深夜渡航   作:へるしぃーぼでぃ

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4/30─苫小牧宿泊

 

 

大洗は春の陽気が薫っていたが、流石は北海道。4月末でも冬の空気が身を刺した。

埠頭から5分、あまりにも太く広い片側四車線道路を凍える思いで爆走していると、見えてきた。

闇夜に淡く光るオレンジの看板、セイコーマートが。

私は早速停車すると、セコマを背景に写真を撮った。

北海道の旅では、セコマに寄る度に写真を撮ろうと決めていた。そうすれば、スマホが日時と場所を記録してくれるからである。便利なモノだ。

さて、念願の初セコマだが、買うのは夕食の弁当とあの(・・)乳酸菌飲料だ。

そう、ソフトカツゲンである。

北海道限定と名高き活力の源。これが是非とも飲みたかった。

私は紙パックコーナーでワクワクと探したが……ない。見つからない。

そんなバカなと周りを見渡す。

セコマに置いてあることは下調べ済み。まさか売り切れているのか?

20:20、他の客は居ない。店員一名と、店内を練り歩く不審者だけが居た。

だがついに見つけた。

ペットボトルコーナーの角もカド、その最下段に300㎖のソフトカツゲンを。

こんな目立たないところに置いてあるのか……、他のサイズもないし、実はあまりポピュラーな飲み物ではないのか?

兎にも角にも、カツゲンゲットである。あとは適当な弁当と水、おにぎりとパンをひとつずつ買い、初めてのセコマを後にした。

 

 

 

セコマから10分ほど、下調べのおかげで迷わず宿に到着した。

しかし問題があった。

駐車場が空いていないのだ。

いや、一箇所だけ空いてはいるのだが、そこにひとつの三角コーンが鎮座しており私を拒絶しているのだ。

ムリヤリ停めようと思えば停められるのだが、あからさまな三角コーンに私は気圧された。

幸いにして、路肩はアホみたいに広い。宿の玄関の真ん前の位置にバイクを仮置きし、私は宿に入った。

誰も居なかったので備え付けの呼び鈴を押すと、気の良さそうなおじさんが出てきた。

 

「いらっしゃい」

 

「あの、予約してた者なんですが……」

 

確認を取ってもらった後、バイクの置き場を相談すると何となしに言われた。

 

「ああ、三角コーンの場所に置いてください。……他にもう一人バイクのお客が来るので、少しズラして」

 

なんという事は無い、予約していた私(と、もう一人)専用を示す三角コーンだったのだ。

拒絶などと、まったく私の早とちりだった。

件の三角コーンは宿のおじさんにドナドナされ、私は無事に正規駐車場にありつけた。

……さて、ここから地味に面倒くさい作業が始まる。

まず、サイドバッグから防水袋に入った荷物を取り出す。フェリーに持ち込んでいた荷物たちだ。

それとヘルメットを片手に宿を案内され、二階。よくあるビジネスホテルより少しだけ広い部屋に通された。

私は荷物を下ろすと、再びバイクへ。

二本の紐でバイクに縛り付けられたザック。自宅から凡そ27時間、遂にこれを解放する時が来たのだ。

宿の照明にギリギリ照らされない薄暗い場所で、せっせと荷解きを開始する。絵面は完全に盗人である。

横着して登山靴の紐を縛らずに出てきたので、紐を踏んで歩きづらい。

重いザックを抱えてえっちらおっちら、ようやく二階の部屋へ辿り着いた。

20:40。

移動距離は10kmにも満たないが、北海道に上陸してようやく一息つけた。

しばしベッドの上で放心する。

 

(まずは弁当を食べてしまうか)

 

先ほど買った弁当と、ソフトカツゲンにストローを突き刺す。

念願のカツゲンのお味は……、美味かった。

ヤクルトにミルクのマイルドさが加わったような優しい味だ。ゴクゴクと飲める。弁当よりもパンの方が合うだろう。

私は弁当も平らげると、少し休んでから大浴場へ向かった。

ここの風呂には露天風呂がある。北海道の寒空の下、熱いお湯はさぞ気持ちがいいだろう。

風呂場に着くと、幸いなことに誰も居なかった。貸し切りだ。

喜び勇んでシャワーを浴び、しばし浸かって体を温めると、露天風呂に向かった。

露天風呂は狭かった。人二人分ほどである。

壁に囲まれて景色はまったくないが、見上げた空には月が輝いていた。

よく晴れている。この調子なら明日は気持ちよく走れそうだ。

明日からいよいよ、本格的に北海道で活動する。

栄えある最初の目的地は、ここ苫小牧のとある場所。

標高1041m、支笏湖を眼下に収められる活火山、樽前山。

私の登山人生(生後4ヶ月)において、初の1000m級に挑むのだ。

 

 

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