ヘッポコ機人は夢を見る   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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プロローグ

 世界は大きく衰退していた

 

 怪物達……ディクラインの出現である

 

 怪物達は陸と空から出現し、瞬く間にユーラシア大陸の欧州と西アジアを除き陥落

 

 アメリカ大陸もカナダを吸収したアメリカを除き陥落

 

 海も大西洋、太平洋、インド洋がほぼ陥落し、人類の滅亡も時間の問題と言われるようになっていた

 

 しかし、人類は諦めなかった

 

 残った国々の科学者達がディクラインを解析し、その技術を人類反攻の力に変えた

 

 それが機人である

 

 機械の生命体は一見美女や美少女のように見えるが、船に、戦車に飛行機に……ありとあらゆる機械に変化し成長する

 

 これはそんな機人の成長と成り上がりの物語である

 

 

 

 

 

 

 蓬莱皇国(ほうらいこうこく)

 

 極東に残された人類唯一の国家

 

 南満州、朝鮮半島、日本列島、樺太、台湾の地域を生存圏とする国家で、人口5000万人、機人の生産ペースは日産300体

 

 機人が作られる場所を工廠といい、日本では現在15箇所の工廠が存在する

 

 そもそも機人とは何か

 

 それは機械に魂が宿った存在であり、主に兵器に姿を宿した者とされる

 

 最初に産まれる機人は主に3種類であり、小船、小銃、複葉機である

 

 機人はその後経験を積むことで成長し、一定の経験を得ることで進化する

 

 例えば小銃から始まった機人は機関銃→大砲→戦車→列車→工場→工廠と進化していく

 

 最後が工廠であること以外のルートは様々である

 

 ただエリート工廠と呼ばれる者は最初から大砲の機人を10人に1人のペースで産み出したりする

 

 そういう者はエリートと呼ばれ、後方で経験値を積んで工場や工廠へと成長していく

 

 逆に凡骨の最低辺の機人は人類存亡のために前線で磨り潰されていくのである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 千葉工廠

 

 関東3大工廠の1つであり、千葉、東京、神奈川に存在する海に面した工廠である

 

 特徴として複葉機の機人が産まれやすい傾向があるが、帝国最大、最多の生産量の工廠にして始まりの東京工廠とエリート工廠として名高い神奈川工廠に比べると大幅に劣るのが千葉工廠である

 

 日産機人の数は5体と少なく、工廠としても新米であった

 

「千葉殿、千葉殿!」

 

「工廠長お疲れ様です」

 

「いえいえ、千葉工廠殿のお陰で廃れていた千葉県南部に活気が戻ってきましたので助かっております」

 

 工廠という大きな建物が本体である千葉工廠と呼ばれたのは白髪ボブカットの赤いつなぎを着た二十歳くらいの美人で、一方工廠長と呼ばれた男性は緑色の作業服を着た中年の人間であった

 

 機人は人間に創られた関係から善きパートナーとして暮らしている

 

 機人と人間は子供を作ることができるが、子供は人間にしかならない

 

 機人は工廠でしか産まれないのである

 

「しっかし不思議ですなぁ機人とは。一定量の資材が有れば工廠のカプセルから産まれますから」

 

「そうだねぇ。機人製造装置……母なる機械は工廠機人が成長すると質も量も増えるからね」

 

「母なる機械だけでなく工廠では衰退した科学製品を産み出せる機械が揃っているので助かります。人間の工場も軍用品の工場以外は機人による工場ばかりですからな」

 

「工場機人だとエネルギーは機人が食べ物を食べていれば何とかなるからね。なかなか日用品の工場機人が産まれないのがネックだけど」

 

「仕方がありませんよ。エリート機人は現場を知らないで成長するので軍用品ばかりに片寄りますし、現場からの叩き上げも軍事物資が無いといけないと思いますから……」

 

「……私達機人がもっと早くに産まれていれば」

 

「それは言わない約束でしょう。産まれてきてくれたから我々は今も生存できているのですから」

 

「……そうだね。今日の機人は船型機人が1人、航空機人が3人、銃型機人が1人かな」

 

「はい、エリートは無しです」

 

「私はエリート出たことが無いからね。もっと成長しないと」

 

「機人の成長って実際どうなのですか? 学では知っていますが、私も工廠勤務ばかりで見たこと無いのですが」

 

「うーん、私は第2世代で現場上がりだけど……教育を受けるか敵を倒すか……人の役に立つか、トレーニングするかかな? 私達機人は人に役立つことが使命だから人から感謝されると成長するし、トレーニングでも教育を受けても少しずつ成長する。でも敵……ディクラインを倒してコアを食らうことが一番成長しますね。そして一定の水準を超えると進化します」

 

「そう、進化ですよ。それが一番謎なんですよね」

 

「まぁ人間は成長だけですからね。進化すると格が上がると言いますか……出きることが増えますし、戦力が一気に上がるんですよね」

 

「機人は機械が本体で擬人体はどうなのですか?」

 

「どうとは色々ありますか……機械が本体ですが擬人体もダメージを受ければ機械の本体も傷付きます。擬人体が一定のダメージを受けると擬人体を維持できなくて機械に戻ってしまいます」

 

「……今度また詳しく聞かせてもらってもよろしいですか?」

 

「うん、いいですよ。……さて、子供達がそろそろ産まれる時間だから行きますか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ビービービー

 

「機人製造装置01~05開きます!」

 

 ガパ

 

 機人製造装置から裸の少女達が産まれてくる

 

「……四式小型攻撃船444号ですよろしくお願いします!」

 

 桜色の短髪の髪、額に十字の線が入り、それが顔にラインを描く

 

 ラインからは水色の光が出ていた

 

 小学生くらいの船舶の少女444号である

 

「まずは服を着用してください」

 

 444号の他の4人の機人の少女達も服を着用する

 

 444号にはスクール水着を、小銃の子は体操服、航空機の子達にはブレザーが配られる

 

「注目! 本日皇歴1995年■■月■■日をもって諸君ら機人を蓬莱帝国軍所属機人とする! 1ヶ月の基本訓練後諸君らは前線へと向かってもらうこととなるだろう! その間に少しでも成長できることを願う! 2週間は5人全員を教官1人が基礎教育を行い、残りの2週間はそれぞれ専門の教育となる! 短い間だが皇国の為に力を貸してほしい」

 

「「「「「はい!」」」」」

 

「よし、よい返事だ。それでは教官となる■■君だ■■教官前へ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私小型攻撃船444号……個別の名前はありません

 

 長いので4号と呼ばれています

 

 私達機人は、ある程度知識をもって産まれてくる

 

「いち! いち! いちに!」

 

「「「「いち! いち! いちに!」」」」」

 

 私達機人は人間さんと同じ食事をとることでエネルギーを産み出します

 

 例えば三八式小銃ちゃんは自分の本体の小銃を手に持って戦います

 

 私は小型船を召喚して攻撃をします

 

 しかし、私の小型船には小銃も付いていないので今のままでは爆弾をくくりつけて特攻するくらいしか攻撃手段がありません

 

 エンジンも貧弱なので、敵に到達する前に撃沈することになるでしょう……

 

 機人は基本的に死を恐れません

 

 人間さんの役に立つなら、人間さんの身代わりになるならと身を呈して守ったりもします

 

 ……私は他の機人と少し違い死ぬのが怖いです

 

 死ねば全て終わりです

 

 悲しいですが機人の命の価値は低く、1ヶ月という短い基礎教育が終われば戦場に駆り出されます

 

 最初の1週間で元から埋め込まれた知識を使えるようにします

 

 簡単な文字の読み書き、計算、行軍訓練etc……

 

 そして埋め込まれてない皇国の現状についての授業を教官から学びます

 

 現在皇国少ない資源をやりくりしながら生活をしています

 

 船は現在進行形で行われているディクラインとの衰退戦争の初期に大半の軍用艦、民間船舶を喪失したことでシーラインが崩壊、現在は機人達が船舶となることにより戦線の押し返しに成功し、台湾から硫黄島、樺太を線で結んだラインの制海権の奪取に成功している

 

 大陸では豊かな資源地帯であり、石油や石炭が大量にとれる満州北部に向けて進行中とのこと

 

 皇国の現状はこれくらいに他国は欧州最大の大国ゲルマニカ帝国(西はスペインから東はポーランドまで)、世界第二位の海洋機人大国のブリテン連合王国(イギリスとアイルランド)、地中海の覇者ロームルス共和国(イタリア半島、バルカン半島、北アフリカ)、北欧帝国(北欧4ヵ国)、ここまでが欧州であり、大国が複数あること、機人技術が盛んに研究されているため旧ロシア領と大西洋から大量に沸いてくるディクラインを撃退を続けている

 

 西アジアはアナトリア共和国と西アジア帝国の2つがあり、機人技術は遅れているが欧州からの支援で生存圏を維持している

 

 石油産出国であるのでここをディクラインに制圧されると欧州のインフラに多大な影響を受けることとなる

 

 そして世界最強の国……合衆国

 

 北アメリカ大陸の殆どを制圧し、日本と唯一チャンネルがある国でアラスカ→千島列島→北海道というルートで貿易が細々と行われている

 

 欧州の全ての国を合わせた機人生産能力があり、資源も殆ど自国で回せるため最強の国と呼ばれている

 

「まず我々皇国の目標は千島列島周辺海域の完全制圧、北満州までの解放、南方資源地帯の早期解放である」

 

「教官質問です。日本周辺で一番強いディクラインはどこにいますかる」

 

「太平洋だと真珠湾にディクライン最大の基地があるとされている。大陸だとウラル山脈とチベット山脈周辺にも基地が存在するとされている。ディクラインの基地はラビリンスと呼ばれ、大量のディクラインが生産されている。話は戻るが、一番近くで一番強いディクラインは北京周辺に出没する母船級だな」

 

「母船級?」

 

「人間が付けたディクラインの等級だ。歩兵級、軽騎兵級、重騎兵級、砲兵級、(軽・中・重)戦車級、(軽・重)駆逐艦級、(軽・重)巡洋艦級、戦艦級、母船級となる。ディクラインは機人の元となった存在のため、時間経過と経験によりより強大に進化していく。恐らく食らった人間の数により強大になるとされ、人口が多かった中国とインドは強いディクラインが多く存在するのだ」

 

「機人が人の思いで成長するのと逆なのですね」

 

「そうだ」

 

 他にも機人の歴史を習う

 

 機人は機人技術が研究段階で産まれた第零世代、初期量産型の第1世代、全世界で反攻作戦に投入された第2世代、機人技術の進歩により成長しやすくなった第3世代、そして近々発令される第二次反攻作戦投入予定の第4世代が私達です

 

 だいたい1世代あたり5年区切りとされており、ディクラインが出現したのが約30年前(皇歴1965年頃)、機人登場が20年前(皇歴1975年頃)、第一反攻作戦が15年前(皇歴1980年~1982年)、そして現在の皇歴1995年となる

 

 私も船型として産まれたからには戦艦や空母みたいな巨大兵器になって戦いたいなぁ……ゆくゆくは工廠に……

 

「4号! 何にやけてる! 今私が教えた機人技術の改良の歴史について3つ答えろ!」

 

「は、はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私達同期5人は同じ部屋で生活します

 

 室内では擬人体での生活を強制され、本体である機械を室内で出現させることは許されていません

 

 逆に屋外では機械を全面的に出して生活します

 

 あと小銃ちゃん以外は工場機人によって造り出された自動小銃を渡され、整備や訓練時に背負って運んだりします

 

 人間の兵隊さんと同じ皇国最新式の90式小銃で、全世界共通の7.56mm世界共通弾が使われています

 

 ただ小銃ちゃんは機人出現時に使われていた75式小銃で産まれたため、1人だけ型落ちの小銃を使っています

 

 まぁ小銃ちゃんみたいな陸軍兵器の機人の成長は早いので3ヶ月生き残れば最新式の小銃まで進化できるそうです

 

 実戦で活躍すれば半年で大砲クラスまで進化した機人もいるのだとか

 

 船型機人である私は成長が遅い部類なので小型船から進化できるのはいつになることやら……

 

 あと……わかったことは

 

「へぶ!」

 

「4号! また転んだな!」

 

 走っていてで転んだり

 

 バンバンバン

 

「あれ?」

 

「こら! 4号もっとよく狙え!!」

 

 射撃訓練で当たらなかったり

 

「ぜーはぁーぜーはぁー」

 

「4号周回遅れだぞ頑張れ!」

 

「うっ……うぷ!?」

 

 とんでもないほど……どんくさくてヘッポコでした

 

【ヘッポコ機人は夢を見る】

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