re:東方のキャラに憑依したやつがすげーバカだったら 作:ナチュラル7l72
夏の風物詩と言えば真っ先に思いつくのがセミだ。彼らは集団でバカ騒ぎしながら自身の番を探すという行為にいそしむのだが、通常生き物は捕食者にバレない様静かに行動するはずなのに彼らにはそれがない。なぜ未だに鳥等についばまれ全滅していないのかが不思議な所だ。
[悲報]某有名アイドルさん、浮気発覚www
家の前のコンビニ不良多すぎ。うるさすぎにつき通報したらお回りに連れていかれててワロタ
猫さん、頭にテープを付けられ人形のようになる[驚愕]
前世では告白してないの後悔して好きな子に告白したら付き合えたわ。マジで感謝
『おかしな話なんですがねぇ、私もね、最初から信じていたわけではなかったんですよ。ですけれどある時ふと思い出したんですよ。言うなれば前世、いやこの後にくるであろう世界の記憶?とでも言えばいいんでしょうかねぇ』
『ツイッターを見れば数年前と比べてもはやこの「前世の記憶」論はマジョリティになってますよね。まだまだ覚醒していない人たちもいるようですけれど、あの時生まれていた人たちは高確率で覚醒しているというデータが既に取れてるんですね。ですからもう今の段階でこの論が陰謀だとか虚偽だとか論じる時間ではないんですよ。未だにSNSでは盛んに対立などが起こっていますがね』
『いやいやいや、それって貴方の感想ですよね。貴方たちの言ってることって証拠がないじゃないすか。ただ大多数が一つの論を信じてるってだけであってそれが正論かどうかなんて誰がわかるんすか』
スマホ片手にツイッターを見つつ、見もしないテレビをつけ右から入り左から抜けていく討論を聞き流していく。
僕の今年の夏はそんな様相だった。きっとあいつがいれば「うわ!ごきぶりみたいな生き方しているな!そんなんじゃ空を自由に羽ばたく鳥の如し俺のようには成れないぞ!」とでも言って僕を煽ってくるだろう。そしたらなんて返そうか。羽ばたいてどっか行っちゃってんのはお前の知能の方だ。とかか?いやアイツの場合その意味するア理解できないだろうからもう少しわかりやすい表現にするべきだろうか。
…いや、なにを言っているんだ僕は。
ついさっきまでアイツと会話していたような感覚。
あいつが馬鹿を言い、俺が頭でもはたいて返す。
その感覚から未だ俺は抜けれず燻り続けていた。
あっという間に夏は終わり自然が枯れていく季節、秋に入った。
高校3年生にとっては最後のブーストをかけるべき正念場。受験対策のための勉強は全て夏休みにて終わらせたがそれでも勉強をしない理由にはならないだろう。僕が受験している大学は難関大学な事もありこの時期の重要性も高い。
特に僕は、過去の、いや未来の失敗を知っている分必死になって勉強していた。あの時のように調子こいて爆散し、Fランに入学するなんていう愚行を犯すことは絶対に二度としないと決めていたからだ。
だがそれと同時に、あの大学に行けば、あいつとも会えるのではないか。そんなある種の渇望を僕はあのFラン大学に抱いていた。
だがその反面、僕は知っていた。絶対に会えないという事を。
僕は今世にて、前世の事を思い出した際に真っ先にアイツに会いに行った。あいつの住所は大規模作戦の時でもそうだがよく覚えている。電車を乗り継ぎ二時間かけて神奈川から東京へ行きアイツの最寄り駅に降りる。
大規模作戦の時とは違い太陽光が降り注ぎあの日の幻想的な氷の壁は何処にもありはしない。
そして、またアイツの家もどこにもありはしなかった。
いやそれだけじゃない。アイツの戸籍自体が無くなっていた。アイツの出生記録自体がなくなっていた。
まるで元からいなかったかのように。
理由は少し整理すればわかる。
おそらく今僕が生きているこの世界はあの時から時間的に巻き戻った世界なのだろう。これは2016年に史実通り熊本地震が起きたことからも推察できることだ。
しかし、僕たちのこの世界が過去に戻ったとなると一つの疑問が生まれる。
[もし、前回とは違った行動をした場合、未来は変わるのだろうか]
答えはyes.件の熊本地震は"来る"と事前にわかっていたためその一週間前から現地民の全員が退避。その結果死者数をゼロに抑える事に成功させたらしい。
もしかしたら史実に合わせて歴史の強制力、的なのが働いて前回と同様の結末になるのではないかと非科学的に考えていたがまったくもって科学的な結果に終わった。過去に戻るというSFチックな事象が原因の考察だというのにそこは現実的なんだな…
つまり。
僕たちが生きているこの世界は過去の世界に刺激が加わった、具体的に言えば未来の記憶が引き継がれた人間たちが歩んだifの世界。という事になる。
………
この事実は
各種SNSを見る限り、この世界は2000年まで巻き戻っている。その直近で影響を受けるのは2000年に生きている人たちのみだ。
そう。僕たちは影響を受けた彼らが歩んだ世界の後に生まれ、記憶が戻り、影響を受ける事になる。
これはどういう事か。
場合によっては僕たち2000年後に生まれてくる人達は生まれなくなるリスクを負っているという事だ。
もしなんらかの要因で自分たちの親が死亡したら?いやそんな薄い確率だけの話ではない。例えば未来の記憶があるが故に子育ての面倒さを知っており、親になることを捨てたなら?
僕たちは生まれてこなくなる。
「…はぁ」
思わずため息をついてしまう。
アイツが自己犠牲するような崇高な精神を持ち合わせていないことは百も承知ではあるが、
アイツは消えてしまった。
その事実が深く僕の心に食い込み、ひび割れ砕けた部分に闇が入り込んでいく。
"皆"を助けて、僕のことも犠牲にしないで、
それで自分が消えたら元も子もないだろ。
馬鹿野郎が。
無事第一志望の某有名大学に合格した僕は入学式を終え、何の用もなくなったので家に真っ先に帰った。
わけではなくその場にいた同級生たちと交流すべく適当な人に話しかける。
頭は残念だがコミュニケーション力はあるアイツは「緊張するのは最初はだけだぞ!そして最初さえうまくいけば友達なんてすぐに作れる!陰キャなお前でもな!」と豪語していたので、その弁を信じ今実践しているというわけだ。
アイツには俺が色々、電車の乗り方やラインの使い方、単位を取らせるために三日三晩勉強を教えたりしたわけだが、なにも僕はあいつから何も教わっていないわけではない。
アイツは勉強が全くと言っていい程できなかったが、単位が取れないわけではなかった。
出席点が多い科目を重点的に履修していたというのもあるが、アイツはとにかく人脈が広かった。それこそ僕とは比べ物にならないレベルで。さらに教授にも好かれていたアイツは一部の科目では僕よりも点数が高い科目も存在していた。それを知った時は正直ブちぎれそうになったが、今にして思えばあれは僕よりもアイツの方が圧倒的にコミュニケーション力が高かった産物だろう。僕はそこを疎かにし、どうでもいいものと割り切った甘さを掬われたのだろう。それにしても酷いとは今でも思うが。
「…」
僕は隣の席に座っていた男に話しかけようと体をその男に向ける。学籍番号は近く、これからもかかわりがある可能性が高い。ここで話せる程度の仲を構築することはきわめて合理的…のはずだ。
そうやって理論武装を着重ねたとて緊張が解けることは無い。とてつもなく気が滅入るが、それでもアイツを習って僕は意を決し話しかけた。
前世での僕は、はっきり言って腐っていた。
調子こいて第一志望を落とし、Fラン大学まで転げ落ちてしまった自分。
自己責任。全ては僕の行ったこれまでの行動が、勉学にもっと励まなかった自分が悪いというのに。
僕はその鬱憤を馬鹿なアイツに晴らしていたのだ。
「お前みたいな糞馬鹿とは違うんだよ。僕はもっと、こんな所にいるようなやつじゃねえんだよ」
事実としての言葉ではなく、ただ相手を貶めたいという欲求のもとの罵倒。
高みを夢見て、将来の高貴な職業を目指して邁進していた僕と違い、アイツは能天気で、驚き呆れる程の馬鹿で、毎日が楽しそうだった。
そんなアイツが僕は嫌いだった。
だが
『惡いけど、お前も俺と負けず劣らず馬鹿だぞきっと。何故ならお前も俺と同じ土俵にいるからな!』
アイツは毒吐く僕から遠ざからず、脳天気な声をかけ続けてきた。うっとおしい程に。むさ苦しい程に。アイツ以外の知り合い全員が僕から離れていったというのに、アイツは僕を放おって置かなかった。
僕は救われていたんだ。
「…」
薄く光が差し込み肌色に光る瞼を開けるとそこは電車の中。
ガタピシガタピシと揺れる車内は煩すぎず静かすぎない。
慣れない入学式に疲れた僕は各駅停車に乗り込んだったんだったな。未だに最寄り駅につかないとは、流石都会の駅だ。無限に駅がやって来ていつまで経っても目的地につきやしない。
「あ、ようやく起きたのか。こんなにうるさいのによく黙って寝られるよなー」
ふと僕以外誰もいない閑散とした電車内で、一筋の流れ星のように柚子のような声が響く。振動音で下手な雑音は掻き消されてしまうというのに、その声だけはやけに目立っていた。
「…多動症か、それともオツムを幼児自転で成長を止めちまった弊害でも発症してるのか」
「そういうお前は前と変わらず眼鏡つけっぱだなあ。一回人生やり直してるのにまだ眼鏡依存症治っていない方が異常だと思うぞアタイは!」
ズレた眼鏡を人差し指でかけ直し、横を見る。そこには床に足を付けれず白い素足をぶらぶらと揺らすチルノがいた。
アイツがいた。
「よかったね。散々アタイに言ってたもっとヘンサチが高い大学に行けたじゃん」
「嫌味で言ってるなら止めてくれ。あのときは僕も荒れてたんだよ」
居心地悪く席を座り直す。チラリと視界の隅で見えた少女は笑顔だった。
「お前、消えていなかったんだな」
「ん〜どゆこと?」
「この世界から消えたことになってるだろ。親から生まれていないのか、そもそも魂がなくなったのかは知らんが」
「アタイの体は今、俺じゃなくてアタイの、チルノの体になってるからね。俺の体が消えた以上、そこから巻き戻ったらチルノが2000年にいた場所に戻ったんだよね」
何を言っているかまるでわからないが、それでも確実言えることがある。
こいつは消えていなかった。皆を救うために自己犠牲をするこいつはいなかった。
「…んだよ、草臥儲か」
項垂れていた頭を天井に向け、ため息を吐きだす。
溜まっていたダムの水が堰を切り流れ出すかのように、僕は色々諸々を吐き出した。
「どうやってここに来たんだ?僕がここにいることなんて、馬鹿なお前じゃわからんだろ?」
「ほんとだぞ!お前、大学構内とかめちなくちゃ探したんだからな!まあ、でも天才なあたいはちゃんとそこらへんの対策もしてきていたんだなこれが。あたいの友達には八雲紫っている便利なテレポーターマンがいるからな!」
「人任せじゃねえか。つーか、やっぱ八雲紫とか其の辺の東方キャラいるんだな。今世だとなぜか知らんが東方シリーズ発売されてないからな。お前だけ例外でその他はいないのかとも思ってたんだが」
「たぶんもう必要なくなったからじゃないかなぁ。天才のあたいに頼ってない以前までは東方シリーズで恐怖心を抱かせようって魂胆だったらしいぞ」
「2000年まで巻き戻ったらしいな。だったら無理か。もうちょっと猶予あればどうにかなってたかもしれなかっが」
「ま、結局あたいが全部解決したからもうなにも憂う必要はないけどね!がはは!」
「お前定期的に馬鹿笑いするよな」
神奈川に行く電車の中。
僕たちの声はいつまでも尽きることはなかった。