの二人に励まされている。

グレゴリーアが励ますのも理由がある。

本人曰く、すこぶる調子がいいということだ。

グレゴリーアは護符や魔法陣などの準備が色々と必要ではあるのだが、

ドラクエ10のデスマスターのような能力を使う事ができる。

単純なものは身体が動けなくなる呪いから、死霊を召喚して戦わせたりすることが可能だった。

面白かったのはおまじないを習得していたことだろう

 

私もこの世界へきて手をくるくる回して試してみたが、できないので無理なのかと思っていた。

指の形にコツがあり、なおかつ呪文のように契約が必要な技術であったのだ。

印を組み手を回すと、あのキラキラするものが出て興味深かった。

 

お礼ということではないが、グレゴリーアに私が呪文を教えた。

閃熱呪文(ギラ)系は極大呪文を習得し、氷系呪文(ヒャド)系も氷結呪文(マヒャド)まで修めた上、

しっかり回復呪文(ホイミ)系も習得。

困った時に頼りにならせてもらうと話すと、ニヤリと笑っていた。

 

ホムンクルスの技術を人間にも応用できないかと思い、

研究をしているらしいが、人間の場合は魔族より寿命問題が深刻だ。

魔族のグレゴリーアが寿命が三分の一になってしまうのだから、

人間はそれこそ30年ほどの寿命になってしまうという。

実は一度、ロカ殿にこの話をしたのだが、いまのままで十分だと言われてしまった。

この場合、血を貰う相手がマァムになるからだ。

 

ロカ殿は父親が魔王ハドラーの侵攻で亡くなっており、母親も幼いころに死んでいる。

すでに身寄りがないから、ロカ殿の因子を取り出すにはマァムの血がいることになる。

私としては原作で悲しい死を迎えたロカ殿が、ぬくもりを持った肉体を得て、

マァムやレイラ殿を今一度抱きしめる機会があってもいいのではないか……?

そう思っているので、説得は続けようと思っている。

 

 

グレゴリーアの言葉でザムザの表情が明るくなった。

ホムンクルス体の寿命については、研究の余地があるから、

続けて伸ばせるようにしたいと熱く語っていた。

 

ザムザの研究室を訪れたのは、彼とグレゴリーアの知識を借りたかったからだ。

平たく言えば、二人が知っている範囲でいいので、地図を作りたいという事である。

 

 

「精霊ルビスから依頼のあった破壊神を宿した存在を確認するために、

魔界へ訪れる必要があるのじゃよ。

二人の知る範囲でいいので地図を描いてもらいたい」

 

「いいよ。アタシはちょっと古い知識になっちまうかもしれないがね。

流石に様変わりしてるんじゃないかい?」

 

「あの、父上。私は大魔王城(バーンキャスル)周辺の事しかわかりませんが、

それでよろしいのですか?」

 

 

私は二人の言葉に同じ返事を返して同意した。

実はすでにロン・ベルク殿に地図を描いてもらっている。

それと照らし合わせればかなり確実性の高いものになるだろう。

グレゴリーアの懸念だが、魔界それ自体が、街が沢山あるような場所ではない。

つまり、そうそう簡単に地形が変化することはないはずだ。

 

あと、大魔王バーンの支配地には近寄らないようにしたいので、

ザムザの知識でその範囲が分かれば、

そこには接近しないように行動するようにすればいい。

その参考として使おうという事だ。

 

いずれ、ボリクス、グランナード、クロコダイン……。

あとは、破邪の洞窟からアバン殿が戻ってから魔界へ赴き、

探索をするために様々な下準備が必要だろう。

 

私はザムザとグレゴリーアから魔界の地理について聞きながら、

来るべき魔界行のために気を引き締めるのであった。

 




独自設定
強く清らかな精神
ダイたちアバンの使徒に合わせて作ってるよなと思っていたので、
別のアプローチをしてみました。
こういう場合、分かりやすいのは仁義礼智信だろうなと。
あと三つ(忠・孝・悌)増えると南総里見八犬伝もそうですが、
サムライトルーパーになりますね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。