深夜渡航   作:へるしぃーぼでぃ

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7/29─千里浜なぎさドライブウェイ
7/29、千里浜なぎさドライブウェイ


 

 

7月中旬、自宅にて。

 

「来た!」

 

スマホを見た私がやにわに色めきたつ。

ここしばらく毎日調べていたのは、とある地方の天気予報と、交通情報。

千里浜なぎさドライブウェイ。

石川県の海岸線、砂浜を車輌で走行できる道。

砂浜を!

車輌で!!

走れる道!!!

見つけた瞬間思った。行くしかないと──。

そこは少しでも天候が崩れると通行不可になってしまう場所で、こうして甲斐甲斐しく毎日調べていたのだ。

そしてついに、通行できるかもしれない日がやってきた。

梅雨明け十日、連日の晴れ予報。

ここしかない。千里浜なぎさドライブウェイの存在を知ってから半年、ついに行く時がやってきた。

私は早速荷物をまとめ、週末に向けて準備に繰り出した。

 

 

 

そして週末、7/29、AM8:00。

自宅の庭にて、ザックを括りつけたバイクの前にひとりの男が居た。

私である。

今回は登山をする予定はないが、キャンプするつもりなので荷物はほぼほぼ登山道具を流用する。違うのは装備──服装と靴か。

靴は登山靴ではなく、バイク用の革靴だ。ABCマートの比較的安物の靴だが、手入れの甲斐あってか随分長く履いている。

登山を始めたせいでこの半年、履く機会がぐっと減ってしまったが、まだまだ頼むぞっ。

服は革ジャンを着ていく──……という選択肢もあった。

手持ちの革ジャンはバイク用品店のそこそこイイ値段のモノなのだが、買ってみて気付いた事がある。

意外と着る機会(シーズン)、少なくね?と。

夏はメチャ暑いし、冬は防寒機能が心許ない。

しかし防御能力は高く、高速道路を利用する際は重宝する。

虫がな……虫のバードストライクが痛いんだ。アレを防ぐためだけに革ジャンが必要だと言っても過言ではない。

だが如何せん暑いので、今回はツナギを着ていく。

ツナギでも暑いが、革ジャンよりはマシだ。生地の厚さもそこそこあるし、虫ストライクに耐える強靭さもギリある。

 

「よし」

 

汗だくになる事請け合いの季節。着替えを潤沢に用意し、いざエンジンを始動した。

 

 

 

 

「美味い」

 

11:30、有磯海SAにて。

私は塩ブラックミックスなるソフトクリームをぺろぺろ貪っていた。

道中、赤城高原SAで小休止を挟んだ以外、ほぼノンストップで高速を爆走。

高原地帯と長〜いトンネルは涼しかったが、それ以外は灼熱の日照りの中、熱風を我が身に受け続ける地獄だった。

塩分糖分水分補給ができる最高のソフトクリームを食べて、ついでに屋台の牛串も食って更なるエネルギーを補給しつつ、残りの道程を確認。

 

「ここまで来れば、着いたも同然だな」

 

しかし心配な箇所がある。

この高速(北陸)を下りる場所となる金沢森本ICなのだが、なんかズイブンと入り組んでいるのだ。

ふむ。料金所過ぎて右行ってもっかい右行って…………何とかなるだろヨシ!

メッチャ間違えて逆方向へ行ってしまった。

 

「あークソ!やらかした」

 

二回目の右行きを、気付いたら通り過ぎていた。

まぁしゃーない。初めての道はこんなモンだと気を取り直して一個目のICで下りる。

ここから下道で行くか、もう一度高速に乗るか。

コンビニに寄ってひとまず現在地を確認すると、目的地(千里浜)までまぁまぁ距離がある。

高速に乗っとくか。……と、その前に給油しておこう。

ガソリンスタンドを経由し、能越自動車道の無料区画をちょこっと利用して、のと里山海道へ向かう。

よし完璧だ。行くぞ。

北陸新幹線沿いに梅田ICへ向かい、いざ乗らん。

待て待てコッチの入口じゃねぇぞ間違えたっ。あああああああ。

再びの金沢森本ICです。ありがとうございました。

 

「……道が難しいのか、俺がバカなのかっ」

 

3:7くらいかな。

無料区画なのが救いだ。

私はまたも幹線道路から下りて、コンビニでひと息入れる。

もう間違えるのは勘弁願いたい。私は穴が開くほどグーグルマップを見直し、再三の突入。

 

「はぁ〜っ。ようやくマトモに進めた」

 

クソみたいな道間違いで大幅に時間をロスしてしまった。

時刻はすでにお昼を過ぎ、暑さも最高潮。

完全な自業自得だがストレスマッハでだいぶイライラしていた。といってもこの気持ちをぶつけるモノは無いので、大人しく運転していく。

高速から下り、下道でのと里山海道を目指す。

ここでも少し道迷いが発生し、気分はさらに落ち込んでいく。

しかし下道で迷うのはいつもの事なので、淡々と修正し元の道へ。

 

「……ここか」

 

そしてようやくたどり着いた、のと里山海道。

ここまで来ればもう安心だ。左手に海を眺めながら、後はひたすら真っ直ぐに。

潮の匂いを嗅ぐ事しばし、志雄パーキングにて駐車。

ここに停まったのは小休憩と、道の確認だ。

自販機の炭酸ジュースで喉を潤しながら、ドライブウェイへのちょっと分かりづらい入り口を探る。

少し戻らなければならない。一旦海道から出て、ああしてこうして行くか。

すぐさま出発し、遂に到着した。

 

「うわぁ、こえ〜」

 

千里浜なぎさドライブウェイの入り口。バイク騎乗のまま、いざ砂浜地帯へ。

XJR1300で砂浜でコケたら即死級である。めっちゃ死にたくなる絶望感に苛まれる。

そんな恐怖を抱えながら、前方のノロノロした車に続いてノロノロ走らせる。

 

「おお……マジで走れてる」

 

タイヤは沈むことなく普通に走ってる。

小石などがないダート……めちゃくちゃ綺麗なフラットダートみたいなモンだな。

 

「スゲェ」

 

余裕が出てきて周りを見れば、すぐ横で波がさざめいている。

ヘルメットシールドを上げ、吹き抜ける潮風を吸い込む。

太陽光を反射する波と砂浜が目に眩しい。

くっきりと跡が残されていくタイヤ痕。

……そして、観光客で人がごった返す光景。

路肩(?)には車が列を為して停まり、小型のテントやパラソルが乱立、人々は海水浴を存分に楽しんでいた。

 

「……ま、まぁそりゃ観光名所だしな」

 

あまりにもな人口密度に感動も引っ込んでしまった。

そのままトロトロ砂浜ダートを走り、周囲より人気(ひとけ)の少ない場所で停車する。

 

「やっぱスタンド立てらんねーか」

 

ゆっくりとスタンドを立ててみるが、予想通りズブズブと沈んでいく。このままではバイクから下りられない。

私はサイドバッグから、サンダルと対切創手袋を取り出す。

サンダルの上に手袋を重ね、そこにスタンドを置いて事なきを得た。

ようやく人心地つける。

 

「疲れた〜。ムダに」

 

14:50。アホほど道を間違えた末に、千里浜なぎさドライブウェイに到着。

海を背景(バック)に、バイクをパシャパシャ記念撮影。あまりにも映える風景だ。インスタやってないけど。

バイクに体重を預け、少し黄昏れる。

……そういえば、目的地が海なのに水着を持ってくるの忘れたな。海水浴客を見てふと思う。

まぁ持ってきたとしても、ソロバイカーに海水浴は難しい。

荷物をその辺に置くしかないし、そもそも海に独りで入るの怖すぎないか?

もうプールにすら何年も入っていない海無し県民は、海に対して楽しさより恐怖心が勝ってしまう。

うん。例え水着があろうと入らないな。景色だけ楽しもう。

さて、落ち着いたらお腹が減った。なんか海の家みたいな屋台が乱立しているし、そこで何か食べよう。

 

「いらっしゃーい」

 

人好きのするおばちゃんに誘われ、気分を変えて早速注文する。

りんごジュース(缶)と焼きはまぐりだ。

 

「っうまい!」

 

この焼きはまぐりがめちゃくちゃ美味い。

貝類全般に言える事だが、熱を加えるとなんか旨み成分がドバドバ出てくるの控え目に言っても最高すぎる。君ら食べられる為に生まれてきたん?いただきます。

味わいながらもあっという間に完食し、りんごジュースでひと息ついてるとおばちゃんに話し掛けられた。

 

(アン)ちゃんはこれからどこ行くん?」

 

「あー、特に決めてないです。ここが目的地で、今日はどこかで一泊して明日どうしよっかなーって感じで」

 

そんな感じで話していると、おばちゃんが石川県全域のガイドブックをプレゼントしてくれた。これは非常にありがたい。

ガイドブックを読みながらおばちゃんと雑談し、時たま砂上のバイクと海を眺めてまったりする。

 

(……暑くてとてもキャンプする気になれない)

 

気温は30℃越えの今日。すでに汗だくな状態である。

どこか近場のホテルなり民宿に泊まろうと決意し、ある程度目星をつけたあと立ち上がった。

 

「ご馳走様です。ガイドブックありがとうございました」

 

「は〜い。気を付けていってらっしゃい」

 

おばちゃんに快く送り出してもらい、出発。

時刻は15時を回り、太陽はすでに西日へと差し掛かっている。

砂に移るバイクの影と、まだまだ輝く大海原を眺めながら、名残惜しくも右折して砂浜地帯から抜け出した。

さらば千里浜なぎさドライブウェイ。マジでただバイクで走っただけだったな。いや貴重な体験で楽しかったけどね。

 

 

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