TS転生したので幼馴染系ヒロインムーブする【本編完結】   作:わらにんぎょう

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お久しぶりです。番外編、のんびりと更新していきます。


寝て覚めて、またあなたと……

 

 

 

「君、あっちに加わらなくていいの」

 

 

 

 それが、僕と菫ちゃんの初めての出会いだった。

 

 外でみんなが走り回っている中、仲間外れにされた僕は一人で砂場にうずくまっていた。そんな時、一人の女の子が話しかけて来たのだ。

 

「ぼくが行っても、なかまに入れてもらえないし……」

 

「嫌な奴らだね。じゃあさ、除け者同士私と一緒に遊ぼうよ」

 

「の、けもも……?」

 

「の、け、も、の。仲間はずれにされた人っていうこと」

 

 それから、その子と二人で貝殻を拾って遊んだ。向こうで走り回っている人たちを気にせずに砂場で二人で遊ぶのは楽しかった。その時に「おのでらすみれ」という名前を教えて貰った。

 

「私のことは菫ちゃんと呼ぶといいよ」

 

 

 菫ちゃんは不思議な話し方をする子だった。先生たちみたいにいろんな言葉を知っていて、菫ちゃんと話しているとよく知らない言葉に出会(でくわ)した。いつも大体言っていることがわからなかったけど、なんだかんだ一緒にいてくれるだけでも嬉しかった。初めての友達だったから。

 

 

 菫ちゃんは、不思議な子だった。いつも何を考えているのかわからない無の表情で、他の子達とは一切話さず、部屋の隅でずっと一人で座っている子だった。正直に言うと、最初は話しかけられた時怖かった。今までまともに会話しているところを見たことがなかったし、なんで僕に話しかけてきたのかがわからなかった。

 

 でも、ずっと一緒にいる内に、そんなことは全然気にならなくなった。全然笑わなくて、言っていることもよくわからないけど、優しい子なんだっていうことはすぐにわかったから。

 

 

「またおもちゃ取られちゃったの? 仕方ないなぁ、じゃああっちで折り紙でもしようよ」

 

 

 みんなに持っていたおもちゃを取り上げられて泣いていると、それを見かけた菫ちゃんはいつもこうして話しかけてくれた。そうしている内に、みんなにイジワルされても気にならなくなっていった。むしろ、菫ちゃんが優しくしてくれるから、逆に喜ぶようにすらなっていたようにも思う。

 

 

 気がつけば、二人で一緒にいることが当たり前となっていた。

 

 先生たちからも何かと二人まとめて扱われることが増えた。

 

 でも、やっぱりみんなからの嫌がらせは無くならなかった。もともと一人でいたぼく達だから、一緒にいるのを見て面白がったのだと思う。そんな僕を菫ちゃんはいつも側で庇ってくれた。

 

「大丈夫大丈夫。あんな奴ら、ただのダンゴムシみたいなものだよ。怖がらなくて良い」

 

 そう言ってぼくの肩を叩く菫ちゃんはすごく頼もしかった。ダンゴムシっていうのはよくわからなかったけど。いつも堂々としながらいじめっ子を追い払うところを見ていると、なんだか本当に怖くないような気がした。

 

 

 ある日の夕方、泣かされたぼくが外でママのお迎えを待っていた時。いつになく真剣な顔で菫ちゃんはぼくを見つめてきた。あの時のことはずっと覚えている。夕方、オレンジ色の空の下、綺麗な目で見つめてくるその姿から、不思議と目を離すことができなかった。

 

 

「君は、(ボク)が守るよ…………ずっとね」

 

 

 そう言って怪しげに笑って僕を抱きしめてきた菫ちゃんに、思えばこの時から恋をしていたのかもしれない。

 

 

「じゃあ、ぼくもすみれちゃんを守るね」

 

 

 結局ぼくが守ってあげる機会はなかったけど、なんとなくカッコつけたくてそう言い返したことを覚えている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────────────────────────────ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わぁ〜懐かしい」

 

 

 展望台からお婆ちゃん家に帰宅した私達は、居間でのんびりしつつアルバムを眺めていた。お母さんがこっそり? 写真を共有していたらしく、お婆ちゃん家にも私のアルバムがあったのだ。

 

 居間は畳敷の和室であるので、テーブルの横に座布団を並べて肩を寄せ合う。

 

「この頃の菫マジで無表情ロリだな」

 

「あはは……昔は色々と余裕がなかったからね……」

 

「お前年齢に対して頭が良すぎたしな……今思い返すと」

 

 そう言いながら頭を撫でてくる蓮。いきなりのスキンシップにびっくりしたが、そう、もう我々はカップルなのである。恋人として、この程度の距離感で驚いてはダメだ。ゆっくりと慣れていかねば。でも、やっぱり蓮の方から触れてくるのは新鮮だ。なんだか妙な気持ちだ。

 

 そうしてどぎまぎする私と対照的に、なんでもないかのように手を引っ込めて再度アルバムに目を向ける蓮。私と経験値は同じな癖に生意気である。

 

 ムッとした私は仕返しに蓮の手にそっと私の手を重ねる。アルバムを捲るのとは反対の手だ。握るのではなく、優しく添える感じで、時折その手の甲を指先でなぞる。こっちの方が、握るよりもなんとなくえっちな感じがする。

 

 蓮の横顔をじーっと見ていると、表情にこそ出していないが耳が真っ赤になっている。ふっ、雑魚め。

 

 しばらくそうして手を弄んでいると、流石に(くすぐ)ったく思ったのか私の手の下から逃げられた。代わりとでも言うようにそのまま手を繋いでくる。

 

 

「なんか、大体どの写真も僕達二人で写ってるよな。たまに一ノ瀬さんも写ってるけど」

 

「うーん? たしかに。まぁ、ずっと一緒にいたからね。ほんとに」

 

 

 アルバムそっちのけでちょっかいを掛けていたので改めてアルバムに向き直る。懐かしい写真ばかりだ。蓮の家にお邪魔して誕生日会をした時の写真、昔一緒に水族館に行った時の写真。幼稚園で並んで寝ている写真。こんなに沢山写真が残っているとは思っていなかった。

 

 こういう写真を見ていると、なんとなく胸の辺りがむずむずする。昔のことを振り返っていると、今生きているこの時間すらも、すぐに昔のこととなってしまうのではないか、そんな不安が仄かに胸中を満たすのだ。

 

 そんな寂しさを紛らわすために隣に座る蓮に頭を預けて寄りかかる。

 

 

「ねぇ、せっかくだからさ。私達も自分でアルバム作ってみない? スマホで撮った写真結構あるし」

 

「なんか、ちょっと気恥ずかしいな。そういうの。…………じゃあ後でスマホの写真共有するか」

 

 

 そんな風にイチャイチャしていると、突然別室にいたお母さんが(ふすま)から顔を覗かせる。そしてピッタリとくっつく私達を見ると一瞬目を瞬かせ、その顔に怪しげな笑みを浮かべた。

 

「邪魔してごめんねー」

 

 そしてそのままスッと襖からフェードアウトして行った。何をしに来たのだろうか。

 

 なんとなく蓮と顔を見合わせる。少し気まずくなったのか蓮の方から手を離して来たが、逃がさないように捕まえ直して指を絡ませる。

 

 

「どうせ学校始まったらみんなに見られるんだし、恥ずかしがらないの」

 

「そう言う菫も顔真っ赤だけどな」

 

「うっさい黙れ」

 

 

 一通りアルバムを見た後、二人でアルバムの作り方を調べる。ネットで検索すると沢山出てきた。前世でも勉強ばかりしてきた私はこういう系には疎いので、同じく疎い蓮と色々と可愛いアルバムの作り方の記事を読んでみる。今の世の中は何でも気軽に調べれて便利だ。

 

 その後は二人でスマホの写真を見せあったりした。何だかんだで共有してしていなかった写真が結構あった。

 

 蓮は妙にコソコソしながら写真を選んで見せてきたが、どうせえっちな写真がいっぱい入っているのだろう。

 

 後でコッソリと確認することを決意した。

 

 

 そんなことをしている内にだいぶ遅い時間帯になる。もうお風呂も沸いているし、そろそろ寝る準備をした方がいいかもしれない。

 

 

 隣でスマホを弄っている蓮の肩をちょんちょんと(つつ)く。

 

「ん?」

 

「一緒にお風呂入る?」

 

「んんん!!?? いやいやいや、いきなり距離感バグりすぎ」

 

「今更じゃない?」

 

 動揺しているのか目を泳がせながらあたふたとする蓮。なんだか久しぶりに見る光景だ。昔はちょっと触れるだけで童○臭く顔を真っ赤にしていたのを思い出す。

 

 いや、思い返してみると言うほど昔でもないか。最近が濃すぎて感覚が麻痺していた。

 

 

「ねぇー入らないのー?」

 

「そういうのはまだ心の準備ができてないから……またいつかな」

 

「ふーーーーん、いつかは入るつもりなんだぁ…………えっち」

 

「うるさい」

 

 

 さっさと入ってこい、と手で追い払うジェスチャーをする蓮。少しムッとしたが、蓮を揶揄うのにも飽きてきたので大人しく着替えを取りにいく。

 

 

 

 荷物を置いている部屋へ行くと、荷物の横にある天体望遠鏡の箱が目に入った。そっと箱を持ってみるとつい数時間前の情景が浮かんでくる。

 

 私の目を覗き込む蓮、その口から溢れる告白の言葉。重ねた唇、抱きしめられた時の温かさ。

 

 

 やっと、やっと恋人になれたんだ。

 

 

 今更ながら、その実感が湧いてくる。ずっと夢見心地で、実はまだこれが私に都合の良い夢なんじゃないかと疑っていた。

 

 

 望遠鏡の箱をそっと抱きしめる。こうしていると、なんだか胸がぽかぽかとしてくる。

 

 

 まだ、蓮もお風呂に入らないといけないのだ。一旦望遠鏡を元の位置に戻してお風呂場へと向かう。

 

 

 洗面所の鏡に映る私は、幸せそうに頬を緩めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二人ともお風呂から上がると、あらかじめお婆ちゃんに伝えておいたように、二人で一つの部屋に布団を並べる。本当に許可が出るとは思っていなかったのだが、試しに言ってみたらお婆ちゃんは微笑みながら許してくれた。お爺ちゃんは私たちの好きにすれば良いという方針だ。

 

 

「えへへ」

 

「楽しそうだな」

 

「まぁね」

 

 

 布団の準備が終わり、歯も磨き終えたので常夜灯だけ付けて寝転ぶ。二人で向かい合って寝ていると、なんとなく楽しい気分になって、思わず笑みが溢れた。

 

 

「えっちなことはダメだからね」

 

「……わかってる」

 

「ここ一応お婆ちゃん家だから」

 

 

 布団に入りながら、どうでもいいことをのんびりと話して過ごす。いつぶりだろうか、こうして寝る前に誰かとだらだらするのは。中学の修学旅行以来だろうか。前泊まりに行った時も似たような場面はあったが、こうして布団の中で話すのは本当に久しぶりだ。

 

 お婆ちゃん家で寝ているのも相まって、今の状況もなんとなく修学旅行を想起させる。

 

 寝落ち通話などはよくしていたものの、やはりこうして一緒に寝るというのが特別なことに変わりはない。

 

 

「そういえばさ」

 

 

 ふと、思い出したように口を開く蓮。

 

 

「結局、なんでわざわざお祖母さんの家に?」

 

「なんでって?」

 

「いや、その……うーん」

 

 

 言葉を選んでいるのか妙に口籠る彼、だが言いたいことはなんとなくわかる。どうして告白するためだけに、こんな遠いお婆ちゃん家まで連れてきたのかということだろう。

 

 

 ただ、勇気が欲しかったのだ。お婆ちゃんとお母さん達を巻き込んで、後戻りできないようにしたかった。これは柑奈ちゃんのアドバイスでもある。とにかく自分で逃げられない状況を作るべし、そう教えられたのだ。

 

 そして、

 

 

「なんか、星を見ながら告白って、すごくロマンチックじゃない?」

 

 

 そう、昔から憧れていたのだ。ああいう星空の下で告白、というシチュエーション。それで、近場で星が綺麗に見える場所といえばここしか思い浮かばなかったのだから仕方ない。

 

 ここならお父さんにも同行してもらいやすいし、夜間外出の許可を貰うならここしかないだろうなという考えもあった。

 

 

「それに、ネットで告白おすすめスポットって書いてあったから……」

 

「はは、菫らしいといえばらしいな」

 

「えへへ」

 

「まぁ、ちょっと強引だったけどな。流石にいきなり友達の祖母の家に泊まるのはハードル高すぎるわ」

 

「いいじゃん、結果的によかったんだから」

 

 

 そう言って二人で静かに笑い合う。

 

 やっぱり、夢みたいだ。こんなに幸せになっていいのかな。まだまだ人生は長いのに、なんだかもう終点まで来てしまったような気分だ。

 

 こんな調子で行くとこれからどうなるんだろう。恋人になって、これから沢山のことを経験していくだろうに。

 

 

 手始めに、あの時できなかったことをやってみようかな。

 

 そう思った私は、自分の布団からススっと這って抜け出し、蓮のもとへ近づいていく。そのまま胸の中に飛び込み思いっきり抱きついた。

 

「ぎゅってして」

 

「…………布団せっかく二つ並べたのにな」

 

 照れ隠しなのか、そんなことを呟きながらも抱き返してくれる蓮。

 

「もっと強く」

 

「こ、こうか?」

 

 少しだけ息苦しさを感じるくらい、強めに抱きしめてもらう。こうしていると、蓮の存在を強く感じられて安心する。

 

 クリスマスの夜のことを思い出す。あの時は抱き返してもらえなかった。でも、今はこうして、おっかなびっくりといった感じではあるが、確かに抱きしめてくれる。それがどうしようもない程に嬉しかった。

 

 

 抱きしめあっていると、お互いの体温で温まってくる。そんな温かさで急に瞼が重たくなってきた。もうこのまま眠ってしまおうと、そっと目を閉じる。

 

 

「じゃあ、おやすみ」

 

「おやすみ」

 

 

 また明日も、こんな日々が続いていますように。

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