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前話7-3:職場体験③を一部加筆しました。
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職場体験を終えて翌日。
「おはよう爆豪君。イメチェン?」
「テメエ分かってておちょくってんだろ性悪女ァ…!」
昇降口でかちあった爆豪はなぜか髪が八二分けになっていた。
正直言って似合っていない。本人も甚だ不本意らしい。
「ひどいなぁ。出会い頭に噴き出したり指差して笑わない私の自制心を誉めてくれてもいいんだよ?」
「誰が褒めるか!つかついてくんじゃねーよ!」
「目的地が同じなんだからしょうがないじゃないか」
教室へ入れば、案の定、爆豪を見た切島たちが噴き出した。
「あっはっはっはマジか爆豪!マジか!」
「クセついちまって洗っても直んねえんだ…おい笑うなぶっ殺すぞ…‼︎」
1週間ぶりの教室は賑やかだ。
麗日は麗かさが見えなくなっていたが。
峰田の女性不信はこのままでいいと思う。
特に飯田は憑物が落ちたような表情をしていた。
「おはよう」
「あ、おはよう黒衣さん」
「おはよう黒衣くん!」
挨拶を交わして席に着く。
すると轟がやってきた。
「黒衣、少しいいか?」
「何?」
「付き合ってくれないか」
「「きゃーっ!!」」
唐突な公開告白に、教室が湧いた。
言った本人は聞いちゃいなかったが、クラス1のイケメンと美女。カップルとしては実にお似合いだと騒ぎ立てる。
「轟君…」
眼を瞬かせた一花の返事を、当事者の轟よりも周囲の方が今か今かと待ち望んだ。
「いつ、どこで、何をするのか言って貰わないと返答のしようがないよ」
「あ、そうだな。わりぃ」
「「「ズコー!!!」」」
教室中がずっこけた。
「轟おまえ!お前なあ!」
「王道ボケとボケ返しをリアルで見るとは…」
ツッコミの嵐と化した周囲を気にする風でもなく、少し前からやや天然を披露し始めている轟は会話を続けていた。
「放課後とか空いてる時間でいい。訓練に付き合ってほしい」
「訓練?」
「ヒーロー殺しに言われたんだ。個性に感けて動きが大雑把だって」
報道ではステインはエンデヴァーにより逮捕されたことになっているが、事実は異なる。
彼が敗れたのは、学生3人。
ステインは実力はあるのだが、時々退き際が悪いのは玉に瑕である。
本人は負けたことに関して特段怨みもなにも抱いてはいないし、どころか緑谷と轟に関しては合格判定だった。
「言われて、納得しちまった。体育祭の時も、俺は個性を使うばかりでまともに動いちゃいなかった。後から見るとひでえもんだって自覚した。これまでずっと個性の訓練ばかりだったから、個性に頼らない対人訓練がしてえ」
「体育祭の時は君、ガッタガタだったじゃないか。あのまま決勝に行っても負けただろうし、爆豪君がキレ散らかしただろうさ」
轟はコテンと首を傾げた。
「爆豪はいつもキレてるだろ?」
「んだとコラ」
緑谷は反射的に同意しそうになった口を慌てて押さえた。
「なんで私?」
「体育祭の時に俺はお前に負けた。それに、職場体験の時に親父も言ってたんだ。お前のこと凄えって。俺もそう思う。単純に個性の強い弱いとかそういうもんじゃなく、使い方とか動き方とか、そういうもん引っくるめて見たら、多分総合的に見てクラスの中じゃお前が1番強え」
「それは俺も思っていた!」
飯田までも加わってきた。
「1回戦で当たったが、俺も攻撃が全く当たらなかった。観察力、洞察力、判断力、身のこなし。いずれも敵わなかった。あれらはどこでどうやって身につけたんだ?」
「まあ、場数かな?」
「場数?」
一花はそれこそ、花が綻ぶような笑顔を作った。
「喧嘩はヤってもバレなきゃ怒られないんだ」
「黒衣くん!?」
飯田の声が裏返る。
「く、黒衣くん!ヒーロー志望ともあろう者が暴力行為など!言語道断だ!」
「いや、冗談だよ」
「本当だな!?」
「ホント、ホント。男子と取っ組み合いとかやったけど、それくらいだよ。知り合いにプロがいてね。雄英受験するのに、稽古つけてもらってたんだ」
飯田を揶揄うのはこれくらいにしてと、一花は轟に話を戻す。
「褒められるのは嬉しいけど、買い被り過ぎだよ。体育祭の時は君のコンディションが悪かっただけさ。実際、決勝じゃ爆豪君相手に攻めきれなかったしね。体術メインなら、尾白君にも頼んだらどうかな」
「俺!?」
突然の指名に尾白が目を丸くする。
「尾白君、確か格闘技やってるって言ってたよね。型も綺麗だし、騎馬組んだ時もとても安定していたから体幹も良いし、接近のみなら轟君相手でもいい線行くと思うよ」
「そ、そうかな」
「あとは優勝した爆豪君に…」
言っておきながら、黒衣は途中で言葉を止めた。
じっと爆豪を見つめる。
「んだよ」
つられて緑谷と飯田含めて周囲の視線が爆豪に向けられる。
「「「「問題は性格/かな/だな/…/!」」」」
「上等だ表出ろや…!テメェ等まとめてぶっ飛ばす!」
BOOM!と教室内に小さくない爆発音が響いた。
「「「「あ」」」」
爆破の拍子に髪が元に戻った。
更なる爆笑に爆豪がキレたのは、言うまでもない。
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「緑谷くん」
「あ、黒衣さん」
緑谷がオールマイトとの話を終えて仮眠室から出ると、ちょうど通りがかったらしい黒衣に遭遇した。
「まだ残ってたんだ」
「あ、うん。黒衣さんはどうしたの?」
「職員室行った帰りだよ。ちょっとコスチュームの改良について相談があったんだ」
「え、どこか変えるの?」
他人のコスチュームもそれは参考になるので、是非聞きたいと思わず前のめりになる。
「瀬呂君のテープみたいに移動補助できるワイヤーか何か仕込めないかと思ってね。吊り下げができると救助にも使えるかなって。着地時の負担を減らすのにソールにもう少し緩和材が欲しいし、それともう少し涼しくできないかと思ってるんだ。今のは生地が結構厚手だから、これからの季節辛くなりそうだし。色も黒だから余計ね」
ふむふむと緑谷は聴き入る。
「確かに、紐状のギミックがあれば高所作業や振動を与えない上下運搬できる。移動の際も要救助者を体に括れば両手が自由になるし、対象に意識がなくても背負える。無力化したヴィランの拘束にも使える。ソール改良は僕も相談しようかな今日実際着地時に足を滑らせて落下した身としては足元への配慮も検討したい…ブツブツブツブ」
「緑谷君、出てる出てる」
今日の基礎学は、濃厚な時間だった職場体験直後ということもあり、遊びを取り入れたレースで、機動面での課題が浮き彫りになったが有意義な授業だった。
「あっごめん。でも黒衣さんすごかったよね」
巨大モニター前のお座敷では、黒衣は不利と予想が立てられていたが、彼女はパルクールの要領でビル間を跳び移り、なかなかの好成績を出していた。
授業後の更衣室では機動力の低さを実感した切島や上鳴が参考にしたいと称賛していたほどだ。
峰田の覗き未遂はあったが。
「八百万のヤオロッパイ!芦戸の腰つき!葉隠の浮かぶ下着!麗日のうららかボディに蛙吹の意外おっぱい!黒衣の魅惑の生足ぃぃぃ!!」
ここまでオープンだといっそ潔く思えてくるのは気のせいか?気のせいか。
「移動系の個性じゃないから間に合わなかった、なんて言い訳にもならないし、するつもりも毛頭ないからね」
思い出されるのは、体育祭の決勝戦での出来事。
客席から落ちた子供を、彼女はその身を挺して救った。
もし、緑谷のような超パワーがあれば看板なんて吹き飛ばせた。もし、飯田のようなスピードが出せれば子供を抱えて落下物を避けられた。もし、轟のような氷結があれば、怪我をせずに身を守れた。
咄嗟の判断で子供は無傷で守り切ったし、黒衣は腕一本、それもすぐに治る程度で済んでいたが、運が悪ければどうなっていたかわからない。
それでも、彼女は助けに走った。
正に、ヒーローだった。
なお、あの後保健室へ突行した際、タイミング悪く背中に湿布を貼っているときーつまりは半裸状態のところに乱入してしまいリカバリーガールから叱りつけられる
「緑谷君だって基礎学凄かったじゃないか。この間までとは見違えたよ。あれ爆豪君の動きを取り入れていたよね」
「そ、そうかな?」
褒められなれていない緑谷はしきりに照れる。
「そうだ、黒衣さんの職場体験先ってサー・ナイトアイだったよね?オールマイトの元サイドキックの!」
自他共にオールマイトオタクと認める緑谷は、当然6年前にコンビ解消したオールマイトの元サイドキックのことも知っていた。
元相棒の名前が聞こえ、仮眠室の中で出るタイミングをずらそうと待っていたオールマイトがスススとドアの影に隠れながら聞き耳を立ててる。
「うん、そうだよ。オールマイトによろしく伝えてくれと言われていたから、どこかタイミング合ったら言おうと思ってるんだ。詳しく聞きはしなかったけど、サーはオールマイトの事、気にしているようだったよ。仲違いしたって話だったけど、グッズもたくさん飾ってあって、ええと、何だったかな?オールマイトニッポン?のサイ「ラジオ番組にオールマイトがゲスト出演した時のサイン入り限定ポスター!?その回だけ番組名も変わって放送時間はH Pも特別仕様になったんだよそのポスターも5名抽選で僕も応募したんだけど「Stay緑谷君」
垂涎物のレアアイテムがあると聞いて思わず
「あっご、ごめん!」
「まあ、実りある体験になったよ。緑谷君も個性を使っても怪我もしなくなったようだし。この1週間で随分変わったね」
緑谷は先日の事を思い出す。
たった1週間。その短い間。
オールマイトを鍛えたというグラントリノの元でフルカウルを僅かではあるが扱えるようになり。
ヒーロー殺しと戦った。
「うん。とても勉強になったよ、本当に」
しかし、次の黒衣の言葉に息を呑んだ。
「これまでの君の怪我は、君が『個性を人から授かったこと』に関係あるのかな?」
「「!!」」
なんと説明したらいいだろう?いや説明自体していいものか?ではどう答えよう?嘘を吐く?どんな嘘ならこの場を切り抜けられる?
ぐるぐると思考を巡らせたまま緑谷が答えあぐねていると、黒衣は呆れた様に息を吐いた。
「緑谷君…君、もう少し
緊張と震えと顔色の悪さと冷や汗と涙と心の声とか。
そう言って黒衣はバツの悪そうな表情を見せた。
「前に、帰り際に爆豪君と話しているのが聞こえてしまってね。弁解ではないけど、聞かれて困る話ならあんな昇降口の真前なんかでするものじゃないよ」
((ごもっともです…!))
緑谷はあまりにもっともな指摘に俯くしかなかった。
オールマイトも、仮眠室のドアの前で項垂れていた。
「オールマイトも来て深刻な顔して話し始めてしまうものだから、余計出るに出られなくてね。あの様子じゃ君の個性はオールマイト絡みなんだろうけど」
((あちゃー!))
緑谷とオールマイトは思わず顔を覆った。図らずともドア1枚隔てて師弟がシンクロしていた。
「蛙吹さんも個性が似ていると言っていたし、轟君も隠し子か、なんて言い出すし、やっぱり」
「っ…!黒衣さん!あのっ…!」
「緑谷君」
どうか内密にと頼もうとした緑谷を、皆まで言うなと黒衣が制す。
ドアに手をかけたオールマイトも動きを止めた。
「誰にだって秘密の1つや2つはあるさ。知ってしまったのを黙っているのもどうかと思って打ち明けただけだし。まあ、乗りかかった船と思って、溜め込むのが辛くなったら話くらいは聞くよ。但し、今度は場所は気をつけて」
「き、気をつけます…」
「それからさっきも言ったけど、指摘されたからって動じ過ぎだよ。何かあると言っているようなものじゃないか」
「おっしゃる通りです…」
返す言葉もございませんと緑谷はひたすら小さくなるしかなかった。
「不安や焦り、恐怖や動揺もあるだろうけど、前が揺らげば後ろが惑う。前に立って守るなら、何でもないと堂々としていないと。心配はいらないと、大丈夫だと笑っていよう。君の目指すヒーローは、そうなんだろ?」
優しく諭す黒衣は、同じ年なのにとても大人びて見えた。
(すごいな…)
素直に、そう感じた。
強く、優しく、包容力があって、常に前を見据えて努力できる女の子。
本当なら、そうあるべきだった。
今でこそオールマイトからOFAを受け継いで、こうして雄英に合格して学べているけれど、そんなのは全部偶然の産物だ。幸運だったのだ。
無個性だからと嘆いていないで、無個性だからこそ、早くから体を鍛えるなり、武術を習うなり、強くなる努力をするべきだった。
それが、夢を追うということだ。
夢はオールマイトのような「最高のヒーロー」。
(よし…!)
パンっと両方頬を叩いて気合いを入れ直し、歪ではあるが、にっと笑顔を作る。
それはそれは不細工な笑顔ではあったが、黒衣はクスリと微笑う。
「その調子。君はきっと、良いヒーローになるよ」
「く、黒衣さんも!」
吃った挙句に声が裏返ってしまったが、どうしても伝えたかった。
「黒衣さんも、きっと良いヒーローになるよ!」
そうかな、と目を細めて微笑った彼女の表情は、とても、綺麗で。
見送った後も、しばらく熱は引かなかった。
一花
元ヤン疑惑()。元じゃなく現役ヴィラン。
相談にのるよ、緑谷くん。何でも話してね^ ^
クラスメイト
告白劇かと思ってガタっとした。(轟以外)
あの顔は清々しい嘘だろ(飯田以外)
緑谷
すごいなぁ…僕も負けてられないぞ!
純真。
オールマイト
後日改めて伝言聞いた。
そうか…ナイトアイ…
今回は少しほのぼの回でした。
タイトルってつけた方がいいのか…無くして話数だけでもいいのではとか、投稿ペースを週2にするか悩み中です。
改稿なのに文字数のバランスが相変わずとれません…
ここまでお読みいただきありがとうございます。
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