深夜渡航   作:へるしぃーぼでぃ

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6/4─阿蘇カルデラの大観峰

 

 

 

 

「うーーん……よく寝た〜」

 

テント越しに薄明の光が差し込む。

風もなく、外は快晴だということが確認せずとも分かるような穏やかな空気が流れているのを感じる。

そこで私はようやく気怠い体を起き上がらせた。

目は覚めていたが、外はまだ暗かったのでシュラフの中でずっとモゾモゾしていたのだ。

夜中にネコと思しき存在をテントの外に感じて目が覚めたが、地面をひと叩きすると逃げていったくらいで概ね快眠だった。

 

もうそろそろ起きねばなるまい。

 

緑のテントが淡く光り輝き始めて、そこそこの時間が経っていた。

 

──6:30。

 

サンダル履きの足を朝露で濡らしながらトイレに行く。

顔を洗い、テントに戻る途中、登山道を示す看板を見つけた。

 

「ん?ここって登山も出来たのか」

 

どうやらこのキャンプ場、登山口でもあるらしかった。

刀剣山。

中々にカッコイイ名前である。

看板には山の行程が書かれており、やる気になれば今からでも登れそうな山であった。正直行くかどうか迷ったが……

 

「ここ電波入んないから、ヤマレコで山行計画立てられないしなぁ。そもそも突発的な登山アブなすぎる」

 

あまりにも無謀なので直ぐに諦めた。

それに焼酎の余韻が尾を引いている。二日酔いでは無いが、登山が出来るコンデションでもなかった。

大人しくテントに帰ろう。

そう思った時、背後からエンジン音が。

 

「え。誰か居たのか」

 

トイレの方向、ロッジが連なるゾーンから軽自動車が一台走ってきた。

その車は私の傍らを追い抜いて行き、そのまま坂道を登り切ると敷地外へ出ていった。

静寂が訪れる。

 

「……一体いつから居たんだ?」

 

昨日、キャンプ場内をひと回りした時は人の気配は無かった。

走っていった軽自動車は確かにロッジの片隅に鎮座していたが、生活音は皆無だった。

この山に囲まれた静かな渓谷の中、ネコの足音ですら響く中で一晩を明かしていたのか。忍者かな?

 

テントに戻った私はお湯をたっぷり沸かし始める。

 

朝食は袋麺のラーメンだ。……確か。

ここら辺まで何を食べたか曖昧である。

傍に転がるカラの瓶のせいだろうか。慣れない焼酎で記憶がトんだかもしれない。

瓶の周りには小道具が散乱していた。ぺちゃんこなザックはシュラフの足下に転がっている。

 

「片付けメンドくせぇ〜」

 

朝から憂鬱な気分になりながら朝食を摂取。

食べ終え、気怠い体に鞭を打って撤収作業に入る。

シュラフを丸めてねじ込み、小道具をあらかたしまい、膨らんだザックを外に放り出してテントを畳む。

 

意外と結露の量は少なかった。ありがたい。

 

だが地面の芝は濡れていたので、東屋の広いテーブルの上でテントを丸めていく。せっかく濡れていないのだからムダに濡らしたくなかったのだ。

行儀が悪いのは認める。しかし誰も居ないので大目に見てもらいたい。

ほぼ片付け終え、ひと息。

朝食時に沸かして水筒に詰めておいたお湯でコーヒーを淹れる。

 

「ふぅ。……今日で帰るのか」

 

本日、長いようで短い旅の最終日である。

今夜23:00便の新門司フェリーに間に合うよう行動しなければならない。

出来れば二時間前には到着しておきたいから、タイムリミットは21時だ。

 

「ま、全然余裕だな」

 

現在地は鹿児島県垂水市。

初日の大移動とほぼ同じ距離感だが、21時までの時間をすべて移動に使えると思えばまったく問題ない。お釣りで観光できるほどだ。

 

今日は北上しつつ観光しつつ、がスローガンだ。

 

観光する場所は昨日の夜、民宿でメモにピックアップ済みだ。

 

「とはいえ、あんまりゆっくりする時間は無いか」

 

コーヒーを飲み終え、立ち上がる。

すでに7:00は回り、ツーリングの初動としては遅い方だ。

観光の時間を確保するためにも、もう出発した方がいい。

ザックをバイクに括り付け、紐のテンションを確認。

エンジンを唸らせる。

 

「今日も一日頼むぞ。……そういえば」

 

私は足回りを確認。タイヤには何も問題なかった。

ネジの刺さった修復跡がポッコリ膨らんでいるだけだ。

この開聞岳以降、私はバイクに乗る前にタイヤの状態をチェックするのがルーティンになった。ネジ怖い。

問題ないことを確認し、最後に忘れ物がないか芝生を見渡す。

立つ鳥跡を濁さず。

地面は物は無く、東屋にも置き忘れはない。テン泊許可証もポストに投函したし、完璧だ。

 

「よっし行くか」

 

開聞岳遠征最終日の帰路に、私は就いた。

 

 

 

〰️〰️〰️

 

 

 

「あれは噴煙……か?」

 

──8:00。

山から人里に下り、潮の匂いが入り混じる中。

清々しい朝の空気を切り裂いて堪能していると、目の前の桜山の噴火口に分厚い白い雲が掛かっていた。

噴煙なのか雲なのか判別がつかない。

交通量が少なかったので路肩にバイクを停め、そんな桜島を目納めた。

 

「次はもっとゆっくりじっくり過ごしたいもんだな」

 

足湯とビジターセンターしか観光していないのだ。桜島にはまだまだ見所はたくさんある。

また鹿児島に来る口実が出来たとでも思っておこう。

 

「……しかし、ちょっと肌寒いな」

 

ブルリと身を縮こませる。

関東民からしたら常夏のイメージがある九州とはいえ、6月の早朝と夜間をバイクで走るにはツナギは薄すぎた。

まぁ日中になれば暖かくなっていくだろうと思い、特に着込んだりせず再出発する。

まず目指すは霧島市。

桜島とは逆方向に錦江湾を海岸線沿いに進み、至る霧島市にて給油した後、高速に乗るのだ。

 

「デッケェ橋」

 

垂水市から飛び出して、直ぐ。

桜島と大隈半島を繋ぐ橋──牛根大橋を渡った。

海面からの高低差がそこそこあり、見た目以上にデカく感じる。そして一見普通の橋だが、後述で存在感の高さがあって印象深かった。

それを通り過ぎた後、道の駅があったので早速寄り道と洒落込む。

 

「ま、流石にまだやってないよな」

 

一応寄ってみたが、平日の朝8時。当然、施設は開店前だった。

とりあえず自販機であたたか〜いコーヒーを買い、チビチビ飲みながら徘徊する。

 

「お。足湯がある。入ってこうか……な……」

 

桜島の公園でもあった足湯に、朝から浸かる贅沢な時間を過ごそう──……と思って堀を覗いてみたら、お湯どころか水すら流れていなかった。

どうやら足湯も開店時間と同時らしい。

私はアホみたいに虚無の足湯ゾーンの前に立ち、コーヒーを啜った。

 

「よし!さっさと行くか!」

 

現在地は尚も鹿児島圏内。

まだまだ時間は有り余っているとはいえ、あまり余裕ぶっこいてもいられない。

私は空き缶を捨て、颯爽と公道へ出た。

 

「湾岸線って言っていいのかな、この道路」

 

錦江湾を眺めながら進む。

地形だけなら東京湾と似たようなものだし、ここは湾岸道路と言っていいだろう。朝イチで人通りが少なくて軽快に走れるし。

そんな湾岸沿いの道路だからか、牛根大橋の姿が遠目に途切れずずーーっと見えている。

湾を挟んだ向こう側なので、距離以上に遠く感じるのだ。

たった数十分前にあそこに私が居たのが信じられない。

こうして見るとやっぱりデカいんだな、あの橋。

 

そんな感じで気持ちよく走ること数十分。

 

高速に乗る前に折り良くあるガソリンスタンドで給油し、ICに入った。

建設中なのか改装中なのか、鹿児島を出るまでの区間は片側一車線で重機などが散乱していた。

 

「さすがに桜島は見えないか」

 

もしかしたら左手に桜島を拝めるかなとチラチラ気にしていたが、何も見えず。

あえなくJCTにぶつかり、私は鹿児島を後にした。

 

──9:30。溝江PAにて。

 

「気温メッチャ上がってきたな」

 

私は抹茶アイスクリームを頬張りながら、まったりイートインしていた。

気温は上がったきたが、高速を走る爆風は少し肌寒い。

しかしこうして止まると暖かい気候なので、アイスが美味いのだ。完全に私の服装の問題である。もっとレイヤード変更できる服装にしてくれば良かった。

そういえばイートインと持ち帰りで税金が変わってくるシステムがあった気がするが、今どうなってるんだろう。もはや誰も気にしてない気がする。

 

「しかし美味いな、これ」

 

注文したカップのアイスクリーム。

オーソドックスなミルキーのアイスに、抹茶の粉がふんだんに振りかけられている。粉がカップの縁に乗り、少し零れてしまっている。

傍らにはサクサクの抹茶クッキーが添えられ、これをアイスと共に口に運ぶとハーモニーが奏でられた。

休憩に丁度いい甘味である。

 

「ふぅ。ご馳走様でした」

 

伸びをしながら店を後にする。

人が少ないのも良かった。まだ比較的早い時間だからか、客は数える程しか居なかった。

コンビニみたいな様相の店舗だが、ご飯ものが充実していて良い場所だった。

腹が減っていれば何かガッツリ食べたかったが、この後の予定している昼メシのためにガマンである。

 

──その後は一気に移動する。

 

ノンストップで高速道路を駆り、熊本県に突入したところで下りる。

訪れるは道の駅、大津。

 

「なんかバイクが祀られてる」

 

ちょっと休憩に立ち寄っただけなので知らなかったが、どうやらここはオートバイ神社があり、ライダーの聖地らしい。

オートバイ神社とは何ぞや、と缶コーヒー片手に遠巻きに眺めるが、そこまで興味が湧かなかったのでスルー。

バイクに乗っている私だが、別にそこまでライダーとしての矜持的なのは持っていないのだ。

バイク乗りとして最低限の原動機等の勉強はした方が良いとは思いつつも、何もしていない志の低い私である。

それよりも今は食欲だ。

 

「いい感じにお腹減ってきたな」

 

ここの道の駅は食べ物が盛りだくさんだ。

スイーツやレストランが併設され、私の食欲を刺激してくる。

特にあか牛丼。

これをここで食べようか本当に迷った。

しかしこの先、阿蘇カルデラの(いただき)で同じようなメニューを食べようと画策しているのだ。

なのでここで食べるのはまだガマンだ。ガマン……

他にも工芸品などを冷やかしつつ、空腹を極限に高めた状態でバイクに跨る。

いざ、ミルクロードを介して阿蘇カルデラへ。

から芋のたい焼きくらいは食べても良かったなと今は思う。

もっと大食漢になれればこうして腹の調整などしなくてもいいのに……と思わずにはいられない、午前の穏やかな日差しだった。

 

 

 

〰️〰️〰️

 

 

 

「ミルクロード最高だな」

 

草原が広がる、右に左にワイドな道幅。バイクで走る為の道だと言われても納得しかない。

 

──熊本県道339号北外輪山大津線。

 

走りやすすぎる道を行き、グングン高度が上がっていく。

始めは樹林が立ち並ぶ普通の山道だったが、進むにつれ背が縮んでいく。

そして飛び出す、快晴の下、見渡す限りの草原。

 

「おお!絶景だな」

 

丘陵地帯と言えばいいのか、しかし丘と言うにはあまりにデカすぎるスケール。

尾根の上をバイクで走っているのだ。こんなの気持ち良くないわけがない。

あまりにも気持ちよすぎて、道中全てのビュースポットを総スルーしてしまった。

……いや本当、どこで止まっても絶景なのだ。絶景が果てしなく続くから逆に止まる必要が無いのである。

それよりもバイクで風を切りながら眺める方がイイ。

 

「すげぇ……!走りに来てよかった。時間もまだまだ余裕あるし」

 

時刻は昼時。

一回も立ち止まることなく走り続けた私は、目当ての店に辿り着いていた。

 

「お。アレだな。けっこう人が居る」

 

阿蘇カルデラ外輪山の、頂上の一角。

そこに広々とした砂利の駐車場が設けられ、観光客でそこそこ賑わっていた。

私もその中に混ざって停まり、ヘルメットを脱ぐ。

風が少し強く吹いていた。

 

「よーし。食べれるかな?」

 

早速お目当ての店へ。

景色よりもまずは食欲だ。絶景を堪能する前に、まずは腹を満たそう。

店の外観はちょっと営業しているのかパッと見で分からないような出で立ちだが、店内は人がそこそこ居た。

意を決して入ると、出迎えてくれたのは雑誌だった。

椅子やテーブルに積まれた雑誌。

手に取って確認はしてないが、観光案内系の本だった。雑多に置かれたそれらは昔ながらの飲食店を彷彿とさせた。

 

「いらっしゃい。何名様?」

 

店員に案内され、窓際の席に着く。

本来なら昼時はバイカーで混む時間帯だが、平日とあって待ち時間無しで通された。

 

「注文お願いします」

 

事前に決めていたメニューをスマートに注文し、窓の外を見やる。

現在地の標高は900m越え。

山々に囲まれた盆地の中に並ぶ街並みが見下ろせる。最高のロケーションだ。

窓の向こうのパノラマはまさしく絶景と言ってよく、窓際の席に座れたことを感謝した。

 

だが景色に見蕩ればかりはいられない。

 

景観を楽しむのもそこそこに、この先のルートを再確認。

私はバイクにナビの(たぐい)を取り付けていないので、停車中に道をある程度覚えなければならないのだ。

まぁ道に迷うのも一興ではあるが、迷うにしても新門司港(終着点)までまだまだ距離があり過ぎる。

昼メシを食べたらもう少しカルデラの景色を楽しみたいので、道迷いはなるべく避けたかった。

そんな感じで景色とマップに交互に顔を向けていると、頼んだメニューがやってきた。

 

「お待たせしました。倍喰(バイク)丼です」

 

頼んだのは定食、あか牛丼だ。

ツーリング阿蘇グルメの筆頭らしく、確かにバイカーを狙い撃ちしたネーミングである。

 

「美味そう……」

 

厚切りなレアで提供される、幾重にも重なる牛肉。

その上には白髪ネギと半ナマの卵が乗せられ、彩りも良い。実に食いでがありそうだ。

 

「いただきます」

 

私は水を一口、添え物のサラダをサッと食い、早速肉を一枚いただいた。

 

「……うまい!」

 

噛むと牛肉の甘い味が染み出てくる。レアな肉の滑らかな舌触りが良い。

甘じょっぱいタレも米によく合う。噛めば噛むほど食欲が唆られた。

途中で小鉢の漬物でリフレッシュしつつ、食べる。食べる。食べる。

私はここまで昼メシを我慢してきた自分を褒めた。空腹は最高のスパイスであるからだ。

本能のままにガツガツ食べ、私は牛丼を瞬く間に平らげた。

 

「ふぅ。……ご馳走様でした」

 

米一粒、肉片の欠片も残さずに完食。

満たされたお腹の幸福感に酔いつつ、しばし黄昏れる。

しかし店内の人口密度が割とパンパンな雰囲気だったので、さっさと出る事にした。

 

「ん?これは……」

 

会計を済ませていると、金銭トレーの傍らに『展望台利用100円』の文字が。

店員に聞くと、店を出てすぐ横にカルデラを一望する場所があるという。

有料なのは少々癪だが、折角なので行ってみる事にした。

外に出ると、食べて体温の上がった体に吹きすさぶ風が心地良い。

私は簡素なゲートを潜り、展望ゾーンに向かった。

 

「へぇ。まぁ100円くらいは払っても納得な展望だな」

 

細い尾根の上を歩く。これだけでもう気分が良い。

周りに遮るものは皆無。まるで空に飛び出さんばかりに道だけが続いている。

展望所には5分も経たずに着いた。

 

「おお。こりゃ絶景だ」

 

簡素なデッキがあるだけの展望台。

だが正面には阿蘇カルデラの地形がズラリと並び、壮観の一言だ。

左右には無限に広がる草原。

他には何もない。だからこそ良い。

100円とはいえ有料とあってか、人も来ない。中々に穴場スポットではなかろうか。

お陰で食後の小休憩をのんびり取れた。

 

「おっと。人が来たな」

 

独り占め時間は終わった。

タイムリミットがある私としてもあんまり長居するのは良くないので、ここら辺でお(いとま)する事にする。じっくり堪能したしな。

 

「なんかハート型に刈られてる」

 

帰り際、草原の斜面の一部がハート状に禿げていた。うーん……個人的にはあまり人の手は加えて欲しくなかったな。

まぁ、そんな事言ったらこの草原も野焼きによって維持されているから人工的なのだが……

観光地の宿命だなと思いつつ、私は駐車場に戻った。

 

出発する前に、道路の対岸に渡る。

 

そこには簡素で新しめで小さめな鳥居と祠があり、北山バイカー神社と書いてあった。

ご利益はちょっと無さそうだが、一応はバイカーなので詣でておく。これから阿蘇カルデラを爆走させていただきます。

 

「よし、行くか」

 

バイクを発進させ、明瞭なカルデラの大地を駆け抜ける。

道は尾根伝いなので迷う心配もない。

信号ももちろん無いので、次の目的地にはすぐに着いた。

 

「うお。結構人が居るな」

 

流石は阿蘇随一のビュースポット。平日にも関わらず、駐車場には遠目から見ても車が所狭しと並んでいる。

頂上に近いほど混雑していたので、私は一番遠い砂利の駐車場に停車した。

歩くのは苦ではない。それよりも混雑のトラブルを避ける方が旅には重要だ。

 

「ま、一番近い所に停めても大観峰(ビュースポット)まで結構歩くけどな」

 

登山とまでは言わないが、キツめの傾斜を行くことになる。

外国人だらけの観光客たちはひいひい歩いていた。頑張れ頑張れ。

お土産屋をザックリ冷やかし、まずはお目当ての大観峰へ。

ワクワクしながら登り、少々心拍数が上がりかけた頃。

大観峰の頂きに着いた。

 

「うおお!最高にいい景色!」

 

景色ならさっきの北山からも眺めたが、角度が変わるとまた違った楽しさがある。

それにコッチの方が標高も高いし、今度は360°の大パノラマだ。

程よく浮かぶ雲たちが、強風で凄いスピードで流れていく。

澄んだ青空に若々しく萌える緑の大地。

眼下には市街がミニチュアのように置かれ、まさしく『大観峰』の名を表していた。

これが世界有数の規模を誇るカルデラ、阿蘇カルデラ。

 

「ていうかちょっと待て」

 

現在地も山の上なのに、向こうの景色にはさらに聳える山が見える。山の上に山があるのか?

なんだか山だらけで視覚が麻痺してきた感じがする。

スケールがデカい。まるで海外に居るようだ。

 

私はしばらく景色に見蕩れた。

 

頂上は広く、色んな方角を堪能できて本当に飽きないのだ。

大観峰の名が刻まれた石造りの石碑をバックに景色を撮ろうとしたが、外国人観光客が中々離れてくれずだいぶ待ったり。

草原の中に細い道が幾筋も伸びているのだが、通っていいのか分からず眺めるに留まったり。

 

自分でも意外なほど長居してしまった。

 

喉の乾きを感じてようやく帰るかと思い立ち、帰路に就く。

土産物屋で飲み物を買い、バイクの下へ。

 

「風が強いな」

 

ずっと吹きさらしだったのでちょっと寒い。

仮にも山の上であるし、やはりツナギの服装はちょっとナメ過ぎていたようだ。

 

「さらば大観峰、阿蘇カルデラ。めっちゃ良い所だった」

 

エンジン音を風に攫われながら、私はようやくカルデラを後にした。

さあ、帰ろう。

 

 

 

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