re:東方のキャラに憑依したやつがすげーバカだったら   作:ナチュラル7l72

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追記:誤字脱字を修正しました


序破急

 

 

 

腕を天井に向けぐぬぬと伸びをする。そんでもって逆立ちし足をプルプルさせながら動かしなんとかぶら下がった紐を引いて電気を付けようと四苦八苦する。

 

 

 

ぐい~

 

 

ぐもぉ~

 

 

そりゃー!

 

 

だめだ。届かん。

 

 

ふわあと欠伸をし布団からもぞっと抜け出し顔を洗いに立ち上がる。電気についてはもう知らん。ついてくれないなんてうちの子じゃありません。

 

 

今日も朝から一コマあるためさっさと家を出よう。調子に乗って朝から昼まですべての曜日を履修登録してしまったからすげー大変だ。

 

 

 

そのことを友達にいったらお前ばかだろっていわれた。彼女とかいつ作るんだ。って言われたりもした。

 

たしかに友人の言うことも一里くらいはあるかもしれない。一里って里一個分ってこと?里の人全員が賛同するレベルってことなのだろうか。

 

 

 

バイト先でもコーヒーにはガムシロップを入れるもんだと思って勝手に客のブラックに入れたりどこにあるかよくわからない調味料をいれずに客に料理を出して店長にばれたり。

 

たしかに俺はおちょこちょいかもしれない。

 

 

 

けど俺ぁーバカではない。

 

 

 

今でも都道府県全部は言えないが合掌造りで有名な白川郷のことはしってる。世界で二番目に高い山がゴドウィンオースチンだということも知っている。そのことをあの友人は知らないくせにその友人からバカといわれるのはひじょーに不本意だ!

 

とつたえたらお前よく大学入れたなと言われた。失礼な。ついでに不本意の意味を調べてこいとも言われた。あれだ。愉快じゃないとかそういう意味だ。

 

 

逆立ちをやめ立ち上がり扉に向かい歩く。

 

そしてノブに手をかけ…違う。これはただの壁だ。

 

じゃあこっちか。いやこれは押し入れの扉だ。

 

 

じゃあこれか。こりゃ窓だ。危うく草がボーボーの団地の脇に落ちてしまうところだった。

 

 

 

………

 

 

 

くそ。だめだこりゃ。どう頑張っても洗面台への扉にたどり着けん。この部屋が暗すぎるのが悪いんだ。

 

 

なんという事だ。神様じゃないんだから「光あれ」といって光を出すこともできない凡人の俺じゃあこの部屋から脱出できなくなってしまったではないか。

 

 

くそ。この闇め。この。このこの。

 

 

布団の上でジタバタしながらおよそ10分。ふと上を見て気づく。

 

そうだ。あの紐を引っ張ればいいじゃないか。実家で見る「かち」と押してつく電気のボタンじゃないから忘れていた。

 

 

ふふふ。馬鹿め。俺をどうにか一コマ目に間に合わせないとしていたようだがそうはいかん。この天届かんとする我が右腕の命により照らせ我が部屋を!

 

 

………

 

 

届かん。何故だ。我が腕が紐に届かないぞ。

一度自分の姿を見てみる。

 

 

うん。ちゃんと「ぴん」と立って腕も「ぎゅん」と伸ばしている。いつもならこれであの紐に届くというのに。

 

 

何故!何故!

 

 

とりゃ!

 

 

でりゃ!

 

 

へりゃー!

 

 

べちゃ

 

 

ダメだ。ジャンプしても着地に失敗して無様につぶれるだけだ。しょうがない。今日は休むとしよう。明日頑張ればいいのだ。今日頑張ろうとしたんだからきっと明日も頑張れる。たぶん。きっと!

 

 

はあ…とため息をつきふと窓をにかかったカーテンが目に映る。隙間から漏れる光は十分にこの部屋を照らしてくれそうだ。

 

 

その瞬間、頭にぴりりと電流が走る。どすどすと布団を踏みつけ窓に走りがしゃあとカーテンを開け放った。

そして部屋には光が満ち溢れた。第一日である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鏡の前でバシャバシャと顔を洗い眠気を覚ます。

 

だいたい、紐が悪いのだ。いつもは素直に引かせてくれるというのに今日だけ妙に機嫌が悪い。なにかして機嫌を損ねてしまったのだろうか。

 

そういえば最近はオレンジ色に光る小さい光を使っていなかったな。そっちが拗ねて付けさせてくれなかったのかもしれない。今度からはちゃんと両方、使ってあげるとしよう。

 

 

「はあ~…」

 

 

なんか、疲れてしまった。部屋で闇と格闘していたからだろうか。乳酸が出てくることで人は疲れてしまうとどこかで聞いたことがある。やはり四肢にその乳酸とやらが出てきて悪さしているという事か。これは病院に行った方がいいのだろうか。このだるい嫌な気分で余生を過ごしたくないぞ俺ぁー。

 

 

「え?」

 

 

いや、待て。

 

 

誰だ今の気が抜けたような声を出したのは。

 

 

こんなマヌケな声、俺は知らないぞ。この家には俺と…時々出るゴキブリくらいだ。ならばゴキブリの声か。鈴虫のように羽根をこすらせこの少女の声のような音を出したのか。

 

いやそれならゴキブリが異常に嫌いな人が多くいるのは不自然か。そもそも、ゴキブリが嫌い、という時点でおかしいのだが。コオロギみたいなものだろ。あんなの。

 

 

という事は、だれか周りにいるというのか…?

 

 

 

まただ!

 

 

 

また、え?って声が聞こえたぞ!

 

 

 

「誰だ!」

 

 

 

あ!また声が!

 

 

 

「だから誰なんだ貴様は!」

 

 

 

あ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちゅんちゅんちゅん。とスズメたちが100回くらいは鳴いたくらいになって、ようやく気が付く。

 

 

「どういうことだ…俺が子供サイズに…!」

 

 

鏡を前からのぞき込み、横からものぞき、下からのぞいて、スマホの黒い画面も覗いて、洗面台に水を注ぎこみ水たまりを作っても、そこには水色の髪をした少女がいた。

 

な、なんてことだ!

 

これじゃあ大学に入れないじゃないか。今日は現代哲学にテストがあるというのに。

いやでも大学の敷地に入るだけなら子供でも大丈夫だったけな?じゃあ大丈夫か。

 

 

「しかしこりゃあ…」

 

 

見たことある。見たことあるぞ!確かこいつは…

 

 

そう!

 

 

 

…誰だっけ?

 

 

 

 

………

……

 

 

 

 

 

自分の姿をパシャリ。

 

そんでもってグーグル先生に写真を突き付けてやれば…

 

 

ほらでた!やっぱりグーグル先生は頼りになるなあ。いつ聞いてもなにを聞いても応えてくれるんだもんなあ。うちの教授も見習ってほしいもんだよ全く。線分ってなんですか!>とか<ってどういう意味ですか!とかちょっと質問してるだけなのに無視しやがってよお。

 

 

 

スマホには鏡に映る自分の姿とうり二つな少女、「チルノ」がいた。うり二つというか、全く同じ顔、服装、羽が背中から生えている。

 

 

なんとなくだが、飛ぼうと思えば飛べるみたいだ。でも背中の羽が「ばたばた」と震えるんじゃなくて、体全体に新たな感覚が生まれたみたいで、そこに働きかけると、なんか、雲をつかむように浮くことができる。

 

 

ごちんと天井にぶつかり墜落したところでふと気が付く。

 

 

何故俺は二次元のキャラになっているんだ。

 

 

髪を触るとサラサラして俺の手から滑り落ちる。onlyシャンプーwithoutリンスな俺の髪とは思えない。なんなら自然乾燥なのに。

 

 

手からはうっすら冷気が出ている。確かこのキャラは冷気を操る能力みたいなバトル漫画の三枚目キャラにありがちな能力を持っていたはず。水道からでてくる水に触れると触れた先からぼろぼろと氷になり水道管に流れ込んでいく。詰まったりどうしよう。

 

 

こう見えても俺ぁーサブカルチャーどっぷりのフォンデュを腹いっぱい食べている。

 

故にこのキャラは知っているッ!

 

 

たしか東方とか呼ばれているゲーム?アニメ?だった気がする。いや、漫画だっけ?ともかく、なんかのキャラだったはずだ。

 

 

確か俺の入っているサークル、アニメ漫画研究会サークルでもよく話されている単語だったはずだ。

いやあれは話してたというより鑑賞?に近いものだった気が。pixivで出てきた画像を眺めているだけだった気がするが、あれは何か研究しているのだろうか。うーむ、なんか深いな。

 

 

だがしかし東方に関して曖昧であるというのも否定できないぞ。

 

 

いや、俺は賢い。わからない事があった時は、アレをすればいいという事を知っている。

 

 

そう。グーグル先生だね!

 

 

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と、う、お、違う。ほ、う

 

 

 

出た!

 

 

 

東方。東方projectとはzunさんが運営になり制作しているシューティングゲームの事で…

 

 

 

つまり、ゲームか。

 

 

それってさぁ!ゲームの世界に転生した…ってコト!?

 

 

やったー!

 

 

前々から思ってたんだよな!なんで俺は転生してないんだろうって!

 

 

あんなにツイッターやら小説で異世界転生ものが流行ってたんだからさあ…俺にも来ていいと思ってたんだよな!

 

 

あんなにリアルに描写されてるんだから本当に異世界転生したってことだろ!作者の連中はさあ!あんなに見せつけてくれちゃってよお。いらいらしたぜまったく。

 

 

だがそれももう終わりだ!なにせ俺がゲームのキャラになって転生したんだからな!ヒャッハー!なんか浮遊能力あるしこの世界を飛び回ってやるぞー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

違う。ここはゲームの世界じゃない。

 

 

飛び回ること一時間。味わったことのない青空を飛ぶというまるでからっかぜにでもなったかのような爽快感に身を任せ続けていて気付くのに遅れてしまった。

 

 

周りを、というより眼下を見る。

 

 

そこにはブンブン振り回した後の弁当箱のように道路や線路が張り巡らされ、水筒から漏れ出たアクエリアスに寄ってきてこぼした跡を律儀にたどり水筒の中に入っていく蟻のような車達。それに気づかず水筒の中を飲んだ時はまずいとかうまいとか言う暇もなくパニックになったのを思い出すぜ。蟻公どもめ…!

 

 

そしてパニックになっているのは下の車も同じのようだ。いつもはあんなにせわしく動いている車達がみんな停止して渋滞を起こしている。テンションが上がり無意識にこの辺一帯に雪景色にしてしまったせいかもしれない。今は夏だし、無味無料のアイスだと思って許してほしい。

 

 

けど、これは一体どういう事だ?

 

 

百歩譲って二百歩進む。くらいには疑問に思う事だがとりあえず俺がゲームの世界に転生していないのは置いておく。

 

 

何故俺はチルノに成ってしまったんだ?ってこと。

 

 

俺は知っている。東方。というコンテンツはあまり有名ではないということを。

それは友人と共に入ったアニメ漫画研究サークルで日夜女の子を眺めて研究しているうちのサークルだからこそわかる。けど時々現実の女性と男性がなにやらプロレスをしているような映像をみているのは一体なんの意味があるのだろう。アニメの絵というわけでもないし。

 

それは有名な作品と比べてみるとわかる。

 

有名な作品の場合:アニメ化している

 

東方の場合:アニメ化していない

 

ほら一目瞭然だ。有名な作品はだいたいアニメ化しているというのに東方はアニメ化していない!あんまり世間にゃ知られていない名作、ってことなんだろうな。きっと。いやでも前に今と同じように東方を例にこの理論を友人に話したら呆れられてたような。いや元々俺とは似ても似つかないような阿保面の顔面してるからそう見えただけかもしれないな。

順序が逆だろと言われたが、どういうことかまったくもってわからない。友人は時々よくわからないことを言うので、まったく困ったものだ。

 

いやでもyoutubeに時々解説キャラみたいな感じで出てくるよな。紅い人とか黄色いバナナが。

でもアニメ化されてないし…それって有名じゃないってことだよな…。←ヨシ!

 

 

まあ兎にも角にも。

 

 

なんでこんなマイナーキャラになってしまったのだ。ということ。

 

どうせなら頭のよさそうな丸尾くんとか腕力が強そうなアンパン〇ンとかにならせてほしかった。丸尾くんなら頭をつかってあのムカつく教授を唸らせられるし、アンパン〇ンなら一撃であのムカつく教授を拳で唸らせられる。

どちらのキャラでもいいというのに俺はそれを外してしまったようだ。運がない…

 

東方の知名度からするとチルノは知る人ぞ知る良キャラ、てとこか。

誰かの作為にしても、このキャラを選んだ理由がわからない。

 

 

うーん…

 

 

だめだ。寝よう。わからない上に疲れるとかいうダブルパンチに俺はふらふらだ。頭を使うと眠くなるというもの。甘味があるならまだしも起きたばっかじゃ無理無理カタツムリ…。

 

 

びゅーと風が吹きびらりとスカートがはためく。そういえば下って何着てるんだろう。まあいいか。俺じゃないから別に恥ずかしくもないし。さっさと家に帰って寝るとするか。nightじゃないから昼寝はgoodmorning!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1:名無しの外来人 2022/8/8 9:37:13 ID:R/2mSzxDi

 

知らんやつはいないと思うがあれ本物か?

 

 

 

8:名無しの外来人 2022/8/8 9:37:15 ID:RuGag/YSW

 

さすがにコラやろ

 

 

 

10:名無しの外来人 2022/8/8 9:37:19 ID:V+YMuFxDV

 

どっかの企業のマーケティングかなんかだろ

 

 

 

12:名無しの外来人 2022/8/8 9:37:22 ID:X9SFERelR

 

いや俺現地民だがマジでちゃんといたぞチルノ。ツイッターにのってるのもコラとかじゃなくてマジでチルノだった

 

動画>>

 

これぐるぐる飛び回ってる動画な

 

 

 

20:名無しの外来人 2022/8/8 9:37:25 ID:04gSxc/aB

 

 

ちっちゃくて見にくいけど確かにチルノっぽい

 

 

30:名無しの外来人 2022/8/8 9:37:28 ID:4AT/timWv

 

おいマジふざけんなよ!!大雪のせいで面接いけなかったんだが!!!

 

 

33:名無しの外来人 2022/8/8 9:37:28 ID:4AT/timWv

 

流石に面接側が譲歩するやろ

 

 

 

35:名無しの外来人 2022/8/8 9:37:32 ID:SXQguBMCm

 

リーマンわい、電車内で公共ニュースにチルノ流れてきて無事吹き出す

 

 

 

37:名無しの外来人 2022/8/8 9:37:34 ID:VS2/F5FdX

 

まだ夏なのにあのあたりだけすごい寒かったぞ。今もう溶け切ってるけど公共機関止まるくらいには雪降ってたし

 

本物か偽物かは置いとくとしてモデルは確実にチルノだろ

 

 

 

48:名無しの外来人 2022/8/8 9:37:37 ID:YHOYI6yJi

 

幻想郷存在するってマ!?!?

 

 

 

50:名無しの外来人 2022/8/8 9:37:41 ID:BzisMIkFg

 

〇ね害虫。きめえ奴沸きだしたか

 

現実的に考えてありえねーってわかんないか?

 

 

 

59:名無しの外来人 2022/8/8 9:37:45 ID:nEtIQ9woX

 

いや真面目な話まじもんチルノじゃね?

 

現代の科学力でもあんな縦横無尽に空飛べるもんじゃないだろ

 

 

 

70:名無しの外来人 2022/8/8 9:37:47 ID:ALj/H0NoV

 

どっかの企業が金掛けて広告だしたんやろとか思ったけどうちの企業がやりました!っていうプロモーションどこも出してないのも真実味増してる

 

 

 

71:名無しの外来人 2022/8/8 9:37:50 ID:way8QkVqQ

 

っていう妄想をしてるやつらwww

 

 

 

79:名無しの外来人 2022/8/8 9:37:54 ID:4yF20jT7e

 

某大手ニュース番組でも取り上げられてる絶好の機会にどこも声上げないのは確かに臭い

 

 

 

80:名無しの外来人 2022/8/8 9:37:56 ID:8xq5jrBuc

 

見にくいワイヤーの素材作りました!で終わりだろ

 

 

 

89:名無しの外来人 2022/8/8 9:37:59 ID:HuLBY31cZ

 

偽物だとしてもチルノ役いい子役だよな

あの高さ飛び回るのは俺だったら流石にちびる

 

 

99:名無しの外来人 2022/8/8 9:38:02 ID:lghmtfbqV

 

声聞きてえのに周りの車のクラクションうるさすぎ

 

 

 

108:名無しの外来人 2022/8/8 9:38:05 ID:tL2MkQKX3

 

いやこれ異変だろ

これするためにどれだけ周りに迷惑掛かったと思ってんだ。首謀者の個人情報特定して晒そうぜ

 

 

 

111:名無しの外来人 2022/8/8 9:38:07 ID:fm/obk+hs

 

ツイッター巡回してるけど自称ばっかで目立ちたがり屋のバカッターだらけ

本物っぽい奴未だゼロや

むしろトレンド乗ったことで自称増えたから捜査難航してるし

 

 

 

120:名無しの外来人 2022/8/8 9:38:11 ID:R/2mSzxDi

 

偽物路線になってきとるがほんもんの説ないんか?

 

 

 

130:名無しの外来人 2022/8/8 9:38:14 ID:jcz01Grts

 

ないやろ

 

 

 

142:名無しの外来人 2022/8/8 9:38:17 ID:rNySYDq7l

 

オタク君さあ…

 

 

 

146:名無しの外来人 2022/8/8 9:38:19 ID:H9YhSy1fS

 

オタクの主張

 

・ワイヤーがないように見える

 

・夏なのに寒い

 

・チルノかわいい

 

 

 

現実

 

・現実です……!これが現実…!

 

 

 

148:名無しの外来人 2022/8/8 9:38:21 ID:s2Y9rya4x

 

おまいらもう一度動画見ろ

 

本当にこれが作り物に見えるか?

 

 

 

160:名無しの外来人 2022/8/8 9:38:25 ID:jJGq6Qpb+

 

まあ見えないけど…幻想郷とかほんとうにあるとは思えん

 

 

 

169:名無しの外来人 2022/8/8 9:38:27 ID:aUxmXzoaV

 

渋谷駅から動画回してたやつ見てみたがアメコミヒーローみたいに飛び回ってるな

 

これ現代の科学力で可能か?

 

 

 

177:名無しの外来人 2022/8/8 9:38:30 ID:CYeTu7jW4

 

おい6:28でパンツ見えてるぞ!

 

…白パンかあhshs

 

 

 

180:名無しの外来人 2022/8/8 9:38:32 ID:Erc5VSzV8

 

投稿者執拗に下取ろうとしてるしこれ故意だなあ?

いい仕事してくれてんじゃねえか!

 

 

 

187:名無しの外来人 2022/8/8 9:38:35 ID:r2S9JxLKj

 

わい趣味でこういうの詳しいんやがワイヤー使ってないと思うぞ

 

子供の体重とはいえ人間一人支えるにも相当強靭で太いやつ使わないとむずいし

 

背中に器具とかつけないといけんがどの動画みてもそんなんくっついてないしな

 

 

 

189:名無しの外来人 2022/8/8 9:38:37 ID:sOobKdTom

 

じゃあ足にロケットブースターでもついてんだろ

 

 

 

201:名無しの外来人 2022/8/8 9:38:40 ID:qohw4a/PT

 

逆に現実味薄くなってるぞ

 

 

 

203:名無しの外来人 2022/8/8 9:38:43 ID:D/CXpVDg0

 

アトムのジェット噴射じゃねえんだぞ

 

 

 

205:名無しの外来人 2022/8/8 9:38:46 ID:0OWwxGSEa

 

まあなんにしろこうも大々的に報道されたならチルノ側も黙っちゃいないだろ

 

技術自慢するにしろなんにしろ

 

 

 

217:名無しの外来人 2022/8/8 9:38:50 ID:RDxFpbJFm

 

幻想郷に案内してくんないかなあ

 

 

 

219:名無しの外来人 2022/8/8 9:38:53 ID:zptBgKJcV

 

日本人でいう地震並にフェイクニュースになれてる米国じゃ反応なしだな

 

っぱにせもんだろ

 

 

 

229:名無しの外来人 2022/8/8 9:38:56 ID:1D7VNDX4d

 

地震おこったら外人のほうが鋭敏だけどな

 

 

 

241:名無しの外来人 2022/8/8 9:39:00 ID:lfEZ3EyaJ

 

一部海外の界隈で騒いでるとこあるけどな

 

東方海外でも人気らしいぞ

 

 

 

251:名無しの外来人 2022/8/8 9:39:03 ID:4ppl4My5Y

 

そこに彗星のごとく現れたチルノ(本物)

 

こういうのに慣れてない海外ニキが騒ぐのもわかるな

 

 

 

257:名無しの外来人 2022/8/8 9:39:06 ID:L4D0Einol

 

絶対パチモンさと思うけど自称チルノのアカウントにDMしまくってみるわ

 

 

 

267:名無しの外来人 2022/8/8 9:39:09 ID:4jC60m8bD

 

バカキャラのチルノがツイッター垢を作ってる…

 

こりゃ透けたな

 

 

 

277:名無しの外来人 2022/8/8 9:39:11 ID:IKYRs2anC

 

ツイッターにアカウント作るだけで透けるとか偽物涙目で草

 

 

 

279:名無しの外来人 2022/8/8 9:39:15 ID:vl4Fxf/Gn

 

どいつもこいつも碌なこと投稿してねえし

とりあえずバカキャラ演じとけばいいみたいな思考がいともたやすく手に取れるわ

 

 

291:名無しの外来人 2022/8/8 9:39:17 ID:haoJFVBU4

 

プロフィール欄を投稿だと勘違いしてる奴いて草。演じんのに必死過ぎやろ

 

 

 

299:名無しの外来人 2022/8/8 9:39:21 ID:Gw8GeMvfm

 

さすがにそこまでバカじゃないだろ

 

とも言い切れない原作設定

 

 

 

311:名無しの外来人 2022/8/8 9:39:23 ID:R+oo89a89

 

でもこういう雑な東方の宣伝、民度悪くなるから嫌いなんだよな。それでいくつもの界隈が空中分解してきたか

 

 

 

314:名無しの外来人 2022/8/8 9:39:26 ID:UFcQZWK75

 

生で見たいから渋谷いってみようかな

次いつ来るか告知してくんないかな

 

 

 

317:名無しの外来人 2022/8/8 9:39:29 ID:+h6hanSLd

 

まじで中身何者なんだろ

 

 

 

329:名無しの外来人 2022/8/8 9:39:32 ID:U/msnVyog

 

馬鹿共眺めて高笑いしてる性悪だろ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ごめんね…チルノ…あなたにはとてもつらい思いをさせることになってしまうわ…

 

 

 

なにいってるんだ?外の世界に行くだけだぞ?そのくらい痛くも痒くもないぞ

 

 

 

蝶がとび草花茂る青空の下。耳をすませば心地の良い草の揺れる音、川のせせらぎ。なんの不純物も含んでいない気持ちのいい空気を感じる。文豪がこの空間に立っていたなら言い様のないこの美しい風景を書き表そうと傾倒し絵描きがいたなら無駄だとわかっていながらもどうにか絵に起こそうと苦心するだろう。

 

 

しかし、それは永遠には続かなかった。

 

 

 

どこまでも続く水平線を背に女と少女が自然に腰掛け隣り合う。

 

 

 

女はまるでパレットのようだ。いつもは不敵な色を浮かべているが今は黒絵の具ひとつまみを落としたかのような面をしている。全ては黒に染め上げられ喜怒哀楽は沈殿して浮かび上がることはなくなった。

 

 

青い絵の具と黒い何かがが混ざったような顔をしている女に少女が柄にもなく慰めようと労う。

 

 

 

そんなに心配しなくても大丈夫だぞ

 

あたいだったらきっとやりとげる!

 

 

 

…なんでそんなに自信を持って言えるの?

 

 

 

未来なんてものは見えない わからない 故に苦悩する

 

あなたには…それがないように見えるわ

 

 

 

そんなの決まってる

 

 

 

あたいは最強なんだから!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"あたいにはやるべき事がある"

 

 

 

くわあと薄暗くなった部屋の中で目を覚まし欠伸をする。

 

誰だ!?俺の家に忍び込んだな!成敗してやる!と一瞬身構えそうになるが、そうだ。俺だった。このかあいい声は。まあすぐ気づいたしノーカンノーカン。ほんとに一瞬だけだから。須臾だけだから。

 

いくら足を伸ばしても出なくなったキングサイズ布団から出て台所に向かおうとノブに手をかける。

 

 

違う。これ押し入れや。

 

 

 

 

窓をどがしゃーーんと突き破り直接台所の小窓へ向かう。この小さい体を活かした実にexactreeでzeniasな方法だ。

 

 

もちろん泥棒対策のために閉めていた台所の小窓も突き破りすたっと床に着地する。

 

 

自前の氷をかき氷機にいれ出てきたふわふわに冷蔵庫に封印されていた練乳をたっぷりかける。

 

 

これがうまい。その辺のシロップよりも断然うまい。あのブルーハワイとかいうの、砂糖水となにが違うのか全く分からないんだが。あの青いのがハワイならイカとか掻っ捌いてばらまけばハワイが完成するぞ。生臭そうだけど。

 

 

くしゃ、とスプーンにのったふわふわを舐めとり口で噛み、練乳のコクのみを残し消えていく。

 

 

ピロリン

 

 

スマホから自然の中からは決して聞こえないであろう音が聞こえてくる。ふふふ。馬鹿め。普段家で聞かない音だからって俺が取り乱すと思っただろ。だが残念!我が友人から「これはLINEね。LINE。馬鹿なのはもう直せないからせめて音で重要な通知は判別できるようにしとけよ」と言われてたからその手には乗らないんだぜ!

 

 

ふははと一つ高笑いしロックのついてないスマホの電源をつける。つけていないのはつけたら二度とスマホが使えなくなるからだ。既に二回やらかして俺は学んだのだ。

 

 

予想通りLINEの通知が俺に向かい誰かからメッセージを受け取ったことを伝えてきていた。

 

そしてこういう時、だいたい友人からきていることを俺は学んでいる。ついでに俺が何かやらかした時にくるという事も。

 

 

 

『おい!お前馬鹿なんだから絶対出席点だけは取れって言っただろ!なんで今日来なかったんだ!!』

 

 

 

ほらやっぱり。やっぱ俺は頭がいい。現に有名な言葉として天才は経験から学び、馬鹿は歴史から学ぶ。って言葉があるしね。やっぱ控えめに言って俺天才。

 

 

『忘れてた』

 

 

と返答。嘘はついていない。飛び回る快感に身を任せていたらいつの間にか疲れてて当然疲れたら寝るのが大事だからすやすや寝ていただけだ。

 

 

『お前明日は絶対来いよ!!そういって現代文休んだの3回目だからな!!次来れなかったら単位落とすんだぞ!!』

 

 

送って十秒経たずに返信が返ってくる。あれだな。俺の友人はアニメでよく見る重い彼女かなにかなんだろうか?まったく。俺が相手じゃなけりゃ見限られてた頃だぞ。明日の講義で会ったときせいぜい助言してみるか。がはは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の住んでいる家の周りはとてもアクセスが良い。

 

 

自転車五分でつく駅にそこで走っている電車に乗らずとも行ける距離に二つも大学がありどちらも名門と言われている良い学校だ。ついでに近くにうまいラーメン屋がある。

 

 

現在、俺は当然その近くの大学に徒歩で通っている…

 

 

 

わけがなく自転車で駅に向かい電車で一時間の世間でエフランと呼ばれている大学に通っていた。エフランっておフランスみたいでカッコいいな。

 

 

さて、今度こそ遅れるわけにはいかないので早いとこ自転車に乗って最寄りの駅に行こうではないか。

 

 

ごちっ

 

 

自転車に乗って…

 

 

がしゃん

 

 

じてんしゃ…

 

 

べしゃ

 

 

乗れねえ!

 

 

何故だ!小学生でも乗れてる二輪車こと自転車になんか知らんが乗れなくなったんだが!

 

 

なんで!?そんなスマホのロックみたいに容易く忘れるもんでもないだろ自転車の漕ぎ方って!

 

よくわからないがペダルをこごうとしても足がペダルにいかないのだ。まるでペダルまで足が届かないかのように…

 

 

ま、まずい。このままでは遅れてしまう!また友人にお小言言われちまうっべーよ!

 

 

しゃあねえ!一キロを15分で踏破してきた俺の足にかけるしかあるめえ!なめんなよ!「お前教科書あっても意味ねえから持ってこなくていいよ」って事前に友人に言われてるから荷物は軽い!これならさらに上のタイムも目指せるかも!唸れ俺の両足ィ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はあ…

 

はあ…

 

 

結局30分かかって駅にたどり着いた俺。ちなみに自転車は五分で駅に着くのでその計算で電車にのろうとしていた俺は当然この時間帯では確定で遅刻だ。それに足ぷるっぷる。もう一歩もあるけへん。

 

 

もちろん俺ぁー馬鹿じゃない。だからその事実に走ってる途中で気づいたし走る途中で見た時刻の時点でもう手遅れだという事もわかっていた。

 

 

でも人間ってのは走り出したら止まれねえもんなのさ。走ってると脳に意識回らなくなるからどうしようとか考えられないし。うるせえ!行こう!(ドンッ!!)

 

 

しかし、垂れる汗を拭い息を整えて冷静になると、なんか俺注目されてね?って気づいたんだが。

 

 

なんか遠巻きにちらちら見てくるやつとかパシャパシャうるさい音立てながらこっちにスマホ向けてくるやつとか。

 

 

なんだなんだ有名人かなんかいるのか?なら俺もその写真撮って友人に自慢したいんだが。いやその場合俺が有名人って事になるじゃん。まあ確かに大学じゃある意味有名人ってだなって友人に言われたことあるけど。俺そんなに目立ってた?

 

 

しかし、どうしようか。

 

マジでこのままじゃ大学に間に合わない。つまり、友人からお小言くらうという事だ。流石に昨日の今日で怒らせ続けたらお大言くらうかもしれないしな。

 

とりあえずさっさと電車に乗って早いとこ大学に行けるよう願うか?たぶん一限は確実にぶっちするけど。たぶんと確実どっちやねん。

 

 

そこ考えふと気づく。

俺浮遊できんじゃん。

俺空自由に飛び回れるじゃん!

 

 

ふわりと地から離れ氷の翼を羽ばたくことなく天へ飛び立つ。

その瞬間さらに注目が集まった気がするがそんな事言ってられる状況じゃない。友人にお大言言われちまう!

 

 

ぎゅおう

 

 

青い空を駆けいつも乗っている電車の線路に沿って水平に飛び続ける。速度は電車より遅く、同じくらいになり、遂に越す。

 

赤い帯のついた電車を越したあたりで駅が見えてくる。だが大学最寄りの駅はもっと先だ。20駅は先だろうか。ちゃんと数えて景色見ないとその最寄りすらも超えていきそうな速度だ。

 

 

しかしやはり俺は天才だ。凡人は電車に乗ってももう間に合わないと悲観し地に足つける家に帰って楽しくゲームをし始めるのと違い、俺は翼を使い空へ飛び立ったのだ。

 

 

がはは。これがあたい、チルノの力だぜ!

 

 

そういえば自転車使えなかった時点でこの力使っときゃもっと時間に余裕持てたじゃん。この速度でさえまあまあぎりぎりなのにそこ思いついてりゃな。

 

 

まあ俺が思いついてないって時点で凡人にはもっと無理な話か。ならいいや。やっぱあたいは天才だ!

 

 

お?20駅目だな。そろそろ最寄りに着くぞぉー。

 

 

耳元でびゅうびゅうを通り過ぎ轟轟となる風にはためく白いシャツの袖口をめくって腕時計を確認すると時刻は8:30分。意外と余裕をもって講義には間に合いそうだ。大学の敷地も見えてきたしこりゃ迷子もせずにつけそうだ。

 

 

…そうだいいこと思いついたぜ。

 

友人もこれくらいの時間帯に確か来るんだよな。なら空から強襲して驚かしてやろうかねえ…(にちゃあ)

 

 

お、見っけた見っけた。視力だけは無駄に良いなとメガネの友人に言われるくらいには俺は目がいいのだ。両目ともに2.0!メガネもかけたらさらに目が良くなりそうだと思い友人にメガネを貸してくれろ頼んだが逆に目がわるくなると言われ貸してくれなかった。

友人は時々おかしなことを言うんよな。普通メガネつけたら目良くなるってのは常識なのに。もしかしたら馬鹿なのかもしれない。

 

 

ぎゅおおおと友人目掛けて高度を落としていく。狙いは奴のメガネ!そこを壊されるとなにもできなくなるという弱点を知ってるからな!おりゃあああ!

 

 

あやべちょいずれてるわこれ校庭に…

 

 

どしゃあああ!!

 

 

大量の砂が俺の目と口に入り目の前が茶に塗り替えられた。ついでに俺を包む砂埃により鼻にもむずむずする粒子が入ってくる。

 

 

ぺっ。ぺっ。

 

 

うう。目が。目があああああ!

 

 

ちなみにこのシーンの後のラピュタが崩れるシーンにて大佐が落ちていく姿があるのだ。目がいい天才なあたいは一発で看破したがな!

 

 

「な、なんだ…?」

 

 

砂埃の奥から友人の声が聞こえてくる。よく考えればこれは結構いい演出なんじゃないだろうか。

 

 

突然の爆裂する地面。それにより湧き出る煙(砂埃)の奥からミステリアスに登場するは俺。

 

 

かっけえ…(恍惚)。

 

 

「私が来た!!」

 

 

わざと足音をどすどす鳴らしながら煙に影を作り、登場する。ポージングは王道の腰に手を当て友人を見下ろす感じで…

 

あダメだ今俺の方が背え低いからこれじゃあ俺が見下される側だ。いつもは俺の方が一回りくらい背丈高いからチビって言って煽れたのに…

 

 

まあええねん背丈何て!背丈で人の魅力は変わんねえからよ!だから俺の肩くらいまでしかなかった友人よ強く生きて!

 

 

煙が晴れてきて俺と友人双方の姿が見えてくる。当然周りにいるであろうなんだなんだと騒いでいる野次馬も。

 

 

 

「…」

 

 

「…」

 

 

無言のまま向き合う俺と友人。片や???みたいな顔をし片やポージングが決まりどや顔を決めている。

 

 

なんだなんだなんでこいつ無言なんだ?そこはオ、オールマイト!って叫び散らかすとこじゃないのか?ノリっつーものは知らない奴だなおい」

 

 

「聞こえてんぞおい。分をわきまえろ痴れ者が。馬鹿が馬鹿にするのもいい加減にしろ」

 

 

よかったいつもの友人だ。いつもの「馬鹿」って言葉が大好きな友人だ。毎日馬鹿って言い過ぎて最近親の前で癖で言いそうになったと理不尽に切れてきたいつもの友人だ。別に馬と言っても鹿と言っても怒る人いないんだからそれ繋げてもいいと思うけどなあ。現に俺は気にしてないし。

 

 

なにあれ…

 

 

おいあいつもしかしてツイッターで話題になった…

 

 

やばっちょー映えるぅ~

 

 

突如友人は周りを焦った様子で見まわし、そして俺の手を掴み走り出す。

 

なになになに!いきなり走ってどうしたこいつ。そういえばダチョウとかの脳みそすっからかんの動物も自分でも何をしているのかわからず突如走り出すらしい。ってことはやっぱり友人も…

 

 

「やっぱ馬鹿って大変だよな。なんで走り出したかもわからないだなんて…」

 

 

「走り出した理由がわからないのはお前の方だろ馬鹿!造形も⑨になるとかいよいよって感じだな…!」

 

 

走りながらも俺の軽口に付き合ってくれる友人はやっぱ良い奴だなって思いました。あ、舌噛んだ。体力無いくせにそんなガンダするから…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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………

……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ツイッターで暴れてたのお前かよ」

 

 

開口一番にそう俺に告げたのは口内炎が確定している友人。熱いな。

 

 

それにしても暴れてるとは。なにも壊してないんだが。言いがかりはよしてくれ。そもそもツイッターってなに。LINEの一種?

 

 

「その馬鹿面じゃなんもわかってないなさそうだな。ここまで日本語が通じない相手はマジで人生でお前だけだよ。…これだよ」

 

 

友人がなにやら青い鳥がトレードマークのアプリを開きいくつかの説明と共に投稿された動画を見せてくる。そこには見えにくいがぎゃはははと笑っている空に浮かぶチビの某がいた。

 

 

「いやあたいじゃん。なに、盗撮?警察に訴えるよ?」

 

 

「僕じゃねえよ。どっかの誰かが外で遊んでるお前を取ったんだろ。ちなみにこれ300k…30万いいねされてるからな。つまり少なくとも30万にお前が認知されたってことだ」

 

 

はあ…。三十万。そう言われましてもだから何って感じだが。ツイッターとやら、俺使わんから数でかいのかもわからんし。ソシャゲのダウンロード数だとすごく少なく感じるから少ない方なのだろうか。きっとそうだな。

 

 

動じない俺にイラついたようにはあ…と俺のそれとは違う種類の溜息を吐く。なんだねそのオレは とっくに あきらめたみたいな顔は。これでもsans戦クリアしてるんだが。舐めないでいただこうかぺろぺろ。

 

 

「お前、なんでチルノになってるんだ?まあその様子じゃお前もなにも知らなそうだが」

 

 

「さあ…?あたいも昨日の朝起きて、チルノになってて、空飛び回ってて、それで大学に来ただけだけど」

 

 

「なんでチルノになってまず最初にやろうとしたことが街中で飛び回るなのかを数時間に及んで聞きたいがまあいい。お前だからな」

 

 

そういってだるそうにチーンと店員呼び出しボタンをたたく友人。

 

 

しかし何故サイゼにきているのだろうか。時計を確認してももうとっくに一限を過ぎ去り二限に突入しようとしている。まさか講義をさぼるつもりだろうか?あんなに大学に来い来いうるさい友人が?人にものをいう時はまず自分ができてなきゃいけないと思うのだが!

 

 

「お前がTSしてんのに講義室は入れるわけねえだろ。どうやって出席確認乗り切るつもりだったんだお前は」

 

 

LINEの画面上に表示された『お前そういって現代文休んだの3回目だからな!!次来れなかったら単位落とすんだぞ!!明日は絶対来いよ!!』の文言を無言で友人の顔面の前で見せつけると切れたような口調でそう言い返してくる。

 

 

くそ。またあの教授が俺の単位習得を阻んでくるというのか。あの馬鹿教授め…

 

いやでも今日は数学じゃないからあの教授じゃないはずだよな?だったら行けそうなもんだけどなあ。他の教授方の講義で出席カード忘れても「まあ、君だしね…」みたいな顔して無言で出席点くれるからな。この姿でも案外出席点くれるんじゃないだろうか。

 

 

店員がやってきて注文を聞いてくる。あたいがフォアグラ定食でも頼もうと手を上げようとすると友人が無言で手を抑えられドリンクバー二つとチャーハン、お子様ハンバーグを頼み店員を返してしまう。

 

 

こ、こいつ。勝手に頼みやがった。あたいのフォアグラを取り消しお子様ハンバーグなんていうお子様向けの料理を頼みやがった。あたいはもうバリバリの18なんだが!キッズじゃないんだが!

 

 

文句の一つでも言ってやろうかと友人を見るとさっさと席を離れコーラとオレンジジュースをもって帰ってくる。

なんだオレンジジュースおごってくれるのか。ならいいや。お子様扱いも甘んじて受け入れてやろうではないか。

ちゅーちゅー。

 

 

「それで、これからどうするんだ」

 

 

「どうって?」

 

 

「お前馬鹿だからなにも状況理解してないと思うが今のお前は戸籍無し、両親なし、たぶん体ごと違うから遺伝子で元のお前を証明することも出来ない」

 

 

「?」

 

 

ああ出た。友人は時々よくわからないチャイナ語を羅列を時々し始めるのだ。

あたいは日本語でしゃべるのが最低限日本人といての素養という奴なんじゃないかね、そう思うんだけどな。外国語の授業を受けてるからってそこで得た知識をひけらかしてこないでほしいものだ。

 

 

そのくせあたいの話は聞かないんだからほんと、あたいが友人じゃなかったら困ってたんじゃないの?って毎日思う。私がいないとこの人はだめなんだから…

 

 

「つまり、お前はまるまる別世界に転移したような状態に陥っているんだ。わかるか?このままじゃお前、公共機関はおろか、そのうち大学からも除籍されるぞ」

 

 

「え~…あたい大学卒業しないとたぶんお母さんからばちぼこに怒られるんだけど…」

 

 

「お前のかあちゃんも大概無理難題言ってくるよな。こいつが大学卒業とか絶対無理なのに」

 

 

おいこいつ。今の一瞬であたいとお母さん二人の悪口を言って見せたぞ。

高校卒業でも奇跡みたいなもんなのに。と呟いている友人に飛び蹴りをかましそうになったがここが飲食店という事を思い出す。

 

 

あぶないあぶない。机の上に足を上げる行為は行儀良くないって聞いたことがあるからな。外に出たら覚えてろよ。

 

 

「…ん?お前一人称、あたいって」

 

 

何かに気が付いたように飲んでいたコーラから口を離し俺に驚愕とか、不安とかがシェイクされたような顔面を見せてくる。

 

 

「いちにんしょう?」

 

 

「お前、前まで一人称俺だっただろ。なんであたいにしてるんの?ふざけてんの?」

 

 

怒っているような、いや違う。これは心配?しているような口調でテーブルに乗り出し俺に詰め寄ってくる。

 

 

おうおうどうしたいきなり。足を机に載せるのもそうだけど体を机に全面に押し出すのもなかなか行儀悪いと思うけどな。俺が気を使ってタイキックしてやんないでおいてんだから友人ももうちょっと節度というやつを守ってほしいもんだぜ。ったくよお。

 

 

「いや、まあ、何?そういえばいつの間にか「あたい」って言ってたな。なんかこっちがしっくりくるんだよな。まあノリってやつ?」

 

 

「…まあ、頭はいつもの馬鹿なお前みたいだし、気にするほどでもないか…」

 

 

「馬鹿」の言葉が常套句になりもはや蔑みの色を入れることなく俺を馬鹿にしてくる友人。

 

そこまで来たらあたいもなんだか気にしなくなってきたな。その馬鹿って言葉。でもムカつくから後でメガネ叩き割ってなにもできなくなったメガネ依存症野郎を煽ってやろう。全然気にしてるなあたい。

 

 

「それで、これからどうするんだ?もうその姿じゃ大学も通えねえし、そのうち戸籍の証明できない孤児扱いにされるぞ」

 

 

俺のおすすめは実家に戻ることだな。友人がそう言った後店員がチャーハンとお子様ハンバーグを持ち近づき、テーブルに飯を並べる。

 

 

あたいの手と同じくらいのハンバーグが真ん中に鎮座しそこからでる肉汁と湯気が俺の食指を誘ってくる。こりゃあ旨そうだぜ。お子様用も中々に侮れないもんだなあ。ほらほら、いやー美味そう。この切ったときのじわっといたいかにもな肉汁。あ~これ食えないとか可哀そうやな~↑。

 

 

「さっさと食えお子様」

 

 

よせつく波のようにハンバーグを友人へ揺らしていたらうっとおしそうに手で払われてしまう。あとあたいはお子様じゃない。

 

 

「…なんでチルノなんだろうな」

 

 

がつがつとハンバーグを一心不乱に喰らう俺を尻目に友人の口からぽつりと疑問が一つ、零れ落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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頑張ってね!               

                    せいぜい頑張りなさい

                                  めげずにがんばれ!

…頑張れ

                    がんばってください!

                                  がんばってねぇ~

頑張って!

                    頑張ってください

                                  頑張ってー!

 

 

 

ま、いつも「さいきょー」「さいきょー」うるさいあんたのことだから、馬鹿みたいに諦めず七転八倒するんだろうけど。

 

私はまだやりたいこといっぱいあるからね。

 

だから、頑張んなさい。チルノ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

掛け布団を押し出し少しサイズの足りない布団から出て、立ち上がる。

 

 

友人と別れもはや行く必要がなくなった大学を尻目に家に帰り昼寝をしていたことを思い出す。少し寝ぼけていたようだ。

 

それとも新たな感覚に慣れようとしているとも言えるのかもしれない。

 

 

紐に手を伸ばし「かちり」と音がするまで引っ張り手を離せばあたいの部屋の中は光に包まれる。

 

 

ぼーっとする頭をそのままに台所まで歩き、水を一杯手で掬い、ごくごくと飲み込んだ。体から出ていた冷気は鳴りをひそめ液体に触れても凍ることはない。

 

 

能力の全てを完璧制御下に置いた事を確認したあたいは口元についた水滴を凍らせ、ぽろぽろ落として口元を拭う。

 

 

その足でスマホに手を伸ばし澱むことのない手さばきでLINEを開き、メガネのアイコンをタップした。

 

 

そこで初めて手が止まっていしまう。だが、あたいは覚悟を決め、電話のマークをタップする。

 

 

ピロロロロ、ピロロロロ、と鳴動しているスマホを片手に寝室に戻りカーテンをガシャリと開ける。

外はもう深夜に突入し、それにより数多の家屋から漏れる光が確かに人の営みを感じさせられた。

 

 

手が震えるのを感じる。この光を消し去る勇気なんて、あるわけがない。失敗したら全てが終わりだ。あたいが終わらせてしまう。

 

 

しかし鳴動は予備動作なく突如止む。この時間帯なのだから出ない可能性も考慮していた。が、友人は見逃すことなく手に取ってくれたらしい。

 

 

びくびく痙攣する口を抑え、マイクに話しかけた。

 

 

「ねえ」

 

 

「…んだよ。お前が電話とかどうやったんだ?お前、僕に電話するの今日までなかったから使えないもんだと思ってたが」

 

 

はは、と失笑が漏れる。今になって思えばなんで電話程度も使えなかったのかわからない。いやむしろこの状態でなんでこの程度の事しか理解できない今がちゃんちゃらおかしい話なのだ。自分の馬鹿さが阿保らしく思える。

 

 

「あたいは、どうすればいいんだ?」

 

 

「…お前、いったい今どっち側なんだ?」

 

 

「どっちでもあり、どっちでもないよ。いや、どっちでもなくなったと言えばいいのか」

 

 

電話の向こうから静寂が聞こえてくる。もう少し軽く話すつもりだったのにどうにもうまくいかない。友人はあたいの雰囲気に当てられ沈黙していた。

 

 

「思い出したんだ。あたいがやらなくちゃいけない、使命が。みんなが、みんなを、助けなくちゃいけないんだ」

 

 

「…勝手に助けりゃいいだろ、そんなもん」

 

 

「取り消しのつかない事になるかもしれない。そう、そうだ、お前を、殺すことになる。殺しちゃうんだ」

 

 

ぼろぼろと流れる涙。手に触れれば制御しきれなくなった冷気に侵され形状を変化しころころと床を転がっていく。

 

 

数刻たったのち、涙も収まってきた頃合いで友人の声が電話から聞こえてくる。

 

 

「それはなんでするんだ?まだお前の、あの馬鹿だったお前の記憶が残ってるならそんなもん他人事だろ?チルノなんて所詮他人だ」

 

 

「違う。違うんだ。これは責任なんだ。"俺"が彼女と混ざり、変えてしまった。託された彼女は一度全てを失い俺と成った。託されたものを全て俺で塗りつぶしてしまう所だったんだ。ここでそれを無視してしまうのは、彼女の託されたすべてをゴミ箱に捨てる事になる」

 

 

「そして俺は、あたいは、混ざり合ったあたいは、託された想いを、達成したい。みんなを助ける。助けたい」

 

 

「でも、お前が死んじゃう。殺しちゃうんだ」

 

 

混ざり合った俺はそれを自覚した後でも心が分かれることなく一つのままだった。

 

 

これが示すのは俺のしたいと思う事もあたいがしたいことだし、あたいがしたい事も俺もしたい事だという事。

 

 

あたいは、友人を殺したくない。だけど、皆を助けたいんだ。

 

 

足りなかった頭は今、円周率を1億くらい計算できるくらいに満ち溢れ目に映る1から1000を理解するほどに最適化された頭脳をもってしても、この矛盾にあたいは苦しみ続ける。

 

 

皆か、それとも友人を含めた大量の人間たちか。失敗した時の代償は大きい。大きすぎる。あたいがまるで神のように天秤を傾けていい代物ではない。損得勘定で傾けていい代物ではない。ないんだ。

 

 

だが友人はあたいの切実に悩み苦しむその姿をわかっているにもかかわらずはっと笑い飛ばした。

 

 

「お前がやりたいようにすりゃいいだろそんなもん。失敗とか、皆の想いとか、僕の想いとかどうでもいいんだよ。そんなものは判断材料でしかないんだ。決してそれに判断されちゃいけない」

 

 

「だから、お前が決めるんだ」

 

 

電話から漏れ出る言葉は実際の友人の声ではない。

そんなことはわかっている。スマホから漏れ出るこの音は所詮人工音声。心など籠っていないロボットが作り出した声だ。

 

だがそれを通してなお、友人の声は凍った身を融解し、蒸発させ、決意させた。

震える口元を抑え、淡く光る電球を見つめる。上を向く事で無理やり流れる涙を抑え、瞳を閉じて一気に流し切る。

 

 

あたいは揶揄うようなおちょくるような口調で電話に話しかける。

 

 

「んじゃま、お前には死んでもらおうかな!」

 

 

「あっそう。言っとくが死にたくないし全力で抗わせてもらうからな。僕だってやりたい事あるんだから」

 

 

「やれるもんならやってみなよ。まあそのうち解凍するからダイジョブだって。ミスったら一生冷凍保存されるはめになるけどね!」

 

 

「おい」

 

 

がははと笑い友人の切れたような言葉を受け流す。はあと諦めたような溜息が聞こえるのを合図に俺は別れの言葉を口にした。

 

 

「じゃあね」

 

 

その日関東は氷の結晶に包まれ、4300万人が命を落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スナイパーライフルを構え、撃つ。

 

最も簡単に表現するとしたらこうなるだろう。義勇兵を志望した男に待っていたのはこの生活だった。

 

パツンと独特の着弾音が鳴り響き一見して少女のような風貌をした敵対生物「妖精」の身体に穴が開く。

 

「ぎゃ〜!」

 

コミカルな声を出し笑いながら消えていく氷の化身。与えられた仕事はこれだけだ。

 

だがこれは冬の侵食を抑えることに繋がるらしい。広がった冬に現れる奴らはそこに住み着き人の住めぬ極寒の地にしてしまう。だからこうして関東周辺を取り囲み中部やら東北やらに奴らの支配領域を広げられることを抑制しているのだ。

 

この理論で言うなら関東中にいるであろう妖精共をひとり残らず駆逐すれば奴らに奪われた土地を取り戻せるのだろうが…

 

連日放送される自衛隊による関東奪還作戦が失敗しているのを見るにそう簡単な話ではないのだろう。遠距離でちまちま撃っているとはいえ前線に出張っている僕からしてみれば作戦失敗に対してネットほど自衛隊を叩く気にはなれなかった。

 

「うはははは〜!あたいの弾幕を喰らえー!」

 

動きはトロイが妖精共はどこかで聞いたことがあるような一人称で氷弾を発射してくる。それも大量に。

 

支給されたでかい盾に身を隠し飛んでくる弾を凌ぐ。芸術的ともいえるこの弾幕を舐めてはいけない。僕はこの弾に当たりたちまち氷のモニュメントと化していった友軍をこの目で見ている。

 

苦悶の表情を浮かべた彼らは「冬」の一部となり今も墓代わりにその地に凍りついているのだろう。

 

弾幕が収まったタイミングで体を出し、発砲。某FPSゲーのように走り回りながら撃つ、のようなことは当たり前だができはしない。走って避けられる程温い弾幕ではないのだ。故に取り回しが悪くとも安全圏からちまちま撃墜できるスナイパーライフルがこの前線では採用されている。

 

「ぎや~」

 

胴体の辺りに当たり、泡沫のように消えていく。それと共にそこを支配していた「冬」がまるで太陽に照らされ溶かされるように元の情景が戻り始めていた。

 

「ここも終わりか」

 

メガネを中指でかけ直しスナイパーライフルを細長いバッグにつめる。

 

「だな。今日も生き残れたか」

 

僕の独り言のようなつぶやきを拾い返してくる同じ場所に配属された男も同じように荷物を纏める。

 

僕達はこれから取り返した区間を調査し本部に報告後にまた冬の領域を溶かしにいくことになる。

 

「お前、今歳いくつだ?」

 

一度報告をしに二人一組で散開した部隊に戻る必要があるだろう。そう思った所に同僚から声がかけられる。

 

「いきなりなんですか。僕と貴方、与太話するほど仲良くなかったと思いますが」

 

「お、おう。ズバッとくるのな。お前」

 

たじろいでいる推定倍は生きているであろう男。

気を取り直しそのまま目で訴えかけてくる。無視してもよかったがコミュニケーションに支障が出ても厄介だ。

 

「人に年齢を尋ねるときは自分が先に名乗るものだと教わりませんでしたか?」

 

「あ、ああ…そうだな…。いやそれ名前じゃね?」

 

「そうですね。僕は今年で20です。貴方は?」

 

「…。…俺は43だ」

 

そうですか。と応えすたすた軍用車に向かい歩く。会話を終わらせるのに必要なのは話の主導権を奪う事だ。主導的に話そうとしている奴の手鼻を挫くことで相手に話をさせる気力を失わせるのだ。あとはそいつとの間に発生する沈黙に耐えられるほどの胆力があれば完璧。勿論僕にはある。

 

「いやそれで終わりじゃねえよ!年齢だけ聞きたいってだけで話しかけるやついねえから!」

 

だが残念なことにこの男にもそこそこの胆力があったようで。これは長期戦になるなと覚悟を決める。

だが僕の方から声をかける義理はない。男が話し出すのを待っているとはあ…とため息をつきようやく本題に入り始める。

 

「お前、なんでここに来た。こんな終わってる仕事代表みたいな場所に」

 

「お前じゃありません。僕には齋藤彰俊という名前があります。この部隊に所属した際自己紹介したはずですが。小山明平さん」

 

はあ…とまた一つため息をつく小山さん。ため息を吐くぐらいなら話しかけなければいいのにと内心思っていたがやはりそれでも会話を続けてくるらしい。またぞろ口を開き僕に問いかけてきた。

 

「はいはい。わかったよ彰俊。彰俊はなんでここに来た?…ああわかったよ。その顔は先に俺から話せっつー表情だな?この会話だけでもお前の性格がわかった気がするよ」

 

何も言っていないのに勝手に人の顔面から後の会話を予測し始める小山さん。この数分で悟られるような性格をしていないと自負しているが何分言いたいことは合っているため黙って話を促す。

 

「俺は単身赴任をしていたんだがな。ちょいと大阪に行ったくらいで東京の田舎辺りにいた妻と息子が凍りついちまったんだよ。ついでに日本の経済を支えていた関東の大企業が物理的に潰れちまったせいでその余波を受けたうちの企業も潰れちまった」

 

そこで一呼吸おきすんと鼻を鳴らしたが何事もなかったように話を続ける。いい加減泣くのにも疲れたといった感じだ。

 

「んでもって何もかもなくなった俺はせめて金だけでも取り戻そうと、求人が止まない義勇兵に所属したってわけだ。お前に声をかけた理由は、一月も経ったんだからそろそろ互いにコミュニケーションをとっといとこうと思ってな」

 

どうやらこの男にとってこの一月での僕との関係はコミュニケーションを取れているとは言い難かったらしい。僕にとっては良い距離感で仕事に集中できる関係だとてっきり思っていたんだが。

 

小山さんから目で話を促される。やはり無視してもいいがここを無視したらそれこそ僕の基準でもコミュニケーションに弊害が生まれそうだ。

何を話すべきか。話す内容を吟味しながら口を開いた。

 

「僕は、まあ、なに、友人がいたんだけど、そいつがなかなかに意味わかんなくてな。でも唯一言えるのはあの時は半端な思いでやらかしたわけじゃないって事。それくらいか。だからまあ思い残しがないか確認しにきたって感じ…なんだろうな。たぶん」

 

「??どういう事だ?」

 

「さあ?どういうことなんでしょうね。僕も聞きたいです」

 

別に家族が死んだとか、友人の敵とか。

そんな殊勝な理由じゃない。

 

単に確認しにきただけだ。あいつが後悔せずにしでかしたのかっていうのを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖精を倒し続けても所詮焼け石に雀の涙。一度取り返したところが再度侵攻されていることなんかザラだしそれに加えて冬を抑えきれていない地域も多いらしい。

 

なんでも妖精の数が尋常じゃないのだとか。僕らが担当していた所じゃ二百メートルに一匹程度の感覚だったがある地域では一匹いたら数十匹はいる程度の数がいるらしい。「戦争」やら「人的資材」の単語に慣れていない日本人は当然のことながら消極的。その数に戦線を抑えることができず良くて塹壕戦。普通に戦線崩壊。悪くて生存区域に食い込まれる異変となっているらしい。

 

「…」

 

パソコンを開き海外のニュースサイトを覗く。欧米、西洋、アジア、数々の国での一般的なサイトが目の前に並ぶ中一番大事なものだけはそんなに表示されていなかった。いや、異変が起こってこれだけ時間がたったと言うのに未だにニュースに紹介されている時点で予想していたよりはマシだが…

 

日本が常冬になり二ヶ月。各国の対応は杜撰なものだった。

 

当たり前といえば当たり前だがこの天変地異かつ前代未聞の異変、たがしかし結局の所日本の問題でしかないのだ。

 

他国は報道するだけして静観を決め込んでいた。むしろ日本の経済が遅れることに諸手を挙げて喜んでさえいるかもしれない。

 

今日本の経済は控えめにいって終わっている。突然の気候変動により作物は耐えきれず海流も大荒れ。四季でいう正真正銘の冬に入ってしまえば気温が-10度を下回るのも珍しくない。というか常時0度を下回る可能性がある時点で中々にやばい。

常冬になったせいで日本という地理的土地は完全に限界ポジションとなってしまっているのだ。

 

どこの界隈もそれに助長されたかのように落ち込んでいる。がある界隈だけは落ち込むどころかむしろ伸びているらしい。

そう。東方project界隈だ。

 

 

 

『敵対生物妖精ってどう見てもチルノで草』

 

『これつまりどういう事?幻想郷に侵略されてるってこと?』

 

『俺らの東プロが何千万人も殺すわけないだろ。あるとしてもなにか理由があるはず』

 

『おまいら夢見過ぎじゃね?ワイは全然幻想郷が日本潰すつもりで戦争仕掛けてきてても不思議じゃないが』

 

『幻想郷云々が本当のことだとしてもチルノしか顔出してないのおかしくね?それこそあの胡散臭いやつが喜々として宣戦布告してきてもいい気がするが』

 

『政府が他国に協力要請してるらしいが不味くないかこれ?妖怪って恐怖を餌にするんだろ?』

 

『にわかか?チルノは妖精なんだが?』

 

『でもチルノの侵略自衛隊抑えきれてないらしいし他国の協力ないと厳しいのでは』

 

『苦戦してるの相手がチルノだと嬉しいのか悲しいのかわかんねえな』

 

 

そう。僕たちが銃で撃ち落としている妖精の容姿は正に「チルノ」なのだ。

いや容姿だけではない。その口調も、仕草も声音も、イメージ通りのチルノだった。

 

唯一イメージと違ったことと言えば、僕たちに、いや人類に敵意を持っているところだろうか。憎しみを持っているわけではないようだが話は通じるのに対話はできない。決して覆らない敵意がチルノ達の中にあった。

 

何が目的かわからない。

わからないが色々調べていると素人目線でも見えてくるものもある。いや今回の異変に関しては誰もが素人ではあるが。

 

例えば「冬」の領土。バイアスがかかっているせいで勘違いしやすいが冬の領域が広がっているのは日本だけではない。日本海、太平洋にもかなり広がっているのだ。

 

さらに妖精たちの態度。そういう性格だから。で片付けられるのかもしれないがどうも本気さを感じない。まだ余力を残しているような気がしてならない。手を抜いているのかそれとも…

 

あとはそれらの雑多な情報と「原作」知識をすり合わせればおのずと答えは出てくる。

 

つまるところチルノは病原菌紛いの行動をしている。と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

電報として本部から送られた紙をテーブルにのせ、頭をかく。どうしたものか。

 

「自衛隊合同の大規模作戦か…」

 

関東の西部に、この異変が発生したとされる中心にはまるでアナ雪のような氷の城が建っている。

唯の氷と侮るなかれ。所詮分子結晶のくせにその城はミサイルに耐え爆撃に耐え燃料気化爆弾に耐えるその外壁はもはやマイクラの岩盤並の硬度を誇っていた。

 

しかしその城にも隙、というかガサツな部分があり所々隙間が空いており人が通るぶんには余裕で隊列が通れるくらいの道幅がある。今回遂に前回前々回の反省を踏まえ中心へ突撃を敢行する。ということらしい。

 

パソコンで調べてみた限りかなり気合が入っているらしく数々の媒体で発表・募集がかけられ日本の義勇兵や自衛隊以外だけでなく海外からも多数兵員が集められるようだ。

 

SNS等を通して悲惨な日本の現状をより細かく伝えられその反応も悪くない。支援も期待できる。

 

もしかしたら、中心部へ到達できるかもしれない。俺がよく知っている、あの場所へ。

 

数刻考えたのち参加を決意しその告知とともにのっていたurlを検索。押印した紙面を郵便し参加表明する方法もあるようだが面倒なため幾数かの個人情報をサイトに書き参加表明。作戦開始時刻は一ヶ月後のようでまだまだ先だ。それまでに辞退も可能なようだしそれまでまた仕事に勤しむことになるだろう。

 

特に使うことのない給料が振り込まれているのを確認し購買へ向かう。二十円へ値上がっているうまい棒を一本手に取り僕はレジへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「彰俊、お前あの告知見たか?」

 

部隊の中で唯一会話がある小山さんと数週間ぶりに相方になり案の定話しかけられる。そんなに仲良くないと自他ともに認める仲なのだが何故そんなにも話しかけてくるのか。それとも俺が知らないだけで小山さんは誰彼構わず話しかけるようなウェイ系な性格をしているのだろうか。

 

「見ましたよ。まさか僕が生きてるうちに兵隊募集の告知が日本で出されるとは思いませんでしたね。というか戦争自体、生きて視ることはないだろうなと思ってましたし」

 

「…人間相手じゃないんだから戦争じゃねえだろ」

 

「エミュー戦争って知ってます?人間相手じゃなくとも人はそれを戦争と呼ぶんですよ。エミュー戦争と違って死者も出てますしね」

 

…そうだな。と呟き小山さんは顔を伏せる。見なくとも暗い顔を浮かべているのだろう。

 

「まあなんだ?二週間後の作戦に参加すんのかと思ってな。いやお前のことだ。「なんでそんな余計なリスクを自ら背負いにいくようなマネをしなくてはいけないんですか。自分一人いてもいなくても戦力に変わりはありませんよ」とか言うだろうな。愚問を聞いちまったな」

 

「僕小山さんの中でそんな心が無い効率厨みたいなイメージなんですか?普通に参加しますよ」

 

「そうか参加するか。…はっ!?参加するのか!?」

 

声デッカ。あーあ気づかれないうちにスナイプしてやろうと思ってたのに。あの妖精の嬉しそうな顔。絶対気づいてんじゃんなにやってんだ。

 

急いで盾に隠れ弾幕を防ぐ。盾越しからも感じるパワーに戦々恐々しながらも収まったタイミングで上手く弾を当てることができ聞き慣れた断末魔をあげ妖精は消えていく。これが一回休みと言うやつなのだろうか。

 

「ちょっと声荒らげ過ぎちまったな。だが一度冷静になって再度考えた方が良いぞ。一時の衝動だけで物事を決めるのは…」

 

「僕刹那主義じゃないんですが。そんなバカッターと同レベルの思考してませんよ。理由は、そうですね…」

 

「…いや、そうか。悪いこと聞いたな。忘れてくれ」

 

説明するのも面倒だし理解してくれるかも怪しい。真面目に話したとて徒労に終わりそうな話なのでどうごまかすか考えていたがどうやら小山さんの中で僕が義勇兵になった理由が話せないくらい暗いものだと勘違いしているらしい。正直勝手に気遣われるのはうっとおしいことこの上ないがこの際やはり面倒なので指摘はしないでおく。

 

「その言い方だと小山さんは参加表明していないみたいですね」

 

「そりゃ、そうだろ。お前じゃないがわざわざ命を危機にさらしたくないだろ。誰だって」

 

「まあそれもそうなんですけど。小山さんの義勇兵になった理由的にもって話です。確か金稼ぎしにきたんですよね?」

 

適当にその辺を散策しながら脳死で言葉を返す。特に意図した発言でもなんでもないが僕の言葉を受けてなぜかそのおしゃべりな口を閉じ沈黙する。傍から見たら気まずい空間なのかもしれないが気まずくともどうでもいい関係なので気にせず重い盾を引きずりながら妖精を探す。

 

「…そうだな」

 

なにか含みがありそうな、漫画とかなら確実に伏線が敷かれたであろう言い方。再三いうが興味がないので無視して僕は辺りを探索した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

配布されたALを片手で持てる程筋肉はないので素直に両手で持ち軍用車に乗り込む。一度エンジンが振動し走り出したこの車の後ろにも大量のごつい車が列を連ねて城の隙間を通り抜け中に入っている。

 

光景はまさに軍事パレード。中も数々の状況を打開できる現代兵器も積まれておりミリオタが見たら垂涎ものの景色が繰り広げられていた。

 

志気も悪くない。相手は所詮自然から生まれたような氷の妖精。現代のチートを押し付ければ余裕であると雰囲気で語っている。それにつられる周りも自然と同じような雰囲気となり団結力もあるだろう。

 

緊張を解くためかそれなりに広い軍用車の中で会話をしている彼らの間に不安の声は少なくどことなく作戦成功を前提とした会話が繰り広げられている気がした。

 

だが僕は反対に不安が募る。フラグだとかそういう話ではない。

 

漫画なんかじゃ個人の実力が物語に大きな影響を与える事が多々ある。主人公一人で敵主力を壊滅させるとか。

 

だがいつの時代も、英雄は現れこそすれ結局の所技術や数によって勝敗が決まってきた。彼らはあくまで支えただけ。個人の資質のみで勝敗が決した戦争なんてありえない。

 

おそらく個人で戦っているであろう友人を思いつつ、車が停まる。

 

ようやく作戦開始地点に到達したようだ。

 

同じ軍用車に乗っていた人達も会話をやめそぞろに降りていく。

 

それに習い僕も降りていくとそこは地面も、スーパーも、アパートも、道路も、何もかもが凍りつき太陽光すらも凍りついた天井により淡い光のみが降り注いでいるのみだった。

 

幾ばくは呆けていると与えられた通信媒体に連絡が入る。

 

『作戦開始

総員地点Aへ急行せよ』

 

100名以上はいるであろう僕たちを指揮る中年位の男が声を張り上げ作戦開始を告げた。それと同時にでかい声に寄ってきた数匹の妖精がやってくる。

 

「だははははー!」「凍りつけ!」「ブリザガだー!」

 

最前列が盾を構えその後ろが隙間から銃を撃つ。大量の人員がいるからこそ成り立つ戦法だ。弾幕は弾かれ隙間から撃たれる銃弾は彼女らの体を破壊する。

 

前でドンパチやっているからこそ後ろの方にいる僕は何もすることがなく眺めているだけ。ただ考えを巡らせる。

 

冬の侵攻はある地点から同心円状に広がっている。衛星でみればそれは一目瞭然だ。

 

自衛隊主導の今回の作戦、それをわかっているのだろう。進行方向が確実にそこだ。どうやら政府はその中心にある核のようなものを破壊することでこの異変を終息できると考えているようだ。妖精を蹴散らしながら進んでいるため進行は遅いが段々と近づいている。

 

妖精を破壊しここら一帯を支配していた冬から取り戻した住宅街を今日の野営地とするらしく布団代わりの布が配布される。地面に雑魚寝だと思っていたので比較的清潔な誰かの住宅の床は寝やすかった。

 

五人ほどで一軒家に入り、眠る場所を吟味する。

凍り付いたはずの家は意外にも生活感を保っており棚の上のごちゃついた小物達や子供一人と両親が写された写真立てがそれを物語っていた。

 

寝室をあけるとそこには身長程の氷が横たわっている。事前の調査で分かっていたことだがその地の冬を解いたところで人間を包む氷は溶けやしない。

 

さらにドリルで穴をあけ中の人間を救出を試みるも既に心肺機能は停止し物言わぬ死体となっているらしい。

 

…誰からというわけでもなく氷を目に見えぬ場所まで片付け布を敷く。誰もしゃべらずにその日は床に伏した。

 

 

 

 

 

中心に近づくにつれ妖精の数も増えていく。作戦開始地点では数匹だった妖精の数もいまや数十匹はざらだ。

前衛で弾幕を防ぎ中衛・後衛で撃ち落とす。いくら妖精の数が多くなったとはいえこちらは100人規模の大隊だ。さらに四方八方から中心に向け進軍している別動隊もいる。一部隊に戦力を集中していたら他の部隊が中心に到達するだろう。

 

だが中心へと近づくにつれ段々と下がる気温。具体的に言うなら吐いた息が一瞬にして凍りつくレベル。忘れてはいけないがここは日本だ。シベリア等の亜寒帯気候ではないはずだ。

荷物運びに使っていた軍用車は常時エンジンをふかさないと凍りつきたちまちのうちに使えなくなってしまう。もはや車は使えないと判断し台車で積まれた荷物を運ぶことにし凍りついた道のりを防寒具を着て進んでいく。

 

そうなれば手はかじかみリロードするのも一苦労。トリガーを引くのはできるが構えるのは難しい。そのくせ妖精達はその影響を一ミリも受けていないようでむしろバフがかかったように俊敏に動き弾除けをしてくる。

 

いくら前衛が後ろへの弾幕を防ごうと四苦八苦しようがどこかで亀裂は必ず生まれる。

 

バキバキバキ…

 

隣を見ると盾で防ぐことができず流れ弾をくらった戦友が氷に包まれていっていた。

 

何か声をあげようとして、それもかなわない程に氷は彼の肢体を侵食し一瞬にして氷塊となってしまった。

 

「あはははは!」

 

楽しげに笑う妖精。苦悶の表情で凍死した同僚。

 

「あははははははははははは!」

 

呼応するように周りのいじらしい容姿をした妖精たちは笑い出す。人を殺した殺人鬼は笑い出す。

固まったように動きが鈍る銃を握る戦友たち。唖然とし震えている戦友たち。戸惑いと恐怖は伝播する。その雰囲気を余儀なく一身に受けてしまった僕は、

 

パンッ

 

普通にトリガーを引いた。動じる事なくアイアンサイトに妖精を映し撃っただけだ。こんな事サルでもできる。

当然射線にいる妖精は現代兵器の力で形を保てなくなり薄れ消えていく。

 

「…ッ、総員、発砲!」

 

その射撃を皮切りに我に返る人が増え冷静に弾幕を防ぎ大人数で大量の弾丸を撃ち込み袋叩きにした。一人の犠牲が出たがそれ以上被害は出ることは無かった。

 

パニックになることもなくここを潜り抜けれたのはおそらく彼らの動機もあるのだろう。呆けていた目は我に返り憎しみを滾らせた殺意溢れる眼になっていた。恐怖に襲われ逃げ出す者は誰一人いない。

だれもがこの異変の元凶を殺したがっている。どうやら彼らの生きがいはそれだけらしい。復讐の徒となっている彼らをだれが責められようか。

 

でも、僕は?

 

そんな狂気的な由で作戦に参加した彼らと違い戦友が死んでも呆けることなく妖精を消してみせた僕はなんでそんなことができたと思う?

 

決まっている。

友人がそんなことするわけがないと知っているからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だろ?」

 

全てが凍り付いた世界。

中心部にたどり着いた僕たちに待っていたのはだいたいそんな感じだ。

戦友も、マンションも、コンビニも、ゴキブリがいそうな林も、水色に輝き全てが凍っていた。

 

いや、語弊があるか。

俺と、チルノを除いた全てが凍っていた。

 

 

 

 

 

 

 

中心に近づくにつれ増えていく妖精。当然会敵する回数も増え段々と厄介になっていく。

それがある地点から一切出現しなくなった。-20度は下回っているであろうこの環境で彼女らの奇襲はとても厄介だというのにそれをしなくなったのだ。

 

まるでそれが不要とでもいうかのように、元凶は中心部で待ち構えていた。

 

大人になったチルノ。そいつの容姿はそう形容すべきだろう。

 

まるで幼女のようだった容姿は180以上の女丈夫になりすらっとした足を覆う青いスカート。六対の壮烈な氷の翼。

 

そして言うなれば圧と言えばいいのか。

そしてその圧倒的気迫と共に敵意を僕たちに向けてきていた。

 

銃を向ける。そして発砲。

 

それを全員から受けまるで嵐の中に佇むかのように雨の様な銃弾がチルノに刺さる。

通常銃弾一発でさえも致命傷になりえる威力がある。撃たれどころが悪ければ、それこそ頭に当たれば衝撃で脳が噴き出るくらいに銃弾というのは高威力だ。そんなものを大量にくらっているのだから普通ならケバブのようになっていてもなんの不思議もないだろう。

 

「絶対零度っていうのは…」

 

だが銃弾はまるでチルノの前に壁あるかのように空中に静止し地面に落ちていく。

 

「物体を構成する原子の熱運動が完全にゼロになってしまう現象を招く。つまり物体が完全に静止するんだ。あたいの周りには常に絶対零度。だれもあたいに手を出せる者はいない」

 

ぶおん。と手を前にかざす。

 

青い風の様な波動が押し寄せそれに触れてしまった戦友はたちまちのうちに凍り付いていった。

圧倒的な力。それは現代兵器ではなくチルノに使うべき言葉だった。まるで蟻対人間。必死にかみつこうが痛くもかゆくもない人間にとってそれは児戯に等しかった。

 

腕を組み、広げる。

 

それだけで100人近い戦友はみな凍り付き、氷細工のようにチルノはそれを破壊する。

 

ごろごろと口を開き今にも絶叫しそうな表情の首が転がり足にあたる。

 

全てが凍り付いた世界で、何故か僕はそれを認識していた。

 

「お前、感じ悪いぞ。食べ物で遊ぶなって子供の頃説教されなかったのか?」

 

まるで友人に接すように話しかける僕。

くそ寒いはずなのに背筋に一筋の汗が流れ落ち、固まる違和感に不快感を感じながらチルノからの反応を待つ。

 

正直、まだあいつの意識が残っているかなんてわからない。もうとっくにチルノに飲まれて暴走している可能性だってあった。

 

「食べ物じゃなくない?というか、不謹慎って言葉期待してたんだけど」

 

おもわず「はっ…」と声が漏れる。なんだ。やっぱお前じゃねえか。

 

「久しぶりだなクソ馬鹿」

 

「目が馬鹿になってるメガネマンに言われたくない」

 

ムカつく事にまたもや僕より背が高くなった友人は俺を見下ろしながらそう言った。

 

 

 

 

 

「日本で暴れてたのお前かよ」

 

一度だけ上げてもらったことのある友人の家に行き凍っていないちゃぶ台を囲み話しかける。

ちゃぶ台の上にはかき氷。友人はそれに練乳をかけおいしそうに食べているがこの寒い中氷を口にするとか自殺行為だ。友人は依然として阿保なのか?

 

「ていうか死んでなかったんだ。あたいてっきり電話の後凍らせちゃったもんかと思ってたんだけど」

 

「お前が凍らせたの関東だけだろ?僕神奈川住まいだから」

 

あれ?と友人は首をかしげるが大方関東に住所を構える自分と同じ大学に通っていたから僕も関東住まいだと勘違いしていたのだろう。普通ならその考えで間違いないが残念ながらこいつは馬鹿だ。だからこいつの家の近場にFランがなかったために家から二時間の神奈川方面の大学に来ていたのだ。流石に時間かけすぎだ。

 

「それにしても、よくあたいのとこまで来ようと思ったね。もしかしたらこの異変の犯人あたいじゃないかもしれなかったのに」

 

「その辺りは冬の中心がほぼお前の家って時点でほぼ確信してたけどな」

 

そういえばそうだ。そういってポンと手のひら叩く友人。そしてしゃくりと一齧り。

 

「あたいがこれからなにしようとしてるかわかる?」

 

そしてそのままスプーンをこちらに向けぷらぷらと揺らしてくる。

 

「バカなお前に言ってわかるかなあ」

 

「今のあたいを舐めないもらいたいね。今なら円周率を60兆は羅列できるレベルだから!」

 

ふふんと背丈がでかくなったのと合わせてでかくなった胸を恥ずかしげもなく張るチルノ。ベースが馬鹿だからクソ強くなってる今もどこか抜けているように思える。

 

「たぶんだけどお前が今みたいにクソ強くなってるのは僕ら人間の恐怖を物凄い量吸収したからだろ?」

 

冬の浸食速度は現在じゃ一日に一つの市を覆うほどに早くなっているが最初からそうだったわけではない。僕も三か月くらい冬を解いてきたからわかるが日に日に冬の浸食スピードは速くなっていた。

 

これすなわち時間経過とともに増えたなにかのせいという事になるが、そこで「原作」の出番だ。

妖怪は人間の恐怖を糧にするらしい。チルノは妖精だった気がするが「妖怪に一番近い妖精」と言われたこともあるくらいなのでどっかのタイミングで恐怖を糧にし始めてもおかしくはないように思える。

 

「んでもってお前、冬の浸食を日本だけにとどめる気でもなさそうだしな」

 

海洋速報なんかでみれば一目瞭然だが冬はこいつの家を中心に日本列島だけでなく日本海や太平洋までも冬にしている。地面がないから雪とか積もらないしわかりずらいが。

 

つまりこいつは世界を視野に入れているという事。全世界の人間を食い物にしようと、苗床にしようとしているんだ。

 

「日本が氷漬けになってきてるのに世界各国は無情にもほぼ無関心だったしな。だから世界にも恐怖を伝播させてもっと恐怖を集めようとしてるんだろ」

 

「そうね。救うには今の能力じゃ全然足りないから」

 

物憂げに馬鹿のくせしていっちょ前に悩むような動作をみせる。それさえも綺麗に見えるのは成長しお世辞無しで美人になったからだろう。クソ馬鹿の時やクソガキチルノの時にこの動作をしていたなら鼻で笑っていただろうな。

 

「それで、あたいが今からなにしようとしてるかわかる?」

 

器に盛られたかき氷はいつの間にか消えていた。前には俺の分のかき氷と、少し悲しそうに僕を見つめるチルノ。

無差別に冷気を巻き散らかしていたわけではないのだろう。この部屋だけは外と違い凍り付くことなく今の時期相応の気温だった。

時間は少しづつ進み、かき氷は溶けていく。

 

「…僕を生きて返さないつもり、か」

 

いわば今回の作戦はチルノにとって絶好のチャンスだったのだろう。だんだんと日本を氷漬けにしてきてはいる。時間が無限にあればきっと地球を氷河期にすることもできるだろう。

だが人間は知っての通り科学で適応してきた生物だ。そのうち冬に特攻の道具でも開発されてしまえば逆にだんだんと冬が小さくなり恐怖も薄れチルノは、こいつは討伐されてしまう。

 

だから今回の作戦を無様に盛大に失敗させ巨大な恐怖を得ようとしているんだ。人間の適応が追いつく前に打つ手なしなくらいに冬を広げるつもり、ってことだろう。

 

そしてそのためには生存者をゼロに、つまり僕を殺さなければいけない。

 

チルノは立ち上がり僕に近づき、手を僕の頭にのせる。

 

「…僕は、お前がどれだけ戦友を殺していても動じなかった」

 

スプーンを手に取り練乳をかけしゃりと取る。

 

「お前がそんなことする奴じゃないと知っていたからな」

 

そのまま口に運び、甘ったるい味に顔を歪めた。

 

その手はこれから殺そうとしているというのに躊躇して震える、なんて事なく柔らかい手で頭をがっしり掴んでいた。僕はそれに逆に安心する。

 

「あとで蘇生しろよ。前も言ったが僕だってやりたいことがあるんだ。Fランなんて僕はまだ認めてねえからな」

 

「あはは、いい加減認めやがれFラン大学生。所詮お前はあたいと同じ…俺と同じ土俵で馬鹿ってことだよ」

 

わざわざここまで来て俺の心配してくれるなんて。ほんとバカ。

 

そうつぶやいたのを認識後、僕は意識を暗闇に落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飛行機に乗り込みエコノミークラスに座る。固い座席に少なくない不快感を感じるがこんなもんはとうに慣れた。慣れてしまった。

 

もう何回海外から海外にいっただろうか。そしてその度なんとか取れた席に乗り込み今のように震えて未来に絶望しているのだろうか。

 

俺は逃げ続けていた。いや俺だけじゃない。飛行機の中で見回せば様々な人種の人々が肩身を震わせまだかまだかと離陸を待っていた。

 

冬は浸食を続けた。

あの日終わるかと思っていた作戦は無残にも生き残りゼロという形で失敗に終わり全国に恐怖を与えた。

誰かが息子が、と言って泣いた。誰かがクソが、と言って叫んだ。誰かがそれを海外に伝えた。

 

一日に一国、冬に飲まれていく。

 

日本なんてとっくに飲まれ、朝鮮半島、中国、ロシア、オーストラリア、フィリピンもそれに続いて飲まれていった。

当然ロシアなんかは黙って飲まれていったわけではない。

 

戦略核であるICBMサルマトを凍り付き既に国として終わっていた日本に打ち込み核の雨を降らすもその弾頭すべてが地上に落ちても爆発すらせず不発になり、

 

ロシア東部が冬に浸食され始めてきた頃、さらにCWCを無視しノビチョクやホスゲンをばらまき毒殺しようと試みたが敵対生命体の妖精にはなんの効力も得られず、

 

国の半分が占拠された頃には感染力のある天然痘すらも使い浸食拡大を止めようと元凶を殺しに向かったが絶対零度に近い温度の前に天然痘ウイルスは活動を止めた。

 

今度は大量の兵士を現代兵器と共に出撃させようとしていたがその前に国民全員が逃げ出しロシアは崩壊した。今となっては冬の一部となり雪に沈んでいる。

 

サイパン、グアム、フィリピン、モンゴル、パラオ、ベトナム、ミクロネシア、ラオス、ブルネイ、カンボジア、パプアニューギニア、インドネシア、ネパール、インド、キルギス、バングラデシュ、タジキスタン、ブータン、ラオス、カンボジア、スリランカ、シンガポール、タイ、ミャンマー、ニュージーランド、パキスタン、アフガニスタン、カザフスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタン、ホノルル、アメリカ西部。

 

それら全ては氷の一部となり妖精共の領地となった。もはや誰も、どんな国も、アメリカでさえも止めることはできない。

 

今もスマホの中でアメリカがかつての母国へ向けミサイルを飛ばしていた。そしてなんの成果もなく中の爆弾は起爆することなくただの鉄の塊のように落ちていく。

 

一週間のうちにアメリカでさえも氷に包まれていくのだろう。大量の人が死に、大量の人が逃げていく。恐怖に苛まれていく。避けられない運命に涙を流し神に祈る。

 

『確か金稼ぎしにきたんですよね?』

 

今もあの言葉がリフレインする。

ああやはりそうだ。俺は逃げた。

妻も、息子も、死んだ。と確信すらできずに俺の目の前から消えてしまった。

だから俺はそれを確かめたくなかったんだ。あの作戦に同行しちまえば、俺は家族の死を認めてしまう。どこかで生き延びているだろうと、その幻想さえも消えてしまう。

 

あの作戦から生き残った人間は一人としていなかった。だが予想されなかったわけではないはずだ。

ああ、彰俊。お前はなんで死にに行けたんだ?俺は家族のそれも、自分のそれも怖かったというのに。

 

飛行機は走り始め、離陸しはじめる。

最初の頃は安心していた。こうやって時間を稼げばきっと誰かが解決してくれるさ。家族もそのうち帰ってくると。

もう絶望しかない。いつか詰むとわかっている中、逃げ続けるのは恐怖しかなかった。

 

ごおおおおと、振動し飛行機が飛び立つ。

 

そして、俺の視界は暗転した。

なにも聞こえない。なにも感じない。

走馬灯のようにいくつもの記憶が飛び交う。

ずっと続く恐怖におかしくなってしまったのだろう。家族の死を受け入れられず、同僚だった俺より若い、未来ある若者を無駄死にさせた俺にふさわしい死なんだろう。

 

俺の意識はそこで消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あたいの能力は「冷気を操る程度の能力」。

覚えている。確か鯉とか持ち帰る時に中に水を残しつつ氷を器にして大ちゃんと投げ合って遊べるくらいには器用に使えた能力だった。

 

 

他にも夏祭りにかき氷屋とかも出したっけ。かき氷がそもそも何なのか知らずに「やろう!」って決めたからこーりんとかに紫もやし…パチュリーとかに聞きに行ったり大変だったなあ。たしか。

 

 

だがあの時じゃできなかったことがある。いくら最強なあたいでもできなかったこと。

絶対零度の壁を超えれなかったことだ。いくらものを冷やそうがせいぜい-30度くらい。大ちゃんにはその程度でも褒めてくれたけど、その時あたいは「限界を超えろ!」っている言葉に感化されてぶっ倒れるまで冷やし続けたっけ。結局40度も超えれなかったけど。

 

 

車は前へ走る。車体を前へ動かし、道のりをどのくらいの時間で行ったかで速さが決まる。みはじという奴だ。小学生でも知っている当たり前だが「み」を指で隠せば(速さ)×(時間)が計算方法だと分かり、「じ」の「時間」を計算したいときは、「じ」を指で隠せば、(道のり)÷ (速さ)だということがわかる。

要はこれらの関係は実質掛け算のみで求める事ができるのだ。

 

 

じゃあ「み」「は」「じ」のどれかがマイナスになったなら?前に走る車が突如後ろ向きに走り出したら?

 

 

俺と境界が混ざり、知名度が出て、現代じゃ考えられない現象に不気味を感じる人が出て、その影響で力を得て、妖怪になって、さらに知名度が上がって、人間たちを殺して、さらに殺して、さらにさらに殺して、

友人まで殺して、あたいは全世界すべての人間を恐怖の苗床にすることに成功した。

 

 

あたいの能力ではみんなを救う事が出来なかった。だけど今ならわかる。できる。友人も、みんなも、全部を救う事ができる!

 

 

「凍符「パーフェクトフリーズ」!」

 

 

バキンッ!!

 

 

世界が白く見える。ちゃぶだいも、染みついた天井も、飛び出したせいで割れている窓も、色が抜け落ちたように白く染まっていた。まるでカートゥーンアニメみたいだ。あんなに画質は荒くないけど。

 

 

だが世界ではだめだ。地球だけパーフェクトフリーズしてもダメだ。きっとこの宇宙全部をパーフェクトフリーズしないとおかしなことが起きてしまうだろう。具体的に言うなら四季がめちゃくちゃな事になる。多分それ以上にヤバいことも起こるだろうけど今それを検証する程時間は残されていない。

 

 

この銀河を、天の川銀河ごと全てを凍らせ、巻き戻すんだ!

 

 

「凍符ッ、「パーフェクトフリーズ」!!」

 

 

この宇宙は絶対零度を超え、熱運動はマイナスベクトル方向に動き始める。

 

 

「速さ」はマイナスとなり、

 

 

(道のり)÷ (-速さ)

 

 

かけられた答えはマイナスになる!!

 

 

=(-時間)

 

 

巻き戻れえええええええぇぇぇぇぇぇっぇぇぇぇぇぇ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひゅんひゅんと擬音がなりそうだ。

 

 

視界の先のあらゆるものが分かれどこかに飛んでいく。無論あたいの体からも粒子のようなものが大量に飛びだしどこかに飛んで行っている。

 

 

あたいの体は粒子に分解されるのかと思っていたが、どこからともなく別の粒子があたいにくっつきあたいになる。

 

 

ああ。そういうことか。

 

 

成功したんだ。時間が戻っていっているんだ。

 

 

ご飯を食べるし排泄もする。そうやって得て捨てていったものが戻ってきているんだ。うーん排泄物が戻ってきてるってなんか汚いな。まあ、あくまで俺が飲み食いした分がどっか行ったりしてるだけで、あたいは妖精だからね!トイレなんかしないぞ!

 

 

ぐいっと、謎の引力で体が高速で引っ張られ視界の先が見えないくらいの速さで光景が通り過ぎていく。たぶんあたいがこれまで動いてきた軌跡が戻ってるからその分引きずり回されてるんだろうなあ。と思いながらそれを受け入れる。すげーっ。早すぎて何も見えないぞ。

 

 

カチャカチャと高速で動きまわっているあたいの体が段々と鈍くなっていっているのに気づく。カーリングのように段々段々と遅くなっている。

 

 

これはあれだな。だんだん冷めていっているんだな。いや温度的には暖かくなっていってるんだけど。

 

 

いくらパーフェクトで最強なあたいでもいつまでも冷たくしっぱにはできない。だから段々と温度が常温に戻ろうとして時間が巻き戻る速度が遅くなっているんだ。そして絶対零度を跨いだ瞬間、時間の巻き戻りは終了する。

 

 

もう十数年は巻き戻ったと思うがそれでも目に追えないくらいには高速で時間が巻き戻っていく。いったい巻き戻った時には西暦何年になっているのだろうな。そういえば巻き戻してもみんながいなくなっちゃった後だったらどうしよう。まあもっかい人類コンティニューできなくさせて巻き戻せばいいか。なんなら人類が十進法採用する前まで戻すまである。

 

 

段々と、カーリングストーンが遅くなっていくかのように自分と周りの動きが遅くなっていく。そしてそれが完全に止まり世界が常温になるころには…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは…」

 

 

さわさわさわと近くの林が風に揺れる。真上にある太陽がすっかり短くなった四肢を照らしていた。

 

 

足を少し伸ばすとぱしゃ…と湖につかりしぶきが顔に当たる。

 

 

あたいは…霧の湖にいるのか。ってことはみんないるってこと?なんか懐かしいなあ。現在起きてる事のはずなのにね。大ちゃんとかいないのかな?はじめましての挨拶したいんだけどなあ。

 

 

そんな事を考えぼーっとしていると、突然あたいの横に裂け目の様なものが生まれる。徐々に開いていき、禍々しい目ん玉が露出し始めた辺りで人影が顔を出す。

 

 

「御機嫌よう、チルノ。いい太陽ね」

 

 

「…出たなあ。隙間の妖怪めぇ…!」

 

 

疲労なんて少しも残っていないはずだが、色々ありすぎて頭がパンクしそうなあたいは少しだらっとした姿勢と態度でその大妖怪を迎えた。

 

 

「それとも、西辻燿君とでも呼べばいいかしら?」

 

 

「ん…?ああ、俺の名前か。いやあすっかり忘れてたぞ」

 

 

誰にも呼ばれなかったからな。いや、友人には一度呼ばれたんだっけ?でもあたいが誰それ?みたいな顔したらそれから一度も呼ばなくなったな。なんか勝った気がしてすがすがしいな。

いつも隣にいるうるさいキツネがいたなら「不敬です!」とか言ってくるんだろうなきっと。あいつ、しっぽをもふらせろ!って言ってもぜんぜんもふらせてくんないんだもんな。そろそろ一もふりくらいさせてほしいぞ。

 

 

「今って何年なんだ?2010年くらい?」

 

 

「時間を戻した張本人だというのに把握していないのはどうかと思けれど…今は2000年よ」

 

 

2000年。たしか東方シリーズ5作品目が出た後辺りか。ってことは、

 

 

「そうか。俺が生まれる前から、幻想郷は滅んでいたんだな」

 

 

覚えている。いや時系列的には知っている。のほうがいいのかもしれない。

この後、一年後に幻想郷は滅んだ。未来の事を覚えているというのは中々変な気分だが実際にみんなに応援されて外の世界に行ったのを覚えているんだからしょうがない。しょうがないじゃないか!

しかし、あと一年耐えてれば紅魔郷発売されてもうちょい状況好転してたのかもしれないのにな。世は無情ってやつだぞ。

 

 

「ええ。日本は、いや世界は二度の世界大戦を経て高度成長期に入ることになったわ。そしてそれと同時に科学への接近。そして霊力、魔力、妖力への離反。ひいては妖怪全体への離反が合い続く。そして全世界の妖怪が消えゆく中、幻想郷でもその影響は免れなかったわ」

 

 

妖力は里人だけで補える量ではないらしい。外の人間からも「妖怪」そのものへの恐怖を少なくとも持ってもらわなくては成立しないらしいのだ。たしか…紫から外に送られるとき、聞いた話だったはずだ。

 

 

「だからあたいに頼んだってわけだな!このぱーふぇーくとなあたいに!」

 

 

「ふふっ。もう貴方はパーフェクトでもスーパーでもないわ。もう妖怪じゃなくなってただの妖精ですもの」

 

 

「やっぱりあたいを妖怪に変えたのも紫の仕業ってわけかあ」

 

 

「ええ。貴方は妖精の中じゃ特にやりやすかったわ」

 

 

妖精は自然から力を得る。自然あるところに妖精あり。妖精あるところに自然あり。だからあたい含め妖精は自然から糧を得るため妖怪と違い人間の恐怖なんぞ要らないのだ。でもあたいはその妖精の中でも特に特別だったからな!妖怪に一番近い妖精とはあたいの事!(どやあ)

 

 

「そして、俺をチルノに変えたのもアンタの仕業か」

 

 

「…ええ。そうよ」

 

 

少し口調と声音を前の感じを思い出しつつ口にする。

なんで?かなんて容易に想像がつく。というかもう紫が口にしている通りだ。

チルノになってわかったことだが俺とあたいはやっぱりかなり似ている。性別から違うというのに口調も少し似ているし認めたくないが「バカ」って言われる回数も同じくらいだ。つまりはそういうことだろう。認めたくないけど。

 

 

きっと「人間」と「あたい」の境界をいじくるのに俺の体が一番簡単だっただろうな。なんで人間の体にあたいの意識を入れたがったのかはわからないが。

 

 

「先程も言ったように、もう「妖怪」という名前自体に人間は恐怖を持ちません。貴方の覚醒を促すのに妖怪になることは必須。けれども妖怪だと存在を保てなくなる。なら、」

 

 

「人間と妖怪をミックスしちゃえばいい。ってことか。だから俺の中であたいは潜伏し続けられ、いや俺との境界をいじくったのは俺が生まれる前か。ということは俺の魂とあたいの魂の境界をなくしたのか。そんでその後なんかの拍子にあたいか妖怪への恐怖が集まり、あたいとして体がコンバートしたのか」

 

 

俺、あたいと魂単位で似てたのか。似すぎじゃないだろうか。

そんな事を考えているとあたいの何倍もの背丈を持つ紫が頭を下げてくる。

 

 

「本当に、貴方には謝っても謝り切れない事をしてしまったわ。本当に、申し訳ありません」

 

 

俺の中の原作知識にもあたいの中の記憶の中にも紫は中々に高位の格を持っていたはずだ。そんな大妖怪がプライドとかその辺全てを投げ捨ててあたいに謝るその姿にあたいは今、好感をもっていた。

 

 

「俺が、あたいのこの姿になってから色々考えてきたんだ」

 

 

俺ははっきり言って純愛厨だ。いやhappy end厨と言った方がいいかもしれない。

とにかく俺は全員がハッピーになれる結末を目指した。目指したかった。だから友人を殺さずみんなも救った。最高のハッピーエンドを求めてあたいは動き続けた。

 

 

でも、これは本当に、今は本当にハッピーエンドなのだろうか?

 

 

あたいは…チルノは、本当に幸せなのだろうか?

俺の体をチルノにされだんだんと意識さえもチルノになっていった俺。

 

だが、最後まで俺はチルノに成りきることはなかった。

いや、どちらかというと俺にも、チルノにもなれなかったんだ。半半の歪な状態。チルノでもない俺でもない謎のよくわからない「誰か」にあたいはなってしまった。

はたして、あたいは幸せなのだろうか?あたいはどこかに消えてしまったのだろうか。

 

 

でもたぶん、きっと、こう言うだろうな。俺もあたいも。

 

 

「みんなを救えたんだからあたいはうれしいに決まってるだろ!消えちゃったと思ってたみんなをあたいの力で救えたんだ!こんなにうれしいものは他にないぞ!」

 

 

融合し混ざり合った「誰か」であるあたいがうれしがっているんだ。きっと俺もあたいもうれしがっているに決まっている。というかあたいも俺で、俺もあたいなんだからそれ以外ない!

 

 

「チルノちゃーーーん!!!」

 

 

お、いいタイミングだ大ちゃん!こんな湿った雰囲気、あたいには合わないもんね!今行くぞ大ちゃん!

 

 

「それじゃ、あたいは行ってくるぞ!改めて、初めまして八雲紫!そしてこれからもよろしく頼むぞ!」

 

 

そんなあたいの様子を見て胡散臭い妖怪こと紫は、驚いたような顔をしたのち、一筋の涙を流し、嬉しそうに笑った。

 

 

「ええ。幻想郷は貴方を受け入れるわ。ありがとう、チルノ」

 

 

あたいはそれに対してブイサインを送った。




実はタイトル逆だったっていうね
そのうち設定集とか後日談だすかも
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