ザボエラ転生 ~ダイ大世界をおっさんが生き抜く~ 作:リドリー@犬小屋
次回は来週の木曜日23時頃を予定しております。
私が気がかりなのはなぜミストバーンが激怒しているのかということだ。
死の大地に踏み入れただけにしては、かなりの激高ぶりだ。
彼の視点で言えば不死鳥を手に入れようとしたのを、
私たちが邪魔したからということだろうか?
「大魔王様から伺っている! キルを倒したのは貴様だとな!!
私たちは……対極の性格ながら妙に気が合った……。
我々の間には友情のようなモノが存在していたと私は確信している。
故に……この場で貴様を討ち果たす!」
なるほど。我々がキルバーンを殺したことが露見したのか。
それもあって、激怒しているわけだな。
キルバーンの方からミストバーンへの友情が本当だったか怪しいところがあるが、
ミストバーンからキルバーンへの友情はしっかりあったはずだ。
冷静沈着な外見から騙されがちだが、彼はかなり感情的でおしゃべりな側面がある。
私は彼の正体を知っているからいまさらだが、沈黙の仮面をかなぐり捨てて、
激情に流されるままに怒りをこちらにぶつけてきているようだ。
しかし、最近明かされたのか分からないが、大魔王も最悪のタイミングで、
ミストバーンに燃料を注いでくれたモノだ……。
手が空いたボリクスがこちらへすっ飛んできた。
「
「ワシは大丈夫じゃが……」
「この幽霊が! キルバーンやったんはうちやぞ!」
「なにっ!? 貴様かぁ……!!」
ボリクスがミストバーンを怒らせて、わざとヘイトを買ってくれたのか……?
ミストバーンはドス黒い暗黒闘気をまとっており、黒い炎のようにそれを展開させている。
怒りという感情の具現化だろうが、私もケインを重傷にされて憤っている。
呪文を叩き込もうとしたところ、ミストバーンが先に動いた。
「闘魔滅砕陣!」
ミストバーンの足下から蜘蛛の巣のような暗黒闘気が、瞬時に伸びてくる。
私とラーミアとボリクスが、暗黒闘気に捕らわれて締め上げられてしまった。
ラーミアは捕らわれただけだが、ボリクスと私は強い力で締め付けられている。
滅砕陣の拘束による痛みの中、私にはある疑問が浮かんでいた。
タイミング的に、ミストバーンがマキシマムを助けに来たようにも見える。
あれだけ叩きつけた暗黒闘気の弾丸も、マキシマムには一発も当たってはいない。
原作では二人は不仲というか、ミストバーンはマキシマムを
皮肉っており、その存在を不愉快に思っていたのではなかったか……?
身体を締め上げる滅砕陣の威力が増した瞬間──ボリクスが動いた。
「ハンッ! こんなん効くかアホウ! アバン流刀殺法──空裂斬!」
「おのれ小娘……!!」
「すまんのう。助かったぞボリクス」
「礼はええよ! ラーミアを治したって
私はすぐに
ボリクスは空の技で、ミストバーンの攻撃を捌き始めた。
クロコダインたちの方を見ると、大量に現れたキラーアーマー、シュバルツシュルト、
デビルアーマー、そしてガーディアンたちが、
マキシマムとクロコダインの間になだれ込んでくる。
私の見間違いでなければ、デッドリーアーマーがいる。
ミストバーンが現れたことに呼応しての出現であれば、魔影軍団だろう。
ボリクスと戦っていた
マキシマムは何かミストバーンに叫んでいたが、魔影軍団の行進にかき消されていた。
腕が折れているクロコダインの前に立ち、現れた魔影軍団を容易く両断するロン・ベルク殿。
恐らく相当に堅い金属であろうはずなのに、
まるでバターで出来ているかのように切り裂いている。
魔影軍団も弱くはないのだろうが、明らかに
先ほどまでの
ロン・ベルク殿は飴細工の鎧を切り裂くように、既に百体以上の魔影軍団を切り裂き、
死の大地の荒れ果てた地面に無数の鎧が転がっていく。
だが、彼が倒す以上の速度で、次々と魔影軍団が現れる。
既に八百体以上の姿が見えるのだが、どういうことだ……!?
そして、ロン・ベルク殿とクロコダインの前に立ちはだかるように、
青みがかった銀色の異形のデッドリーアーマーがそびえ立っていた。
四本の腕と、通常のデッドリーアーマーより二回りは巨大な姿。
恐らくはデッドリーアーマーの指揮官だろうが、一体何者か……。
「我が名は魔影軍団副団長、ダブルドーラ。
氷の暗黒闘気たる
魔氷結界呪法!!」
ダブルドーラ……!?
鍛え直した……のか改造したのか、随分と変貌を遂げている。
その言葉と共に、ダブルドーラを中心として凄まじい吹雪が吹き荒れ、
地面から牙のような氷の柱が、幾つも突き出してきた。
ボラホーンのマヒャドブレスというのがあったが、あんなものではない。
外界と隔絶する吹雪の檻ができあがり、
クロコダインとロン・ベルク殿が見えなくなってしまった。
内部から剣戟の音が聞こえるので、恐らくは無事に戦っているのだろうが……。
ミストバーンの攻撃を弾いていたボリクスが、こちらへ声をかけてくる。
「二人とも強いから大丈夫やで。
それより、こいつは油断できへんよ
「うむ、わかっておる」
私は牽制として
「愚かな! 極めた暗黒闘気の前に、呪文など通じるモノか!」
増幅され、
その中で雲霞の如く出現した魔影軍団との戦いを余儀なくされているようだ。
二人を助けに行こうにも、ミストバーンを排除せねばどうにもならないだろう。
私は事態を打開するために、ミストバーンに
増幅されて弾き返されはしないものの、有効打にはなっていない。
状況は芳しくなく、魔法力を解放しようか悩む。
だが、三分で眼前の恐ろしく強くなったミストバーンを倒せるか怪しい。
更に奥の手があり追い詰められた場合、魔法力が尽きた私は足手まといでしかないだろう。
暗黒闘気を燃え上がらせながら、憎悪を込めた声でミストバーンは宣言する。
「私の暗黒闘気を舐めるなよ。かつてのような無様は晒さぬ」
マキシマムの変貌にも驚くが、ミストバーンの強さが尋常ではない。
周囲の空気を歪め、闇の衣から立ち上がる暗黒闘気が雲を割っている。
体感で言っていいなら、魔法力ではなく暗黒闘気版の大魔王バーンだ。
正直、そのくらいの迫力がある強さを見せてくる。
原作の
だが、そんな事を考えている暇も無い。
暗黒闘気の弾をたたき落としていたボリクスは、既に持ってきた剣を折ってしまったようだ。
彼女は背負っていた繭に包まれた剣を、そのまま振るっている。
オリハルコン製だから大丈夫なのだろうが……。
「そのようなもので私の暗黒闘気を捌ききれると思うな! 闘魔暗黒弾!!」
40個ほどの暗黒闘気の弾丸がミストバーンの周囲に浮かぶ。
大きさはバレーボールほどで、打撃というか貫通力が強いのだ。
それが一斉に飛んできて、高速でこちらへ攻撃をしてきた。
ボリクスが繭を振るって叩き落としていくが、数個こちらへ飛んでくる。
かすっただけで私は肩を抉られ、回復させたばかりのラーミアもダメージを受けた。
一個、狙いを誤った暗黒弾が、死の大地の堅い地面を抉ったが、
かなり深い穴が一瞬で生じている。
相当な威力だ。
「見たか! 全部叩き落としたったで!」
「調子に乗るなよ。いまのは小手調べだ。
我が暗黒闘気の深遠さに震え上がるがいい!」
まずい……!
100個以上の暗黒弾がミストバーンの周囲に浮かぶ。
「ボリクス、ワシは良い。逃げるんじゃ!」
「そういうこと言う
大丈夫、任せとき!」
その言葉が合図だったかのように、無数の暗黒弾がボリクスと我々を襲う。
ボリクスは
丁度、私とラーミアを守るように、円形の爆炎のドームが巻き起こり、
暗黒弾を飲み込んでいくが、それを超える数の攻撃が向かっている。
ボリクスが
暗黒弾をたたき落としていくが、既に疲労の色が濃い。
「ハン! どんなもんや!」
「よく戦ったと言ってやりたいが、私はまだ暗黒闘気の奥義を残している」
そう言ったミストバーンは、死の大地に降り立った。
瞬間、彼から吹き出す暗黒闘気で、地面が陥没して、巨大なひび割れができた。
ミストバーンの背後から数m級の大きさの、巨大な刃が幾つも出現する。
暗黒闘気が死神の鎌のような巨大な刃となって、ミストバーンから伸びており、
さながら邪悪な千手観音の如き禍々しい姿をしていた。
「闘魔黒影陣……我が暗黒闘気の神髄を見せてくれる。
縦横に伸びる暗黒闘気の刃は、如何なるものでも断ずる!」
「ハハッ……なんやすごいの出してきたな?」
「貴様ら相手に手を抜くと痛い目を見るのは理解している。
特にザボエラにはしたたかにやられた恨みもあるのでな。
欠片も油断をする気はない」
そう言ったミストバーンの背後から、無数の刃が触手のように伸び、
その鋭利な刃で攻撃をしてきた。
闘魔暗黒弾の攻撃力も凄まじかったが、闘魔黒影陣はさながら重機のようだ。
地面を深く抉り、地形を変えるほどの攻撃力を見せている。
ボリクスは繭の状態の剣に
縦横に振るって黒影陣の刃と切り結んでいる。
さすがはオリハルコン製。
折れも砕けもしないのは良いが、繭に包まれているので、
中身がどうなっているかは分からない。
私は対暗黒闘気ならと、
かき消すには至っていないものの、攻撃を逸らすくらいはできている。
どうすれば……そう思ったとき、
こちらへ攻撃する暗黒闘気の刃を弾いたボリクスと目が合った。
一瞬。
ホンの一瞬のハンドサインだった。
それは時間を稼いでくれと言うモノだ。
確かに闘魔黒影陣の凄まじい攻撃では、何かやりたくてもできないのだろう。
私はその意志を汲むことにした。
通常の数倍の魔法力を
10m以上ある巨大な土の槍がミストバーンめがけて飛んで行くが、
黒影陣の刃で余裕を持って切り刻む。
「もはや万策尽きたと見える。このような無駄な攻撃をしてくるとはな!」
私は次々と
勝ち誇るミストバーンにはボリクスが見えていないのだろう。
「フッ……つまらぬ攻撃をしてくるものだなザボエラ」
「さて、それを判断するのはお前さんではあるまい?」
「我が暗黒の刃が貴様の土塊を全て切り裂いてくれる!」
完全にミストバーンは私の
ボリクスは己の名を持つ剣を構え、一つの呪文を唱えてそれを剣に受けた。
呪文の名は──
流石に
「何をしてくるかは分からぬが、その繭のようなもので私を倒せるとでも思っているのか?」
「賭けやな。できなかったら、お前の勝ち──」
「できればうちの勝ちやーーッ!」
その言葉と共に、
己の名を冠した剣を構えて全速力で突っ込むボリクス。
「愚かな! 全ての刃を叩きつけてくれる!」
闘魔黒影陣の刃がボリクスを捕らえようとした瞬間、
ボリクスの剣が雷鳴と共に稲妻を縦横に放つ。
ミストバーンの放った黒影陣の刃を弾き飛ばす。
すると、剣を長く覆っていた繭が消え去り、一振りの見事な刀身が姿を現した。
「我が黒影陣の刃が!? こんなバカな事が……それは一体なんだ!」
「とんでも無い寝坊すけや! ま、許したるけどな!」
ボリクスの声に呼応するように、剣は黒影陣の刃を容易く消滅させる雷撃を放つ。
ボリクスから伝わる膨大な
まるで竜の咆吼のような音をあげた。
ボリクスは満足そうに笑みを浮かべ一つの言葉を叫ぶ。
「くらえー! ギガデインストラッシュや~~~~ッ!!」
「なっ……なにイッ!!?」
闘魔黒影陣の全ての刃がボリクスを襲うが、
ギガデインストラッシュの斬撃に掠るだけで塵のように消え失せる。
ミストバーンはギガデインストラッシュの強力な斬撃をまともに食らい、
凄まじい勢いで吹っ飛んで死の大地の冷たい海に落ちた。
「ボリクス、大丈夫か!?」
「ハハッ、見たか
ボリクスの剣を掲げながら満足げに微笑んでいる。
だが、ボリクスの傷と疲労は深い。
「回復呪文をかけるから動くでないぞ」
「
「貴様らに不死鳥は渡さぬ!」
ボリクスの叫び声に反応した瞬間、何か高速で飛来するモノが見えた。
次に見えたのは高速で飛来するモノに立ちはだかり、
貫かれた不死鳥ラーミアの姿だった……。
「なっ!? ば、ばかな……」
「ラーミア殿……!!」
ミストバーンの闇の衣が半分吹っ飛んで、真大魔王バーンのシルエットが見えてしまっている。
もっとも、暗黒闘気で覆っており、黒い人影のようにしか見えない。
その状態のミストバーンが、ビュートデストリンガーでこちらを攻撃したようだ。
攻撃したミストバーン自身が、ラーミアに当ててしまったことに驚いているが、
相手にしている時間は無い。
私は不死鳥の血を浴びながら、回復呪文を用意して傷を塞ぎにかかった。
青い衣が赤く染まっているが、気にしている暇はない。
「ラーミア殿、いま
「待ってください、ザボエラ。私は一旦、六つの分身に姿を変えます。
集めて蘇らせてください……あなたなら意味が分かるはず……」
ほとんど、慈愛すら垣間見える瞳で私を諭すように話すラーミア。
「そ、それはまさか……!? レイアムランドの……」
私の言葉に、察したことを悟ったのか光に包まれ始めるラーミア。
光は六つに分離し、六色の光球に姿を変えて、それぞれが飛んで行った。
私の手には一つ……レッドオーブが手に残り、
ミストバーンがビュートデストリンガーを伸ばして、
光の一つを手に入れていた。
ミストバーンは力尽きたのか、その姿勢のまま死の大地に倒れ伏した。
「ミストバーン様!
貴様ら! 速やかにミストバーン様をお救いしろ!」
ダブルドーラが
丁度良いチャンスが到来した。
これ以上この場にいることは危険だ。
恐らくはラーミアがオーブに姿を変えた意味を理解しているのは、この場で私だけだろう。
懐のケインも心配であるし、ボリクスを背負って
背中合わせで戦っているロン・ベルク殿と、クロコダインを
死の大地から脱出した。
混乱しているせいか、ダブルドーラも魔影軍団も追ってくる気配はないが、油断はできない。
私は全魔力を込めて、必死で死の大地から遠ざかった。
独自設定
魔氷結界呪法
吹雪の結界内に敵を引きずり込んで脱出させず、氷の柱などで攻撃する技です。
一定空間を氷の暗黒闘気、
フレイザードの氷炎結界呪法のような敵のレベル低下が無い代わりに、
ダブルドーラを倒すか彼自身が解除しないと脱出できません。
今回はミストバーンを助けに行ったので、解除されました。
闘魔黒影陣
ハガレンのプライドが使う影の攻撃みたいなものだと思っていただければ。
ひたすらに巨大な暗黒闘気の刃が無数に生えて、それが敵を攻撃する技です
ラーミアがオーブに
知られざる伝説の「不死鳥ラーミアの伝説」で、ルビスと共に戦ったラーミアが力尽き、
オーブに姿を変えたという一節があるのでそれのオマージュです。
あと、ラーミア的には「オーブを集めると復活できるの知ってますよね?」というフリです。
ただ、それを知っているのはザボエラだけじゃないんですよね。