ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~   作:リドリー@犬小屋

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次回は来週の木曜日23時頃を予定しております。



第七十七話 ヴェルザーの(いざな)

 

遭遇したヴェルザーが、私たちを急に勧誘してきた。

選ばせてやろうなどと偉そうに言ってはいるが、断れば殺すと言っているので、

二択でもなんでもない強制でしかない。

 

その唐突さに驚くが、単純にヴェルザー十二魔将が瓦解しているから、

戦力補充という所もあるのかもしれないが……。

短気だろうなとは思っていたが、短絡的な可能性も出てきたな。

少し探りを入れてみるとしよう。

 

 

「ヴェルザー殿。お初にお目にかかります。

ワシはヨミカイン魔導図書館館長、ザボエラと申すものです」

 

「ほぉ……貴様がそうか。キルから聞いていた外見と違うな。

もっと小さく、老いさらばえた老人だと聞いていたが。

何か若返りの法でもあるのか?」

 

「それは話が長くなります故、提案の前に伺いたいことがあるのです」

 

ザボ爺(ざぼじい)! そんな奴の話聞くな!」

 

 

ボリクスの言葉に、私はアバン殿をチラリと見る。

アバン殿はグランナードに頷くと、二人でボリクスを抑えて数歩下がった。

 

 

「オレの提案だと? 提案ではなく命令だ。

オレは基本的に他人に選択権なぞ与えぬが、珍しく選ばせてやっているのだぞ」

 

「それはありがたい話ですが、あなたの現状について伺いたいのです。

あなたはいまだに、大魔王バーンと勢力を二分する存在なのですかな?」

 

「なぜそっ……いや。どういう意味だそれは?」

 

 

私は魔界を何度か訪れた際、必ずヴェルザー軍も見かけていたが、

今回はまったく出会わなかった。

そして、地上に侵攻したキングヒドラとグラコス二世。

そこから推測できたことを、彼に告げてみる。

 

 

「天界の精霊に封印され、石化していたはずのあなたが自由に行動している。

その辺りを合わせて考えてみれば、答えは明白ではないでしょうか」

 

「言ってみろ。当たっていたら殺さずにいてやろう」

 

「あなたは大魔王バーンの軍門に下った。

恐らくはいま彼の傘下におり、自由と引き換えに不自由を手に入れてしまった……。

そこから抜け出すために、勢力を欲しているのが、

先の言葉の意味ではありませんかな?」

 

 

私の言葉を聞いていたヴェルザーは、不満げなうなり声をあげ、

また紫色の煙を噴き出しながら答えた。

 

 

「キルはオレが本気で追っても、殺すことが難しい男ゆえ、部下として迎えた。

だからこそ、あいつを殺した相手に興味があったが……。

見事だなザボエラ。大体、当たりだと言ってやる」

 

「ありがとうございます。

あなたが据えられるとしたら……最強を誇るドラゴンの軍団。

竜の群れを束ねるのは、やはり竜の王以外ありえぬでしょうからな」

 

「ほぅ……ますます興味がわいたぞ。よくぞそこまで見通せるものだ」

 

 

そして、彼は私たちに自分の目的を語った。

いずれ、大魔王バーンを追い落として、地上も魔界も手に入れて見せると。

地上が欲しいという考えは同じだが、自分が大魔王の権力と軍団を手に入れたら、

邪魔な天界を滅ぼして三界を統べてやろうと。

 

 

「その場合、地上を任せてもよいぞザボエラ。

貴様の知恵を、オレの為に使ってもらおう」

 

 

大変な話を聞いてしまった。

私が持っている原作知識が通じない展開ではある。

 

まず、原作でのヴェルザーの出番が、非常に少ない。

最終局面で大魔王バーンに対し、祝辞を述べに来た下りや、

キルバーンからのヴェルザー評くらいしか、彼についての情報はないのだ。

 

前者では、魔界を二分する一大勢力の主として、

同盟の勝者たる大魔王を祝いに来る、礼儀を尽くす支配者としての側面。

尤もバランの方がダイより上だったとか、大魔王バーンから助けてやろうなどと言われ、

気分を害して通話を切断してしまうような、気短な面が見られてはいたが。

 

後者のキルバーン評であるが、地上を欲しがっているヴェルザーについて、

 

"あの方は欲深いんだよ。ドラゴンらしくないんだ。人間みたいだよね……!"

 

とキルバーンはダイたちに対し、主ヴェルザーについて語っていた。

 

つまり、気短な面と強欲な面しか、原作において明らかになっていない。

ただまぁ、話してみると確かに、そういう傾向が見られるとは思ったが……。

 

三界を統べるとヴェルザーが言っているのは、実に欲が深い話ではある。

大魔王バーンの配下になった現状でも、逆転して下剋上を狙える手があるのかもしれない。

 

さて、彼を同盟者として信頼できるかと言えば、難しいところがあるだろう。

危惧するべきはヴェルザーを同盟者として、大魔王バーンと相対した時、

背後からヴェルザーに背中を刺される──彼の場合は爪だろうが──

可能性がある事は考慮するべきだろう。

 

ヴェルザー自身に、短気な気性が見られることは確かだ。

だとしても、ダイ大世界におけるトップクラスの策謀家である、キルバーンの主である。

油断できぬキルバーンの、真の主人だという確固たる事実は揺らがない。

信用とか信頼とかそういった言葉とは、遠い存在であるのは確かだろう。

 

さて、どう話を断るかだが、断った瞬間に戦闘が発生しそうなのが危うい。

何かうまい具合に一当てして、逃げを打った方がいいだろうな。

ただ、その隙とかチャンスを作るのが難しくはあるが……と考えていたところ、

アバン殿たちを説得したのか、ボリクスが私の側に来てこう話した。

 

 

「あいつは嘘つきやぞザボ爺(ざぼじい)

先生たちにも小声で話したけどな!

昔、大魔王と戦う言うて、うちら雷竜と組んだことがあったんやけど、

背後から騙し討ちしよったんや!」

 

「なんと、そのような事が……」

 

「騙される方が悪いわ! 弱肉強食の魔界で、相手を信用しようなどと愚者の考えよ!

さあ、ザボエラ、決断するがいい。オレの配下になるか、ここで死ぬか、だ!」

 

 

私の推測で構成されたヴェルザー評は、ある程度当たっていたのだな。

そうなると、私の考えは決まっているが……動くのはボリクスが早かった。

 

 

「食らえやヴェルザー! 紋章閃ッ!」

 

 

ヴェルザーが薄く纏っていた黒いオーラを貫通し、ダメージを与えたのか彼が一歩退く。

それをきっかけに全員が動き出した。

 

ヴェルザーが闇色のブレスを吐きかけてきたので、私が防御光膜文(フバーハ)でみなを守ったが、

その防御光膜文(フバーハ)を切り裂いて、大木のような爪が振り下ろされた。

それは、クロコダインが鳳凰の戦斧で、切り払ってくれる。

返す刀で、アバン流斧殺法 海嶺撃を放ち、二撃目のブレスを切り裂く。

 

ケインが爪を伸ばして私を後方へ送ってくれたので、そのまま極大閃熱呪文(ベギラゴン)を叩きこむ。

だが、ヴェルザーのまとう闇色のオーラに遮られて、ダメージを与えられていない。

 

クロコダインが猛虎破砕拳を叩きこみ、ヴェルザーがのけ反っているが、

アバン殿が放った爆烈呪文(イオラ)は黒いオーラに無効化されてしまった。

もしやと思ったところ、ボリクスが叫ぶ。

 

 

竜闘気(ドラゴニック・オーラ)や!

竜の(ドラゴン)騎士の竜闘気(ドラゴニック・オーラ)自体は、元は知恵ある竜のもんや!」

 

 

知恵ある竜と戦うのは初めてなので、ボリクスに出会った頃に聞いた話を忘れていた。

恐らくは世界に現存する、唯一の知恵ある竜であろう。

竜の(ドラゴン)騎士以外で竜闘気(ドラゴニック・オーラ)を使うただ一つの存在なのだ。

 

私は地爆呪文(ジバリーナ)をヴェルザーの周りにばらまき、

突き出す巨大な岩の槍で彼の動きを阻害した。

グランナードが私の作り上げた岩の槍に、器用に平らな足場を幾つか設置している。

 

それを駆け上り、灼熱した炎を宿すガイアの剣を携えたアバン殿と、

クロコダインがヴェルザーに一撃を入れる。

まず、炎をまとったガイアの剣によるアバンストラッシュが、

ヴェルザーの竜闘気(ドラゴニック・オーラ)を貫き、鱗を切断して鮮血を噴き上げた。

竜闘気(ドラゴニック・オーラ)は堅牢ではあるが、

それを上回る力や闘気によって貫かれてしまうのだ。

 

 

「ば、バカな! 人間の力でオレの竜闘気(ドラゴニック・オーラ)を貫くだと!」

 

「驚くのはまだ早いぞ、ヴェルザー!」

 

 

岩槍を器用に駆け上り、跳躍したクロコダインの鳳凰流星脚が見事に決まり、

凄まじい音を立てて倒れるヴェルザー。

ボリクスが予備の剣で闘気の剣(オーラブレード)を作り、追い打ちのアバンストラッシュを叩きこみ、

頭の角が数本切断されたが、使っていた剣の刀身は消滅してしまった。

そして、ヴェルザーが凄まじい咆哮を上げる。

 

 

「おのれ貴様ら! このオレにここまでの事をして、生きて帰れると思うなよ!

闇よ集いて力となれ……」

 

「あいつ、闇魔法呪文(ドルクマ)使(つこ)うてくるつもりや!」

 

 

ヴェルザーの周囲に、真っ黒な闇色の球体が50ほど出現し、

それらが紫色の軌跡を描きながらこちらに向かってくる。

私はとっさに呪文返し(マホカンタ)を展開したが、

ヴェルザー自身に打ち返せても竜闘気(ドラゴニック・オーラ)で弾かれてしまう。

 

その間に、ヴェルザーが持つ四本の腕の内、上の二本の掌に凄まじい魔法力が集中していた。

ヴェルザーの掌底に集まった暗黒の魔法力が、紫色の軌跡を描き、前面で合わせられた瞬間。

 

 

「見よ! これこそが冥竜に伝わる闇魔法の奥義、極大闇魔法呪文(ドルモーア)だ!!」

 

「うちの後ろにくるんやーッ!」

 

 

ボリクスが竜闘気(ドラゴニック・オーラ)を全開にして我々を守ってくれるが、

私の極大閃熱呪文(ベギラゴン)三本分くらいある、闇の極大呪文の威力はすさまじく、

私はここで意識を失ってしまった。

最後、我々を庇うクロコダインの姿だけが記憶に残っている。

 

 

 

私が目を覚ましたのは、ケインが呼ぶ声が聞こえたからで、

遠くでガイアドラゴンを召喚したアバン殿とクロコダインが、二人でヴェルザーと戦っていた。

二人を守るために岩の壁や、槍を出現させすぎたのか、

肉体から岩が減って細くなったグランナードが、懸命にサポートしている。

 

私も重い体を起こし、意識のないボリクスを回復呪文(ベホマ)で癒した後、

グランナードにこう告げた。

 

 

「タイミングを見計らって、このキメラの翼でボリクスを連れ地上へ戻るのじゃ」

 

「待ってくれよ旦那! そんなのボリクス姐さんも望んじゃいねぇよ!」

 

「そうじゃろうな……。だが、それを託せるのは、お前さんだけじゃグランナード」

 

「いや、オレに考えがあるんだ!」

 

 

グランナードが一つのプランを提示してきた。

私は命を懸けて時間を稼ごうとしていたが、

もしかすると全員助かる目が出てきたかもしれない。

 

 

「うちもそれに乗るで二人とも!」

 

「ボリクスの姐さん! 無理しちゃだめだぜ!」

 

「ボリクス、それは……」

 

 

ボリクスが手に持っているドラゴンメイルの、竜の瞳のような魔法玉が光を放っている。

 

 

「うちが寝てる間に、こいつが色々話してくれたんや。

ただ、魔法力が足りん言うてな!

うちも込めたったんやけど、まだ足りんのや。ザボ爺(ざぼじい)も力貸してな!」

 

「うむ、やってみよう……」

 

 

魔法力を込めてみると、極大呪文二回分くらいの魔力をごっそりと奪われたが、

竜の瞳が瞬き、動きが活性化してきた。

 

ボリクスの手にまとわりつき、身体を少しずつ覆っていくドラゴンメイル。

 

 

ザボ爺(ざぼじい)、時間稼いでや! こいつを纏って助けに行くで!」

 

「分かった。ワシが時間を稼いでみよう。後は任せるぞグランナードよ」

 

 

そう言って、私は魔法陣を両肩の辺りに展開して、

爆烈呪文(イオラ)を叩きこみつつ、アバン殿たちの戦いに参戦した。

呪文の威力自体は竜闘気(ドラゴニック・オーラ)で弾かれてしまうが、

土煙をあげることで、ヴェルザーの視界をさえぎるためだ。

 

本命は地爆呪文(ジバリア)系呪文での攻撃だ。

呪文に耐性がある竜闘気(ドラゴニック・オーラ)も、あれでなら貫ける。

私は爆烈呪文(イオラ)系呪文を使い分け、各所に爆発を起こし土煙で目眩ましする。

少しでも時間を稼がねばならない。

隙を見て極大消滅呪文(メドローア)を叩き込めれば……!

 

 

だが、5分ほどの戦いの後、ガイアドラゴンは崩れ落ち、アバン殿も意識はなく、

腹をヴェルザーの爪で抉られたクロコダインは片膝をついていた。

私は片足を持っていかれており、ケインがサポートしてくれなければ歩けない状態だ。

 

なるほど。ガンガディアの対マトリフ殿戦略は正しかったのだな。

つまり、力とスピードで猛攻してくる相手を、極大消滅呪文(メドローア)は捉えられないということだ。

チャンスを狙ったが、クロコダインやアバン殿を巻き込んでしまうので、

極大消滅呪文(メドローア)を使うタイミングを掴めぬままに、

こちらが消耗しきってしまった。

 

尤もヴェルザーは右腕一本を、武神流 玄武裏金剛でクロコダインに吹き飛ばされ、

左腕を手首辺りからガイアドラゴンに噛み千切られた。

 

事ここに至って気づいたのだが、ヴェルザーの動きが妙に鈍い。

大したことがない攻撃に機敏に対応する場合と、

強力な攻撃に対応せず、ダメージを受けたり落差がある。

どういうことか分からないが、その行動のズレのおかげで、

我々は彼の隙をついて戦い、いままで死なずにいるのだ。

 

でなかったら、ここまで食い下がれなかっただろう。

しかし……。

 

 

「このオレにここまでの事をした以上、じわじわとなぶり殺してやりたいところだが……。

オレ自身の消耗も激しい故、我が闇のブレスでひと思いに焼き滅ぼしてくれるわ!!」

 

 

大きく息を吸い込んだヴェルザーが、ブレスを吐こうとした刹那──。

流星のような光が、ヴェルザーの顎に吸い込まれ、まるでアッパーを食らったように、

上方向にのけぞったヴェルザーは、その体勢のまま見当違いの方向にブレスを噴き出した。

 

光る何かは、私のところに降りてきた。

それはボリクスであり、ボロボロだったはずのドラゴンメイルを身に纏っている。

間に合ってくれたかという安堵感もあるが、どこか既視感がある姿だった。

身体にピッタリとした生物的な感じの鎧で、背中に翼が映えており、

後ろには尻尾も見えるのだが、私が思い浮かべたのは竜魔人のバラン殿の事である。

 

 

ザボ爺(ざぼじい)、ごめん! 遅れたわ!!

なっ! 嘘やろ……ザボ爺(ざぼじい)、足が!!」

 

「なに、大したことはない。気にすることはないぞ。

それで、使えそうなのかのう、その鎧は?」

 

「あんま長くは持たんわ。グランナードからの合図待ってな。

ザボ爺(ざぼじい)の足の分、ヴェルザーをブン殴ったるわ!」

 

 

そう言って、竜闘気(ドラゴニック・オーラ)を全開にしたボリクスは、ヴェルザーに向かっていった。

私の側まで来ていたグランナードが、アバン殿を抱え、クロコダインを背負っている。

私はクロコダインとアバン殿を回復呪文(ベホマ)で治療した。

 

ボリクスは手甲の尖った部分を伸ばし、竜闘気の剣(ドラゴニックオーラブレード)を作った。

破れた羽だが、ヴェルザーを速度で翻弄し、

ヴェルザーがまとう闇色の竜闘気(ドラゴニック・オーラ)を切り裂き、ダメージを与えている。

 

ドラゴンメイルの効果なのか、ボリクスの竜闘気(ドラゴニック・オーラ)が強化され、

ヴェルザーが撃ってくる呪文はもちろん、

暗黒闘気の爪撃やブレスなどもまったく通用していなかった。

 

速度で引っかきまわしたことで、息切れした感があるヴェルザーが退いた隙をつき、

城の尖塔ほどもある、巨大な竜闘気の剣(ドラゴニックオーラブレード)を創りあげたボリクス。

 

 

「これでも食らえやヴェルザー! アバンストラッシュ!!」

 

「調子に乗るなボリクス!!」

 

 

ヴェルザーの残った爪から放たれた、巨大な暗黒闘気の斬撃が迎え撃つが、

数秒でアバンストラッシュの闘気の刃が勝り、ヴェルザーの翼が片方真っ二つにされた。

 

 

「ぐおおおおおお~! よくもやってくれたなボリクス!」

 

「クソッ! 時間切れや!」

 

 

ボリクスが身にまとっていたドラゴンメイルが、輝きを失ってしまう。

 

 

「旦那ぁあああ! いまだぜ!」

 

 

グランナードの合図と共に、大地に亀裂が走り、

彼が準備して導いた溶岩の川が幾つもできた。

 

凄まじい熱気にヴェルザーが驚いて、距離を取り後退する。

私はその隙を見逃さず、残った魔法力をつぎ込んで、

手近なマグマの川たちに水流呪文(ザバラーン)を幾つも叩きこんだ。

 

凄まじい水蒸気が巻き起こり、ヴェルザーが怒りの声をあげるが、既に手遅れだ。

更に天候操作呪文(ラナリオン)で雨雲を作り出したので、当分、この辺りの水蒸気は晴れないだろう。

私はそれを隠れ蓑にして、グランナードが救出してくれた三人

──アバン殿、クロコダイン、ボリクス──を連れ、

キメラの翼で脱出することに成功した。

 

 

 

 

我々はヨミカイン魔導図書館へ戻り、すぐに迎えに出てくれたコルキ殿やロカ殿に助けられ、

内部へ運ばれて竜水晶の手当てを受けた。

 

アバン殿もクロコダインも治療を受けて傷は癒えたが、疲労がすさまじく寝ている。

私の失った足自体は、ザムザが用意していた再生液に浸かることで、

丸一日がかりだったが再び新しい足が生えてきた。

 

原作でハドラーが、ダイに切り落とされた腕をあっという間に再生していたが、

彼は再生力に長けた魔族だったので、あまり参考にはならない。

私の場合は、自力で再生すると一週間はかかりそうだったので、

ザムザとグレゴリーアに危険なことをしたと怒られた後、再生液へ放り込まれてしまった。

 

いまは若干の違和感があるが、すぐになれるらしく、

寝台で横になって本を読んでいる。

その私の横で、力を失ったドラゴンメイルを眺めているボリクス。

 

 

「なぁ、ザボ爺(ざぼじい)

ドラゴンメイル(こいつ)つけたときに少し記憶が頭に入って来たんや」

 

「ほう、どんな記憶かのう?」

 

 

前の着用者は初期に作られた竜の(ドラゴン)騎士の一人で、

身にまとった防具の数々が、竜闘気(ドラゴニック・オーラ)を全開にする事で、

吹っ飛んでしまう事が記憶されていた。

それを補うために作られたのがこのドラゴンメイルだが、竜の属性が強くなりすぎて、

前着用者は最終的に命を落としてしまった。

 

ボリクス自身は身に着けて特に影響はなかったが、

戦闘状態に入ったドラゴンの獰猛な感情が沸き上がる感触はあったらしい。

 

 

「人間メインだと、制御利かなくなるのもわかるでこれ。

ドラゴンやったうちにとっては懐かしい感情やし、それ抑えるのも慣れたもんや」

 

「ふむ……ボリクスが問題ないならよいがのう」

 

「もう、使えへんのやろか?」

 

「ワシは武具には詳しくはないが……。

この魔法玉が、まだ生きているように見えてのう」

 

 

赤い魔法玉は光を失っているが、ヒビが入っていたり破損しているわけではない。

例えるのならば、眠りについている状態というのが正しいのかもしれない。

 

つまり、竜の瞳のようなそれは、健在である可能性があるのだ。

かの鎧の魔剣が力を失った時は、刀身を失ってしまったからで、

素人考えだが、これはまだ何とかなるのではないかと思っている。

 

疲労を回復させて、後日、ロン・ベルクに見せれば、

その辺りの判断をお願いできるだろう。

 

 

「しかし、お前さんワシがヴェルザーと交渉し始めた時、最初焦っておったな」

 

「話が通じると思わへんかったからなー」

 

 

私の言葉にボリクスがそう答える。

 

 

「まさか、ヴェルザー相手に、推理し出すとは思えへんかったで!」

 

「ヴェルザーの情報が欲しかったからのう。

興味を抱かれるとまでは思わなかったがな」

 

「うちがヴェルザーと(たたこ)うとった頃やったら、絶対、ザボ爺(ざぼじい)を味方につけたい思たで」

 

 

そういうボリクスの言葉で、最初に会った時、部下にならないかと言われたことを思い出した。

尋ねてみるとボリクスは私に笑いながらこう答える。

 

 

「いま、すげーおもろいんや。

このまま地上で暮らすのもええなーって、いま思うてるで!」

 

 

そう答えた後、グレゴリーアが持ってきてくれた果実水を、

ガブガブ飲んでいるボリクスだった。

 

 

 

四度目になる魔界行は準備を整えて、目標を達成できたという事になる。

悪魔の目玉の情報網を、魔王軍は使う事ができなくなったわけだ。

更に破壊神シドーの力を宿した存在も、見つけることが出来た。

 

しかし、手放しには喜べない。

破壊神シドーの力を宿したのが、冥竜王ヴェルザーであるということ。

そして、彼が超竜軍団を率いて、大魔王バーンの傘下に入ってしまったという事だ。

 

百獣魔団長ザングレイ、妖魔士団長メネロ、不死騎団長デスカール。

そこに加わるのが、超竜軍団長ヴェルザー。

おそらく今後生まれてくる、フレイザードの氷炎魔団。

更にミストバーンの魔影軍団もあるわけだ。

前途多難である。

 

対策を考えたいが、疲労から回復したばかりの頭では、どうも考えが浮かばない。

いまも再生したばかりの足を動かそうとして、

よろけてケインに支えられてしまった。

思ったより焦っているし、考えもまとまっていない自分に苦笑して、

ケインに礼を言いながら、ベッドへ戻った。

 

 




独自設定
ザボエラが感じた違和感
ヴェルザーがまだ完全に破壊神シドーを抑え込んでないので、
行動に齟齬が出ている感じです。
それがなかったら全滅していました。

ドラゴンメイル
こんな感じです。

【挿絵表示】

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