夏油転生~異世界行ったらポケモ〇マスター~ 作:らららん
こいつ基礎スペック高すぎじゃね?
ルーデウスは愕然とした。
今日からこいつも鍛錬に参加するからよろしくな、と父パウロから紹介された。ルーデウスと同じぐらいの年の子、ルーグス。
最初、ルーデウスはいい弟弟子ができたな。と純粋に喜んでいたのだが、それは鍛錬が開始して僅か数秒でなくなった。
「フッ!」
「ハッ!」
現在、パウロと彼が打ち合っているのだが、ルーデウスの目では追いきれない。どちらも速すぎるのだ。
「えー、そんな馬鹿な………」
「ハハッ、やるなルーグス! その年でこの強さとか、バケモノかよ!」
「ありがとうございますッ! でも、そのバケモノの攻撃を軽く凌いでるアナタは魔王ですか!?」
「魔王じゃねェ! 元Sランク冒険者だッ!」
パカン、とはじかれる木剣。持ち主は彼だ。
彼は流れる汗を拭わぬまま地面へ大の字になる。どうやら疲れたようだ。
「まぁ、その年でバケモノ染みてるってだけだ。まだまだ俺には勝てねぇよ」
「はぁ……はぁ………ありがとう、ございました」
「おう、じゃあ次はルディだな。かかってこい!」
いやかかってきたくない。もうやめたい。
しかし、良い笑顔を浮かべたパウロから逃げることは出来ず、ルーデウスは(剣で)パウロに弄ばれた。
◇
「なぁ、今まで剣の稽古したことないってホントなのか?」
「うん、喧嘩ぐらいしかしたことないね」
「それにしては………強くないか?」
「ありがとう。ボク最強だから」
「なんだそれ」
鍛錬が終わり、ルーデウスと彼はお互い親睦を深めるため喋っていた。
打てば響くように、小粋なジョークを言う彼とルーデウスは気が合った。
最初、ルーデウスは彼を好きになれないだろうと考えていたのだが、それを忘れる程お互い話した。
ここで一つ、ルーデウスと彼の間で同じ疑問が生じた。
精神年齢の高い自分と話が合うこいつは、転生者なのではないか。
ルーデウスは自分からその話題を出すか迷った。彼は臆病なのだ、それもさっき会った相手になんと尋ねればいいのか分からない。
『君、もしかして日本人?』
彼は平気で尋ねた。
彼の百ある座右の銘の一つに、『聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥』という言葉がある。つまり、聞かないより聞いた方がいいよねということである。
『………あぁ、そうだ。やっぱり日本人だったか』
ルーデウスは少し迷ったが、本当の事を言うことにした。嘘を吐いたところで、メリットがないからだ。
「いやー、よかったよかった。違っても別に困らないけどよかったよー、同郷がいて嬉しいなー」
「なんか棒読み……まぁいいけど。正直お前は分かりやすかったな、その見た目はザ・日本人だし」
彼は黒髪黒目、堀の浅いアジア系の人種だ。堀の深い顔立ちをしている周りと比べて、彼の容姿は目立つ。
だからこそ、ルーデウスは彼を転生者だと疑ったのだ。
「話変わるけどさ、この世界ってゲームの世界なの?」
「は? どういうことだ?」
「いや、だってゴブリンとかエルフとか、前世のファンタジーゲームでよく出てたじゃないか。それがここにもいるって、明らかにおかしいだろう?」
確かに、とルーデウスは思った。
今までそれが当然と考えてきたが、おかしい。あまりに前世の創作で出てきたようなモノがありすぎる。まるで、ゲームの世界に迷い込んだようだ。
「考えたことなかったな………」
「あれ、なんだ君も知らないのか。ワタシは夏油として生まれ変わったから、君もゲームか漫画のキャラに生まれ変わったものだと思っていたんだけど」
「え、ゲームのキャラに生まれ変わり? 何の話だ?」
「んー、秘密にされているんだけど………いいか。こういうことだよ」
そう言って彼は手をかざし、イノシシ型の魔物を生み出した。
「うわっ!」
ルーデウスは唐突に魔物が現れたことで驚き、尻もちをついた。
「おいおい驚き過ぎだろう」
「いや驚くわ! なんだこれ、マジでなんだこれ!」
「なにって呪霊操術、じゃなくて魔物操術だ。語呂悪いなこれ、ポケモ〇マスターの方がいいな」
「いやいやいや、これ……え、魔術じゃないよな」
「違うね。これを出し入れしても魔力は減らないし」
ルーデウスは混乱の極致にあり、しばらく時間をおいて彼は自分の能力を話した。といっても、彼も全てを把握しているわけではないのだが。
「えーと、お前は神子だからその能力が使える。能力は『魔物を取り込んで使役する』。そして呪術廻戦という漫画の夏油傑というキャラに転生した………これであってるのか?」
「うん、合ってるよ」
「色々ツッコミたいとこはあるけど、神子ってなんだよ」
「父の話だと、人外の力を持つ者のことらしい。そして神子は希少だから国に飼われて一生を終えると聞いたから、この能力は隠してるんだ」
「なるほど、そういう感じか。いかにもって感じだな。ゲームの主人公だったら間違いなく神子だ」
「じゃあワタシこの世界の主人公?」
「なわけあるか、ボケ」
ははー辛辣ぅ、と彼は惚ける。
「まぁ能力はチート乙って感じだけど、キャラに転生ってどういうことだよ? 俺はお前みたいなキャラクターは知らないぞ」
「んー、まだアニメ化もされてなかったし仕方ないんだけどね。ワタシの考えとしては、夏油傑というキャラクターに転生した可能性があるってだけさ」
「それはあれか。なんかまずいのか、死亡フラグ的なあれで」
ルーデウスは彼を心配した。
「いや全然、むしろワタシとしては好きなキャラに転生して嬉しいまであるね」
彼はルーデウスの心配をスルーした。それは見事に、風を受け流す柳の如くスルーした。
「ほら、私の名前思い出してみて。ルーグス。逆から読むとスグール。すぐる」
「なんだそれ、面白くない言葉遊びだな」
「ワタシとしても嫌さ。だから自分の名前を人に呼んでほしくない」
彼はやれやれと溜息を吐いた。
「あのさぁ、お前の一人称なんなの? 『ボク』って言ったり『ワタシ』って言ったり」
「あぁ、前世の影響でね。普段は子供っぽく振る舞うために『ボク』と言うんだが、君と話していると素に近い話し方をしてしまうようだ」
「あー、それは俺もわかるなー」
と、二人はここでも気が合った。お互い境遇が似ているため、共感しやすいのだろう。
なぜならどちらも、身体は子供、心は大人のちぐはぐ人間なのだから。
「ルディー、ご飯よー!」
「あ、もうそんな時間か。じゃあ話の続きはまた今度だな」
「そうだね、じゃあまた明日」
「おう、じゃあな」
ルーデウスは少し、上機嫌になった。
同郷がいて嬉しいという気持ちもあるが、なによりこいつとなら友達になれそうだと思えたのが一番うれしかった。その心の変化を本人は気づいていないが。
彼も上機嫌になった。
この世界で自分だけが異物だと考え、少なからず疎外感を持っていたところに同類がいたのだ。安心感に包まれた彼は、今日はゆっくりと眠ることが出来るだろう。