re:東方のキャラに憑依したやつがすげーバカだったら   作:ナチュラル7l72

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「あっつ…」

 

四季に合わせ露出度多めの巫女服となった霊夢はせめて風にあたろうと影で薄暗くなっている縁側に座り涼んでいたが所詮は風。来るタイミングは気まぐれだし夏との格の違いは明らかだ。風さえも夏に当てられ熱風となり霊夢を焦がす。

 

霊夢には知りもしないことだが幻想郷にはエアコンはおろか扇風機すらない。コンセントの概念すらないのだから当たり前といえば当たり前だが。河童の住処に行けば似たようなものはあれど肝心の動力源が腕力なのだから余計に汗をかいてしまう。

 

「霊夢」

 

空を見上げると箒に跨った魔理沙が降りてきていた。

魔理沙も霊夢と同様、いつものよくわからない黒い服の布の面積が削れた夏服を着用し三角帽子をはためかせながら着地する。

 

「またこんな陰気な場所でバテてるのか。霊夢も空を飛び回って風にあたろうぜ」

 

サムズアップしてくる魔理沙をうっとおしく思いながらも追い出そうとはしない。決して善意ではなく疲れるからである。

 

「空飛ぶと疲れるじゃない」

 

「おいおい。博麗の巫女が疲れるからで動かないのか?」

 

それとこれとは話が別でしょ。と呟く労力も面倒に感じ霊夢はごろんと寝転がり動きたくないことを体全体で伝える。

 

その様子に魔理沙はため息を付きつつ霊夢の隣に自分も寝転がり天井を見つめる。

 

「そんなに疲れてるのか?」

 

いつもグダグダしている霊夢に限って過労はないだろうが一応心配の念を込めてそう尋ねる。霊夢は面倒くさそうにしつつも口を開いた。

 

「最近妖怪共が強いのよねえ。前まであんなに俊敏でも剛腕でもなかったのに」

 

博麗の名により霊夢は時々人里周辺に出没する妖怪を退治している。人間は妖怪を恐れなければいけないが、妖怪も博麗を恐れなくてはならないのだ。

 

しかし最近は負けることは万に一つもないが妙に自力が強い妖怪がちらほら見られるようになってきた。

まるで妖怪全体の格が上がったかのように。

 

「あー…私もこの前フランと弾幕ごっこした時一瞬負けそうになったなあ。基本スペックが前より強化されてるような気がするな」

 

思い出すのは紅魔館に、正確にはその図書室にだが、訪れた時の事。たまたま廊下を歩いていたフランに挑まれそれを甘んじて受け入れたのだが弾幕ごっこにうるさい魔理沙が危ないと感じた事があった。一瞬と鯖を読んだが負けそうな場面は実に二桁はあった。それでも勝利した魔理沙は間違いなく強いのではあるのだが。

 

「まあ、確実にアレが原因よねえ」

 

霊夢は生まれも育ちも幻想郷である。

幻想郷で産まれ、小さいうちから母から巫女候補として愛情を持って育てられ、魔理沙という親友もでき、そしてなにより様々な異変と関わってきた。

 

吸血鬼。神。現人神。亡霊。半霊。蓬莱人。兔。鬼。閻魔。死神。半獣。半妖。天狗。覚。僧侶。

 

様々な人妖神と出会ってきた。中には苛烈に争った者もいるがそれもいい思い出だ。異変終結後は共に酒を酌み交わし以降も交流が続いている。

 

故に霊夢は幻想郷と共に滅びることを選んだ。大妖怪の手により支えられてきた幻想郷はあの時既に手遅れだったのだ。博麗ありきの巫女。霊夢は一つの希望を激励と共に外へ送り出し、最期まで神社と共に在った。

 

 

魔理沙は生まれも育ちも幻想郷である。

幻想郷で産まれ嫌々ながらも父の仕事を手伝い幻想郷有数の商店の娘として育てられてきた。

だがそれに退屈を感じそれに耐えられなかった魔理沙は実家を飛び出し独学で魔法を学び人間の中で最高クラスの力を有するようになった。

 

それでも魔理沙は「人間の中で」の土台に胡坐をかく事をせずたゆまぬ努力により「天才」と評すべき霊夢と肩を並べるまでの力を手にした。

 

故に魔理沙は幻想郷を捨て生き続けることを選んだ。隙間の妖怪の手により外に連れられた魔理沙は胡散臭い妖怪の顔に浮かぶ淡い悲哀とすっかり衰えた彼女の妖力に顔を歪めながら終わりを察する。

全ては皆を助けるためだった。

 

10年経って、20年経って、魔理沙はそれでも諦めず滅んだ彼女らを救う方法を模索していた。

 

 

そして時は巻き戻る。

 

「いやーまさか本当にチルノが私たちを助けてくれるとは思わなかったぜ。あちこちでチルノの分体が溢れてたから何か策はあるんだろうなとは思ってたけど。時を戻すなんて盲点だったぜ」

 

「私目線じゃ幻想郷が崩れていったと思ったらいきなり一年前に戻ったからびっくりしたわ。まさか二十年も経ってたとは思わなかったけど」

 

「時系列的には一年前だけどなー」

 

霊夢から見た魔理沙は変わらず幻想郷が滅ぶ前と同じ容姿をしていた。自分より20年も多く生きたとは思えない程に。

だが魔理沙は20年の記憶、知識が頭に入っている。今魔理沙と戦ったなら十中八九負けてしまうだろう。妖怪退治を手伝ってくれる魔理沙を見た時それを霊夢は確信していた。

 

「チルノのとこ行って涼んでこようぜ。どうやって幻想郷を崩壊前に時間を戻したのか気になるしな」

 

久しぶりに鍛錬をしようと心に決めた霊夢を知らずに魔理沙は立ち上がり箒にまたがる。

 

「…そうね。あの妖精、妖怪に近いからか前とは比べ物にならないくらい強くなってるし」

 

練習相手をチルノに定めた霊夢も魔理沙に続いて浮かび上がり霧の湖に向かって飛び立つ。

妖精たちと遊んでいたチルノが人間二人に追いかけ回される事を知っている人物はまだいない。

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