一輪花の咲くまで   作:No.9646

17 / 86
閲覧・お気に入り登録・感想・評価等ありがとうございます!


*お知らせ✳︎
各話のタイトルを変更しました。

変更前:6-1、6-2
変更後:6話、7話


17話 林間合宿①

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

夏休みだからといって、最高峰のヒーロー養成校のヒーロー科がまるまる1ヶ月休める通りはなく。

夏季休業の内、1週間の林間合宿が組まれていた。

すわ赤点組は居残りかと思われたが、例によって例の如く、生徒達に発破をかけるための相澤の合理的虚偽であった。

問題なく期末試験を合格した一花に補講はないが、事前の下準備に追われた。

直前で緑谷と弔の接触があったらしく、行先が突然変更され当日まで明かされない。

密偵が勘付かれたかとも懸念したが、既に保護者に伝えてしまっている生徒もおり、どこでどう拡がっているか不明なための措置だそうだ。

不測の事態に備え、予めある程度場所を特定するのに過去の合宿先、40名以上を受け入れられる土地と建物を所有していて、情報の秘匿性を保てる人数のグループ、直近で大量の食料品の買入れ契約がされている等該当しそうな条件をもとに調べ上げ候補を絞った。

職員室に盗聴器でも仕掛けられたらよかったのだが、発見された時のリスクが大きすぎる。

中でもプッシーキャッツは中に“サーチ“を持ったラグドールがいるから当たりたくなかったが、調査結果からこれが大本命だ。

急遽認識阻害系の個性を確保し、携帯端末のGPSを追って夜には近くで部下数名が待機する手筈を整えた。

他にも、部下に任せている通常業務の確認と指示出し、普通科目の課題を片付ける傍ら子どもたちの宿題を見てやりと忙しい日々を過ごした。

観察日記はアサガオを枯らさなければいいのだが。たとえ枯れても捨てないように言い置いてくるのは忘れていない。蔓も鉢も後期で使うらしいので。

そして再度姿を整え、林間合宿出発当日の朝。

「え?A組補習いるの?つまり赤点取った人がいるってこと⁉︎ええ⁉︎おかしくない⁉︎おかしくない⁉︎A組はB組よりずっと優秀なハズなのにぃ⁉︎あれれれれぇ⁉︎」

「おい性悪女」

「呼んだ?」

「ネギ背負ったカモがいんぞ」

クイッと爆豪が親指で物間を指し示す。

一花はその意図を正しく受け取った。

ちらりと物間を一瞥すると。

「あんまり食べでがなさそうじゃない。もっと肉付き良くなってからじゃないと」

物間は意味が分からなかったようで「?」を浮かべていた。

「なあなあ爆豪、今のどういうこと?」

同じく理解できなかった上鳴が爆豪に訊ねる。

「『テメエみてえななよっちいザコじゃ相手になんねーよ顔洗って出直して来い』だとよ。今のがわかんねーんじゃ、赤点バカ(テメエ)と同レベルってこった」

爆豪は鼻で嗤う。

「聞いた?ねえ今の聞いた⁉︎」

わなわなと騒ぐ物間は、トッ、と首筋に手刀を落とされ沈められていた。

「ごめんな」

物間は拳藤に引き摺られバスに放り込まれた。とても慣れた様子だった。

「なんつー高度な煽り返しを。朝からキレッキレじゃねーの」

「てか性悪女て。呼び方それでいいん?」

「爆豪くん!黒衣くん!そんなところで妙なコンビネーションを発揮するんじゃない!そういうのは授業でやりたまえ!」

まったく君たちは!と飯田はプンスコしていた。

気を取り直し改めてB組とも挨拶を交わし、バスに乗り込む。

そして朝からバスに揺られ、崖下に流し落とされ、魔獣の森と称される広大な森を宿泊施設まで自力で移動を強いられて、挨拶がてらに緑谷が急所にかいしんのいちげきを受けたことはさておきー現在。

「気持ちいいねえ」

「温泉あるなんてサイコーだわ」

夜空を臨む広々とした露天風呂。

女子たちは日中の汚れと疲れを存分に落とすべく、ゆったりと湯船で寛いでいた。

「ん?」

じっと麗日に見つめられて、一花はどうしたのかと訊ねる。

「黒衣さん…スタイルめっちゃ良いよね…!」

「そうかな?」

謙遜するが、仕事道具なのでそれなりに気は使っているし、みせられる自信はある。

怪我をしても多少雑に扱われてもきちんと直されていたので、肌は傷もなく綺麗なものだ。

「ほら、私顔丸くて太って見えるでしょ。黒衣さんみたいにシュッとしたスタイルって憧れるんよ。それになんか大人っぽくて、こう…色っぽい!」

「あーソレわかる!」

うんうんと芦戸も同意する。

「ヤオモモもねえ…何食べたらそんなになるの?」

耳郎がじとっと八百万のたわわな胸元を睨め付ける。

「わ、わたくしは特別な事は…むしろもう少し引き締め「えいや!」きゃっ!」

「贅沢な悩みめー!」

背後から葉隠が抱きつき、八百万が悲鳴をあげる。テンプレート的なきゃっきゃうふふの絵面が繰り広げられていた。

「色気ねぇ…」

端的に言えば場数(経験値)の違いだが、暈して伝えるにも耳に毒だろう。

「麗日さん、もしかして気になる相手でも?この前青山くんが言っ「そそそそそんなんじゃないよ⁉︎」

話を逸らすつもりで言った台詞だったが、効果は覿面だった。

「そんな明からさまに否定されても説得力ないよ。顔真っ赤じゃないか」

「ちょ、ちょっと逆上せてきちゃっただけ!」

「お?何?恋バナ⁉︎」

葉隠と八百万で遊んでいた芦戸が耳聡く聞きつけて絡んできた。

そこに。

「峰田くん!やめたまえ!」

一瞬、女子風呂内が沈黙した。

「…大方何をしようとしているのか察しがつくね」

「あんのエロ玉…!」

「最低ですわ!」

「もう溶かしていいかな」

「いいと思うわ」

「目狙おう、目」

凡そヒーロー志望に似つかわしくない会話が混ざったが、実行される前に壁をよじ登った峰田を、洸汰が男湯側に突き落とした。

「ヒーロー以前にヒトのあれこれから学び直せ」

「くそガキィィィ‼︎」

どっちがだ。

「ありがと洸汰くーん!」

感謝の声援を送られて、洸汰が振り向く。その拍子にグラと身体が傾いた。

「洸汰君!」

「洸汰君は大丈夫!受け止めたから!」

直後、緑谷から返答があり一花はホッと胸を撫で下ろす。

風呂から上がっても、女子陣は賑やかだった。

「黒衣さんルームウェア可愛い!ジェラピケ?」

「貰い物だけどね」

「コスチュームがカッコいい系だから意外だわ」

「これがギャップ萌え…」

部屋に戻る途中、共有スペースで緑谷を見つけ、念のため洸汰の様子を聞いておこうとを呼び止めた。

「緑谷君、洸汰君は?」

「大丈夫だよ。落ちたショックで気絶しちゃったけど、怪我はないって」

「そう、良かった」

緑谷に礼を言って別れる。

振り返ると、こちらをじっと見つめていた麗日と目があった。

「黒衣さんって、デクくんと仲いいよね」

「まあ、よく話すけど…」

聞き出したい事が色々とあるので、接点は多く持つようにしている。

もやもやした様子の麗日に、一花は訳知り顔でそっと声量を落とし、肩をぽんと叩く。

彼女の表情にあったのは、ほんの少しの思慕と本人も自覚していないくらいの嫉妬と焦燥。

「さっきの話だけど、もし()()()狙いなら安心していいよ。私は年上趣味だから」

「えっ!あっいやけけけ決してそんなんじゃ…!」

麗日はわかりやすく狼狽えた。

「あ、先生もばっちり守備範囲ですよ。個室ですよね?鍵かかります?どうですか一夏の思い出」

「お前は俺を失業させる気か」

ちょうど通りがかった相澤を巻き込めば、冗談も大概にしておけと嗜められる。

「くだらないこと言ってないで、さっさと寝ろ。明日朝5時半集合だぞ」

「「「はーい!!」」

みんな良い子のお返事をしていたが、部屋に戻ってもまだまだおしゃべりは続くのだろう。

各々分かれて部屋へと戻る。

鼻息荒く財布を手に「ホ別いちごでどうよ?」にじり寄った峰田が捕縛布で簀巻きにされているのは、みんなで無視した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

合宿1日目の夜。の、A組男子部屋。

「むさ苦しい野郎どもがそろって女子抜きでする話って言ったら、猥談しかねえよな」

そう切り出したのは、もちろん峰田である。

「あるだろ。もっと他に」

「むしろそれがねーよ」

「何でだよー⁉︎するだろ普通!てめーらそれで男か⁉︎キ○タマついてんのか⁉︎もっと滾れよ!熱くなれよ!諦めたらそこで試合終了だろうが‼︎」

「テメェは人生終了しとけ」

黙々と寝支度をしていた爆豪から静かな罵倒がとぶ。

それでも乗っかるのはいる。

「まあうちのヒーロー科レベル高くね?とは思うけどな」

「それな」

「だろ⁉︎ A組B組揃って可愛い系から綺麗系、天然系から小悪魔系までよりどりみどり!コスチュームだってパツパツコスにポロリギリギリ、果ては全裸だぞ!見なきゃ失礼ってもんだろうが!」

「1人見えないけどね…」と尾白はペアを組むことが多い葉隠を思い出して頬を掻く。

隠密特化の個性で手袋も靴も邪魔だというのは分かるけど、同級生女子が横で全裸というのも目のやり場に困る。見えないけど。

「オイラは断然ヤオモモだ。あのオッパイは至高。むっちり太もももいい」

「俺黒衣派だなぁ。モデル並の美人で足キレイなのって良くね?」

「あー分かる」

「あいつはきっと男の1人2人咥え込んでるゼェ…」

「2人いたらダメだろ」

鼻息荒い峰田の言葉に切島がツッコミを入れる。

硬派な男は2人同時進行など考えもしないらしい。

「耳郎も結構良い足してるよなぁ」

「オッパイはないけどな」

「そーゆー切島はどうなんだよ?」

「やめようぜ。そういう女を見た目で判断するなんて話、漢らしくねえだろ」

「バカヤロウ究極的に男らしい話題だろうが」

「ヤオモモか?黒衣か?あ、でもお前芦戸と仲良いよな。同中だっけ?芦戸も可愛い系だよな」

「あーマア、芦戸は、いい奴だしけっこう可愛いと思うぜ」

「なるほど切島は尻派か」

「そそそそそんなんじゃねーって!お、男も女も中身が一番大事だろ⁉︎」

硬派な漢の中身を暴いてやろうと、ノリの良い3人はニヨニヨと迫る。

そこに飲み物を買いに行っていた飯田たちが帰ってきた。

「君たち!あまり騒がしくするんじゃないぞ!B組に迷惑がかかる!」

 瀬呂は飯田を「まあまあ」と適当に宥めながら、轟を捕まえて肩を組む。

「そんでクラス1のイケメンボーイ。今クラスで気になる女子誰かって話してんだけど、お前さんは誰か気になる女子いねえの?」

轟が首を傾げる。多分この辺りで話は噛み合ってない。

「いるぞ?」

「マジか⁉︎」「誰⁉︎」

「気になるってんなら黒衣だな(実力的に)」

「お?轟は足派か?」

「足?まあ、黒衣は足(技)すげえよな」

「轟がこの手の話題乗ってくるとは思わなかったぜ…」

「やっぱりイケメンだって男ってことよ」

それから胸派か尻派か足派かで論戦が繰り広げられた。

結果。

「へえ。男は胸が好きと思ってたけど、結構足派もいるんだね」

いる筈のない、聞こえる筈のない声に、びしりと男子たちは固まった。

おそるおそる…振り返れば、背後にいたのはいつの間にか戻ってきていた緑谷と、女子陣だった。

轟、飯田と飲み物を買いに行った帰り、御手洗いに立ち寄って遅れていた緑谷を、芦戸が補習前に男子部屋見に行こうと彼を捕まえたのである。

明らかに面白がっている黒衣を除き、残る女子の視線が軒並み冷たい。

轟の氷結以上の冷たさに、男子達はぶるりと身を震わせるしかなかった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

1-A女子

これだから男子は…!

 

1-A男子

胸派が優勢。足派もそこそこいた。

 




閲覧ありがとうございました!

ちょっと短めでしたが合宿の一幕。
峰田くんの存在がすごく便利…!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。