ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~   作:リドリー@犬小屋

91 / 117

次回は来週の木曜日23時頃を予定しております。



第七十七話 魔界行の後始末

 

我々が魔界から戻って二週間あまり。

クロコダインはロモスへ行き、ブロキーナ老師と修行に励んでいる。

アバン殿は調べることがあると、一週間ほど前に旅立った。

私も負傷や疲労が回復し、ようやく各方面への事情説明ができそうだ。

 

今回の事で悪魔の目玉の親玉であるインスペクターを葬り去った。

それによって、魔王軍の情報通信網を断つことに成功したわけだ。

 

原作を考えるとあやしいかげ、ホロゴーストなどでやり取りはできるだろうし、

メネロがどの程度の浮遊樹を使って補う事ができるかは分からない。

だが、情報戦で圧倒的な不利にあった原作よりは、マシな状況になったと思ってもいいだろう。

 

相手だけリアルタイムで遠隔地と、映像や音声でやりとりができて、

なおかつこちらより兵の質も高いでは話にはならない。

 

もちろん、油断はできないが、悪魔の目玉を大量に配置して、

相互連絡を行って人類を追い詰めるという事は、不可能になったはずだ。

 

留守の間、ヨミカイン魔導図書館を守ってくれた、

魔法兵団副団長のコルキ殿たちに礼を言うため、パプニカにも顔を出してきた。

コルキ殿から"ザボエラ殿は重傷ですから面会謝絶です"と言われていたマトリフ殿が、

私の姿を見ると詰め寄って来て、彼が満足するまで魔界での出来事を説明した。

 

 

その後、ヨミカイン魔導図書館に戻り、

ザムザから聞いた魔王軍の陣営との差異について話し合った。

 

直接戦ったメネロについてザムザに話すと、疑問ありげな表情を浮かべている。

私の話が全部終わった後、ザムザは幾つか質問した後、結論を話した。

 

 

「父上のお話のメネロは……強すぎます。

私がいた頃のメネロより、遥かに強くなっております」

 

「ほう。あの亜人面樹キギロのような身体能力や強さは、

お前の超魔手術の結果ではないと?」

 

「あくまで私が施したのは、通常の植物系モンスターの能力の付与です。

父上の火炎呪文(メラゾーマ)でも無事なほどの力は、見当がつきません……」

 

 

ザムザは推論だがと言葉を重ねる。

悪魔神官などの技術陣が、超魔手術については習熟していたが、

デスカールが思いのほか研究に興味を示し、ついで技術の習得も早かったという。

 

あのまま研究を続けていたら、デスカールはザムザを超える技術を得ているかもしれない……と。

 

 

「話している間に思い出しましたが、デスカールが気になることを言っていました」

 

「ほう。何を言っておったのかのう?」

 

「デスカールの研究についての覚えの早さを褒めた所、

"私もかつて魔法使いとして、魔導や技術に時間を費やしたことがあった……"

とポツリとつぶやいたことを思い出しました」

 

「なんと。魔法使いだったと言ったのか?

ふむ……僧侶なのだと思っておったが、その前の話なのかのう……」

 

 

劇場版において、デスカールの情報として看過できないのは、

"邪教に身を染めた僧侶が魔物化した者"という一文である。

つまり、彼が元人間という事だ。

アンデッドであるので数百年前の人間の可能性もあるが、

数十年程度前の人間かもしれない。

 

何が問題かというと、人類社会に対しての知識をデスカールが持っていて、

それを活用してくるかもしれないという事だ。

 

魔物化した人間というのは、原作のダイの大冒険には登場しない。

ゲームのドラゴンクエストシリーズであれば、何人か登場するが……。

一応、ヒュンケルが魔物の陣営に下った人間という存在ではあるが、

別に彼は魔物化してはいない。

暗黒闘気という敵陣営が使う技術を習得はしているのだが。

 

ヒュンケルは物心つくまで地獄の騎士バルトスに育てられ、

その後、アバン殿に師事しているので、恐らく一般的な人間社会について詳しく知らないはず。

もっと言うと、人間社会の政治であるとか、戦略に精通はしていないということだ。

原作でもヒュンケルが大魔王バーンや魔軍司令ハドラーに対して、

人間社会についてのアドバイスをしたという下りは確認できなかった。

 

私が気にしているのは、デスカールが元人間の知識階級として、

人間社会を熟知した、人類に対して効果的な戦略を打ってくるという可能性である。

 

一体、どこでアンデッド化の禁呪法で、人間からアンデッドになったのだろうか?

しかし、魔法使いとして修行していたというと、ギュータが頭に浮かぶが、

マトリフ殿にいずれ尋ねてみてもいいかもしれない。

 

 

数日後、テランにあるギュータにロン・ベルク殿を訪ねた。

 

実はドラゴンメイルを持ち帰った後、まず第一に竜水晶に尋ねてみたのだ。

知識としては知っていたらしいが、流石に本職の鍛冶師ではない。

彼女に修復は難しいという話を聞いた。

 

そのため、一週間ほど前にドラゴンメイルをギュータに持って行き、修復をお願いしたのだ。

顔を見せたロン・ベルク殿は、疲労の跡が濃い顔をしていた。

どうやらドラゴンメイルを徹夜で修復したり、解析を試みたりしていたらしい。

 

ギュータの他の鍛冶職人たちは、床に寝ている者もいる。

外の井戸で出会ったポップの父親のジャンクなどは、水を頭から被りこちらを見てこう言った。

"大変なシロモノを持ってきてくれたな。面白ぇが、流石に疲れたぜ"

と称賛なのか苦情なのか分からない言葉を投げかけてきている。

 

ロン・ベルク殿は酒瓶を開けて、コップに注がずにそのまま口をつけて、

半分ほど飲み干して私に説明を始める。

 

 

「生物素材の武具というのは、二種類ある。

第一に素材になっている魔物を狩り、補充ができる武具。

第二に核となっている魔法玉が破損の修復なども行う、貴重な素材で出来ている武具。

こいつは後者だ。しかも、メインには竜の神……だろうな。見たことがない鱗だ!」

 

「は、はぁ……」

 

「もっと驚けザボエラ!

神だぞ! 竜の神の鱗が使われているんだぞ!!」

 

「それは……凄まじい代物ですな」

 

 

いきなり熱のこもった長広舌と、ギラギラした雰囲気で熱の籠もったロン・ベルク殿の言葉に、

内心、気圧されつつ私は感想を述べた。

 

ここからは本当に長い話になったので、鍛冶場の床で寝ている職人たちを、

ギュータの民が一人、また一人と連れて行って介抱している様を眺めながら聞いていた。

 

ドラゴンメイルは、正式名称を竜戦士の鎧という名の防具だった。

その名の通り、まさしく竜の(ドラゴン)騎士が纏うための鎧である。

竜の瞳のような魔法玉に、ロン・ベルク殿や職人たちが、魔力を注ぎ込んで修復したそうだ。

金属が使われている部分を流白銀(ミスリル)青鍛鋼(ブルーメタル)で補い、

修復が完了した直後、魔力を得て活性化した鎧からロン・ベルク殿に情報が流れ込んできた。

それが、ドラゴンメイルの真の名前や、使われた素材についての来歴だということである。

 

しかし、竜戦士の鎧という名を聞いて私の頭をよぎるのは、

ドラクエ9で光の竜グレイナルから貰った防具の事だ。

尤もデザインは似ても似つかないものであり、どちらがどちらを参考にしたのか、

名前だけが偶然の一致であるのか気になる所ではある。

 

竜戦士の鎧の修復自体は済み、魔法玉がエネルギーを得たから休眠モードに入っているらしい。

ロン・ベルク殿たちが注いだ魔法力によって、再起動しているところだという。

予定としては、それが済んでからロン・ベルク殿が、自分で改良を施したいという話をした。

 

 

「可能なのですかなロン・ベルク殿?」

 

「勿論だ。こういう生物系の防具は、有名どころは大体朽ちて滅んでいるからな。

こんな凄まじい伝説級の逸品を持ってきてくれて、感謝にたえないぞ!」

 

 

ボロボロの状態でもボリクスが纏う事で、ヴェルザーに対して痛撃を食らわせた鎧だ。

ロン・ベルク殿が改良してくれるなら、これほど心強い事はない。

しかし、私として一点気になる事があった。

 

 

「ところで、ロン・ベルク殿。

このドラゴンメイル……いや、竜戦士の鎧は露出がすぎますな」

 

「そうだな。設計における思想が、通常の鎧とは異なるものだ。

鎧を強固にし、防御力を上げるというよりは、竜の(ドラゴン)騎士の竜闘気(ドラゴニック・オーラ)を中継し、

増幅して身体を覆う事を目的としており、増幅した竜闘気(ドラゴニック・オーラ)で身体を防御するモノだ。

防具としては異端であるし、竜の(ドラゴン)騎士以外が身に着けても、

守れない部分が多い欠陥品ではある」

 

「本人はあまり気にしてないようですが、年頃の娘ですし、肌の露出を抑えられませぬか?

鎧の魔槍のように黒いアンダーウェアが、装着者を覆う形にできるとよいと思うのですがのう」

 

 

私がそうロン・ベルク殿に話すと、彼は一瞬虚を突かれたような顔をして、

大笑いして蒸せながら傍らのワインを飲み干した。

 

 

「……なにか可笑しい事がありましたかな」

 

「そちらの話とは思わなかった。

いや、あんたもボリクスが絡むと、(ボリクス)を案じる爺さんみたいだな」

 

 

ロン・ベルク殿の解析では、元来、ドラゴンの鱗を繊維にしたものを、

アンダーウェアとして展開する機能があったらしい。

ただ、ボリクスの前に着用した者が暴走し、

その竜の(ドラゴン)騎士を止める際に攻撃で破壊されてしまったようだ。

 

ちゃんとアンダーウェアは用意するから安心するようにと、念押しされてしまった。

 

 

 

ギュータから戻った三日後。

デルムリン島へボリクスを連れて向かった。

ラーハルトとダイは外で修行中であり、バラン殿とだけ話をすることになった。

 

我々は魔界での出来事を説明し、ドラゴンメイルについても尋ねたが、

恐らくは正式な竜の(ドラゴン)騎士以前の話だろうから、バラン殿も知らなかった。

ヴェルザーとの戦いについての話が終わると、バラン殿は険しい顔をして言った。

 

 

「そのヴェルザーは私が戦った時に比べ、明らかに強すぎます」

 

「ふむ……。

バラン殿が戦った時のヴェルザーは、そこまでではなかったと?」

 

「私がいまのクロコダイン、アバン殿、ボリクス、ザボエラ殿と戦って、

勝てるかというと怪しいところがあります。

かつてのヴェルザーと比べても、異常な強さと言っても過言ではないでしょうな」

 

 

私は付け加えるように、ルビスのまもりが光った話もした。

こうなると、ヴェルザーが破壊神シドーの力を取り込んだ存在であるのは、

ほとんど確定していると言ってもいいだろう。

極めて危険なレベルの強さを手に入れているということになる。

 

ただ、彼の強さを考えると、妙に行動が鈍い気がしたのだ。

必殺の気配がないというか、テンポが少しずれるというか。

そのお陰で助かったわけではあるが、いつまでもその状態が続くとは思えない。

 

破壊神シドーの力を抑えきれてないのか、内部でシドーが抗っているのか……。

そこは分からないのではあるが。

 

次は必勝のメンバーで当たるべきであるし、ヴェルザーに対しては少数では戦わぬよう、

情報を共有しておくべきだと、バラン殿との意見も一致した。

 

 

「ザボエラ殿。次に魔界へ行くときは私も参りましょう。

さらにボリクス、クロコダイン、アバン殿がいればヴェルザーも倒し切れるでしょうから」

 

「いや、当分は行く予定はありませんぞ。

やはり、魔界は敵地と考えた方がいいでしょうな。

既にヴェルザーが大魔王バーンの軍門に降っているのです」

 

「確かに……」

 

「大魔王の統治下にあると考えるべきでしょう。

生きて帰れただけ儲けものというものです」

 

「では、ヴェルザーを追う判断ではないのですか?」

 

 

前回の魔界行でインスペクターを倒した以上、魔王軍も警戒態勢や即応体制を整えているはず。

下手をしたら魔界へ踏み入れた瞬間に捕捉され、

魔王軍六大軍団の最初の標的にされるかもしれない。

 

それに、魔王軍各軍団の軍団長が決まり、六大軍団が整備されつつあるのなら、

地上侵攻の予定は変わらないのだろう。

 

敵地の魔界へ赴くよりは地上で待ち受けて、みなで戦った方が良いはずだ。

私はそう判断して、バラン殿の魔界へ探索をしようという意見に反対した。

 

ただ、何かあった場合、バラン殿に同行して貰うことは約束しておいた。

 

 

デルムリン島から戻って数日後。

レオナ姫が瞬間移動呪文(ルーラ)でヨミカイン魔導図書館へやってきた。

深刻な面持ちだったので、冗談を言っていたボリクスも真面目な顔になる。

 

竜水晶が用意した暖かいお茶を飲み干して、人心地ついた姫は状況について話し始めた。

 

 

「五日前の話よ。謎のアンデッドの軍勢が現れて、パプニカを囲んだの」

 

「ふむ……ワシがパプニカから戻って、すぐということですな」

 

「タイミングが悪いのよね……。

破邪呪文(マホカトール)のおかげで王都には入ってこれないけど、

防戦一方で埒があかない状況なのよ」

 

「よっしゃ! すぐ助けに行くでザボ爺(ざぼじい)!」

 

「待って待って! まだ話があるのよ!」

 

 

レオナ姫の話では、アンデッドの軍勢くらいならパプニカは問題なく勝てる。

だが、敵の軍勢にはキラーマシンが何体もいて、

アンデッドへの退散呪文(ニフラム)での攻撃を遮り、防いでしまうという。

 

 

「前にボリクスやクロコダインが倒してくれたキラーマシンいたでしょ?

あれより早くて強いのよ」

 

「レオナ、あれも言わないと! 倒しても黄泉返るって話!」

 

「あー、もう! あたしが今から言おうと思ってたのに!」

 

 

例えばキラーマシンをよけ、退散呪文(ニフラム)を当ててアンデッドを倒したとしても、

闇のオーラらしきものが敵陣から放たれると、倒れたアンデッドが黄泉返ってしまうという。

呪文を防ぐキラーマシンと、倒されても復活するアンデッドの軍勢のせいで、

パプニカは難しい戦いを強いられているという。

 

さらに海側から水の精霊オーチェが海のモンスターたちで援護していたら、

初めて見る呪文で海に毒を撒かれたので、退避させるほかなかったという。

 

 

「まさか、毒呪文(ヴェレ)系呪文かのう?」

 

「え、知ってるのザボエラさん!? 危なくて近づけないわ……」

 

「ふむ……ところでマトリフ殿はどうしているのかな?」

 

 

マトリフ殿の話を振ると、レオナ姫が肩を落とした。

まさかと思ったが、それなら最初に話をするはずだ。

 

 

「師匠は初戦で粘って戦ってくれたんだけど、

キラーマシンの攻撃で重傷を負っちゃったわ」

 

「マトリフ殿が……! 敵は手強いようですな」

 

「いま、パプニカ三賢者のアポロが指揮を執ってるんだけど、

ヨミカイン魔導図書館へ助けを求めようって話があがったのよ。

何人か瞬間移動呪文(ルーラ)で出たけど、撃ち落とされたりして、

あたしはオーチェに守って貰いながら瞬間移動呪文(ルーラ)を使って来れたってわけ」

 

 

……しかし、この時期にパプニカへアンデッドが襲撃をかけてくるというのは、

不死騎団ではないかという懸念が湧き上がるが、大魔王がそういった勇み足を許すとは思えない。

 

となると未知の強者による攻撃である可能性が高い。

原作では登場していなかった、

ヴェルザー十二魔将のキングヒドラやグラコス二世たちのように、だ。

 

私はケインにザムザを呼んでくるように声をかけて、

同席していた竜水晶にレオナ姫に食事を出してくれるよう頼んだ。

 

魔界から戻った後、今少しゆっくりできるかと思ったが、

どうやら私の考えより時の流れが加速していることを意識せざるを得なかった……。

 





独自設定

竜戦士の鎧
竜の神がグレイナルにネーミングで相談して、この名をつけました。
グレイナルは竜の騎士専用装備だとは知らなかったので、
それを知っていたら別の名前になったことでしょう。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。