今回は少し長めです
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翌日。
「補習組、動き止まってるぞ」
合宿3日目ともなれば疲れが出てきたのか、数名動きが鈍ってきた者が現れ始めた。
特に補習組は就寝時間が遅く、寝不足気味のようだ。
「だから言ったろ、キツイって」
相澤から叱咤激励が飛ぶ。
「そういえば相澤先生、もう3日目ですが」
「言ったそばからフラッとくるな」
フラリと汗だくでふらつきながら、緑谷が他の教師は来ないのかと問う。
相澤の回答は否。
特にオールマイトは敵に狙われている可能性もあるため、ここには来ないとのことだ。
「良くも悪くも目立つからこうなるんだあの人は…」
((悪くもの割合でかそう…))
けっと吐き捨てる相澤に、緑谷は残念そうに肩を落とした。
(これ以上面倒なの(プロ)は増えないと)
聞き耳を立てていた一花は不自然に思われないうちに訓練に戻る。
「ねこねこねこ…それより皆!今晩はねえ…クラス対抗肝試しをするよ!」
与えられたアメに少しだけ生徒たちの英気が戻った。
日中の訓練も終わりを迎え、今日のメニューは肉じゃが。
カレーとほぼ材料が被るのは大量購入の定めだ。その方が安い。
「何かお肉の量多くない?」
「お肉たっぷり…牛肉もあるなんて…豪華や…」
「昨日の夜男子が馬鹿やって肉なしになったんだって」
途中、洸汰がやって来て「次はもっと野菜小さくしろ」とだけ言い捨てて行ってしまった。
どうやらカレーは食べてくれたらしい。
洸太はまたひみつきちだろうか、すぐに姿を見せなくなってしまったが、少しだけ歩み寄る姿勢を見せてくれた事に、緑谷と顔を見合わせて微笑む。
マンダレイもそんな良い方向への変化を感じ取ったらしく、どことなく安堵の表情を浮かべていた。
「おい緑谷ぁ…オマエやっぱり黒衣と何かあったよなぁ…ゆうべはお楽しみでしたってかぁ?なぁどうなんだよ?大人キレイ系美少女はやっぱりおへぶっ…‼︎」
「峰田ちゃん、そろそろいい加減にしたほうがいいわ」
「そうだぞ」
はあはあと緑谷に絡んだ峰田は蛙吹にベロビンタを食らっていた。
そして迎えた夜。
「腹も膨れた、皿も洗った!お次は…」
「肝を試す時間だー‼︎」
快哉を上げる芦戸であったが。
「その前に大変心苦しいが、補習連中はこれから俺と補習授業だ」
「ウソだろ⁉︎」
引き摺られて行く補習組を見送りながら、緑谷が「あれ?」と何かに気づいた。
「あれ?峰田くんは?」
「アイツならよそのクラスにまで迷惑かけたんで罰として補習だ」
昨夜、峰田は初日の行動が原因で時間をずらしたにも関わらず、B組女子の入浴を覗こうとして罠にかけられていた。
なお、生徒たちが知る由も無いが、その後図らずも虎(元女性)の入浴を覗こうとして制裁を食らっていたのは蛇足である。
本日の補習授業は追加で、ヒーローとして法令遵守の大切さであったり、市民の模範となる行動をとるべしと行動倫理の内容が盛り込まれている。
主に先に教室に連れてこられている物間と、椅子に縛り付けられて血涙を流している峰田向けの講義だが。
そして肝試しは2人1組。
赤点補習組が5人、罰補習が1人、A組は21人なのでつまりはー
「1人余る…!」
くじで1人余った緑谷を、葉隠とペアになった尾白が慰めていた。
「ううう…ホントに何か出そう…」
「意外だね。耳郎さん、こういうのダメなんだ」
3組目、一花は耳朗と並んで歩く。
「似合わないって思ってんでしょ。知ってるよ、キャラじゃないって事くらい…」
「そんなことないって。耳郎さん、元がカワイイじゃない」
「さらっとそういうコト言っちゃうんだ…てか、黒衣は平気なんだ、こいうの」
「実は初めてなんだよね、肝試しって。ほら私この個性だから」
ああ、と耳朗は納得する。“感情支配“相手では驚かしがいは無いだろうなと。
使用禁止とされていても、子どもが遊びの中で使うのはほとんど見過ごされている。
「こっそりかけようか?」
「いいよ。カッコつかないし…」
道中で脅かし役のB組に耳朗が悲鳴をあげ、適当なおしゃべりで気を紛らわしながら中継地点を過ぎたあたり。
事件は起こった。
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森は炎と黒煙に包まれていた。
一花は途中で合流した青山と共に夜の森を走る。
背には意識のない耳郎を背負っていた。
きな臭い気配と焦げ臭さを感じ取っていたところに齎されたのは、ヴィラン襲来の報であった。
風下に流れて行かず渦を巻くように留まるガスは、襲撃者の個性によるものだろう。明らかに行く道を塞いでいる。
道なりは待伏せを避け、森を突っ切り一路宿泊施設を目指していたところに更なる知らせが届く。
『敵の狙いの一つ判明‼︎生徒の「かっちゃん」!「黒衣さん!」2人はなるべく戦闘を避けて!単独では動かないこと!わかった⁉︎「かっちゃん」!「黒衣さん!」』
「今のって⁉︎」
一花は内心舌打つ。
「どうやら、私も狙われているみたいだね。青山君、耳郎さんを頼めるかい?別行動をしよう」
「しかし、今単独行動はダメだって!」
「彼女が動ける状態ならね」
耐性のある一花はともかく、ペアの耳郎は有毒ガスを吸ってしまい意識不明の状態である。
青山に同行していた八百万が機転を効かせてガスマスクを“創造“してくれたが、早急な手当が必要だ。
八百万はB組の面々を救うべく戻ったのでここにはいない。
「私を狙って襲撃者が来る恐れがある。そうなれば動けない彼女はもちろん、守ることになる君も危ない。最悪、人質にとられる。人質は1人でいいんだ」
つまりは残りの命はいらない。
そうなれば真っ先に切り捨てられるのは行動可能な青山だ。
言外に示唆すれば、青山がゾッと青ざめる。
ふと、一花が周囲の変化に気づいた。
「ガスが晴れた…?」
「え?…本当だ…ガスが晴れた…誰かヴィランを倒したんだ」
戦ってるんだ、と呟く青山を、物音を拾った一花が短く制す。
「誰か来る」
なるべく物音を立てないように茂みに身を潜ませる。
現れたのは所々焼け爛れた継ぎ接ぎされた肌の男と、ラバースーツの男の二人組。
「おい荼毘!無線聞いたか⁉︎テンション上がるぜ!Mr.コンプレスが早くも1人確保だってよ!遅えっつうんだよ!眠くなってきちまったな!」
「あと1人か。まだ見つかってもないんだろ。予定通りにゃいかねえなぁ」
荼毘と呼ばれた継ぎ接ぎ男が無造作に手近の木に触れる。
その掌から高温の蒼白い炎が広がると、瞬く間に木は燃え上がり黒煙を増やした。
「直ぐ見つかるさ!諦めた方が良いな!そういやどうでもいいことだがよ!脳無って奴呼ばなくていいのか⁉︎」
(脳無だと?)
「ああいけねぇ、何の為に戦闘加わんなかったって話だな。死柄木から貰った俺仕様の怪物…1人くらいは殺してるかな」
決定的だった。
USJでの襲撃同様、この件も一切知らされてはいない。
只でさえ女子供は舐められるのだ。二度ならぬ三度まで後ろから撃たれて、ここまでコケにされては面子が立たない。
果たしてどうしてくれようか。
しかしと私怨は一旦据え置き、瞼の裏で余計な感情を掻き消す。
ちらりと横を見るが、青山は悲鳴を堪えるように口を手で押さえ、大量の冷や汗を流してガタガタと震えている。
(このままでは身動きが取れないな)
ちょんと触れれば、びくりと体を跳ねさせる。
一花は青山の頬に手を添えて、こちらを向かせた。
Shhと唇の前に人差し指をあてて優しげに微笑む。
視線が交わり、一花は彼に個性をかけた。
与えたのは“信頼“。
心配はいらない、ここは任せて、信じて安心するといい。
そして落ち着きを取り戻した青山に、一花は身振り手振りで作戦を伝える。
(私が囮として飛び出し気を引く。その間に耳郎さんを連れて逃げろ)
青山は躊躇う視線を向けたが、一花は微笑み、ぽん、と彼の頭を撫でる。
前もうまくできたじゃないか、と。
やがて腹を決めたのか、青山も頷いた。
2人は静かに体勢を整える。
(3、2、1…!)
カウント0で一花は単身茂みから飛び出した。
「!」
「いたぁ!ターゲット!誰だこいつ⁉︎」
狙いは荼毘ーと見せかけ、直前で飛び退き向きを変えラバースーツの男の顎に蹴りを叩き込む。
「ごふっ!」
男はもんどりうって倒れ込んだ。
ヒット&アウェイ、一撃入れて逃げる素振りを見せれば、すかさず荼毘から炎が放たれる。
「逃がさねえよ」
炎が壁となり青山たちとを隔てた。
背後の茂みに耳郎を背負ってタイミングを見計らっていた青山へ、視線だけで行けと伝える。
彼は苦渋の表情で、ザッと背を向けて駆け出した。
(「逃がさない」、直接攻撃はせず退路を断つ。つまりは標的(私)は生捕り前提)
進行方向直線上にターゲットがいては、青山たちへの追撃はできない。
「他も居たのか。囮になってオトモダチを逃すなんて、さすがヒーロー志望」
「よく言うだろ?ヒーローは命を賭してキレイ事実践するお仕事さ」
荼毘と一花はお互い皮肉気に嗤う。
「黒衣一花さんだろ?俺たちは敵連合開闢行動隊。大人しく着いて来てもらえないか?そしたら手荒な真似をしなくて済む」
「へえ。知らない人について行ってはいけません、って一般常識だと思ってた」
「誰でも最初は知らない人さ」
「じゃあ、イケメンなお兄さんの事、よく教えてもらおうかな」
一歩踏み出せば、合わせて一歩下がった荼毘から牽制が入る。
「おっとそれ以上近づくなよ。『目を見た相手を操る』個性なんだろ?」
ひりつく空気のなかで、表面上は口元に笑みすら浮かべたまま、両者が睨み合う。
「…っう」
倒れていた男が呻き声を上げる。目を覚ましたらしい連れに一瞬、荼毘が気を取られた。
その隙を逃さず、一花は茂みの中へ飛びこむ。
「‼︎」
背に熱風。
既に近くに青山たちの気配はない。逃げおおせてくれるだろう。
樹々の生い茂る森を駆け抜ける。
途中飛び移った樹上で追手を撒けたことを確認し、無線イヤホンマイクを装着して腕時計型端末で待機させていた部下を呼び出した。
「私だ」
『ボス⁉︎無事⁉︎』
「問題ない。こちらは現在襲撃を受けているが、相手は敵連合だ、交戦は不要。状況は」
『周囲一帯火の海よ。さっきまでガスも出てたけど、今は晴れてるわ。誰かの個性かしら。ドローン飛ばしてして見てるけど、襲撃者は確認できる範囲では10名。データベースヒットがあるのはマスキュラー、ムーンフィッシュ、マグネ、Mr.コンプレスね。マスキュラーとムーンフィッシュ他1名が学生と交戦後行動不能。マグネ他1名がワイプシ3名と現在交戦中、なんか気持ち悪いの入れた5名が移動中。進行方向から合流地点はボスの現在地からー」
どうやら先ほど青山たちといた場所が合流地点らしい。
「わかった。動けない3名は回収しておけ。他も行動不能者は見つけ次第回収、戦闘は極力避け、学生含めヒーロー連中にはなるべく姿を見られるな」
『了解』
「敵連合か義父からの連絡は」
『今のところ確認できないわ』
「何か動きがあれば1コールを。後でかけなおす」
手短に通信を済ませ、一花は誰に見咎められるでもなく忌々し気に舌打つ。
(厄介な連中を集めてくれたな)
既に何名かは戦闘不能のようだが、前回の有象無象の三下とは比べ物にならない連中だ。
バトルマニアの快楽殺人鬼、控訴棄却の脱獄死刑囚、強殺常習犯に名うての怪盗。
先ほどの2人に見覚え聞き覚えはなかったが、あれも殺傷には躊躇いがないタイプだ。
訓練を受け始めたばかりの学生と彼らを守りながらのプロ6名では、少々荷が勝つ。
(前回と随分やり口を変えてきたな…
それよりも解らないのは連中の狙いだ。
ヒーロー社会の信頼の失墜と混乱を狙っているのは間違いない。
短期間に2度も襲撃を許せば、挙句守るべき生徒に被害がおよべば大ダメージは必須。
(なぜ誘拐?それも標的が私と爆豪…?)
見た目は派手ではあったが、明確な殺傷を目的とした攻撃をしてこなかったあたり、無傷かなるべくそれに近い状態での確保が指示されているとみていいだろう。
しかし荼毘たちの言動から察するに、彼等に一花(葬)の事は伝わっていない。
加えて、推測する動機が正しければ、既に目的は遂げているはずだ。
誘拐なんて手法は手間もかかればリスクも大きい。生徒を奪われれば当然躍起になって追われることになる。
それに片方は実質自陣営なのだから、一言入れれば八百長は容易い。
爆豪だけが対象であれば、密偵を残して様子が窺える。
自分だけならわかる、爆豪だけならわかる。
(どちらも、というのがどうにも腑に落ちない)
思案しながら合流地点と思わしき場所を迂回するように移動する。
道中にガサッ、ザッ、ザッと何かが樹上を移動する音が聞こえ、一花は暗がりに身を潜める。
視界をトレンチコートにシルクハットの男の姿が掠めた。
(アレは、Mr.コンプレスか)
方向からして合流地点へ向かっているのだろう。
彼が通り過ぎるのを待って、再度移動を開始しようとしたその時、頭上を凄まじいスピードで何かが飛んでいった。
「今のは…⁉︎」
見えたのは一瞬ではあるが、それはクラスメイトの3人ー緑谷、障子、轟だった。
一花は苛立ちまぎれに深く嘆息してぐしゃりと髪を乱す。
「無茶をする!」
悪態を吐いて、一花は彼らが飛んで行った方向へと急ぐ。
必要なら躊躇いはしないが、基本、堅気の人間を徒に傷をつけようとは思わない。
ましてヒーローならともかく、ただの学生を死なせるつもりはない。
それに今ここで
合流地点らしき場所には先ほどの二人組と10代半ばと思わしきセーラー服の女、Mr.コンプレスが集まっていた。
それと彼を追ってきた緑谷、轟、障子の姿もある。
一花は気取られないように物影に隠れたまま様子を窺った。
「爆豪は?」
「もちろん」
一時、隙を突いて障子がクラスメイトを取り戻したように思われたが、束の間の勝利はトリックにより覆される。
「2つ?」
「爆豪君以外も良さそうなのがいたんでね。次いでに。そっちは?」
「ターゲットは一度捕捉したんだが、逃げられた。…いいこと思いついた。それ寄越せ」
「あいよ」
荼毘は投げ渡されたコインのような物を受け取ると、雄英生へと向き直る。
緑谷たちの反応から、どうやらあれに常闇も閉じ込められているらしい。
「さて、ヒーロー候補生。取引といこう」
「取引…だって?」
「そう。まあ、簡単な話さ。黒衣一花とこいつを交換しよう」
「「「!!!」」」
その申し出に、緑谷たちは絶句する。
「おいおい、せっかく俺が盗ってきたんだぜ?」
「そういうなよ。ついでのおまけより、狙いの本命の方がいいだろ?」
ふむ、と一花は考える。
(悪くないな)
標的でない常闇では爆豪への人質兼見せしめとして使われるか最悪殺される可能性があるが、一花であればその心配は薄い。
雄英側の目さえなくなってしまえばとれる手段は大幅に増えるし、いざとなれば義父の名前を出せばいい。
爆豪は目を欺くか、上手く煽って協力させるか、最悪責任は事を起こした義兄に被ってもらうとしよう。
「ふざけるな‼︎そんな話誰が…!」
「その話、乗った」
「「「!!!」」」
緑谷たちの対角、敵連合の背後から降って湧いた一花に視線が集中する。
「最近の高校生ってすげーや。全然気配わかんねえ」
はは、と荼毘が乾いた笑いを浮かべる。
「後から失礼。人質交換、その話乗ろうじゃないか」
「ダメだ‼︎黒衣さん‼︎」
「外野は黙っていてくれないか」
緑谷達には一瞥もくれぬまま、制止を跳ね退ける。
彼等をこの交渉に巻き込んではいけない。
「続きを」
「お前本当に高校生?度胸据わってんね」
「よく言われるよ」
数回言葉を往復し、交渉がまとまった。
一花がヴィランの1人の近く、いつでも拘束できる状態になったら常闇を解放。常闇が解放されたのを緑谷達に確認できれば、抵抗せずに拘束を受ける事になった。
「いい子にしててくれよお嬢さん。こっちも、女の子相手にあんまり怪我させるようなことはしたくないんでね」
「お気遣いどうもMr.」
反故にされたら直ちにコンプレスを抑えられるよう間合いを目測する。
「合図から10分経ちました。荼毘、行きますよ」
「ちょうど終わったとこだ。それじゃあ、約束通りこいつは解放するよ。ついでに最終確認だ。“解除“しろ」
パチンとスナップ音がすれば、解放された常闇が宙に投げ出される。
爆豪は、荼毘に首を掴まれたまま。
「問題なし」
「かっちゃん‼︎黒衣さん‼︎」
緑谷の悲鳴じみた叫びを最後に、爆豪と一花は闇に飲み込まれた。
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襲撃後、攫われた2人は別々の場所に運ばれた。
爆豪は弔の居るアジトに、そうしてもう1人はコンプレスの個性から解放され、目隠しをされ何処かへ連れられた。
「ご苦労様。下がっていいよ、黒霧」
「はい先生。それでは」
隣にいた気配が消えるのを待って、自分で目隠しを外す。
「やあ、お帰り」
「只今戻りました、お父様」
案の定、義父がいた。
「ちょっとしたサプライズさ。驚いたかい?」
「ええ、とても。心臓に悪いので三度目は御免被りたいものです」
「サプライズというのは中々難しいね」
そう言って態とらしく肩をすくめる。
「今回は弔が立てた計画なんだ。僕は便乗しただけさ。爆豪勝己君だっけ。弔がね、彼をスカウトしたいと言うんだ」
想定外の義父の言葉に保っていた鉄仮面を崩す。
「人選ミスでは?」
「やっぱりそう思う?」
思うなら止めてやれとは口には出さず。
なぜ自分まで誘拐など面倒な事をと思ったが、要は発注元が違ったが故に起きた混乱であった。
「せっかく弔が自身で考え始めたんだ、邪魔はしたくなくてね。あの子もそろそろ一人立ちする頃合いだと思うんだ」
「…よろしいので?」
「ああ。先生というのは弟子を一人立ちさせるためにいるんだ。離れ時を誤るといつまでも一人前になれないからね。でもあの子はまだ立てるようになったばかりだ。だから君が支えてやって欲しい」
ただ、と義父は諭すように続ける。
「あまり甘やかし過ぎないでくれよ。君は懐に入れた相手をとことん甘やかすところがあるから。なんでもかんでもやってあげてしまうと、弔のためにならないからね。ほどほどに」
革張りの椅子に寄りかかる義父に合わせて、繋がれた幾つもの医療用管が揺れる。
「もちろん、見合うお駄賃はあげるさ。お小遣いも上乗せしよう。この前の事も併せて補填はしようじゃないか。だから機嫌をなおしてくれよ、葬」
求められている答えは一つ。許されている応えも一つ。
葬は恭しく一礼する。
「はい、お父様」
『黒衣一花』はここで終いだ。
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一花/葬
またもや連携なし+予定・計画おじゃんにされておこಠ_ಠ
お父様
サプライズやるにはとことん向かない人。
何やら企んでいる様子(いつものこと)
閲覧ありがとうございました!
オリ主の名前がコロコロ変わりますがご容赦ください。
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