ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~ 作:リドリー@犬小屋
次回は来週の木曜日23時頃を予定しております。
クロコダインが殴り飛ばされた。
ロン・ベルク殿もボリクスも、驚いているが眼前の敵が手強く、
助けに行ける状況ではない。
私の目がおかしくなっていなければ、
つまりあれは、ヒムの
だが、意志を持たぬ
疑問は浮かんだが、実際に目の前で起こっている事態に対応するべきだろう。
ボリクスの攻撃を巧みに捌く
波動拳のように
ボリクスの
弾かれはしたが炎は巻き上がり、一瞬、ボリクスの視界が塞がれた。
その刹那の隙をついて、
炎を目眩ましにして四体の
格闘の間合いで攻撃をしかけてくるので、ボリクスも苦戦を余儀なくされている。
ボリクスが
しかも、シールドを広げただけではなく、
彼らの連携は歴戦のそれであり、ボリクスも攻めあぐねていた。
ロン・ベルク殿には
そして
正確には
ロン・ベルク殿が防いでいる感じではある。
死の大地に到着した後、魔界の魔物達が出てきたときは、
あっという間に倒してしまったロン・ベルク殿が手こずっている。
……原作ではハドラー親衛騎団の方が、
キング・マキシマムの率いる
武人として精神的成長を遂げたハドラーに生み出され、禁呪法生命体として心を持ち、
ダイたちとの戦いによって経験を積んだからだろう。
だが、事実として眼前の
明らかに戦い慣れた姿を見せている。
彼らは原作において生まれ持ったスペックだけで他者を圧倒していた為、
歴戦の強者であるヒュンケルやラーハルトに敗北していた。
彼ら──キング含めての話だが──は、生来の能力が非常に高い。
そのアドバンテージで、他者を容易く圧倒していただろう。
最終決戦での彼らの敗北はいままで積み上げてきた、
容易すぎる勝利が故だ。
彼らは自らを磨く努力を怠っていたはずだが、
もしもそれを行っていたとしたら?
私は嫌な予感が止まらなかった。
もしかするとこの
キング・マキシマムに殴り飛ばされたクロコダインは、
隙の無い動きで起き上がり、軽く頭を振って構え直した。
しかし、なぜ追撃せず、マキシマムは見守っているのだろうか……?
「今のは効いたぞ。重い一撃だ。そして、的確で速い……」
「ふむ……やるなクロコダイン。気に入ったぞ!」
そう口にしたマキシマムの肩当には一筋の傷がついていた。
恐らくはアバン流斧殺法、海嶺撃……。
クロコダインはマキシマムに殴られた瞬間、海嶺撃を放って追撃を防いだのだろう。
鳳凰の戦斧を構えたクロコダインは、マキシマムとの激しい戦いに戻っていった。
あの巨体でクロコダインの攻撃を素早くかわし、間合いを詰めては拳を繰り出す。
クロコダインも目が慣れたのか、回避したり逸らしているが……、
私には攻撃の応酬が全く見えない。
ここで私は肝が冷えることに気づいてしまった。
マキシマムは
原作では命令しなければ彼らを動かせないことを、
ラーハルトに指摘されていたにも関わらず、だ。
これは二つの可能性が考えられる。
一つは念話や思念のようなもので、口に出さずとも指令を与えられるということ。
二つ目は
後者であれば
何があったか分からないが、眼前にいるキング・マキシマムは侮ってはいけない。
原作のデータを信じぬ方がいい、非常に危険な強さを持った強敵である。
そう考えて対処した方が良いだろう。
原作においてサババでダイたちのパーティーと戦った初戦では、
彼らの方がステータスは上だがダイたちは戦い慣れていて押し込めない。
そのように、
今回の戦いぶりを見ていると、やはり彼らは歴戦の戦士だ。
彼らを見ていて重ねて嫌なことに気づいた。
マキシマムの率いている
その陣容がハドラー親衛騎団のメンバーであることが、私に動揺を走らせる。
原作より先んじて、ハドラー親衛騎団が既に着任しているのか。
それとも、単純に大魔王の側を離れるから、一揃えの駒で守護させているのか?
後者であってほしいところだ……。
キング・マキシマムの原作とはほど遠い変貌というか強化に、
私の頭はすっかり混乱してしまっていた。
不死鳥ラーミアを死の大地からの脱出を妨げる、呪法の解呪にも時間がかかっている……。
マキシマムが両手に
クロコダインと正対し、左右に揺れながら恐らくフックを打っている。
恐らくというのは、私の目では速すぎて確認できないからだ。
流石にクロコダインは対応できているようだが……。
手甲や鳳凰の戦斧でクロコダインは攻撃を防いでいるが、
私からは消えたり現れたりするマキシマムが、クロコダインを滅多打ちにしているように見える。
ボクシングでデンプシーロールという技があるが、まさか……。
クロコダインは鳳凰の戦斧の
一旦間合いを空けることで拳の連打から逃れた。
「このディザスターロールをそのような手段で退けるとはやるな」
「やるなとはこちらの台詞だ。ここまでの使い手と戦うのは久しぶりだ……」
数発まともに食らったのか、鼻血がドロリと垂れてくるクロコダイン。
片方の鼻を押さえて、豪快に鼻血を吹き出した。
ほぼ無傷ではあるが、所々、傷がついているマキシマム。
戦いを有利に運んでいるのはマキシマムだろう。
鼻血が止まったクロコダインが、ニヤリと笑う。
そして開口一番、マキシマムを褒めた。
「古代拳闘か……。ずいぶんと古い格闘技を使うのだな。
昔、古代拳闘を使う戦士と戦ったこともある。
もっとも、ここまでの使い手は初めて見たがな」
「ほう! それが分かるというのか。いままでの戦いで吾輩にも分かるとも。
その慧眼を裏付ける戦歴を、貴公が誇っていることをな!」
拳闘……つまり、ボクシングか。
あの巨体で軽やかに動くと思っていたが、キング・マキシマムがボクシング!?
……一体、誰に習ったんだろうか……。
「まだ、極まってはいないのだが、見せたいものがある。
老師曰く、"使い手の精神性が上乗せされた至高の闘気"だそうだ」
「是非、見せて貰いたい!
貴公との戦いで無駄なものを見た記憶が無い!」
至高の闘気……まさか……?
深く静かに呼吸して、吐き出す呼気とともに、身体を包む闘気の質が変わったクロコダイン。
光り輝く闘気に、マキシマムは驚いて言った。
「凄まじい闘気だ。だが、この色は初めて見る。
暗黒闘気とは真逆の、生命と強い意志を感じさせる光は……?」
「初めて見せる。これが、光の闘気というやつだ……!」
クロコダインの戦い方が変わった。
凄まじい出力の闘気を纏った戦い方が、まるでヒムだ。
いや、ヒム自身は荒削りだと評される戦い方だったが、ここまで激戦をくぐり抜け、
技が円熟の領域に達したクロコダインは、凄まじい強さだ。
ある意味、
マキシマムも退かず、拳に
互いに攻撃の応酬が行われた後、クロコダインがマキシマムの拳を額で受けた。
受けたヘッドパーツにヒビが入り、割られた額から血が流れ落ちるが、
クロコダインは震脚で動きの止まったマキシマムの足の甲を踏んだ。
ミシリッ!
砕けはしなかったが、ヒビの入る音がした。
間髪入れず肘打ちでマキシマムの懐に入り込む。
「ぬおっ!?」
「捉えた! 玄武鉄山靠ッ!!」
ズンッ!!
クロコダインが体ごとマキシマムにぶつかり、まとった光の闘気がインパクトの瞬間強く輝く。
地面に蜘蛛の巣状のヒビが走り、死の大地の荒涼とした大地に、深く重い音が響き渡った。
しかし、さすがはマキシマム。
キングヒドラですら吹っ飛ばした玄武鉄山靠を食らっても、腹部が陥没しただけだ。
恐らく、クロコダインの狙いは最初に攻撃した足の方だろう。
武神流はどっしり構えて戦う伝統的な空手のような流派だ。
翻ってマキシマムはフットワークとコンビネーションのボクシング。
フットワークに対応するのは難しいだろうから、動きの要である足を潰す。
クロコダインのその判断は正しい。
思った通り、以後、マキシマムの足さばきは精彩を欠いた。
クロコダインは吹き上がる闘気の赴くままに、鳳凰の戦斧を振るい、拳足を繰り出す。
負傷した足に頼らず、回避をスウェーに頼り、
左右のコンビネーションで食らいついていくマキシマムだが……。
「見事だクロコダイン。だが、まだ、奥の手を残していてな」
「受けて立とう。こい、マキシマム!」
マキシマムは強力な
爆烈エネルギーの総量は、恐らく
「感謝する……ファイナルブロー!!」
「武神流、猛虎破砕拳ッ!」
ファイナルブローがクロコダインの左腕をへし折り、鳳凰の戦斧を奪ったが、
闘志を失わぬクロコダインの猛虎破砕拳が、マキシマムの右肩を打ち砕く。
右腕が力を失い、思わず片膝をつくマキシマム。
「ぐおおおおおっ……! 吾輩は負けるわけにはいかん!
これほどの好敵手とまみえることは、そうないのだ!!」
クロコダインが追撃しないのは、左手首が変な方向に曲がっているので、
恐らくは折れているからだろうかと思ったが、どうやら違ったようだ。
「無茶をするな。
お前は真っ向から戦い、卑怯な手を一切使わなかった見事な戦士。
それゆえ、無為に死なせたくは無い」
クロコダインは拳を交えたことで、マキシマムに対して尊敬の念を抱いたようだ……。
「それは、吾輩に情けをかけているのか……?」
「いや、一個の戦士として、お前の戦い方には敬意を抱いた。
オレとて、この鳳凰の戦斧と不死鳥の鎧がなければ、戦いの結果は違っていただろう」
決着がついたなら、ラーミアとみなを連れてここから逃げれば……。
幸い既に呪法は解呪できたし、ラーミアの負傷は癒やせた。
そう考えていたところ、妙に吹っ切れた表情のマキシマムはこう言った。
「見事だクロコダイン。お前の勝ちをこのマキシマムの名で認め……」
彼の言葉をかき消すように、上空から無数の暗黒闘気の弾が降り注ぐ。
バレーボール大の巨大な弾丸は、凄まじい威力を見せる。
しかし、地面に無数の深い穴が穿たれたというのに、私と不死鳥は無傷だ。
まさか……と上を見ると、我々を守るために、
爪を展開したケインがボロボロになっていた。
すぐに私の魔力を補充して、傷を修復する。
かなりの重傷だ。
「なんという無茶をしたのだ、ケイン!」
「
それより、眼前の敵を……目を離さぬようになさってください。
恐るべき……強敵です……」
私はケインの言葉が指し示す方向を見た。
死の大地の不吉な分厚い雲の下、
それ以上に不穏な暗黒闘気をまとったミストバーンが、
無表情のはずの顔から怒りを漂わせて浮いている。
ケインを魔法の筒へ収納した。
時間をかけて魔力を注ぐことで、修復してやりたいが、
ミストバーンがそれをやらせてくれるはずはない。
魔法力を込めて、いつでも動ける体勢でミストバーンと相対する。
「……死の大地にまで土足で上がってくるとは許さぬ……。
ここを貴様の墓標としてくれるわ!」
ミストバーンの周囲に浮かぶ、無数の暗黒闘気の弾を眺めながら、
私は絶望的な気分で憤怒という名の彫像と化した魔影参謀を凝視していた……。
独自設定
ディザスターロール
○ンプシーロールです。
若き日に大魔王バーンが誇る必殺技の一つでした。
この技が破られて古代拳闘に限界を感じて、後の天地魔闘の原型の技を作る事になります。
闘気が使えないマキシマムが、
普通の敵でしたら一切対応できず、殴られて終わりです。
光の闘気
オフィシャルファンブックで、
明確に光の闘気は通常の闘気の上位版という設定が開示されました。
"人間・精霊族などの精神性が上乗せされた至高の闘気"という一文があるので、
クロコダインの台詞はそれにちなんだものになります。