TS転生したので幼馴染系ヒロインムーブする【本編完結】   作:わらにんぎょう

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恐ろしく早い投稿……僕でなきゃ以下略。
急展開注意です。


敵前逃亡は許されない

 時間が過ぎるのは早いもので、もう気がつけば春休みとなっていた。高校一年、終わってしまえば本当にあっという間だった。この調子で高二、高三と過ぎていくのだと思うとゾッとする。

 

 モラトリアムというのは、思っていたより長くはないのかもしれない。

 

 このまま大学に行って、就職して…………。

 

 そんな想像をする時、何故だか菫がその景色の中に当たり前のようにいる。僕もかなり毒されているようだ。

 

 でも頭の良い菫のことだ。きっと大学だって遥か高みに行くんだろうな…………。そして大学で僕なんかよりもっと良い人と出会って、幸せに生きていくのだろう。

 

 

 嫌だなぁ…………。

 

 

 僕も菫と一緒の大学に行きたい、そしてあわよくば………………そんな不純な動機で進路を決めるのが間違っていることはわかる。でも、やはり今の望みはそれだけなのだ。

 

 取り敢えず東大を目指せるくらいの学力が欲しい。そうすれば学部を考えなければどの大学でも行くことができるだろう。

 

 勉強しないとな…………。

 

 高一でこんなこと考えるのもあれか。いや進路に関してはもう考えておくべき時期だが。それはそれとして、色恋に関する態度が高一から逸脱している気がする。

 

 

 …………幼稚園の頃から菫に歪められ続けたせいだろうか? 

 

 

 春休み、することがなくてずっとゴロゴロしているせいで、妙な事ばかり考えてしまう。菫は今どうしてるのだろうか。

 

 そんなことを考えていると、噂をすればなんとやら。菫からL○NEがくる。

 

 

『今門のとこいるー。鍵開けて』

 

 

 いや家に来る前に連絡を入れろよ。毎度のことなのでそんなツッコミはもうしない。

 

『残念だが僕は今友達と外出中だ』

 

『嘘。蓮に友達なんていない』

 

『なんだァ? てめェ……』

 

 仕方ないのでベッドから降りて鍵を開けに一階に行く。

 

 何故か僕が家にいることを確信しているらしく、ドアスコープから外を見るとじっと待っている菫が見える。

 

 ガチャっと音を立てて鍵を開けるとそのまま放置して自室に戻り、再びベッドにダイブする。

 

 しばらくしてムスッとした顔の菫が階段を上がってきた。

 

「やっぱりいるじゃん。嘘つき」

 

 荷物を机に置くとベッドに向かって歩いてくる菫。そしてそのまま横から僕の上に倒れ込んで来た。

 

「いや何してんの?」

 

「うるさい」

 

 胸が丁度僕のお腹に当たるような位置で、感触が色々とまずい。そしてシャツの隙間から横腹に息が当たってくすぐったい。

 

 そのままの姿勢でスマホを弄り出した彼女。どうやらご機嫌斜めなようだ。

 

「その体勢キツくないの?」

 

「きつくない。君と違って体柔らかいし」

 

「まぁ、うん」

 

「……………………えっち」

 

 理不尽すぎないか? 

 

 だが、このくらいの接触ではあまり動揺しなくなっている自分がいた。下半身もギリギリのところで耐えている。

 

 最近は色々()()()ので耐性がついて来たのだろう。それがいいことなのかわからないが、まぁ菫が楽しそうならなんでもいい。

 

 しばらくそんな体勢で、スマホを弄り続ける菫を眺める。僕の視線には気づいていないのか、こちらを一瞥もしない。

 

 五分か十分か、そのくらいの時間をお互い無言で過ごした後、漸く菫が口を開く。

 

 

「ねぇ」

 

「なに?」

 

「何でもない……」

 

 

 しかし、スマホから目を離さずに漸く声を掛けて来たかと思うとこの調子だ。

 

 その後も同じようなやり取りを3回程繰り返す。

 

 流石に菫の様子が気になり出した僕は彼女のスマホを覗こうとしたが、角度の問題でうまく見えなかった。

 

「ていうかスマホで何してんの?」

 

「LIN○してる」

 

 声を掛けてみるも、そう言ったきり再び黙る菫。

 

 お腹に乗られ続けるのは地味に苦しい。正直そろそろ降りて欲しいのだが、一切動こうとする様子のない菫を見て、諦めて僕もスマホゲームを起動する。

 

 

「ねぇ……蓮」

 

「どうした?」

 

 

 ゲームのロードが終わったタイミングで再び口を開く菫。ちらりと窺うとやはりじっとスマホの画面を見つめている。

 

「クリスマスにさ……お泊まり会したよね」

 

「そういえばそんな事もあったなぁ」

 

「うん、すごく楽しかった」

 

 そう言ってスマホを置くと僕の脇腹に顔を埋める彼女。顔が隠れてその表情は窺えない。平淡な声で話すその様子は、普段の元気が有り余ってる彼女を見ていると少し違和感のあるものだった。

 

「友達とのお泊まり会、ずっと夢だったから。ほんとに嬉しかった」

 

「そう、僕も楽しかったよ」

 

「でさ、泊まりに行く側はもう経験したけど…………まだ友達をお家に呼ぶのは経験してないんだよね」

 

「おい先が読めたぞ。僕は絶対に行かないからな」

 

「えーなんでぇ」

 

 抗議するように僕の足をバシバシと叩く菫。叩かれても全く痛くないが、お腹の上でモゾモゾと動かれると大変擽ったい。

 

「あのなぁ、この際だから言っておくけど。この年齢の男が女の子の家に泊まりに行くって普通じゃないからな?」

 

「だって普通じゃないもん」

 

「うん普通じゃな……うん?」

 

 彼女は伏せていた顔を突然上げると、そのまま起き上がってこちらをジロリと睨み付けてくる。そしてそのままジリジリとこちらに寄ってくるとそのまま僕に覆い被さって来た。

 

 そのまま僕の顎を掴むと所謂「顎クイ」をしてくる。いや立場逆…………。

 

 顔が近過ぎて視界が全て菫になる。影を作る程長いまつ毛を見て、人形みたいな顔だなと場違いにも思った。

 

 彼女の長い髪の毛がカーテンのように僕の顔の周りを囲って外界と切り離す。じーっとこちらの目を覗き込む彼女はまるで捕食者のようだ。その蛇のような妖艶さに目を逸らすことができない。

 

 

「君、ほんとに鈍感だよね。ラノベ主人公の真似でもしてる? それとも、拗らせすぎちゃった? ナニをとは言わないけど」

 

 

 そう、超至近距離で囁いてくる彼女に、頭が真っ白になって何も返すことができなかった。まさか突然このような奇行に走るとは思わなかったのだ。

 

 どうやら大変お怒りらしい彼女。完全に目が据わっている。何か怒らせるようなことをしてしまっただろうか。生意気にも口答えしてしまったから……? 

 

 

「私もこの際だから言っておくけど、私だってバカじゃない。家に呼ぶ意味だって理解してる」

 

「……ッ!! 何言って……」

 

 

 お互いの息が掛かる距離、真剣な眼差しでじっと見つめてくる彼女に思わず目を逸らしてしまった。

 

 

「大事な、話があるの………………だから、お願い」

 

 

 何で泊まってからじゃないと話せないのか、今じゃダメなのか。そんな言葉は、口にすることができなかった。

 

 気がつけば、頷いていた。

 

 それを見た菫はゆっくりと離れていくと、こちらに背を向ける。そしてこちらに一切顔を向けずに荷物を手に取った。そのまま動きを止めると再び口を開く。

 

 

「今週末さ…………私、お婆ちゃん家に泊まりに行く予定なんだよね。蓮も一緒に来てね」

 

 

 一瞬、何を言われたのか理解できなかった。一拍おいて理解が追いついていく。しかし意味を理解してから尚更わからなくなった。彼女は一体何を言っているのか。

 

「いやいやいや待て。それは話が違う。流石にそれはダメだろ」

 

「うるさい、口答え禁止」

 

「いや、異性の家に泊まりに行くよりハードル高いって」

 

「じゃ、そういうことだから。後で通話掛けるからその時に話す。ばいばい」

 

「おい待てッ!!」

 

 そんなわけのわからない事を言い残すと、こちらに一切顔を向けないまま部屋から出ていった。あまりの強引さに止めることは叶わなかった。

 

 いやおかしいって…………何がどうなったら初めてのお泊まりで、人の家の祖父母の下を訪ねることになるんだ。他所の家の帰省に同行……流石にどうかしている。

 

 先程言っていた『話したい事』にも関係しているのだろうか。

 

 もやもやする…………。

 

 

『鈍感』『大事な事』『家に呼ぶ意味』

 

 

 先程言われたことが頭の中で未だに反響している。一体どういう意味だったのだろう。いや、僕だってそこまで()()ではない。

 

 でも、脳裏にチラつくその可能性を直視するには心の準備ができていなかった。あまりに唐突過ぎたのだ。

 

 

「はぁ………………」

 

 

 どうして彼女はこう、いつも僕の心を乱していくのだろう。

 

 

 先程覆い被さられた時の香りがまだ鼻に残っている。あの蠱惑的な菫が頭から離れてくれない。

 

 気を紛らわすように布団に潜り込むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 蓮の家を足早に出て、バクバクと破裂しそうな程強く拍動する心臓を押さえる。震える手でスマホを手に取ると、何とかL○NEを起動した。文字を打つ指がブレて何度も書き直す。

 

 

『やったよ、柑奈ちゃん!!』

 

 

 トーク画面には『大丈夫、菫ならできる!』『ほら、もう行っちゃおう』『自分を信じて』と、大量の励ましの文が並んでいる。言う予定のなかったことまで口走ってしまったが、何とか第一歩を踏み出せた。全部柑奈ちゃんのおかげだ。

 

 やはり勢いとは大事である。あまりの鈍感さに怒りが湧いたのは本当だ。最近色々アプローチを繰り返していたというのに。

 

 その苛立ちのままに一気に言ってしまえたのは…………いい事なのだろうか。でも、やっぱり何も言わないよりはマシなはずだ。良かった……はずなんだ。

 

 今更後悔が胸を押し寄せてくる。でもそれは、今回の件に協力してくれている人たちにあまりにも失礼だ。だから、今は前を向くしかない。大袈裟かもしれないが、幼稚園からずっと拗らせてきたんだ。私に取っては、本当に大事な事なのだ。

 

 家に駆け込むとそのままお母さんの元に向かう。

 

「あら、もう帰ってきたの?」

「うん! ちゃんと伝えてきた」

 

 お母さんとお婆ちゃんには少しだけ事情とこれからの計画を話してある。細かくは伝えていないが「あら〜青春ね〜」と喜んで手伝ってくれることになった。こんなとんでもない我儘に付き合わせてしまって申し訳ない。

 

 

 柑奈ちゃん曰く「いろんな人を巻き込んで自分の逃げ場を無くそう作戦」らしい。

 

 

 そんな大層なことをするわけではないが、お婆ちゃんには結構な迷惑を掛けてしまう。しかしお婆ちゃんも「孫の初めての我儘だからね」と優しく微笑んでくれた。

 

 お泊まり会をするなら私達だけで決めるわけにはいかない。お義父さんにも実は既に許可を貰っているし、うちのお父さんも少しだけ渋っていたがちゃんと許可を出してくれた。

 

 

 夜までお母さんの家事を手伝ったり、勉強したりして過ごす。お母さんはコラムニストであり、基本的には家で仕事をしているのだ。

 

 

 夜になって蓮に電話を掛け、詳細を説明したところ、やはり少しだけ抵抗していたが何とか折れてくれた。

 

 あとは私が勇気を出して頑張るだけである。

 

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