ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~ 作:リドリー@犬小屋
来週はまた暑くなりそうなので皆さんもお気を付けください。
それから
既に我が家の風情があるヨミカイン魔導図書館に到着。
荷物を置きケインが湯を沸かして、飲み物の用意をしている。
みなが一息ついて、ケインが淹れたお茶を飲んでいた時。
少年だと思っていた少女が、ふんぞり返って腰に手を当てながら名乗った名前に、
私は驚愕して思わず絶叫してしまった。
「ボ、ボリクスじゃとぉぉぉぉ~!!!」
「なんやねん爺さん! 耳無いなるわ、ほんまに~!」
ボリクスは耳を押さえ、半眼でこちらを睨みながら文句を言ってくる。
ぼさぼさの短い金髪と、細身で凹凸のない体。
体操選手のような身軽さと快活さの印象が強く、
少女というよりは少年という雰囲気がある。
流石に喋ると甲高い声なので、少女だと分かるのだが……。
「落ち着いてください
驚きのあまり絶叫してしまった私に、
ケインが落ち着き払った声でそう語り掛けてきた。
しかし、ボリクスか。まったく想定していない事態だ。
雷竜ボリクスといえば、竜族の実力者である。
かつて冥竜であった頃のヴェルザーと、互角の勝負を行ったという。
知恵ある竜の一体であり、作中に登場する竜族でも最強クラスの存在だ。
その名が出てきたのは、
超魔生物ハドラーとダイがバーンパレスで戦った局面だ。
最強に近い二人の戦いにおいて、闘気や魔法力がぶつかり合い、
余剰エネルギーが周囲に渦を巻く空間が生まれた。
戦いのフィールドが誰も介入できない超高熱地獄と化した時、
大魔王バーンが古の真竜の戦いの再現だと言ったのだ。
その真竜の戦いを最初に行ったのが、竜族の覇権を争った、
雷竜ボリクスと冥竜ヴェルザーの二者である。
彼らは熾烈な戦いを繰り広げ、勝利したのがヴェルザーであり、
最後の知恵ある竜として、冥竜王を名乗り竜族をまとめ上げたという事だ。
真竜の戦いについて知る限りをみなに話して聞かせた。
クロコダインはビールをガブガブと飲みながら感心して頷き、
ケインは管のようなものを伸ばして茶を飲んでいる。
「伝承は腹が膨れぬと仰り、あまりご興味がなかったはずですが、
このヨミカイン魔導図書館で勉強なさったのですね。
このケインめは
「素直に褒められぬのか……お前は」
私が語った"真竜の戦い"の説明を聞いた後、
ボリクスを名乗る少女は不満げにこう言った。
「真竜の戦いなぁ……そないに伝わってんのかアレ。
必死こいて戦ったんやけどなぁ。いま一歩及ばへんかったわ!」
「一つ聞きたかったのじゃが……。
ならば、
「せやで。もしかして、その辺りの話伝わってへんのか?」
「うむ。残念ながらワシの知る範囲には記されておらなんだわ」
「話を遮ってすまんが、
申し訳なさそうにクロコダインが口を挟んでくる。
先に
人間の神、竜族の神、魔族の神の三者が作った存在で、
世を乱す者を倒すのが役目だと、大まかに
まず噴き出す闘気が身体を鋼鉄のように強化する。
更に
しかし、改めて列挙すると出鱈目な能力だな、
知恵ある竜族、たとえばかつてのボリクスやヴェルザーが、
そのようにクロコダインに対して
驚愕の表情を貼り付けたまま、口が空きっぱなしになっている。
「では、つまり、ボリクスはその
「いまはな。ま、元は竜やったんけどなー」
その辺りはどういう経緯で、このようになったのだろうか。
一応、尋ねてみるか。
「そういやどないしてこうなったか、話してへんかったか……」
「もっとも、お前さんに不利益が多いなら話さぬでもよいぞ。
無理強いするつもりはないからのう」
「うーん……。別に大した話やないし、助けてもろたからな。
ええよ。話したるわ!」
300年ほど前、雌雄を決するべくヴェルザーと戦った。
元々、ボリクスはヴェルザーに勝てると踏んでいたのだ。
ただ、もしもの事が起きた時の為、
自分を蘇生させるために宿る卵を用意していたらしい。
竜族だけが使える呪法的なものがあるということだ。
後日、詳しく聞いてみたい。
残念な事にヴェルザーに倒され、魂だけで帰還している間に、
居城は破壊され卵は壊されていたらしい。
このままでは呪法の効果も解け、天に召されてしまう。
負けっぱなしは癪に障るとボリクスがとった最後の手段が──
父母の代から伝わる、
「この体は、最初に作られた
宿った瞬間に兎に角ヴェルザーの勢力地から早よ離れなあかん!
「では、もしかしてボリクス様は近年まで、
氷に封印された形になってらっしゃったということでございますか?」
「せやな。ようやく氷河から出られた思たら、体が弱々状態でドラゴン・ウーに襲われたんや。
その後は、自分らよく知っとるやろ?」
そういうことだったのか……。
その後も、
ボリクスの父母が、竜の神に仕える神官だったそうだ。
初期は竜の騎士が敗北する事もあったそうで、試行錯誤で肉体が幾つも作られたらしい。
三神の力の精髄で作られたものなので、廃棄するのも惜しいと、
長らく安置されていた素体だという。
その
「ドラゴン・ウーなんやあのチビガキ。昔のうちなら一撃やクソが!
図に乗り腐ってからに! イチびった若造の三下が!!」
「もしかしてじゃが……ドラゴン・ウーとは、
ヴェルザー軍でそれほど高い地位ではないのかの?」
「あんな小物の地位なんか知るかい!
将軍じゃないやろ。若造やし……ってうちはそんなのにやられたんか~~!」
怒りが再燃したのか、地団駄を踏んでいるボリクス。
その言葉を聞いて、私とクロコダインは若干青ざめた顔を見合わせる。
「クロコダインよ」
「ああ……あの時、早々に撤退を決断してよかったな」
「うむ……危うかったのう……」
頭を掻きむしって文句を言ってたボリクスがこちらを向く。
すると、ニヤリと笑って話しかけてきた。
「ところで、爺さんたち。相談があるんや。
正直なトコ、うちはいまはまだ弱い!
せやけど、将来性はごっつある思うんや。どや、うちの部下にならへんか?」
「オレは誰かに仕えようというつもりはない。
が、魔界という高みを知った……つもりになっていたな。
いまの話を聞いて、俄然やる気が出たぞ。己を高める修行に日々を費やしたいと思っている」
クロコダインは毅然とそう答えた。
さて、私はどうする?
現在、ボリクスは圧倒的な力を持っているわけではない。
本人もそこは認めているが、竜の騎士というアドバンテージは大きいのだ。
知恵ある竜だった経験による知識も重要だ。
それに、なにより命を助けたという縁もある。
できれば仲間になって貰いたい。
「ボリクスよ。
部下にはなれんが、仲間になるというのはどうかのう?」
「なんや、仲間って?」
「上下関係ではないが、横の繋がりというかのう。
お前さんは最終的にはどうしたいのじゃ?」
「ヴェルザーのアホをぶっ殺すに決まってるやろ!!」
ぶっ殺す……? どういうことだろうか。
そうか。そういうことか。
彼女は最近目覚めたから、ヴェルザーとバランの戦いを知らないわけだな。
「……そういえば、お前さん。ヴェルザーが封印されておることは知らんのかの?」
「え、なんやて爺さん! ヴェルザーのアホに何があったん?」
私は三年ほど前に当代の
バランに付き従っていた天界の精霊がヴェルザーを封印したので、
彼は現在石化して身動きがとれないだろう……という話をした。
神妙な顔をして聞いていたボリクスが、床を転げ回って大笑いしていた。
「ア~ハッハッハッハッハ!! ざまぁみさらせぇ、ヴェルザーのアホンダラ!!
その
「いまは行方が知れんのう……」
バランは時期的に考えると、既に大魔王バーンに説得されてしまっている頃だ。
バランに対しては、現状、デルムリン島のダイと接触するのがベストだろう。
ただ、バランへの唯一の繋がりではあるが、彼自身の逆鱗ともいえるので取り扱いが難しい。
バランに対しては、私の持つ最大の力である呪文が通じないので、
戦闘力で圧倒される状況になったら抗えないのが厳しいな。
藪をつついて蛇を出すというが、出てくるのが
万全の態勢を整えてから、機会があれば交渉に臨むのが良いだろう。
……おっと、一つ大事な事を思い出した。
「ボリクスよ。あのドラゴン・ウーを我々が倒してしまったが、
ヴェルザーの軍勢が地上へ追ってくる事はありえるのかのう?」
「……あいつは警邏部隊やろな。
ヴェルザーの領土をうろついとったから、うちは襲われたわけやし……」
腕を組んで考えているボリクス。
指を鳴らして閃いたように話し出す。
「そーいや、ヴェルザー一族は誰か生きとんのか?
クソ陰険なバルトラやら、頭筋肉のロメウスとか?」
「名前を言われても分からぬが……。
「なら大丈夫ちゃうか? ドラゴン・ウーは別に重鎮ちゃうで。
わざわざ、ウーの敵討ちに地上くるほど暇やあらへんよ」
まあ、魔界とヴェルザー一族に私達より精通している彼女の話だ。
信頼性はあるのだろうが、
恐らく魔界から地上へ繋がっている可能性がある二か所。
カールの破邪の洞窟は大丈夫だろうが、
デルムリン島には一度出向いた方がいいだろうな。
「しっかし、永い事氷の中におったせいか、力が出ぇへんな!
「オレが稽古をつけてやろう。
「へっへ~! 恩人かて手加減せぇへんでおっさん!」
二人して外へ行こうとしているのを止めて、話を続ける。
「そこで一つ提案なのじゃがなボリクスよ」
「なんや、爺さん? なんやあるんか?」
「テランの
ワシも知ってはいるが断片的な伝承じゃ。
長く
「……」
「どうしたボリクス?」
そうクロコダインが問うと、
ボリクスは「そんなモンがあるとは知らへんかった」と言ったので、
私とクロコダインは盛大にこける事となった。
私が知る
それ以外の伝承や力、技術についての知識があるかもしれない。
バランその人に訪ねるわけがいかないのなら、
私が知る範囲で
その後、クロコダインと外で稽古をつけていたボリクスだが、
夜になって熱を出してしまった。
咳き込んだり吐き気があるわけではないので、
体内毒を調合して解熱剤を作る。
ザボエラは毒としてしか使っていなかったが、
元来、薬草は毒草であり、毒草は薬草でもあるのだ。
使い方や用法・容量によって、毒にも薬にもなる。
毒草庫にあったノートをめくり、解熱剤を調合した。
使い方が分かってくると、便利だなこの能力は。
ボリクスの傷自体は
だが、ドラゴン・ウーに追い回されて碌に食事をとっておらず無理を続けたのだ。
にも拘わらずはしゃいでしまって、クロコダインと稽古した事で体が悲鳴をあげたようだ。
本人はすぐ竜水晶に会うというのだが、
疲労感が強く、無理をさせるのは止めた方がいいという判断になった。
ボリクスは不満を言っているが、二三日休んでからテランへ行く予定を組んだ。
そして、出来た空き時間に例の日記を読み解くことにした。
──魔界の研究所に隠されていたザボエラの日記──である。
独自設定
原作でヴェルザーは"不死身の魂を持つオレは時を経て蘇る事ができたのだ"と言っていました。
死んだ場所で蘇生するのか、それともどこか遠くへ逃げて蘇生するのか分かりませんが。
バランか天界の精霊がその事を知っていたのでしょう。
バランがヴェルザーを倒したらすぐに、
同行していた天界の精霊によって封印されて、あの置物状態になってしまっています。
翻ってボリクスは普通に死にますが、事前に蘇生先を用意していた為、
本来であればそのまま蘇生する予定でした。赤ちゃん竜として。
ところがどっこい、蘇生先の卵が壊されていたので、
緊急避難的に竜の騎士の素体に逃げ込んでこうなりました。
勇者アバンと獄炎の魔王が終わったら、
参考までにボリクスの外見はこんな感じです。
【挿絵表示】
【挿絵表示】
ヴェルザー一族
バルトラ……ヴェルザー一族随一の知将。陰険な策謀家。
ロメウス……ヴェルザー一族随一の猛将。
名前と性格を決めてしましたが、ヴェルザー一族は壊滅の一文で没になりました。