北海道の冬は冷える
機人の自分はあまりに冷えすぎない限り大丈夫だが、人間はそうもいってられない
石炭ストーブにより暖を取る
冬の過酷な漁であるが、藤原さんと一緒にこなしていっている
そんなある日、ラジオで皇国軍による一大攻勢が開始されたとの発表があった
機人の私はラジオや新聞からの情報でこの攻勢が南方資源地帯に向けた攻勢であることを知っていた
ただ大陸側でも北京周辺にいる母船級を撃滅して安全圏の拡大も同時に行われるという
投入戦力は第一艦隊(戦艦4、巡洋戦艦4、重巡4、軽巡4、駆逐艦16隻)、第二艦隊(空母4、軽空母2、軽巡4、駆逐艦12隻)、第三艦隊(戦艦2、航空戦艦2、重巡4、軽巡4、駆逐艦16隻)、第四艦隊(重巡2、軽巡4、駆逐艦10)、第五艦隊(軽空母2、軽巡2、駆逐艦8)の主力108隻、補助艦を入れると130隻にもなる大艦隊で、航空機機人も約300体投入されており、皇国の全力であった
ラジオで聞いていた伊達丸は息を飲む
これ程の大艦隊が皇国には存在したのかと
これならばディクラインの潜む南方海域でも勝てるだろうと
「頼む勝ってくれ!」
そう祈りながら伊達丸は仕事に出掛けるのであった
「壮観だな」
「そうですね司令官殿」
各艦には人間も乗っていた
砲を放ったり、魚雷を発車したりすることは機人が制御できるが、応急修理だったら、食事を作ったり、装填したりは人間がやらなければならなかった
また司令官として人間が指揮を取るのも機人が戦闘に集中するための役割分担でもあった
「航空偵察より確認! 南南西237地点より敵艦を発見。規模駆逐艦級5、軽巡級2」
「よろしい。航空戦力をもって撃沈させる。第一攻撃隊発艦開始」
フィリピン海域での戦いの始まりであり、南方資源地帯奪還作戦……山吹作戦の始まりであった
「まーた変なのが引っ掛かったよ……これはディクライン……か?」
網に下半身が千切れ紫色のコアが出ているディクラインを引き揚げた
「これがディクライン……」
ぶよぶよとした皮膚、機械的な頭……嫌悪感を抱かせる姿のそれがディクラインである
「ディクラインの死骸?」
「藤原さん……たぶん……そうです」
「どうするのそれ? 機人はそれを食べることで成長するって聞いたことがあるけど?」
「少し実験したいことがあるのでこいつのコアだけ抜き取ります」
「抜き取ってどうするのさ?」
「前に引き揚げた機人の蘇生に使えるかもしれません」
「ほほーん?」
「一応肉体も使えるかもしれないので取っておきますがね」
ディクラインのコアを入手した私は仕事を終えて家に帰ると早速色々と試してみることにした
「といってもどうするか……くっ付けてみる?」
コアをくっ付けてみると機人のコアとディクラインのコアが青い光を輝きながら融合した
「マジっすか」
融合を終えると青いコアのみが残っていた
光だしたコアを脱け殻の機人の肉体に戻すとキューブ型のコアから幾つものコードが伸びてに肉体に結合した
身体中のラインから淡い光が輝きだす
「……ゴホッゴホッ」
機人が咳き込む
「おお、成功した」
「……ここは……」
「地上です。個人的に蘇生実験をしていまして……大丈夫ですか?」
「……あのー、胸部がスカスカするのですが……」
「おっと失礼しました! はい、あなたの胸部です。ハメますね」
胸部を嵌め込むとアーク切断をしていたためにずり落ちてしまうので包帯で固定する
「……よし!」
「ありがとう……」
「あなたの名前は?」
「
「駆逐艦!? エリートじゃないですか!!」
「でもディクラインの攻撃で沈んでしまって……」
「……ちょっと待ってください……」
伊達丸は機人図鑑という本を取り出す
「霓、霓……有った! 15年前の反攻作戦にて沈没となってますね」
「……そっか……15年も前なのか」
「霓さん?」
「今何年?」
「皇歴1995年の12月になります」
「1995年……か」
「霓さん?」
「今人類はどうなってるの? 反攻作戦は成功したの?」
「今皇国の生存権は北は樺太、南は台湾、南満州までを生存権として、合衆国とか細いながら交易ルートが接続しております。今南方にて第二次反攻作戦が開始された……と」
「そう……そうか。そうなのね。色々と記憶の混濁があるわ……ふぅ……ここは……軍ではなさそうね」
「北海道日高の宮澤食品という会社の社宅です。沈没していたあなたが漁をしていた際に引き揚げたので工夫して直したのですよ」
「そうだったのね……ありがとう。ということはここは後方であなたは民間機人ということね」
「はい、伊達丸と言います。19t小型漁船機人です」
「……伊達丸さんね。よろしく」
「はい、霓さんよろしくお願いします」
まだ体が上手く動かせない霓さんに私が料理を作り、食べさせる
霓さんのことを宮澤社長に報告する
「機人を直した!?」
「はい。前に社宅に置いていた脱け殻の機人が居たじゃないですか。彼女を直すことに成功しました」
「まじかぁ……マジだよなぁ……ちょっと待ってろ……」
社長は分厚い本を取り出すと何かを探し始めた
「有った。機人を直した場合直した者の所属する物品とすることができる……だ。これ基本軍の工場や研究施設で直すから軍属に戻すための法律だが……今回の場合は我が社預かりとすることができる! 良くやった伊達丸!」
「そんな法律が」
「早速申請書類を書かなくては! その子は文字は書けるか?」
「いや、体がまだ動かせません」
「となると代筆で書くしかないな。執筆は別の人がやる方が良いから伊達丸その子の代筆を頼む」
こうして霓さんは会社預かりとなり、私が面倒をみることになった
1週間程度で霓さんも歩けるようになり、浜辺に出て本体を浮かせてみると駆逐艦ではなく最初の小型船まで退化していた
「1からやり直しかぁ」
「まぁ後方ですし、ゆっくりまた鍛えていきましょう」
霓さんは今の状態で海に出すわけにはいかないので家畜の餌やりの手伝いをしながら、体力が付いたら私の船に乗せることになった
髪の毛も最初のうちはタオルを巻いてハゲ頭を隠していたが、数週間もするとちゃんと生えてきて、2ヶ月くらいでショートボブくらいに真っ赤な髪の毛が伸びた
虹色の瞳に真っ赤な髪の毛の美人で元が駆逐艦なので伊達丸よりもお姉さんである事と、積極的にコミュニケーションを取ろうとしてくる姿勢からすぐに会社の皆や町の人達と打ち解けた
あと霓さんの名前だがもう駆逐艦の霓ではないので別の名前にする必要が出てきたが、後ろに丸を付けて霓丸という名前に決まった
1996年の4月になり、伊達丸は更に進化して39t中型漁船へと進化した
これで宮澤食品にある船の中で一番大きい船に並んだことになる
また新入社員が10人入り、そのうちの4人が私と藤原さんの下に置かれた
霓丸さんもこのタイミングで私の船に配属となり7人で漁業をすることになる
この進化で私の本体の船に小さいながら工作室と調理場が追加された
料理と工作を趣味でやっていた成果であり、私の船なら電気が使えるので衰退戦争前の家電製品を拾ってきたり買ったりして直して使えるようにした
「ぬふふ、居住性能が上がった!」
居住性だけでなく漁船としての性能も上がったので漁獲量も上がり、連日大漁の魚を港に卸していった
「いやぁいい会社に就職できて良かったですよ。ここなら配給外の食料がありますから」
「伊達丸さんの飯も美味しいですし、本当に当たりの会社に就職できて良かった」
新入社員は男3名、女性7名で、私に当てられたのは女性3人に男1人で男は山田君、女性は宝田さん、清水さん、広尾さんだ
全員15歳でガリガリだったが魚のあまりや屑野菜、物々交換で手に入れた芋や小麦、卵を調理して食べさせている
というか宮澤食品全体というか漁港全体がグルで水産物の過少申告で食料の横流しや裏市に流していた
町としても配給だけでは生活が成り立たないとして裏市を黙認しており、裏市で食料の交換等をしていた
最初は良いのかと思っていた伊達丸であったが、今では率先して交換をしているほど伊達丸は染まっていた
それだけ幸運なことに伊達丸は漁が上手かったというのもある
「ふぅ、今月もノルマ以上取れてほっとしています」
「いや、伊達丸を雇った社長の慧眼は本当に良い判断だったぜ」
「若いのも使い物になりそうで良かった。やっぱり食えないとキツいよな」
「他はもっと酷いのですか?」
「軍属になれば飢えはしないが、検査外で落とされるとひもじいことになるがな。食料系は良いが民間工場系は地獄と聞くな」
「うへぇ」
「まぁ餓死者が少ないだけましだよ。衰退戦争前はこんなこと無かったんだがなぁ」
「大学に普通に行くような時代だったからな。大学なんて今じゃ皇大と京大の2つしか無くなっちまったし」
「嫌な時代だな全く」
そんな嫌な時代だからこそ今回の第二次反攻作戦に皆が希望を抱いていた
「霓丸さんは成功すると思いますか?」
「15年前の知識しか無いからなんとも言えないわね。だだ100隻もの大艦隊なら大敗は無いんじゃない?」
「大敗したら皇国は終わりですよ……しかし、いつ見ても素振り綺麗ですね」
「ありがとう。伊達丸もやる?」
霓丸は伊達丸が工作や読書、料理を趣味にするように剣道や鍛練を趣味にしていた
「私は機械いじりの方が有ってますし、学校でそういうのはビリでしたので」
「少しやってみようよ。少しで良いからさ」
「……少しだけですよ」
その日から霓丸に連れられて鍛練もするようになる伊達丸だった