深夜渡航   作:へるしぃーぼでぃ

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24.6/2─平尾台カルスト、九州高速350km縦貫

 

 

 

──6/2、5:30。

 

「あー、よく寝た」

 

清々しく朝を迎えた私は、カーテンの隙間から差し込む朝日で目を覚ました。

トイレを済ませて顔を洗い、再びベッドに座り込む。

朝食が6時なので、それまで道順の確認だ。

今日の行程は平尾台カルストという場所を軽く観光した後、高速に乗って旅の目的地、開聞岳の麓の民宿にまで辿り着く。

約350kmの道のりを、今日1日で一気に移動するつもりだ。

北海道の時より1日の移動距離が長い。高速を使うとはいえ、あまりにもなアホ日程である。

しかしこんなムチャな動きをしないと、3泊4日では開聞岳登山は難しかったのだ。またこの新門司港にまで戻ってこないとならないし……。

 

「贅沢を言えば、丸々1週間は休みが欲しかった……」

 

もうどうにもならない事をボヤきつつ、6:00。朝食ビュッフェに向かう。開店が早くてありがたい。

 

「うお。なんか人いっぱい居る」

 

食堂には早朝にも関わらず、結構な人だかりが出来ていた。

その内訳は小学生高学年……野球のユニフォーム姿が多くを占めている。

どうやら地元の少年野球団が泊まっていたらしかった。

彼らの最後尾に並んで、ビュッフェからご飯(しゃけ)味噌汁納豆漬物サラダと、和風なチョイスをお盆の皿に追加していく。

窓際の誰もいない席に着くと、監督らしい人が「それじゃあいただきます」と号令を掛けたので、私も軽い動作で一緒に会釈。

ワイワイガヤガヤと朝のホテルが喧騒に包まれる。たいへん賑やかでよろしい。

外は風もなく、カンカン日照りの快晴だった。眩しいぜ。

今日は暑くなりそうだ。

 

「ご馳走様でした」

 

さて、ゆっくり過ごすのもここまでだ。

米粒一粒残さず平らげた私は、目の前の団体より早く席から立ち上がって部屋へ戻る。

朝食を食べるためにこの時間までホテルに滞在していたが、時間的余裕を保つためにも早く行動を開始したい。

サッとツナギを来て、荷物を持ち、忘れ物ないかチェック。

鍵をフロントに返して外に出た。

 

「空気は意外と涼しいな」

 

外に出ると、想像していたよりも過ごしやすい気温だった。

昨日の夜は寒いくらいだったが、これならツナギ装備でも快適に過ごせそうだ。

 

「ようし、じゃあさっさと行きますか」

 

まだ静かな朝の駐車場に、エンジン音がよく響く。

目指すはここから意外と直ぐの場所、平尾台カルスト。

高速に乗る前に、九州の地をちょっとだけ観光と洒落こもう。

 

 

〰️〰️〰️

 

 

「というわけで一回の道間違えを経て、目前まで着きました」

 

年季の入った公衆便所のある、割と広い駐車場にて。

ホテルを出発して約1時間。

峠道を越えてきた私は、自販機で購入した缶コーヒー片手に寛いでいた。

私の他にも数台のバイクが停まり、厳ついおじさん達が自販機前のベンチに座って談笑していた。……ちょっとコーヒー買いづらかったです。

 

「さて、カルストはあっちか」

 

目的地目前で停まったのは、カルストへ続く道が想像より細かったからだ。

事前にルートは調べていたが、実際に見ると本当にあんなに広い空間へ繋がっているのかいささか不安になる道だった。

スマホ片手に缶コーヒーを飲みながら、道路を歩いて道を確認する。

 

「ふーん。本当に合ってんだ」

 

地図上の道程を同定してバイクの下へ戻った。

一気に標高を稼いだせいか、ちょっと寒気がする。微糖のホットがありがたい。

平尾『台』の名の通り、急峻な道だった。

以前に登った荒船山のような異様な地形なのだ、ここは。それを登山ではなくバイクで登ってきた感じである。

 

「まぁ、あんましゆっくりしてられる時間は無いし、さっさと行くか」

 

ほんのりまだ温かい(から)になったスチール缶を捨てて、バイクに跨る。

停車時間は5分ほどだ。どうせ直ぐそこでまた停まる。

 

「っうお、急に広くなったな」

 

小学校を過ぎると(こんな所に小学校があるのかよ……)、背の高い木々が無くなり一気に視界が開けた。

カルスト地形に入ったようだ。

少し道幅の狭い道路を走る。

 

「……まるで異世界だな」

 

そう感じるほどに異質な空間だった。

草原というには山。

山というには丘のような雰囲気。

そこらに点在する岩が動かない羊のようだ。

これが360°見渡す限りに広がっている。

高原地帯の景色に似ているが、どこか違う。不思議な感覚だった。

 

──7:50。

 

雲が少し多いが、微風で概ね晴れ模様の中。

茶ヶ床園地という、砂利だが広い駐車場にて停車した。

結構早く着いたつもりだったが思いの外、車が駐車していた。

開けた景色を見渡せばチラホラ遠くに歩いている姿が見えるので、早出した登山者たちなのだろう。

私も時間があればこの天空の原っぱを歩き回りたいところだが……っ。

開聞岳という目標を立てて来た今回、そんな時間的余裕はない。そこら辺をちょっとだけブラブラするのが精一杯だ。

というわけでそこら辺をブラブラする。

 

「ああ……どこまでも歩いていってしまいそうだ……」

 

登山を初めてから、歩いて移動する事に躊躇いのない私である。

しかも場所は日本三大カルストに数えられる魅惑の大地。そりゃ練り歩きたくもなる。

バイクから離れて歩いていくと、草むらの中、色んな方向に人一人分の細い道が伸びていた。

私はその内の一本を歩いていき、そのままずっと歩いていきたい衝動を抑えて途中で止まった。

 

「マジ見渡す限り草原だな」

 

動画を撮りながら、見知らぬ世界に迷い込んだような錯覚にひと時、酔いしれる。

 

「あークソ。もっと時間があればゆっくり観光出来たのに」

 

この天空の散歩道は言わずもがな、ここら辺には何ヶ所も鍾乳洞の洞窟があるのだが、どれも9時からの営業だ。流石にそこまで待ってられない。

カルスト成分だけを味わいにここに来たのだ。これで満足せねばならない。

くぅっ。観光はもっとゆっくり、時間を気にせず過ごしたい。会社辞めるっきゃねーな。

 

「やはり労働は悪」

 

有給を取っておいて何だが、やはりそう結論せざるを得ない。

……ふっ。折角こんな所まで来て会社のグチだなんてやってらんねーので、バイクに戻る。

すると隣に駐車していた車から出てきた年配のおじさんに絡まれた。

おじさんはバイクのナンバープレートを見て「ほぉ群馬!?」と反応した。

 

「おー兄ちゃん群馬から旅行かい!?随分遠くから来たねぇ、これからどこ行くんだい!?」

 

マシンガントークおじさんだ。朝からテンション高いなぁ。

一歩引いたところで奥さんが黙ってこちらを見ている。「この人はまたダル絡みして……」みたいな視線だが、こちらは喋りかけてすら来ない。そう思うならちょっと助けてよ奥さん。

適当に相槌を打ち、無邪気なおじさんトークが続く。

 

「お、鹿児島行くんか!?ならあそこら辺に美味いうどん屋があってなぁ。~~屋って名前なんだけど、良ければ寄ってくんない!」

 

「ありがとうございます。機会があったら寄ってみますね」

 

オススメの店をめちゃくちゃ紹介してくれたが、勢いが強すぎて正直全然覚えてないです。せめて地図アプリとかで表示してくれません?

せっかく教えて頂いたが力及ばず、辿り着けなさそうだ。申し訳ない。

 

「じゃあ気ィ付けてな!」

 

ふぅ。ようやく解放された。嵐のような人だったな。

夫人の方は我関せずだし、あれがあの夫婦の日常なんだろうな。

 

「さて、結構ゆっくりしちゃったけど大丈夫かな」

 

一応、9時くらいに高速に乗れればなんとかなる計算で動いている。

平尾台カルストを来た道から下りてちょっと行ったところにICがあるので、そこから一気に爆走開始する予定だ。

エンジンを掛けるとオススメおじさんから手を振られたので、振り返しながら私はカルストを後にした。

次は絶対にもっとゆっくり観光してやるからなっ。

 

「んで、ちょっと気になってた所があったんだよな」

 

小学校を通り過ぎ、いざ峠道を下りる前になって。

一本道を曲がった先に、『平尾台自然の郷』なる場所があったので、チラッと寄り道してみる事にした。全然観光し足りませんでした。

そこは周囲より小高い丘のようになっているので、もしかしたらカルストを遠目から眺められるかもしれないと思ったのだ。

 

「……と思ったけど、やっぱ入れんか」

 

そこはキャンプ場も併設されており、いくつもの家族連れが施設内に居たが入口は閉鎖されていた(多分。一見では入口が分からなかった)。

 

「ぐうぅ。仕方がない、さっさと高速に乗ろう」

 

私は幅の広い道路上で切り返し、元来た道を戻った。無念である。

そうして峠を速攻で下り、麓のコンビニにて一旦停車する。

 

「高速乗る前に、ガソリンどっかで容れてぇな」

 

高速道路のガソリンは高いからな。旅行中に金の心配はナンセンスとはいえ、出来れば安く抑えたいのが人の性だ。

検索すると丁度ICの手前にガソスタがあったので、営業中だという事をしっかり確認して向かう。

反対車線側なのが気になるが、まあ何とかなるだろう。

コンビニを背景にカルストが聳える峠の写真を撮り(写真が下手すぎて、ただコンビニを映した写真になった)、私は後ろ髪を引かれる思いでカルストを後にした。

機会があったらまた来るぜ、平尾台カルストっ。

 

「……案の定、中央分離帯か」

 

数分後。

目当てのガソリンスタンドを見つけた私だったが、片側二車線の幅広道路はガッツリ中央分離帯で阻まれていた。第3種第1級の道路め、やってくれるなっ。

一度通り過ぎ、テキトーなところを曲がって来た道を戻る。

そして無事にガソリンを補給したら、また曲がれる所で曲がって元の道に戻った。

ETC緑ランプ、ヨシ。荷物の固定、ヨシ。ガソリン満タン、ヨシ!

これにて準備万端。高速乗るぞっ!

 

──9:20。

 

「アイスうまっ」

 

高速道路に乗って数十分と経たず、古賀SAにて早速休憩に舌鼓を打つ私が居た。

筑紫もちそふとなる、きな粉と黒蜜のたっぷり掛かったカップソフトクリームを頬張る。埋もれている餅に全てを絡めて食べるとうまい。

 

「もうすっかり暑いな」

 

日も完全に昇り、夏の雰囲気が香ってくるようだ。暑気払い、暑気払い。

今回は開聞岳に狙いを定めて一直線のため、せめてもの観光として通りがかるSAはすべて寄るつもりだ。

どこ寄っても初めて寄るSAだしな。新鮮みは十分である。

串に刺さったデカい練り物(名前は忘れた。見たことないヤツだった)も食べつつ、エネルギーをチャージ。

 

「これじゃあSA食い倒れツアーだな」

 

朝メシはしっかり食べたが、登山を始めてから食べる量を意識的に多くしている私である。

お陰で胃袋が大きくなったのか、まだまだお腹に余裕はあった。

次行くぞっ。

 

──10:30、広川SAでは小籠包を食べた。

 

「なんか人が多いな、ここは」

 

プラパックに詰められた小籠包にカラシと醤油を垂らして頬張る。

肉汁が口内に迸り、うまい。

けっこう厚めの生地も好みだ。カラシがよく合う。

家族連れや友達同士でワイワイ賑わうフードコート内で、私は目の前の小さな包みに思いを馳せていた。

 

「意外と一個がデケーんだよな」

 

モグモグしながら周りを見渡す。

他にも色々食べたいのがあるが、小籠包のような軽くつまめるモノではなく『一食』という感じなので、ここではコレだけに留めた。

胃が拡張されているとはいえ、大食漢というほどではないのが惜しい。可能ならば腹具合を気にせず食いたいものを食べまくりたいものだ。

 

「次行くぞ!」

 

食べ終えたらさっさと移動だ。忙しない旅程である。

そうして再びの高速爆走タイムなのだが……

 

「アカン……眠たくなってきた……」

 

単調な高速道路の道のりは、私に睡魔をもたらしていた。

時速100kmの爆風を浴びながら運転してて眠くなるワケないだろと思われるかもしれないが、人間慣れるものである。

比較的朝が早かったこともあり、ヤバい……眠すぎる……っ

 

「!?、うお、危ねっ」

 

カクン、と一瞬意識がトんだ。

これは非常にマズい。次のSAまでまだ距離があるんだぞ。

 

「よし。ッ〜〜♪(歌)」

 

テンション上がる曲を脳内再生し、ヘルメットの中で音程を気にせず大声で歌う。

 

「〜〜♪(歌)ッ〜〜♪!!」

 

歌詞とか覚えきれてないから大部分が鼻歌だが、それでもテキトーに声を出す。今は目を覚ます事が重要なのだ。

そんな感じで熱唱しながらなんとか意識を保ちつつ──11:30、北熊本SAに無事辿り着いた。

 

「あークソ眠い!ちょっと長く休憩だな」

 

程よく満たされているお腹と、ぬるま湯に浸かっているくらいの気温がタッグを組んでいる。

何か意識を覚醒させる一打をここで見付けねばっ。

.24年この時、この北熊本SAはリニューアルの真っ只中だったらしく、ちょっと規模が縮小されていた。

本当はここでガソリンを補給したかったが、その影響なのか生憎と閉鎖中。まぁ何とかなるだろ。

涼を求めてプレハブ小屋の売店に寄る。

 

「さすがにもうそこまでお腹は減ってないな。……でも一口甘いの食べたい」

 

というわけでレジ横にあった、あんこ満載のまんじゅうみたいなのを購入。

薄皮にギッチリあんこが詰まってる。おいしい。

 

「でもこれじゃあ糖分補給だけで、目覚ましにはパンチが足りん」

 

もっと何か無いのか。

道のりはまだ長い。これではまた睡魔に襲われてしまう!

 

「ッ、そうだ。炭酸を飲もう」

 

以前、調べた事がある。

炭酸を飲むと血流が促進され、乗り物酔いや眠気覚ましに効くと。

これだ。

自販機大国・日本の腐るほどある飲料自販機のラインナップには、100%炭酸類が売っている。

この際炭酸なら何でもいい。目を覚ます一助になれば。

私は自販機コーナーに向かった。

 

「い〜いのが売ってるじゃないの」

 

おあつらえ向きに、ローヤルゼリー入りのエナジードリンクがあった。

これで勝つる。

ドガチャンと購入物が無慈悲に落下し、キンキンに冷やされたアルミ缶を手に取る。

カシュ!と弾き、一気に呷った。

 

「んぐ、んぐ、んぐ……ぷは!爽快感たまんね〜!」

 

口内は多少ベタつくが、飲んでる時の爽やかさは異常。

心なしか目も覚めてきたっ。うおおお!

 

「ふぅ。腹キツい」

 

炭酸で腹が膨れてしまった。後はチビチビ飲もう。

バイクを停めた縁石に座り、ボーッとする。

晴れ渡る青空の下で、アルミ缶の結露した水が地面に吸い込まれていく。

スマホで道程をチェック。

 

「まぁ大体半分くらいの位置か。……遠いな」

 

遠いが、逆に言えば半分を走破したと言える。

時間も正午手前だし、中々順調なのではないだろうか。

 

「それにしても、九州は山だらけだな」

 

高速から覗ける周りの景色は、ほぼ山ばかりだ。平坦な土地がない。

知識として九州は山ばかりなのは分かっていたが、実際に見ると改めて思う。

そこまで標高のある山は無いが、あまりに山だらけなので窮屈な印象であった。

 

「登山してなかったら、つまんねー景色だったろうな」

 

ニワカながらアルピニストになった今、山を見ると「うほっ、イイ山だ」と登る前提で考えるようになった。

お陰で景色の見方が変わり、世界がひとつ美しくなった。

山を登って思いがけず良かった事のひとつだ。

 

「うし!飲み終わったし行くか」

 

炭酸覚醒ブーストはあくまで応急処置だ。効果は短い。

炭酸を飲むと腹も脹れてしまうし、あまり乱用できるワザじゃない。今の内に行くぞ!

プレハブ小屋の前に鎮座するくまモン像(ゴミ箱と同じくらいの大きさ)に別れを告げ、私は出発した。

 

──12:20。

 

次の宮原SAに無事に辿り着いた私は、試食でからし蓮根を試していた。

 

「ッ辛!……ちょっと、食えそうにないっスね」

 

試食させてもらって悪いが、ちょっと私にはキツかった、からし蓮根。

……いや、本当はそこまで辛くなかった。けどこんなにカラシが練り込まれたモノを食べる事に抵抗があった。穴という穴に詰めすぎだろ。

恐れをなした私はそそくさと退店。

口直しにタコの唐揚げを食べながら、ここら辺でガッツリ昼メシを食べる事とする。

「いただきます」

 

というわけで昼メシは熊本ラーメンを食した。

空腹具合はぶっちゃけそれ程でもないが、ラーメン欲があればイケる!

このガツンとした味が堪んねぇぜ……ッ!

そんな感じでラーメンを堪能する私の周囲には、ラグビーでもやっていそうなガタイの良い集団が同じくラーメンをガツガツ食べていた。

非常にむさ苦しい。

彼らは食うのがメチャクチャ早く、私より後に来たのに先に席を立ち上がって行った。ふーむ、生物が違う。

 

「ふー、ご馳走様でした」

 

ちょっと満腹気味な腹を擦りながら、完食。もう後は夕飯時まで何も食べなくていいな。

さて、食休みしながらルートの再確認だ。

もうしばらく走ったら、ようやく高速から下りる段になる。

そこから一箇所だけ寄り道した後、目的地である開聞岳の麓の民宿に着く。

この調子なら空が夕日に染まる頃には到着するだろう。下道になったら何回か道迷いが発生するだろうが、まぁ概ね予定通りだ。

とはいえ、迷わず行けるに越したことはないので入念にルートをチェックする。

 

「よし、まぁ行けるやろ」

 

口内の油分を水で洗い流してサッパリしたところで、SA食い倒れツアーを〆た。

高速道路を再び巡航する。

 

「……んー?ここら辺だったか?」

 

そこから1時間ほど高速──高規格道路の南薩縦貫道を走ってしばらく。

私は曲がり時を見失っていた。

宮原SAでしっかり確認していたハズの、寄り道へ至るICの名前をド忘れしてしまったのだ。

今まで幾度となくこうして道迷いを発生させているので、その度に水性マジックでタンクに文字を書くのをマジで検討している私だ。結局書いた事はないが。

 

「もういいや。ここで下りちゃえ」

 

もうテキトーな立体交差地点で下りる。

幸いにも下りてすぐ、寂れた商店の前に自販機コーナーがあったので停車。

ここまでずーっと高速移動して来たので、穏やかな風に耳鳴りがする。

飲み物を買いながら、軒下で日を避けながら現在地を確認すると、私は驚いた。

 

「うお、ドンピシャじゃん。やったぜ」

 

まさかの予定通りの場所だった。

……フッ、やはりな。ICの名前、見覚えあると思ってたんだよ。私の頭はしっかり覚えていたようだ(うろ覚え)。

しかも自販機の相向かいには、私が最初に寄ろうと計画していた、本日は休業日の精肉店が。

ここから30分ほど移動した場所に他に目を付けた営業中精肉店があるので、私はそこに寄り道するのだ。

目的はただひとつ。

 

「よーし。鳥刺し食いに行くぞ!」

 

 

 

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