人類最終防衛機構さん   作:アークナイツと東方にドはまり

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訓練ー実力把握テスト(2)ー

私は模擬戦の最初、自らにブレーキをかけていた

 

『人殺しはしたくない』

 

結論から言えば、そんな人として当たり前の理性を理由に手を抜いていたのだ

 

(私は....間違っていた....)

 

だが、そんな思考は間違いだった

 

当人が言ったように、いらない心配で明らかに愚行だった

 

(あの人は邪念を持って相手に出来る人じゃなかったっ、)

 

手も足も出なかった事実が教えてくれた

 

通じなかった数々の技が感じさせてくれた

 

次々と倒されていく先輩達の姿でようやく理解した

 

(全神経を殺すことに集中してようやく、足に縋り付くことが出来る人だったんだ!)

 

元々、先輩達が呆気なくもやられた原因は反撃に反応できなかった私の未熟さにある

 

煽りに乗せられた私の油断が全ての発端だったんだ

 

(切り替えろ....)

 

つまり、私が弱いからこうなったんだ

 

(スイッチを切り替えろっ)

 

ならば今からでも己の失態を取り返すために何が出来るかを考えろ

 

(今度こそ本気で勝ちに行け!)

 

勝つために全力を尽くせ

 

「さぁ、続きを始めよう」

 

余裕綽々な態度で立ち上がる先輩の姿に自発的に怒りを沸かせる

 

その怒りを使って痛む身体を無視して立ち上がる

 

そして、駆け出したくなる気持ちに耐えながら、あの人に報いるため一矢を隣の仲間達へと共有した

 

「狗巻先輩、あの人と肉弾戦、いけますか?」

 

「っ!?おかか!?」

 

「無理を言ってるのは分かってます。だけどどうにかやって欲しいんです。数十秒、時間を稼いでください」

 

「何か、思い付いたのか?」

 

「私達の合わせ技であの人の虚を突ける方法が一つ、けどそれには時間が必要なの」

 

「....明太子?」

 

「手段はなんでもいいんです。最低でも意識を私達から逸らしてください。そうすれば後は私達があの面に一撃をぶちかます!」

 

私の詳細のないお願いに狗巻先輩は真剣な顔つきになる

 

「でも、あの人には呪言は効かなかったんだぞ?狗巻先輩に時間稼ぎは....」

 

「高菜っ!」

 

「大丈夫、任せろ、ってそんな....」

 

「伏黒、あんたは私の隣で合図したらすぐに術式を発動できるように準備して」

 

一方、不安を表情に残す伏黒

 

「....勝算は?」

 

「ないわ、ゼロよゼロ。今からするのはただ私の思い付きで上手く行けば勝てるってだけの運試し。だから強制はしないわ、乗るか乗らないか今決めて」

 

説得力はない、詳細を話す暇なんてもっとない

 

我ながら胡散臭いとは思うが、それでも伏黒は「仕様がないか...」と手印を結ぶことで答えてくれた

 

「全力を尽くせばいいのか?」

 

「はっ、死力を尽くさせてやるわ!」

 

誠心誠意を込めた信頼への返答

 

伏黒の身体の回りを蠢く影が私の心に喜びの火を灯す

 

私はそれに答えるためにも手に持つ金槌を今度は強く握り直すことで覚悟を顕にした

 

「....挫けない、か。最低限の根性はあったようだな、嬉しい誤算だ」

 

向こうではそんな私達を見てか封魔先輩が感嘆の声を出す

 

その台詞は嘘偽りない称賛だったが、それと同時に放たれた殺気の込もる呪力が私達を緊張させた

 

「が、遅すぎだ。既にお前らの実力は把握した」

 

安堵する暇なんてない

 

「もう遊ぶ理由はない、終わらせる」

 

「「「っ!?」」」

 

意識の隙間、瞬きの瞬間、呼吸の合間

 

先輩は宣言通りに私を倒すため、私達の対応がしにくい最高のタイミングで駆け出した

 

私と先輩がマッチアップするまで凡そ8歩

 

「狗巻先輩!!」

 

「しゃけ!」

 

作戦通り、狗巻先輩が最終戦のゴングを鳴らす

 

「ほう、まずはお前が俺と組み合うか」

 

「っ、おかか!」

 

「直ぐにやられてくれるなよ?」

 

「っ!明太子!」

 

始まりはジャブ

 

一撃勝利のルールを逆手にとり、時間を稼ぐために二撃目へと続くように仕組まれた殴打が封魔先輩を襲い始めた

 

「っ!」

 

飛び掛かるように繰り出した右拳

 

その一手はバックステップによって避けられ、追撃として間合い内側へと潜り込み左拳によるジャブを出そうとするも....

 

「ルールはようやく理解したようだが、判断が甘いな」

 

「っ!?ぐぁっ、」

 

「パワーに意識割いてる余裕がお前にあるわけがないだろ」

 

殴ろうとする瞬間、踏み出そうとした脚が蹴り抑えられ、拳は首を傾けることで避けられては、封魔先輩のカウンターが狗巻先輩の顔面へと直撃した

 

「ッ!...しゃげェ!!」

 

「お、マジか」

 

殴ったことで尻餅をつくと予想し、抑えていた足を下ろす封魔先輩

 

しかし、狗巻先輩はそれを根性で堪え、再度、反撃を開始した

 

「....ッ!...っヅ!...っ!!!」

 

今度は身長差から避けにくくするためにより低く挑む

 

命中確率を上げるためにもより間合いの内側へと入り込む

 

そして、底掌打ち、ストレート、フック

 

「頭、喉、鳩尾...精度は前より上がっている」

 

『くっ、避けっ!?」

 

「呪言と呪力強化の両立も可能になっていると....」

 

だがそれらは全てを払い避けられ、終いには呪言を使い掴み倒そうとするも喉を殴り止められて...

 

「だが動きが悪い」

 

「ぶっ!?」

 

怯んだ瞬間に腕を掴み取られては、強烈な打撃をそのおでこへとぶちかまされた

 

「呪力、筋肉、視線、全てが正直すぎる」

 

「ぐぁっ!!!??!?!」

 

「格闘がなん足るか、一から学び直せ」

 

さらには仰け反ったところに顔面へのパンチ

 

脳が何重にも揺れたのだろう

 

結果、狗巻先輩は殴られた勢いと重力に従い、背中から倒れ始めた

 

封魔先輩はその力ない姿に反撃の余地はないと悟り、掴んでいた手を離しては背後にいる私達へと視線が移す

 

「さぁ、次はお前達だ」

 

それが間違いだと気づかずに

 

「ッヅ!倒れるな!!』

 

「っ!?」

 

呪言による自身に向けた姿勢矯正

 

与えたダメージから根性による復帰はないと言うその予想を、狗巻先輩は真っ正面から堂々と覆した

 

「自己催眠かっ!」

 

『蹴り飛ばせぇ!』

 

「っ!」

 

大振りだが狗巻先輩が咄嗟に繰り出した回し蹴りが、封魔先輩の顔面スレスレを通り過ぎる

 

『まだまだぁ!!!』

 

続け様のかかと蹴りもあと少しの所で避けられるが、封魔先輩は予想を外したことでバク宙による大幅な距離を稼ぐ結果となった

 

時間稼ぎとしては上々

 

互いに適度な間合いで睨み会う状況に戻したことを考えれば、狗巻先輩は十分な仕事をしたと言えるだろう

 

「はぁっ、はぁ、はぁっ」

 

ただ、その代償は凄まじかったらしい

 

狗巻先輩の呼吸は荒くなり、顔色が蒼白に悪くなっていた

 

「ふぅ、意表はつかれたが....どうやら体にかかる負荷は相当なもののようだな」

 

「くっ....」

 

「それはなにか?呪力操作が上手く行かなかった反動か?それとも肉体を酷使した反動か?」

 

勿論、封魔先輩はそれを見逃すはずもない

 

距離を縮まっていく

 

「おかかぁ....!」

 

「どっちも、か。意表は突かれたが所詮は付け焼き刃。俺が呪言を防ぐ術を知ってるからと、練度の低い技で賭けに出たことを反省するんだな」

 

「明太子っ、」

 

「だが、やっと張り合いが出てきたんだ。終わらせることには代わりないが、その心意気は大いに買ってやる」

 

次の瞬間には決着をつけるつもりだと、視線が、言動が宣告した

 

「小細工はなしだ。さぁ、見せてみろ!」

 

圧倒的な呪力出力による強烈な圧

 

私はそれが開始の合図だとばかりに叫ぶ

 

「伏黒!!!」

 

さぁ、始めよう。私の、私による、私が勝つための作戦を!

 

「蝦蟇、プラス、脱兎!!!」

 

私の掛け声を合図に狗巻先輩と封魔先輩が互いに向かって駆け出した

 

そしてそれと同時に、伏黒が大半の呪力を使って二匹の蛙と大量の兎の雪崩を産み出した

 

兎雪崩に二人が呑み込まれるまで後10秒

 

「視界の遮り....物量による本命隠しか、ただの運試しか」

 

『より速く!!!』

 

「どちらにしろ全てはお前が機転だな」

 

まず、狗巻先輩が肉体の動作速度を強制的に倍加させ、封魔先輩を掴まえようと間合いへの内側へと入り込んだ

 

だが....

 

「っ!消えっ!?」

 

封魔先輩がそれに対して取った選択が、膝抜きと言う脱力を利用した古武術の瞬間移動方

 

滑らかに倒れて進むことで、足元の死角へと素早く移動し...

 

「蝦蟇!伸ばせ!」

 

「発現位置さえ知ってれば、次はどこから攻撃が来るかは予想できる。脱兎で隠した意味はなかったな」

 

狗巻先輩の死角へと伸ばした舌を右手で掴み取っては....

 

「躰道、卍蹴り」

 

体を捻り威力を上げた蹴りを、狗巻先輩の顔面へとぶち当てた!

 

「ヅっ!??!?!」

 

衝撃に負けて倒れ行く体

 

「さぁ、二擊目だ、死ぬなよ」

 

蛙の舌を握り潰しては、体の回転を利用しては立ち上がる封魔先輩は、狗巻先輩の腹目掛けて拳を振るう

 

『より....速く....っ!』

 

それに対して最後の足掻きとばかりに行うは呪言による速度の上昇

 

(なんだ?その呪言は...?)

 

本人が動けないと知る封魔先輩はその意味のない呪言を訝しむ

 

誰に向けて、何が狙いで、なんの意味があるのかを思考する

 

一瞬の洞察の末、封魔先輩は狗巻先輩の視線が自身の後ろへと向いてるのに気がついた

 

「真希かっ!」

 

なんと呪言の対象は、後ろから走り迫る真希さんだったのだ

 

『より速く!!!』

 

視界を後ろへと移せば、見えるのはスピードが強化された真希さんによる薙刀の投擲

 

「いい判断だ、だがまだ甘い!!!」

 

「なっ!?」

 

「うぶぁっ!?」

 

しかし、そんな予想外な攻撃も、封魔先輩は自前の反射神経で真正面からねじ伏せられた

 

その薙刀は刃が体へと届く前に柄を握り取られのだ

 

さらには止まりかけてた拳が再度動き出し狗巻先輩を撃沈させる

 

「俺がこれぐらいの余力を残していない訳がないだろ!」

 

封魔先輩の手に渡った薙刀

 

「そして、お前らの策を成就させてやるつもりもない!」

 

その刃は私がいるであろう方向に向かって、兎を薙ぎ払いながら投げ飛ばされた

 

「ッ!?」

 

頬をかする刃

 

兎の雪崩に空いた一直線のトンネル

 

そこから見える、先輩の狙いを定めたかのような鋭い視線

 

「さぁ、次は、お前だ!」

 

頬に流れるを感じ取りながら、私は怒りながらに叫んだ

 

「よくも私のご尊顔を傷つけたわねっ、上等よ!!ぶっ殺す!!!」

 

その瞬間、密かに兎を足場にして前方上空へと辿り着いた伏黒が叫んだ

 

「釘崎!合わせろ!」

 

宙で手印を結ぶ伏黒

 

後方から真希さんが迫るなか、私はそれに合わせて3本の釘を打ち飛ばした

 

「その程度!」

 

封魔先輩は遮られていない左右のどちらかに移動して釘を避けようと動く

 

しかし、それは承知の内だと、伏黒が唱えた

 

「『蝦蟇』+『鵺』=『不知井底』」

 

「拡張術式!?」

 

「俺を飛ばせ!」

 

伏黒は避ける間を作らせないために、空飛ぶ蛙を使って落下を加速させたのだ

 

繰り出すは土埃りを上げるほどのライダーキック

 

「いい判断だ!でもそれだけじゃあ....」

 

それを避けられることも加味して伏黒が狙ったのは....

 

「っ!拳が本命か!」

 

完全予想外の着地直後の左ストレートだった

 

とは言え、封魔先輩は今まで散々私達の技や策略を掻い潜ってきた化け物

 

一歩程度の距離があればいくら予想外の攻撃と言えど避けることは可能だろう

 

「いいえ、それはただの布石....」

 

それならば、予想外で認識外からの一撃を起こせばいい!

 

「本命はこっちよ!」

 

片手で結ぶは、指2本を伸ばす私の手印

 

震わすは、視界にある釘に籠めた呪力

 

狙うは、予め脱兎に刺していた釘の呪力

 

「『簪』っ!」

 

私は呪力を爆発させた

 

順番は私との距離が近いものから順に、まずは打ち飛ばした釘を、次に予備として兎に刺した釘が爆発する

 

そして最後に、コンマ一秒の差で、封魔先輩に針先を向ける釘が爆発しようとした

「初見殺しの技、か。いい術式だが、最初に予備動作をみせたのは間違いだったな」

 

しかし、カンッという音が鳴った後、釘の形で爆発する私の呪力は、封魔先輩の後方へと逸れて爆発した

 

「なっ、石!?」

 

封魔先輩が何をしたのか

 

それは伏黒の襟足を掴む右手とは逆の、もう片方の左手に構えられた小石を見て理解した

 

封魔先輩はどうやってか釘の位置を特定して!あろうことか石を弾くことで針先を後ろへと逸らしたのだ!

 

「くたばれ、恵!」

 

それを片手間に拳を避けられた伏黒が、襟足を掴み上げられて、地面へと叩きつけられる

 

「ガハっ!?」

 

「伏黒!!」

 

脱兎や蛙が解ける

 

「野薔薇!呆けるな!逃げろ!!!」

 

感傷に浸る間もなく封魔先輩は即座に私に向かって駆け出した

 

「っ!」

 

咄嗟に懐から釘を大量に取り出すも...一度目の瞬き...二度目の瞬き...三度目の瞬きで戦慄する

 

「え、」

 

気づけば目の前

 

二本の指を立てる封魔先輩は、表情も変えずに私に告げた

 

「これから約二ヶ月、俺はお前等を嫌と言うほどに鍛え潰す」

 

本能が察知するは不可避

 

「おそらく明日にはその腑抜けた実力もマシになっていることだろう」

 

脳が察するは敗北

 

「目標は一級レベル」

 

これからの話をされながら、お前は終わりだと宣告する握り拳

 

「そのためにはまず自覚するといい」

 

諦めの境地、心の中で十字を切っては唱える『アーメン』

 

「これがお前の現在地だ」

 

視界が暗転するまえに思ったのは...

 

「反転闘法!反転術式使ってるから絶対死なないけど死ぬほど痛い究極スーパー超絶ラリアットォ゙!!!!」

 

私を鎮める技の名がとてつもなくダサいという感想だけだった

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