そしてアンケートご協力いただきありがとうございました。
今回より通常週1更新に戻ります。
(進行度合い等に応じて更新頻度は変更する場合があります)
今回も短編3つ。時期的に職場体験後後〜合宿前まで。
※主人公の他、名前だけまたは少しだけセリフがあるオリキャラが数名登場します。
「どうしたんだいオールマイト?」
「校長」
職員室のデスクで生徒名簿やらのデータとにらめっこをしていたオールマイトに声をかけたのは、校長の根津だった。
「難しい顔をしちゃって。何か気になることでもあったのかい?」
「ああ、いえ。1学期も終わりますし、その…成績の付け方が…」
不動のNo.1ヒーローオールマイトはヒーロー歴こそ長いが、教師としてはペーペーの新米だ。年齢が半分近い相澤や山田の方が先輩なくらいである。
オールマイトも担任こそ持っていないが、ヒーロー基礎学はメインで受け持っている。よって、期末試験が終わった今、生徒たちの成績をつけなければならないのだ。
「相澤君からは甘い採点はするなと釘を刺されていまして…でも、こうして最初の頃と見比べると、皆見違えるような成長ぶりで」
ついつい甘くなってしまうのだ。
オールマイトはパラパラとページを捲る。
「子どもたちの成長というのは、早いものですね」
「その成長を間近で見られるのが、教師の特権なのさ」
なるほど、とオールマイトは微笑う。
ふと手を止めたのは、ある生徒の写真が載ったページだった。
昔の知り合いによく似た面ざし。
身を挺して人を助けに飛び出せる、強くて優しい少女。
喧嘩別れしてしまった元相棒のナイトアイの元に職場体験に行き気に入られたようで、一足先にインターンの説明を求められた。
その時はマッスルフォームのタイムリミットが迫っていた為に機会を逃してしまったが、彼女とは一度じっくり話をしてみたいと思っている。
彼女自身の事も聞きたいし、己と緑谷のちょっとしたうっかりで個性の事を知られてしまっている。
そういえば、彼女と先日の授業でペアになっていた轟はエンデヴァーの末っ子だったか。
「私も、結婚していたら彼らくらいーいえ、相澤くんくらいの子どもがいてもおかしくない歳なんですよね。あ、いや、ひょっとしたら孫くらいいても?」
自分で口にして自身の歳を実感してしまった。
50も半ばを過ぎ、早ければ祖父になっていてもおかしくない歳だ。
早くに親を亡くし、それからずっと独り身だった。
母のように思っていた師も既にない。
家族がいないからこそ、ここまで直走ってきたのかもしれない。
事件事故が有れば遅刻ドタキャン常習犯。緊急通報が入ればデート中止。プロフィール非公開の為、正体も明かせず。
「仕事と私どっちが大事なの⁉︎」は何回聞いたか。
最後に交際していた彼女の時も例に漏れず。
別れたのはもうずっと前だし、あの後彼女が結婚していたとしてもなんの不思議もない。
「まあ、ヒーローは激務だからねえ。特に君はNo.1だし、あちこち首を突っ込むからね。解決してくれるのはありがたいけど、もう少し落ち着いてほしいものだよ。この前もそうだけど…くどくどくど」
(アッ…スイッチ入っちゃった…)
スイッチの入った校長の話は長いのだ。
その内隣の相澤の席に座り込んで話出してしまい。
いつもの事だと13号が茶を淹れていた。
「
(今回も長い…!)
ようやくひと段落ついたのか、根津がズズッと茶を啜る。
「君は良い人いないのかい?」
「いませんよ。私は結婚には不向きな人間ですから」
結婚を考えていた女性にまで振られ、自分は家庭を持つには向いていないのだと諦めた。
「それにもうこの歳ですし…」
「そうかい?まあ、何事も、物事を始めるのに遅いと言うことはないさ。この先意外な出会いがあるかもしれないよ!」
何なら良い人紹介しようかとぐいぐい仲人話まで始めてしまった校長に角が立たないようにお断りを入れていると、授業が終わったらしく他の教師達も戻ってきた。
「あら校長、いらしてたんですか?」
「ミッドナイト。君は結婚の予定とかないのかい?」
相澤は入ろうとしていた職員室のドアをそっと閉めた。
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弔は苛立っていた。
(どいつもこいつもステイン、ステイン…)
適当にぶらついていたショッピングモールは人で溢れている。
街ひとつ火の海になっても、人が死んでも、人は知ったことかとばかりにヘラヘラ笑って生きている。
それどころか、商魂逞しいショップはヒーロー殺しのグッズまで売り出す始末。
それを不謹慎だと言いながらも笑って見ている人間ども。
ヒーローが殺されたところで、見知らぬ誰かが死んだところで、どうせ対岸の火事だ。
燃えるまでは熱さもわからない。
(今ここで灰も残らず塵にしてやろうかな…)
それもいいかもしれない。そうしたら少しはこの苛立ちも治るだろうか。
弔はガリガリと首を掻く。
横を、幼い兄妹を連れた親子連れが通り過ぎた。
(妹、ねえ…)
突然妹がいると言われ、意味がわからなかった。
聞けば、葬という妹ーと言っても、血の繋がりがあるわけではないらしい。
今後弔に補佐としてつける予定で先生が用意している有能な部下らしく、今は別働だそうだ。
何故妹なのかと問うても、先生の答えは要領を得なかった。
「兄弟は支え合うものさ」
葬は計画に必要な情報も集めているようで、先日の雄英襲撃の件で通達も何もなかったことにクレームがきたらしい。黒霧が全部受けたので詳細は知らないが。
その妹とやらも、弔は気に食わなかった。
ステインの勧誘は妹の仲介だった。
奴は葬の
「子どもの癇癪に付き合えと?…ハァ…信念なき殺意に何の意義がある」
意味が分からない。
やってる事は同じじゃないか。
気に入らない奴をぶっ殺して、壊してるだけじゃないのか。
なのに蓋を開ければ敵連合はおまけ扱い。
世の中はヒーロー殺しだけを取り沙汰して、あいつの信念とやらとは程遠いシンパまで出来ている。
そのステインが、妹の葬とやらを称賛していた。
「義理とは言え、こんなのが兄とはな…葬も苦労する。妹の方がよほど大人だ。子どもであることを捨てざるを得なかった、大人になるしかなかった子どもだが、あれはお前などより遥かに人の前に立つことを心得ているぞ…確固たる信念と裏打ちされた覚悟がある…ハア…つくづく、勿体無い…」
会った事はないが、ステインが気に入るような奴だ。どうせ気が合わないだろう。
面子を潰してやろうと保須で脳無をけしかけた事にも苦情がきたらしいが、知るかと黒霧に押し付けた。
黒霧の言う通り、組織を拡大するには名前だけでもステインが在籍されていたと注目されている今がチャンスなのはわかっている。
あの破綻JKと礼儀知らずがそれなりに使えそうなことも。
しかし、ムカムカする。
なぜ誰も俺を見ない。あいつと俺とでは何が違う。
苛立ちまぎれにまたガリガリと首を掻く。
血が滲んだ。
どうにかこの苛々を治められないかと考えていると、ふと、見覚えのある後ろ姿が目に入った。
もっさりとした緑頭のガキ。
ちょうどオトモダチと離れて一人になったところだった。
(いい玩具見っけ)
弔は乾いた唇をにいと釣り上げる。
顔の見えない背後から馴れ馴れしく、態とらしく明るく声をかけた。
「おー雄英の人だスゲー!サインくれよ」
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世間一般で言うところの夏休み。
葬は雄英への
そこは雄英に届け出ている場所とは別の、表向き親の居ない子などが住む保護施設で、実態は葬が連れ出した仲間や、新たに保護した子ども達の棲家だ。スタッフは最小限、全て彼女の息がかかっている。
「おやすみ、お姉ちゃん」
「おやすみなさい」
「ああ、お休み」
まだ幼い子どもたちを撫でる葬の手の優しい温もりや、蕩けるような愛情を乗せた眼差しは、彼等にとっては母親のそれに等しかった。
夜、年少の子らの宿題を見て、歯磨きをさせて布団に入ったのを見送った葬はリビングに戻る。
「あ、もう蚕子たちみんな寝たの?」
課題をやっていた祈が振り向く。
「おいお前ら。他の奴らもう寝たってよ。お前らももう寝ろ」
獅郎がソファを占領している三つ子を追いやりにかかる。
夏休みの自由研究で、絹糸の作り方を調べて作品を作っているらしい。蚕ではなく蚕子が吐いた糸だが。
彼女らは「えー」「もうちょっと」「後少し」とごねる。
「編、織、縫。明日プール行くんだろ?寝坊するよ」
葬にまで言われ、「うー」「はーい」「おやすみー」とようやく観念した三つ子が荷物を持って部屋に戻っていく。
「あいつら、お前の言うことは大人しく聞きやがるな」
獅郎は唇をへの字にして、しなやかな尾でペしりと椅子を叩く。
「そういや、お前ん所来週から1週間夏合宿だって?」
「ああ。だからこっちにはあまり長居が出来なくてね。有名校のヒーロー科というのも、何かと忙しいな」
「こっちも今日も登校日だったしなあ。通える範囲でいちばんいいとこでって学校決めたけど、しくったかぁ?」
昔に比べたら訓練自体はさほど苦ではないが、休みが潰れるのが嫌だと獅郎は苦い顔をして耳を寝かせる。
そこに、エプロン姿の光矢がやって来てニッコリと擬音がつきそうな笑顔で微笑んだ。
「獅郎?また弁当箱が見当たらないんだけど?」
「やべ」
登校日で弁当を持って行きそのままにしてたらしい。
台所の支配者に睨まれては堪らないと、慌てて鞄を漁りに行く。
小言、不貞腐れる声、苦笑。
そんな、どこにでもある光景。
眠る事に脅えず、当たり前に明日が来ると思えて、誰も欠けずに明日を迎えられる。
そんな事すら許されない日々だった。
だからこそ、今の平穏が、日常が、当たり前でなく、有難いものであると実感している。
仕事とはいえ、自身も雄英高校に偽りではあるが通い、学生生活をいうものを経験した。
そこで出会った彼等は、ただ純粋に夢を追いかけ、未来が、明日があると疑わない。
彼等と同じように、仲間たちにも当たり前の明日を迎えさせてやりたいのだ。
多くの仲間の死を、葬は見送ってきた。
組織が新しい事業を初めて直ぐに集められた子どもは数十名いたが、彼女を除いて残っていない。
皆厳しい教育に耐えきれず死んでいった。
むしろ、葬が残ってしまったからこそ、組織は味を占めてしまった節があった。
流石に採算が取れなくなるからと、以降は潰す前にグレードを下げて売られる様になったが、末は変わらない。
彼等を消費させないために、あの日、当時は管理番号で9番と呼ばれていた少女は、大人たちに背いた。
誰の命令でもなく、彼女自身の意思で。
元のボスは見本用の非売品だと断っていたが、今の義父とは前々から買取を打診されていたこともあって、面識があった。
仮に組織から逃げても、救けもなく、帰る場所もない彼等を養うのに、彼の人に頭を垂れた。
そして手にした金とコネで子どもたちの棲家や戸籍もきれいに整えて、彼等にやっと「普通の」生活をさせてやれるようになったのだ。
食べ物にも服にも困らず、寝る場所もあって、学校にも行かせてやれる。
彼らが飢えず渇かず凍えず、怯えずに、当たり前に明日を迎えられて、健やかに大人になれる未来を与えてやりたい。
その為には出来ることは何でもやったし、何でもする。
半ば依存、歪な形かも知れないが、他に何も持たなかった彼女にとっては、彼等が全てだった。
代替行為と言われてしまえば、そうなのかもしれない。
望んでも得られなかったものを、同じ境遇にあった彼らに与えることで、自分も手にした気になりたいのか、なっているのか。
いずれにしろ、義父からすれば良い人質だろう。
幸いにも、義父は彼等に興味はなく、葬が従順に結果さえ出していれば、彼等に安全に真っ当な生活をさせてやれる。
今は、それしかない。
今の内に、力をつけて足場を固め、いつ自分が居なくなっても良いように、遺される者たちが困らぬように調えなくては。
実は結べねど、斃れた後に彼等の糧になれるよう。己を糧に、彼等の人生が花開き実を結び、いつか種を蒔いてまた芽吹き、そうして繋がる未来を。
数日もすればにはまたここを発って敵地に赴かねばならない。
葬は就寝前、1人鏡台の前に立つ。
灯りを落とした部屋に一輪、花が咲いた。
左眼の八色に染まった瞳を中心に8枚の光の花弁が開く。
見る者の心を操るそれは、鏡越しに酷く美しくも悍ましい支配の象徴。
時間が許す合間、時折葬はこうして己の心を調えていた。
罪悪感、恐怖心、絶望、そんなもので気が狂いそうになる度に個性で感情を消して、狂えば一度壊して、必要なものだけで心を作り直す。
そんなことを何度も繰り返し、今は正気かと問われれば、そんなものは既にないと答えるだろう。元からあったかも定かじゃない。
すっと精神を平坦にして、葬は個性を解除する。
光の花は粒子となって霧散した。
再び部屋を暗闇が覆い、葬は寝床に着く。
まだ夜明けには時間があった。
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新米教師(50代後半)
若い頃から大変モテる。
モテ過ぎて時々ヤバいのも引っ掛けてる。
女性教師(31)
^ ^
男性教師(30)
そっ閉じ
お兄ちゃん
接触のおかげで合宿場所変更
まだ義妹とは会ったことない
おねえちゃん
みんなの「おねえちゃん」
大丈夫、私がー
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おまけ
ゲスト(オリキャラ)たち
獅郎(しろう) 個性:ライオン。No.46
ライオンっぽいことはだいたいできる近距離型。耳と尻尾があって身体能力が高い。寒いのが苦手。
光矢(こうや)個性:光の矢 No.58
レーザーの弓矢型。遠距離スナイパー。細身で女顔、料理が趣味。台所は彼の縄張り。
祈(いのり)個性:祝福 No.106
強く願うと怪我を治せたりできる回復役。強く怨むことで呪いに転じるが、自爆ダメージが入る。人を呪わば穴二つ。
蚕子(かいこ)
黒目がちで触角が生えていて口から糸を吐く。今度お友だちの家にお泊まりするのが楽しみ。
編、織、縫(あみ、おり、ぬい)
三姉妹。簡単な衣類や小物ならお手のもの。蚕子の繭で正絹布を作ろうが夏休みの自由研究
ここまでお読みいただきありがとうございました!
オールマイト、八木俊典としてもモテると思うんですよ。
私生活なんか投げ捨ててる感もありますが、
ステイツ時代もあったし、屋久島旅行行くくらいの時間はあったみたいなので(好きなものが屋久杉)なので全くないってコトはないと。
ただ殆どが付き合う前のデート数回で頓挫しそう。
あとファンも母数が多いから男女問わずヤバいの引っ掛けてそう。
エンデヴァーは言わずもがな。最大は身内。