人類最終防衛機構さん   作:アークナイツと東方にドはまり

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訓練ー実力把握テスト(1)ー

 

「ねぇ、伏黒、あの人正気なの?」

 

東京都立呪術高等専門学校内部のグラウンド

 

そこでは二年の先輩である真希さん、パンダ先輩、狗巻先輩、同級生の伏黒と私が、三年の特級術師『比佐嚴封魔』を前にフル装備で準備運動を行っていた

 

「正気?なんの話だ?」

 

まるで今から殺しに行きますよとでも言いたげなその様子

 

伏黒はこの状況がおかしなことに気づいていないようだが、そもそもこんな状況になった原因は目の前の先輩にあった

 

「勿論、今からする『模擬戦』についてよ」

 

先輩はなんと私に自己紹介をした直後に、実力確認のためにと『模擬戦』をすると告げたのだ

 

「あんた達が拒否するわけでもなく、黙ってあの人に従ってたから私もついてきたけど、流石に黙っていられないわ。多対一どころか私達だけ術式の使用アリの模擬戦なんて頭おかしいでしょ!?」

 

その模擬戦のルールは以下の通り

 

封魔先輩にハンデとして設けられたのが、『無傷』『術式使用不可』『武器持ち込み不可』と3つのルール

 

反対に私達の勝利条件として設けられたのが、『体術を加えたあらゆる攻撃の一撃命中』

 

「私でも特級の名は伊達じゃないことは知ってるわ。知識、体術、呪術、どれをとっても私たちじゃあ手も足も出ないこともね。」

 

私達にとって不利なのは『全員の戦闘不能による試合終了』のみ

 

「それでも、術式無しは狂ってるわよ。五条でも最強の座は術式があってこそのものなのに、呪力強化しかできない術師が術式持ちの団体相手に戦ったら....」

 

呪術師同士での模擬戦はよくあることだが、ここまで私達に有利なルールは世界広しと言えどどこにもない

 

加えて、私達は既に釘や薙刀やメリケンサックと言った完全装備

 

隊列だって、前方にパンダ先輩と真希さん、左右に狗巻先輩と伏黒と、相手を殺す準備は万端

 

そして、勝てば『一級への推薦』と言う破格の報酬

 

「最悪の場合、あの人、死ぬわよ」

 

私は本気で先輩の命を案じていた

 

「釘崎、それは要らん心配だ」

 

しかし、そんな心配も当人にとって余計なお世話だったらしく....

 

「俺とお前達とでは実力に天と地程の差がある。知能のない特級にも勝てず、一級以下の呪霊に持久負けした雑魚に負ける道理は一つもない」

 

舐めきった態度で私達は雑魚だと断定された

 

「....舐めてんの?」

 

「どうだかな。だが、俺には単独で特級を祓った功績がある。それを垣間見れば、この評価は妥当だと思うぞ?」

 

「.....」ムカァ

 

「うわぁ、真顔で煽ってやがるぞ」

 

「相変わらずの地獄耳ですね」

 

「余裕っぷりも健在だな、慣れた俺たちからしたらもうムカつきもしないんだけど」

 

「おかか」

 

正論で当たり前に諭された事実、過小評価にもほどがある

 

「本気、なのね?」

 

「本気以外の何があると?」

 

これには流石の私も一泡ふかせてやると反骨精神が沸くと言うもので....

 

「大怪我じゃすまないわよ?」

 

「ハハハ、大丈夫だろ」

 

そして次の瞬間には怒りが発露した

 

「だってお前、驚くほど弱いじゃん」

 

なぞられるは私の逆鱗

 

気づけば私はこめかみに怒マークを浮かべ、武器であるトンカチを握り直しては感情に任せてこう叫んだ

 

「その言葉!死んでから後悔しなさい!」

 

狙うは死には至らず最大限の痛みを与えるのことの出来る左肩より少し内側

 

カンッ!!!

 

私はそこ目掛けて呪力を込めた釘を打ち飛ばした

 

「それは出来ない相談だ」

 

しかし、その速度は封魔先輩にとって溜め息が出るほどに遅かったらしい

 

私の釘は真っ正面から掴み取られ....

 

「だってお前から潰すからな」

 

十数メートルも空いた距離もたった一歩で詰められて....

 

「かんざっ....し....」

 

「させると思うか?」

 

いつの間にか、釘に込めた呪力を爆発させようと印を結ぼうとした手は握り潰されていた

 

そして、わざとらしく大げさに上げられるもう片方の拳

 

全く反応できない私は理解する

 

(ヤバい...死ぬ....)

 

圧倒的な身体能力、熟練した呪力強化、卓越した戦闘思考能力

 

危機的状況のなか、反応することすらできない私の代わりに、二年の先輩達が対応してくれた

 

「「棘!!」」

 

『下がれ!』

 

呪言による強制後退

 

「させるかよ」

 

身体は言われた通りに後ろへと下がろうとするが、手首を掴み直されたことで力ずくで引き戻された

 

「痛っ!?」

 

「脱臼したか」

 

私と先輩達との距離は大きく4歩

 

1歩目

 

パンダ先輩と真希さんは呪言が効かなかったと知るや直ぐに駆け出すが....

 

「虚弱だな、悲しいほどに。だがそれなら...」

 

「がっ!?」

 

「取り敢えず吹っ飛んどけ」

 

2歩目、3歩目

 

手首を脱臼した痛みによる硬直のせいでラリアットが胸へと直撃した

 

「恵!棘!カバー!!!」

 

「っ!蝦蟇!」

 

『倒れるな!』

 

後方へと吹っ飛ぶ私をキャッチする伏黒と、そんな伏黒の姿勢を呪言で正す狗巻先輩

 

私は周りのおかげで地面に転がることなく気絶せずに済んだが、私達三人は態勢を立て直さなければならなくなった

 

そしてその時間を真希さんとパンダ先輩が稼ぐことになる

 

私は痛みで涙ぐもうと状況に置いていかれないため先輩二人の戦闘を捉えた

 

「パンダ!行くぞ!!」

 

「部分変化!激震掌!!!」

 

1歩遅れて4歩目

 

右腕が毛深く太くなったパンダ先輩と薙刀を構える真希さんは、ラリアット後という姿勢が崩れたタイミングで、その背に『防御不能の凪払い』を、遅れながらも前方から『薙刀の刃』を繰り出した

 

「ほう、成長はしてるようだな」

 

視覚外、不利な体勢、2対1と言う不利な状況

 

「...だがパンダ、大振りはするなとあれほど言い付けただろうが」

 

直撃すると思われたその攻撃は、封魔先輩が流れるように四つ這いになりながらパンダ先輩の間合いの内側へと侵入したことで、上空で空ぶることとなった

 

「うぇ?」

 

大振りであったことからパンダ先輩に生じる大きな隙

 

結果、パンダ先輩は封魔先輩に足を取られ、拳を空振るった勢いのまま前へと転けた

 

「なっ、合気!?っ、避けろ!!」

 

真希さんは見ただけで封魔先輩が何をしたのかを見破るが、事態はパンダ先輩が転けたことで顔面間近に薙刀の剣先が迫るという危険な状況

 

それを解決したのは他でもない、罠にはめた封魔先輩だった

 

「阿保、こんなものが合気などと呼べはしない」

 

「え、うァァァァっ!?」

 

なんと封魔先輩は、パンダの先輩の足先に手を添えることで、パンダ先輩の体を薙刀とは逆方向に回転させたのだ

 

全ての動きに無駄がないからこそ出来る早業

 

「基礎の基礎、作用反作用、相手の隙を突いただけの一撃なんだが....」

 

「ぐぼぁっ!?」

 

「お前らには充分だったな」

 

そして、追撃として喰らわせるは右肩での突進

 

パンダ先輩を真希さんの方へとぶっ飛ばした

 

「っ!?はぁっ!」

 

「ま"き"ぃっ!?」

 

真希さんは振り切った薙刀の柄を使い、そんなパンダ先輩を上空へと払い流す

 

その流れる作業は美しくもあるが、そんな咄嗟の回避行動の後に出る隙を封魔先輩が見逃すはずもない

 

「さぁ、対応して見せろ」

 

人死にが確実に起きるレベルで呪力が込められた左拳が全員の前で大袈裟に握られた

 

「伏黒っ、私はいいからっ、やってっ!」

 

「っ、狗巻先輩!合わせて!鵺!」

 

『止まれ!!』

 

私が気づき、伏黒に鵺による電撃攻撃を行わせ、狗巻先輩が呪言で停止させる

 

前衛二人がやられるわけにはいかないからと、急遽でも最大限の連携で対応するが...

 

「おいおい、それは悪手だろ」

 

呪言は全く効いておらず....

 

「なっ!?」

 

流れるような『左足による回し蹴り』によって伏黒の鵺は、その顔面を薙刀の柄ごと地面へと振るい落とされた

 

「まず呪言なんて便利な技、一度ならずに二度も見せておいて簡単に通じるか」

 

顔面が凹む式神と地面に突き刺さる薙刀

 

「そして攻撃の仕方ぐらい工夫をいれろ、そんな単調な殺り方だと利用されるだけだぞ」

 

封魔先輩は薙刀を踏む足を軸にして、『右踵による回し蹴り』で真希さんを蹴り飛ばした

 

「こんな風にな」

 

結果として私達が失ったのは、伏黒の飛行できて電撃攻撃が出来る式神のカードと、万能性の高い呪言のカード、そして主戦力であった前衛二人

 

ゆっくりと立ち上がる封魔先輩に私達は戦慄する

 

「さぁ、続きを始めよう」

 

どうやら理不尽は始まったばかりのようだった

 

 

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