ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~ 作:リドリー@犬小屋
次回は来週の木曜日23時頃を予定しております。
先日、魔界の地図が完成した。
完成したといっても、ロン・ベルク殿の話と、170年程前のグレゴリーアの記憶。
後はザムザが知っている
地上の地図のような情報が網羅されたものではない。
元々、魔界自体が幾つも大陸が存在する、非常に広大な世界なので仕方ないだろう。
それに全土を回るわけではなく、確認できる範囲での探索を考えている。
それでも、現在、ヴェルザー陣営がほぼ瓦解していることを考えれば、
大魔王バーンの勢力圏を把握して近づかぬことは、
無用な争いや強者との戦いを招かないために必要な対策だった。
ヨミカイン魔導図書館の一室で、私とザムザは地図を前に話をしている。
ついでではないが、ザムザがいた当時の大魔王軍の幹部の情報を尋ねてみた。
出会ったことがない人物も勿論いるだろうが、私が知らない強者がいては怖い。
情報は集められるだけ集めておいた方がいいだろう。
私の質問に対してザムザは律儀にメモをして情報を整理し始め、
メモを書く手が止まった瞬間、記憶を手繰るように話し始めた。
「私が
「彼は死んでいるから、別の誰かが後任に就いておるのじゃろうな」
「おそらくは四諸侯の内、存命の二名ではないかと。
アクバーとジャミラスが生きております。
彼らのいずれかが、就任している可能性が高いでしょう」
グラコスが死んでいる事は、デルムリン島を攻めてきたグラコス二世によって、
明らかになっている。
となると、残る強者が誰なのか知りたかったのだ。
キングヒドラやグラコス二世に唆された新参のヴェルザー十二魔将が、
大魔王領へ攻め込んだというのは彼らからの話で知ってはいる。
問題としては大魔王配下の誰が生き、誰が死んでいるかという事だ。
ザムザの話ではそのヴェルザー十二魔将の襲撃で、デュランが戦死したらしい。
その事実は朗報であるといえる。
この世界の彼がドラクエ6と同じ能力かは分からないが、
非常に強力な存在だったのだから、戦わずに済むのはありがたい。
存命しているのはジャミラスとアクバーだと知れた。
ダイ大原作ではジャミラスはマトリフ殿の
出落ちのような感もある分、その強さが疑問視されてしまう。
だが、本来、ドラクエ6の強敵であり、ムドーのインパクトが強かったせいか、
その後に戦った彼はさほど苦戦はしなかったが、強い事は確かだ。
ダイ大でも偽勇者たちが勝てないと一見して判断するほどである。
マトリフ殿が
その後の
眼前のジャミラスが一筋縄ではいかないので奥の手を使った感がある。
アクバーはこの世界でも使えるかどうか分からないが、
ドラクエ6の頃は多彩な特技ときわめて厄介な
それに対しての対策がしてある可能性もあるので油断はできない。
更に後の作品にもアクバーは登場しているので、強さや能力に変動がある。
例えばドラクエ10では
更に
凄まじい威力を誇る呪文であるのだが、
魔法使いがその時点で持っている全MPを消費してしまう。
そして、威力自体が使用時点での保有MPに三倍かけただけのダメージを与えてくるが、
これはさすがに強すぎたのか作品が出るたびに倍率が下がっていくことになる。
困るのは呪文と銘打っているが、
あと、山彦の帽子という、
"戦闘中だけ一回分の行動ターン・MPで同じ呪文が二回連続で発動する"
というすさまじい効果の兜カテゴリの防具があった。
その山彦の帽子の効果も反映されないので、強すぎないためにいわゆる、
特技のカテゴリに入っているのだろう。
ただ、これがドラクエ10以降、
つまり、アクバーがもし
ドラクエ10以降の
尤も遭遇しないこともあるだろうから、気にしすぎるのは危険だが、
彼らの手の内は知っている限り魔界へ行くメンバーには説明しておいた方がいいだろう。
「……六大軍団についてですが、百獣魔団長はザングレイに決まっています。
彼は高い統率力で百獣魔団を率いており、
両翼をボラホーン、ガルダンディーという猛者が固めています」
「ボラホーンとガルダンディーの二人が、百獣魔団に所属しておるのか?」
「父上、彼らをご存じですか?」
「いや、名前を知っている程度じゃがな……」
見かけないと思っていたが、百獣魔団にいたのかボラホーンとガルダンディーは。
どうやら彼ら二人はザングレイ同様に超魔手術を受けており、パワーアップしているという。
ボラホーンは得意分野の氷属性攻撃を増やすため、氷系モンスターの因子を取り込んでおり、
ガルダンディーは自分と同じ鳥系モンスターの能力を植え付けているという。
百獣魔団長ザングレイは限界まで超魔手術を施しており、ザムザの説明を聞くだけでも、
ギュータでクロコダインに倒された時とは雲泥の差の力を身に着けているのだろう。
ザングレイ自身は超魔生物への改造を望んでいたが、
当時の上司であるガルヴァスが幹部候補に危険な事はさせられないと、
超魔生物への改造を許可していなかったが、いまはどうか分からないと付け加えた。
「妖魔士団長はメネロが就任しているでしょう。
彼女は植物系の魔物の能力を植え付けて、出来ることが増えていましたが、
ザングレイほどの圧倒的な戦闘力ではありません」
「ふむ、メネロか……」
ダイ大の映画ではデスカールと共にガルヴァスの第一の側近のような顔をしていたが、
呪文を一切使うことがなく茨の鞭でペチペチやるだけと酷評されていた女性幹部だ。
実際、ギュータ攻防戦ではボリクスに一撃で倒されてはいる。
だが、超魔手術で能力を増やしているなら、油断していい相手ではない。
「不死騎団長はデスカールということじゃが、彼の能力については分かっておるのか?」
「いえ……。一番、会話をした相手ではありますが、戦っている姿を見たことがありません。
彼はミストバーンからの言葉を、実際に動く現場の人間に伝える役割でしたし」
「ふむ……そうか……」
ミストバーンを助けに来た時、彼は紫色のバリアーのようなもので、私の攻撃を無効化していた。
それについてもザムザに聞いてみたが、どうやらそういった能力についても、
初めて聞いたので知らなったということだ。
ただ、一つ分かっていることがあった。
デスカールは
魔王軍において右に出る者がいない使い手だという話だ。
あのバリアーは
結論を出すには性急すぎるが、場合によってはデスカールとは接敵した場合、
一回は逃げた方がいいかもしれないな。
しかし、
バランスが取れていないと思う。
「ふむ。為になる話を聞かせてもらって助かったぞザムザ」
「いいえ。私も大魔王軍にいた時間は短いので、
あまり詳細に知りませんでしたから、そう言っていただけて嬉しいです父上」
「いやいや。些細な事でもよいので、誰か思い出した者がいたら、
教えてもらえぬかザムザよ」
「はい、心得ておきます」
私とザムザは魔法の筒に道具を詰め込みながら、魔界へ行く準備をしている。
マトリフ殿は渋っていたが、正式に"賢者の聖水"と命名された、
従来の聖水の倍の回復量を持つ聖水は、既に量産体制に入っているという。
それも勿論、魔法の筒に詰め込んでおいた。
私が留守の間は、竜水晶がこのヨミカイン魔導図書館に残って守ることになっていた。
ロカ殿もいるので大丈夫だろうとは思うのだが、
パプニカから護衛として魔法兵団副団長コルキ殿がやってくる。
マトリフ殿曰く、"最強になれる器じゃねぇが、負けない戦いをさせたら右に出る者がいねぇ"
と太鼓判を貰っているほどで、突出した系統はないが苦手な系統もなく、
満遍なく各系統使いこなせる上、回復呪文まで覚えてしまったらしい。
一時、三賢者に推挙されることもあったが、
"アポロと肩を並べて戦うのはおっかないので"と辞退している。
実際はそのアポロ相手に、魔法兵団では唯一、負けない戦いができるという話だった。
デルムリン島へ行った時にも同行してもらっており、
その後も何度か顔を合わせている。
人柄も信頼できるので、コルキ殿ならば留守を任せられるだろう。
こうして、私は魔界行の準備に追われていった……。
魔王軍幹部の情報を、ザムザから得てから数日後。
テラン城からメタッピーが飛んできた。
その内容を確認して、私はすぐにボリクスとザムザを連れてフォルケン王のもとへ急行する。
「急にお呼び立てして申し訳ありません、ザボエラ殿」
「いいえ……すぐに教えていただいて助かりましたぞフォルケン王」
「実は古代の魔族文字についての記述もありまして……。
解読が出来ているか気がかりでしたので、確認をお願いしたくお呼び立て致しました」
魔族の文字については原作に登場する鏡の通信呪文で使われたものであるが、
あれは実はほとんどアルファベットに対応しているので難しくはない。
私も読めるし、フォルケン王もちゃんと読むことができる。
ただ、古代魔族文字は文法が難解であり、私やフォルケン王は大雑把な意味は把握できるが、
それがきちんと細部まであっているかどうかは自信がないのだ。
ザムザが専門的に研究しており、彼に任せて解読のチェックをしてもらうと、
幾つかの修正で正しい内容が把握できた。
出されたお茶に砂糖をたっぷり入れながら飲んでいるボリクスが、
ザムザにどういう内容だったか尋ねた。
「なにが書いてあったんやザムザ?」
「悪魔の目玉の情報通信網についての話だよボリクス」
「あー、あのうろちょろしてこっち見てる奴らやな」
「それと、その通信網を統括している、インスペクターという巨大な悪魔の目玉が魔界で、
厳重な警備の下に守られているということが書かれているね」
「ふむ……極めて重要な情報じゃな」
私は長年、疑問だったのだが、別に悪魔の目玉は遠隔地の音声を中継したり、
映像を映し出す能力をドラゴンクエストシリーズで披露したことはない。
ダイの大冒険世界のオリジナルであり、ロトの紋章世界でもそういう描写が見られたりする。
数百年前のテラン王が死に瀕した魔族を介抱し、彼はそのまま亡くなったらしいが、
死ぬまでの数年の間、様々な魔界の知識を聞いていたという。
その魔族が持っていた本であり、世話になったと進呈されたものだという。
知的好奇心から当時のテラン王が最初だけ読み解くと、
古代の魔族文字で記された、何やら魔界の秘密についての本だと分かったらしい。
興味を持って魔界へ行く者が出ぬよう、厳重に箱に仕舞われて、
隠し書庫の最奥に隠すように置かれていたのだという。
フォルケン王が新発見に興奮しながら言った。
「つまり、魔王軍が使う悪魔の目玉の通信網を、
強大な悪魔の目玉であるインスペクターが統括し、
情報網を築き上げており、管理しておるという事ですかな?」
「左様。そのインスペクターを倒してしまえば、悪魔の目玉の通信網は使えなくなりますな」
「なんや、簡単な話ちゃうん?
うちら魔界に行くんやから、ついでに潰しに行けばええやん?」
「いや……そう簡単な話じゃないぞボリクス」
ザムザがボリクスの言葉を受けて言う。
ザムザ自身は、インスペクターという、
悪魔の目玉を統括している存在がいることは知らなかった。
だが、そのインスペクターがいるという"ささやく枯葉の森"というのは、
大魔王直下の強力な兵が守護しているという話は耳にしていたのだ。
勿論、戦力については知らないし、
そこにインスペクターがいることも知らなかったのではあるが……。
しかし、大魔王領には近づかないために、ザムザに分かる範囲で勢力図を書いてもらったのだが、
厄介な悪魔の目玉を封じることが可能なら、
危険を冒してでもインスペクターを倒しに行く価値はある。
ダイの大冒険において、魔王軍の厄介な点は、味方側は敵の詳細をほとんど知らないのに対して、
魔王軍は情報システムが優れており、リアルタイムで状況を把握して、それをタイムラグなしで、
全軍団に伝達することが可能であることだ。
ただでさえ個々の力でも負けている人類が、
情報通信手段が整っている魔王軍に勝てるわけもなかったのだ。
その不利を覆すことが可能なら、当初の予定を変更して、
大魔王領に入ってインスペクターを倒すべきだろう。
私とザムザはフォルケン王と文官たちと手分けして、その本を写本して翌朝までに仕上げた。
その情報を追加して地図を完成させ、私は魔界へ行くメンバーに連絡を取る。
三日後、ヨミカイン魔導図書館に私と共に魔界へ行く者たちが集まっていた。
ボリクス、グランナード、クロコダイン、アバン殿だ。
アバン殿は破邪の洞窟から帰還しており、同行を承諾してくれた。
マァムも行きたがったのだが、レイラ殿が破邪の洞窟において、
罠を力で破るマァムに呆れてしまい特訓を決意。
ヨミカイン遺跡にある幾つかの迷宮に、ロカ殿を連れて潜って訓練すると言い、
連れて行ってしまった。
実はマトリフ殿やロン・ベルク殿も同行する意思を示していたのだが、
マトリフ殿はアポロや魔法兵団から引き止められてしまい、しぶしぶ断念。
"大魔王の脅威が去ったら、オレも連れて行ってくれよ。
一回、この目で魔界ってのを見てみてぇんだ"
と言っていたので、いずれマトリフ殿と魔界へ行く場合は平和になった後の事だろう。
ロン・ベルク殿にはボリクスの剣を見てもらう事や、
いま、世界各国から騎士団の猛者や、戦士団の強者がやってきて、
武器を作ってもらう順番待ちをしているので、それを止めるわけにもいかない事情があった。
バラン殿も同行したいと言ったのだが、我々に何かあった場合、
彼とダイが地上を守護する要になるのだから、後事を託す意味も含めて残ってもらう。
ボリクス、クロコダインは共に魔界へ行ったこともあるので、
二度目だが頼れる二人には是非とも同行を頼みたかった。
「クロコと
まぁ、あん時といまのうちは、比較にならん強さや。
気軽な旅行気分でええんちゃう?」
「油断するなよボリクス。我々の知らぬどんな猛者がいるかわからんのだからな」
「心配性やなぁクロコは~~」
談笑している二人は、確かに出会った時とは隔絶した力を持っている。
だが、恐らくはこの世界の頂点であろう、真大魔王バーンに勝てるかといえば難しいだろう。
尤も真大魔王バーンが出てくる可能性は限りなく低い。
なにせ大魔王バーン自身が、それを隠し若さを保つために多大な努力をしているからだ。
だが、例えば闇の衣を剥ぎ取ったミストバーンのような、
現時点の大魔王バーンより強く、忠誠心厚い幹部が魔界に存在している可能性もある。
その際に二人は心強い味方となってくれるだろう。
グランナードは溶岩が多く、荒れて荒涼とした大地である魔界では、
その能力が生かしやすいだろうから同行を頼んだ。
岩石や大地を操作して、マグマを堰き止めることも可能なので、
魔界ではその能力を大いに生かしてくれるだろう。
「調子はどうかねグランナードよ」
「大地の精霊の兄貴には、魔界でも問題なく活動できるって太鼓判貰ってるぜ!
まぁ、溶岩自体は動かせねぇが、岩だの地面だのはオレが何とかしてみせるぜ旦那」
「うむうむ。魔界ではお前さんの力を頼りにしておるぞ」
最後にアバン殿だが、正直なところ彼の頭脳と機転を頼りにしているところがある。
インスペクターを倒すという目的も追加されたが、
魔界で行方の分からない破壊神を宿した存在を探索する場合、
少ない情報から真実を解き明かす知性を持った彼に頼りたい部分もあるのだ。
「魔界についてはザボエラさんの方が詳しい気がしますけどね」
「いやいや……流石にワシの持っている情報が古すぎます。
それに、現在の魔界については精通しておるわけではありません」
「そうですか……。
まだお見せしていなかったと思いますが、
破邪の洞窟でガイアの剣に対しての秘法を見つけましてね。
機会があればお見せしますよ」
「ほう、それは楽しみですな」
こうして我々の魔界行は開始された。
始まりは精霊ルビスからの依頼であり、
破壊神シドーの力を宿した存在を探索するための道行きであった。
その役目に悪魔の目玉を統括するインスペクターの排除という任務が追加される。
前者は雲をつかむような話ではあるが、後者は場所が明確であり、
それを達成できた場合の利益は計り知れないものがあるのだ。
何度も行ったが、いまだに魔界行は緊張するものだと感じる。
これまで何度か降り立った魔界であるが、滞在時間自体は短いものだった。
今回は長いものになりそうではあるが、一人も欠けることなく戻りたいものである。
独自設定
インスペクター
ダイ大世界では悪魔の目玉が声や映像で通信できるという事に、
自分なりに答えを出してみたものになります。
あくまのめだま属には、ダークアイとかいますが、
ビィトのダークネス・アイズっぽいネーミングで、
ちょっと強そうな雰囲気が出すぎるので、
インスペクターを悪魔の目玉の親玉になってもらいました。