夏油転生~異世界行ったらポケモ〇マスター~   作:らららん

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シルフ

 彼の父は鍛治職人だ。

 村で流通している食器や農具、武器は彼の父が作ったものだ。しかし、お世辞にも腕のいい職人ではない。何故なら彼の父は元々、鍛治職人ではないからだ。彼の父は一年間とある鍛冶屋に弟子入りし、そこからこの村にやって来て初めて一人で鍛治をした。

 

 なんて事のない、探せばどこにでもいるような取り柄のない男。

 

 彼の父は疲れた表情を見せ、自室にある首吊りロープを眺める。そしてため息を吐く。

 

「………シェリー、俺はどうすればいいんだ」

 

 

 

 

「シルフ?」

「そう、さっき友達になったんだ。お前も仲良くしてくれよ」

 

 そう言ってルーデウスは、隣にいるフードを目深に被った小柄な人物、シルフィエットを紹介した。

 ルーデウスの予想では、「勿論いいとも、今日からマブダチだね」と、ジョーク混じりの歓迎の言葉が来ると思っていた。しかし実際は違う。

 

「シルフ………シルフ?」

「なんだよ?」

「いや、違和感がすごくてね。君はシルフでいいんだよね?」

「う、うん」

 

 ここで彼とシルフィエットはすれ違った。

 彼は「名前はシルフで間違いないんだよね?」と尋ねたつもりだが、シルフィエットはそれを「シルフって呼べばいいんだよね?」と解釈し、了承した。

 

 この些細なすれ違いは、のちのち重大な事故を起こす。ちなみに彼が起こすわけではない、巻き込まれるだけである。

 

「まぁいいや。それじゃあ今日は何するかー」

「魔術の練習、はシルフがつまらないかな?」

「! 魔術、ボクも使ってみたい!」

「お、ならシルフも一緒にやろう」

 

 そういうとルーデウスは土を操り見事な意匠が入ったテーブルと椅子を作ったみせ、彼の方は火を操りぼやけた鷲なようなものを作り動かした。

 

「わ、わぁあああ〜! 二人ともすごい!」

「ありがとう、シルフ。でも練習すれば誰でもできるよ…‥多分」

「ボク頑張る!」

 

 ルーデウスとシルフィエットが楽しく話しているのを、彼は微笑んで見ていた。それを胡散臭そうに見るルーデウス。

 

「魔術は俺も教えるけど、アイツからも教えてもらったほうがいいよ」

「え、ワタシかい?」

「そうだよ。俺には火の魔術で鳥を作ることなんて出来ないからな。その分野じゃ、お前に一歩劣るよ」

 

 ルーデウスは呆れた目で、炎の鷲を見る。ルーデウスも作ろうとしたことはあったが、できなかった。それは彼らの考え方の方向性の違いからくるものだ。

 ルーデウスはすこしでも残るようなもの、便利なもの、必要なものを魔術で生み出そうとする考え方だ。そして炎の鷲は、ルーデウスのモチベーションをあげることができなかったのだ。

 逆に彼は魔術を楽しむものとしている。非生産性を楽しみ、アイデアを楽しみ、実行して失敗することも楽しむ。炎の鷲はその典型、彼の暇つぶしで何度も試行錯誤して出来上がったものだ。

 

 何が言いたいのかというと、ルーデウスの魔術は彼に劣っているわけではないということだ。

 

 シルフィエットは目をキラキラさせて、炎の鷲を眺める。彼の肩に止まっているように見えるそれは、幻想的な美しさを孕んでいる。

 

「それ、すごいけどどう役立つんだ? 自動防御してくれるとか?」

「いーや、普通の火だよ? ワタシが操作しているのは火に色をつけ、形を整え、動きをそれっぽくしているだけ。だからルディが使う中級魔術とかの方が威力は強いよ」

「え、じゃあなんのために作ったんだよ?」

「暇つぶし」

 

 ニコッ☆と微笑んで見せた彼に、ルーデウスは「変人の考えることは分からねえな」と思った。

 

 その後、彼らは普通に魔術を使って遊んだ。

 

 

 

 

 今日も、彼はパウロと森に来ていた。もはや習慣となっており、パウロも一々注意をしない。

 今回、村人からターミネートボアを見たという報告があり、パウロが調査に来たのだ。

 

「師匠、足跡があります」

「そうだな、しかもでかいイノシシ型……ターミネートボアのだろうな。行くぞ」

 

 はい、と彼は頷きパウロの後を追う。

 

 しばらく歩くと、前方に追っていたターミネートボアが見えた。しかしそれは、一体だけではなかった。

 

「なっ……群れない筈のターミネートボアが10体以上だと!」

「近くにアサルトドッグもいません。いるのはターミネートボアだけみたいです」

「そうか、わかった。しかしこれだけのターミネートボアが集まると、少し厄介だな」

「……師匠でも厳しいんでしょうか?」

「馬鹿言え。アレを冒険者が退治するならB級、いやA級冒険者パーティぐらいなるだろう。だがな、これでも俺は元S級冒険者だぜ?」

 

 そういうパウロに虚勢は見られない。それを観察した彼は「これでA級か……」と呟く。

 駆け出そうとしたパウロ、しかしそれを彼は止める。

 

「待ってください、師匠。あそこ、木の方を見てください」

「? 木を傷つけている?」

「師匠、これは異常事態です。何が起こっているのか、最後まで確認するために観察に抑えておきましょう」

「いやしかし、あの数の魔物を放って置くわけにもなぁ……」

「見てください、ターミネートボアがどんどん離れていきます」

 

 結局、パウロは彼の言う通りにターミネートボアは追わず、傷つけていた木を見て、驚いた。

 

「なんだこれ!? 木に線のみてェな引っ掻き傷がいくつもついてやがる!」

「爪でも研いでいたんでしょうか?」

「そんなことは聞いたことはないが、何かの予兆かもしれん。森に入る者たちに注意喚起と、より一層森を調査するようにしよう」

「ワタシも手伝います、師匠」

 

 パウロは執拗に傷つけられた木をもう一度見る。すると、その傷がえらく整列されて見やすい配置になっていることに気づいた。まるで傷つけるのが目的ではなく、何かを記すような、数字のような印象だ。

 

「いや、まさかな……」

 

 パウロは自分の気づきを捨て去る。そのまま森を出て、彼とも別れた。

 

 

 

「んー、ル○ーシュの真似をしてみたんだけど、ちょっとあれじゃ目立ちすぎかな? 取り敢えず3ヶ月は命令に従うことは分かったから、この辺で一旦やめるか」

 

 そして、彼の趣味は続いていく。

 

 

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