ヘッポコ機人は夢を見る   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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小型漁船

 新しい生活が始まってはや1ヶ月……漁に出るようになり、仕掛けにエサを付けたり、漁船の掃除をしたり、網のほつれや破けた箇所の修繕をしたりと雑用をしながら過ごしていた。

 

 休みの日には農作業や酪農を手伝ったり、ガラクタから使えるものを回収してそれを修理したり、おばちゃん達に料理を教わったりと充実した毎日をいきいきとした生活をおくっていた

 

 そして給料日となり、伊達丸の宮澤社長からお給料か手渡された

 

「ほ、本当に機人の私にお給料を!?」

 

「最初に約束したろ。渡すものは渡すさ……あとこれもだな」

 

 そう言って渡されたのは配給券だった

 

「食料……特に米なんかはお金では買えないからな。配給所はわかるよな?」

 

「はい、何度かおつかいに行ったので」

 

「じゃあ大丈夫か……1カ月お疲れさん」

 

 宮澤社長に労いの言葉をかけられて嬉しくなった伊達丸は、そのままの足で本屋や工具店に行く

 

 本屋では知識を得るために専門書を、工具店では機械修理に必要な機材の購入のためである

 

 まずは本屋から

 

「ごめんください」

 

「いらっしゃいませ……お? 機人か珍しいな……宮澤さんのところのか?」

 

「はい! 宮澤社長のところで働いています伊達丸です」

 

 答えたのは白髪の多い初老の男性だった

 

「ほーん……俺の名前は菅原だ。まあ本屋でもいいがな。で、どんな本が欲しいんだ?」

 

「料理のレシピ本とか工作系の専門書、魚の図巻、あと地図が欲しいです」

 

「あいよ……マンガや小説とかの娯楽品はいらないのか?」

 

「面白そうなのあります?」

 

「衰退戦争まえの小説なんかどうだ? 価値観が今と違って夢があるぞ」

 

「じゃあそれもおねがいします」

 

「毎度」

 

 本をまえにおばちゃんたちからお古で貰った布製の手提げ袋に入れてもらい、そのままの足で工具店に向かう

 

 工具店は全体的にがらんとしており商品の数も少なかった

 

「うーん」

 

「金属製品はほとんど軍が持って行っちまうのさ。機人の嬢ちゃん」

 

「えっと……」

 

「この店の店主の金田だ。商品は少ないが、機械の修理をしている」

 

 金田という男性は60歳くらいの老人で室内なのに帽子をかぶっていた

 

「機械修理!! すみません私にも機械修理を教えてくれませんか?」

 

「興味があるのか? ……何か一食作れ、それを授業料とする」

 

「ありがとうございます」

 

 工具店の他にも町のいろいろなお店に顔を出して挨拶していく

 

 皆人当りの良いいい人たちである

 

 新聞の定期購入の契約もする

 

 伊達丸は知識の収集を怠ることはなかった

 

 

 

 

 

『南満州にて反転攻勢の準備』

 

『愛知工廠機人さらなる成長』

 

『台湾海峡にてディクラインとの大規模衝突、駆逐艦2隻、軽巡2隻沈没。撃退に成功』

 

「正確な情報かは分からないけど南方はディクラインがうようよいるのかな? 後方に下がった私はラッキーだったかな?」

 

 伊達丸は新聞を読みながら地図に印を付けていく

 

「15工廠は九州の長崎工廠、福岡工廠、四国の愛媛工廠、中国の山口工廠と広島工廠、関西の大阪工廠、京都工廠、中部の愛知工廠、新潟工廠、関東の神奈川工廠、東京工廠、千葉工廠、東北の岩手工廠、北海道工廠に南満州工廠……その工廠の中に工場機人が多数そんざいする感じなんだよね……東京が1000の工場機人を傘下に置いてるんだっけ」

 

「軍属じゃなくなっても着実に経験を積めば工場機人くらいには……きっと……」

 

 夢はあきらめきれない伊達丸であった

 

 

 

 

 伊達丸が北海道に来てから3ヵ月が経過し、真夏となっていた

 

 漁にも少しずつ慣れてきており甲板ですっころぶことも減ったある日、伊達丸の体が輝きだした

 

「伊達丸! 光ってる光ってるぞ!!」

 

「え? え?」

 

 光が一層強まると伊達丸は感じた

 

「これ……進化です!!」

 

 戦闘経験はないが、仕事やひたむきに勉強を続けたことで誕生から4ヶ月目で進化に至った

 

「大丈夫か伊達丸!」

 

「大丈夫です親方! 進化したみたいです」

 

「ほげー……初めて見たぞ機人の進化! なにが変わったんだ?」

 

「陸に帰ったら確認しましょう!」

 

 漁から帰り、釣り上げた魚を漁港に卸し、他の漁師たちにも見られながら伊達丸は機械の本体を海に浮かべる

 

「「「おお!!」」」

 

 海には小型漁船が浮かんでいた

 

「19トン小型漁船に進化しました!!」

 

 漁師のおじちゃんおばちゃん達は大はしゃぎ

 

 船に乗るといろいろ見て回られた

 

「新造船みたいに綺麗な船内だな」

 

「ほへぇー、機材も揃ってるんだな」

 

「魚用の冷蔵庫もしっかりしてるな」

 

「船員室やトイレとかも有るんだな。でも操舵室小さいな」

 

「私が操舵することができるので大丈夫ですよ! 魚群レーダーが旧型なのが力不足ですみません」

 

「充分じゃないか?」

 

「でもこれで伊達丸も漁船として活動できるとなると船長を誰か当てた方が良いよな」

 

「伊達丸と2人体制だったら効率も良いだろうし」

 

「じゃあ私が行くわ」

 

 手を上げたのは藤原さん

 

 40代の女性で、この道20年のベテランである

 

「助かります。私1人だとまだまだなので……」

 

「おう! この船なら大きな魚も捕まえられるな。これ資材を持ち込んだらどうなるんだ?」

 

「カスタマイズすることはできます。なので網を交換したりしたらその網に変わりますし、それが壊れても時間経過で直りますし」

 

「機人の本体は時間経過で直るのが凄いよな」

 

「ただ一定以上壊れると工場とかで修理になりますし、直せない故障もありますから」

 

「機人の体については私達にはわからないから無理はしないでね」

 

「そうそう」

 

「ありがとうございます皆さん!」

 

 

 

 

 

 

 

 自身の体で初航海

 

 船に揺られながら罠を仕掛けていく

 

「順調だね」

 

「はい! 快晴で良かったです!」

 

「ホッケがいっぱい取れますね」

 

「日干しにして美味しい魚だし、サンマも沢山取れたな」

 

「初航海で大量で良かったです!」

 

 初航海も無事に終わり、藤原さんとのタッグも問題なし

 

「頑張ってもっと成長しないと!」

 

「気を張りすぎるなよ!」

 

 冷蔵庫が8割埋まったので撤退する

 

 朝早くから出て午後1時くらいには帰り、漁港でお昼ごはんを食べる

 

 米は配給制ゆえに昼間は食べられないが新鮮な魚の焼き魚や近所で取れた野菜のつみれ汁が特に美味しい

 

「伊達丸ちゃん大漁だったそうだな」

 

「あ、長谷川さん。こんにちは! そっちはどうですか?」

 

「まぁぼちぼちってところだよ」

 

 長谷川さんはこの漁港の頭であり、漁業組合長でもあるベテランの船乗りだ

 

「どうだ? 船酔いはしなくなったか?」

 

「はい、大丈夫になりました」

 

「笑ったな船の機人なのに船酔いでグロッキーになって戻ってきた時は」

 

「あはは……でも私も進化しましたし、これからガンガン成長していきますよ!」

 

「そうか! 頑張れよ」

 

 午後からは自由時間ですが、最近は体力が付いたので牧場で牛に餌やりをしたり、船の修理の手伝いをします

 

「どうだ? エンジン直りそうか?」

 

「応急修理はできますが、交換を勧めます」

 

「そっか……参ったなぁ」

 

「金属が経年劣化していますし仕方がないかと」

 

「申請しても民間漁船は後回しにされるからなぁ……軍が優先されるのはわかるがさぁ」

 

「……もう少し出きることをしてみます」

 

「ありがとうな伊達丸ちゃん」

 

 こういうことの積み重ねで信用を勝ち取っていく伊達丸だった

 

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