千葉工廠の会議室にて数名の大人達が席に座って話し合いを始めた
「それでは今回教育中の第430期訓練機人に関する報告をお願いします」
「はい、教官を務めています■■です。75式小銃機人、75式複葉機人の3名の評価はCであり、問題なく実戦投入が可能かと思われます。しかしながら小型攻撃船機人である444号の評価はGと軍艦機人になり得ないと小官は判断いたしました」
軍服を着た男性が話しかける
「弾除けにもならんのか?」
「はい、難しいかと。記憶力は良いのですが、運動全般が終わっており、物資輸送任務も怪しいと言わざるえません」
「大事な物資を沈没させられたら困る……となると民間に売り払いとなるか」
「はい、その方がよろしいかと」
「他の皆の意見はどうだ? 千葉工廠殿の意見も聞きたいが」
「どうしても毎日何人もの機人を作る関係上エラーは出てしまいますので仕方がないかと……」
「ふむ、決まりだな……」
「ふふーんふふーん」
「4号何してるの?」
「あ、1号複葉機ちゃん、見て見て! ジャーン!」
「何これ? ジャンク品?」
「違うよ! ラジオだよ!」
「ラジオ? これが?」
確かに箱形ではあるし、アンテナみたいなのもあるがボロボロの箱にしか見えなかった
「いくよ……」
箱の裏に取り付けられたダイヤルを私は回すと
『皇国発表。皇歴1995年■■月■■日のニュースを発表します。皇国の機人達の活躍により鋼鉄の生産量は前年度より15%ほど増産……』
「おお! 本当に聞こえた! 凄い!」
「でしょ!」
「運動音痴で不器用だと思ってたけど違うの?」
「うぐ……ズバッと言われると傷付きますよ……確かに射撃成績は酷いし、運動成績も悪いけど! 手先は器用だし、このラジオも工廠の廃品から拾ってきて修理したんだよ」
「へぇ! でもどうやって?」
「ライターで鉄の棒を燃やしてはんだ付けしたり、使える部品を集めて自作の工具でこうね!」
「凄いね4号! でもこれバレたら不味くない?」
「……確かにそうかもしれないけど……もう少しで卒業じゃん。だから皆と少しでも楽しい思い出が欲しくって……」
部屋のドアがいきなり開いた
「4号!」
「は、はい! 教官!」
「お前の進路が決まった。付いてこい」
「は、はい!」
連れてこられた私は応接室に通され、茶色のスーツを着た細目の男性がそこに居た
「小型攻撃船444号、軍用機人検査不合格により民間に払い下げとなった。競りにより350万で落札となったのがこちらにいる宮澤食品の社長の宮澤さんだ」
「よろしくな」
「は、はい。よろしくお願いします……え? 軍用じゃなくなる?」
「そうだ。小銃は返納、衣服以外の持ち出しを禁ずる。これより軍用機人ではなく民間機人として生活し、後方にて民間の人々を豊かにさせるのが命令だ」
「は、はい」
「30分ほど席を外しますので宮澤殿と4号は親睦を深めるのと民間名を決めてください」
教官はそう言うと席を立って敬礼したあと退室した
残された私と宮澤社長は互いを見つめた後、宮澤社長が話し始めた
「なにぶん機人の取り扱いが初めてなものだから不馴れですまない。俺の名前は宮澤たけし25歳、宮澤食品の社長で、主に北海道で米作りと漁業、酪農をしている。まぁ親父が亡くなったから基盤を引き継いだ3代目だ。従業員は40名、家畜の頭数は500頭、小型漁船5隻、会社の場所は北海道の日高町にある」
「は、はぁ……」
「軍規が多すぎて機人についてこちらもよくわかってないが、成長する機械の体と人と同じ擬人体であるということは知っている。一応機人の購入費として350万払ったが、君の基本給は20万、20日漁業に出たら10日休みとして秋の農繁期は米の収穫作業を手伝ってもらう……くらいか? 今言えることは」
「え? お給料とお休みを貰えるのですか?」
「機械といっても食事もするし休まないと疲れるだろう。機人は大きな故障でなければ自然治癒で時間をかければ治っていくとも聞いた。とにかく、君はわが社の起爆剤となって貰わないと困る。協力してくれ!」
「……困惑しかないですが、やれるだけやってみます。ただ私どんくさいのでそれだけは覚えておいてください」
「わかった」
「……あと宮澤社長、私に名前をください」
「名前かぁ……軍用船はネームドになると地名や川の名前や山の名前が付けられるらしいからなぁ……肖るか……いや、伊達丸! 伊達丸にしよう! 伊達なら人の名前と地名両方あるから呼びやすいし、後ろに丸を付ければ船としての名前になる。よろしく伊達丸!」
「伊達丸! はい! わかりました! 伊達丸です!」
私は社長と握手を交わした
その日のうちに支給されていた衣服を餞別とし、同期に別れを告げて私は陸路で千葉から汽車機人の国内線に乗って移動し、津軽海峡を機人ではない人間の操る船で移動して北海道の函館から更に汽車機人に乗って日高町に移動した
「長旅ご苦労。疲れたかい?」
「いえ、大丈夫です!」
「俺は疲れたよ。長距離移動すると体が固まってしまって困る」
「あはは」
「さて、じゃあようこそ宮澤食品会社へ!」
コンクリートで建てられた2階建ての箱形の会社と農業用機械が幾つも置かれた場所、牛が飼われている牧場、社員宅と思われる家が幾つか建っていた
「社長お帰りなさい」
「あぁただいま」
「そちらのお嬢さんが」
「初めまして伊達丸です! 小型攻撃船機人ですが経験を積んで皆さんの役に建てる機人となれるよう頑張ります!」
「「「かわいい!」」」
わちゃわちゃとおばちゃん達にもみくちゃにされる伊達丸
数分わちゃわちゃした後宮澤社長から鍵を渡される
「これが社宅の鍵ね。とりあえず行こうか」
社宅は一軒家で8畳の部屋が3つ、台所とお風呂、トイレがありました
「家族向けの一番広い社宅だけどとりあえずここを使ってくれ」
「電気とかはないのですか?」
「あー、民間にまで電気は回ってこないんだよ。でも樺太と南満州の石油地帯を確保したことによりガソリンとか灯油、軽油は何とかなったから民間船舶もこうやって活動できているんだよ」
「なるほど……飯盒炊飯の要領でお米炊けば良いのかな?」
「そこら辺はうちで働くおばちゃんを達に聞くと喜んで教えてくれるぞ……さて、疲れているところ悪いかも知れないが、今夜歓迎会をするから本社に来てくれ」
「はい!」
夜になり歓迎会だからと普段は使わない発電機を回して宮澤社長が明かりを確保してくれて
「皆、わが社の起爆剤として雇った機人の伊達丸ちゃんだ! 船型だから漁業班と行動すると思うが色々教えてやってくれ。場合によっては畜産班、農業班にも助っ人として回すかもしれないから可愛がってやってくれ! じゃあ伊達丸何か1言」
「伊達丸です! 今は小型攻撃船という分類ですが、進化して皆さんの役にたてるように頑張ります! よろしくお願いします!」
パチパチパチと拍手が起こる
見渡してみると男の人が少なく感じる
40人の会社と宮澤社長から聞いていたが男性は社長を含めて10人くらいしかいない
「それじゃあ乾杯!」
「「「乾杯!」」」
歓迎会が始まり理由があって売り物にならない牛を潰しての焼き肉と今日取れた魚の刺身やつみれ汁が振る舞われた
「伊達ちゃん食べてる? 一杯食べて大きくなってくれよ!」
「はい! 大きくなります!」
「若い子が増えるとおばちゃん達も活力が沸き上がってくるからね!」
「……あの? 男の人少なくありませんか?」
「……戦争だから徴兵されているんだよ。社長みたいに会社持ちだと嫡子不在で戦地から戻らされた人もいるし、うちらの会社の男どもみたいに兵隊検査で不合格になった者もいるけどねぇ」
「なるほど……」
「それ以外は満州とか樺太、台湾に配属されてるよ。……無事に戻ってきてくれるといいんだけどねぇ」
伊達丸はその話を聞いて、やはり自分はラッキーだったと思った
「ささ、暗い顔してないで食べな食べな!」
周りのおばちゃん達にお皿に山盛りにされる伊達丸であった