一輪花の咲くまで   作:No.9646

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今回も少し長めです。
pixiv版では2話に分けていましたが、進みが遅いかなと思いひとまとめにしました。


20話 神野の悪夢

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ヴィランによる2度の襲撃事件。

生徒41名の内、有毒ガスによる意識不明の重体14名。

重軽傷者11名。無傷で済んだのは14名だった。

そして行方不明者2名。

他プロヒーロー2名が重傷、1名行方不明。

一方で、襲撃者であるヴィラン側は全員が逃亡。一時確保された者も、いつの間にか姿を消していた。

捉えていた生徒等の証言では、何者かに奪還されたとのこと。現場にいた生徒等との戦闘はなく、回収のみが目的だったと思われた。

完全敗北。

この年の雄英高校1年生夏合宿は、最悪の形で幕を閉じた。

そして2日後ー

緑谷は病院のベッドの上で目を覚ました。

2日間は怪我による高熱と悶絶を繰り返し、何一つ覚えちゃいなかった。

ベットサイドに首を向ければ、母の字で書かれた書き置きと、くしぎりにされたりんごがあった。

それを見て、母の泣く顔が思い起こされる。

ふと、洸汰のことが脳裏に浮かんだ。

「洸汰くん…無事かな…」

それと同時に、まるで母親のように彼を抱きしめていた黒衣の姿も。

『来んな、デク』

そして、爆豪。

(かっちゃん…黒衣さん…)

「あー緑谷‼︎目ェ覚めてんじゃん」

「え?」

ゾロゾロ、ワイワイ、ガヤガヤと入ってきたのは、A組の面々だった。

「迷惑をかけたな、緑谷…」

「ううん…僕の方こそ…A組皆で来てくれたの?」

いや、と委員長の飯田がみんなを代表して、現状を伝えてくれた。

耳郎と葉隠は未だ意識不明、八百万は昨日回復したところで、まだ入院中。

そして残る2名は。

「…15人だよ」

「爆豪と黒衣いねえからな」

人の口から言われると、改めてそれが現実なのだと思い知らされる。

「オールマイトがさ…言ってたんだ。手の届かない場所には救けに行けない…って。だから手の届く範囲は必ず救けるんだって…」

目の前に、手の届くところにいたのに、救けられなかった。

悔しくて、情けなくて。

「体…動かなかった…」

「じゃあ今度は救けよう」

「「「へ⁉︎」」」

唐突な切島の発言。

そして彼から語られた発案は、当然の驚きと反対をかった。

それに轟は共に行くと言う。

「ふざけるのも大概にしたまえ‼︎」

声を荒げる飯田を障子が制止する。

彼の腕もまた、痛々しく包帯で巻かれていた。

悔しいのはわかる、けれども感情で動くべきじゃない。そう諭す障子に青山と常闇が賛同する。

「オールマイトに任せようよ…戦闘許可も解除されてるし…そりゃ、僕も黒衣さんに助けられたけどさ…やれることはやったよ」

青山と、今ここにはいないが耳郎も、黒衣に助けられたらしい。

荼毘たちとかち合って、狙われている彼女が囮になったそうだ。

「青山のいう通りだ…俺が捕まらなければ、黒衣は捕まることはなかったんだろう…助けられてばかりだった俺には強く言えんが…」

普段表情の読めないタイプの常闇だったが、今回ばかりは沈痛な面持ちだった。

彼からすれば、個性を制御できず暴走させた挙句に、自分が捕まって人質に取られたから、自分を救けるために級友の女の子が連れ去られたのだ。

不甲斐なさやるせなさでいっぱいだろう。

「黒衣に助けられたのはお前たちだけじゃねえ」

そう言ったのは轟だった。

「あいつ言ってたろ、ヴィランと交渉するとき外野は黙ってろって。あれは俺たちに判断させない為だったんだと思う」

その場にいた緑谷と障子も聞いてた。

「後々考えてみた。連中の狙いじゃなかった常闇より、黒衣は生かされる確率が高い。どっちか選ばなきゃならねえってんなら、俺らはより危険な常闇を選ばなきゃならなかった。瀬戸際とは言え、仲間助ける為とは言え、他の仲間を売るような真似した奴がヒーローになんかなれるかよ」

「轟…」

「そう、だね…」

黒衣は自分達の誰にもそんな判断はさせなかった。

3人の憤りと混乱が治まらぬ内に、あっさりと自分の身を差し出した。

あまりの即決に、轟が言うような考えになど、後になってからでないと思い至らなかった。

きっとあの場で考えてしまえば、思ってしまえば、実行してしまえば、緑谷たちは自分で自分を許せなかっただろう。

「僕たち、黒衣さんに守られたんだ…」

「だったらさ、礼は返さなきゃ。今度は俺らが救けようぜ」

「切島くん…」

その後すぐに医師の診察が来てしまったため、その場はお開きとなった。

医師から伝えらた身体の状態、特に腕はひどいものだった。

このまま使い続ければ、腕が使えなくなるかも知れない。

ショックを受ける緑谷に、医師は一通の手紙を差し出した。

「君に救けられた人もいる」

それは洸汰からだった。

手紙には辿々しいひらがなで洸汰からの「ごめんなさい」と「ありがとう」が綴られていた。

そして、おねえさんにもお礼を言いたいと。

緑谷は唇を噛む。

覚悟を、決めなきゃならない。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

夜ー

2日間でできる限りの処理を進め、葬は戦闘用の仕事着に着替えていた。

防刃耐火耐冷性能の特殊繊維インナーと体型を隠す防弾ベストの上に、大量生産品の黒いリバーシブルパーカーとカーゴパンツ、改造コンバットブーツに厚手の手袋というミリタリースタイルだ。

ホルターそれぞれには伸縮式の特殊警棒と9㎜拳銃。ナイフを数本。

髪は黒のウィッグ、眼にも黒のカラコンを入れ、フードとマスクで髪と顔半分を隠してしまえば、およそ誘拐された被害者とは悟られない。

警察無線の傍受やハッキングを担う仲間から得た情報では、今夜突入作戦が決行される。

割られているアジトは2カ所。

連合用脳無の倉庫に使っている廃工場と、現在敵連合がいるバー。

既に神野区につながる主要道路には検問がひかれている。

居場所が知られている証拠だ。

世間じゃヴィラン受取係などと揶揄されているが、その実捜査権限と能力のある警察の方が厄介なのだ。

敵連合はあまり情報戦は得意ではないようで、警察・ヒーローたちの動きを把握してはいないらしい。

勝ったと思った時が、最も油断が生まれやすいとよく言うのに。

あちらに今晩踏み込まれることは伝えていない。

向こうが何も言ってこないのだから、意趣返しのつもりでも葬から何か伝えてやることはない。

舐められたままでは沽券、ひいては今後に関わる。

義父からもあまり甘やかすなと釘を刺されているし、その義父も彼等に伝えるつもりはないらしく黙っている。

爆豪はスカウト目的だと言うから、早々危険はないだろう。

バーの様子は把握できている。

もしヒーロー達の突入が間に合わず爆豪が危なそうであれば止めに入るつもりでいる。

名目は今回のクレームでも入れれば、時間は稼げるだろう。

今回の捜査本部が置かれているのは警察庁。

現場と被害者を受けた雄英、さらには監禁場所と思わしき場所が県を跨いでいるうえに事が事だ。合同捜査班が組まれているようだった。

マスコミに囲まれ、昼間からひっきりになし警察車両が出入りし、物物しい雰囲気を醸している。

カモフラージュはされているが、アジト向かいのテナントビルへの出入りも見受けられると報告が上がっている。

何より、ヒーロー連中はどうしたって目立つ。それこそ、良くも悪くも。

2カ所同時制圧のために錚々たる顔ぶれが集まっているようだ。

彼等の相手は義父がしてくれる。

葬は一通りの準備を終え、義父を迎えにドアを叩く。

「お父様、お時間です」

「おや?もうそんな時間かい?」

シャワーを浴びて出てきた義父へ、葬は如才なくその身支度を手伝う。

身体を拭き清め、彼の為に誂えられた衣服を整える。

糊の効いたオーダーシャツ、シワ一つない仕立ての良い黒のダークスーツ、磨き上げられた黒革の靴。

そして邪悪さを凝縮したような、髑髏を模した金属質の漆黒の仮面。

オールマイトに破れ顔を失い、多くの個性を失い、多くを奪ったーそれから6年。

黒を纏った裏社会を支配する悪の帝王ーAFOが今再び、その姿を表舞台へ表そうとしていた。

コツリと革靴が床を鳴らす。

「せっかくの晴れ舞台だ。派手に行こう」

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既に夜10時を回った頃。

葬は脳無倉庫周辺の様子を覗っていた。

待機させている者たちを残し、見張に気取られないよう注意を払いながら、近場の建物から辺りを観察する。

装着した無線イヤホンから流れてくるのは、雄英の謝罪会見だ。

2度目の襲撃を許し、生徒まで拉致された雄英に、マスコミは攻撃的だった。

一人も死ななかったのは結果としては上々だろうに。

『攫われた爆豪くんについても同じ事が言えますか?黒衣さんはともかく、爆豪くんは体育祭優勝、ヘドロ事件では強力なヴィランに単身抵抗を続け、経歴こそタフなヒーロー性を感じさせますが、反面決勝で見せた粗暴さや表彰式に至るまでの態度など精神面の不安定さも散見されています。もしそこに目をつけた上での拉致だとしたら?言葉巧みに彼を勾引かし、悪の道に染まってしまったら?未来があると言い切れる根拠をお聞かせ下さい』

(私はともかくって…)

粗探しをしたいだけ、批判したいだけ、数字が欲しいだけのマスコミの的外れな指摘に、失笑が込み上げる。

凶暴な人間を“矯正“するのがヒーロー活動というベストジーニストに1週間扱かれても何の変化もなかった爆豪を1日2日で懐柔とは。

できなくはないが、あれを引き摺り込むなら葬の個性か、家族でも人質に手を汚させて後戻りできなくさせた方が手っ取り早い。

それを“説得“しようとしている義兄も、もう少し人を見る目を養った方がいいと思われる。

これに関しては義父も同意見で、「ちょっと箱入りに育てすぎたかな」とコメントしていた。

会見を聞き流しながら周囲を警戒していると、倉庫前に不自然な5人組を見つけた。

5人は細い壁と壁の間に入って行く。

よくよく見れば、それは変装しているとは言え、見知った顔だった。

(あれは…緑谷?八百万と、飯田、切島………轟?)

轟が若干怪しいが、他4人は間違いないだろう。

(2人がチンピラ、1人がホステス、1人がホスト、1人が黒服(ボーイ)?どんな組合せだ?八百万にホステスをやらせるなら、他の男連中はチンピラ役で兄貴分とその情婦、他は舎弟でいいのでは?もしくは男連中ホストで八百万は客か…どっちにしろ飯田邪魔だな)

今一コンセプトが解らず首を傾げるが、そんなことをしている場合ではない。

肩車をして様子を窺っているようだが位置が悪い。あの場所は危険だ。

特に緑谷。

葬はビルと非常階段伝いに音も無く壁の上へ降り立つ。

「今晩は。君たち、こんな所で何をしているのかな?」

「「「「!!!!」」」」

5人はそれぞれ驚愕の表情を浮かべた。

「パトロール中に壁の間に入っていくのが見えたのが来てみたけれど…」

壁の上を危なげなく渡り進み、ちらりと切島の手にある暗視鏡へ視線を向ける。

「もしかして君たちも肝試しかい?最近よく見かけるけど、ダメだよ、勝手に私有地に入ったら」

1番距離の近い切島へ、軽く個性をかけて受容させれば、残る面々もつられてその嘘に乗りかかった。

「そうなんです!肝試しです!」

「SNSで話題になってて!」

「すみません!」

「ヒーローのお世話になるような事は何も!」

一行は一見して葬を黒衣ともヴィランと認識することはできなかった。

マスクで声はくぐもっていたし、髪色も目の色も変えている。

悪意も敵意もなく、態度は堂々且つ悠然としていたし、あまりに自然に、普通に声をかけてきた。

彼等自身ギミックやヒーローコスチュームに慣れ親しんでいる立場とあって、しかも意図的に「パトロール中」という言葉を使ったミリタリー風の装いの葬を、彼等は警邏中のヒーローと勘違いしたのである。

させた、と言う方が正しいか。

葬はそれらしく「仕方ないな」と嘆息する。

「今日のところは見逃すよ。さあ、ここは危ないから、早く帰りなさい。このままいけば抜けられる」

「はい…すみません」

5人は項垂れて狭い隙間を少し進む。

轟音が響いた。

「本当に派手にやったな」

一瞬で、眼前一帯は崩壊していた。

建物から地面まで抉られたように無くなっている。

葬は爆風に煽られる程度で済んだが、範囲内にあった物は軒並み吹き飛んでいた。

5人は壁に守られとりあえずは無事だ。

Mt.レディが現れて建物を両断した時はヒーローが既に動いていたことに安心していたが、

今はAFOの気配にあてられたのか、真っ青になって震えている。

バシャリ、バシャ、バシャと水音がして、バーにいた面々が転送されてくる。

その中には爆豪もいた。

それから1分もしない内にオールマイトが到着し、AFOとのぶつかり合いでまた風圧が巻き起こる。

立ち向かうオールマイトを、AFOが吹き飛ばした。

凄まじい勢いで押し返されたオールマイトはいくつものビルに叩きつけられ、貫通しながら吹き飛ばされて行く。

さて、とホルスターから銃を抜き、通信を入れる。

「行くぞ」

「待ってました!」

喜色を滲ませ、残っていた壁をぶち破って飛び出したのはマスキュラーだ。

後ろにはマスタード、ムーンフィッシュ。

5人ー特に緑谷は酷く愕然としていた。

「あいつヴィラン⁉︎」

切島の驚嘆する声を無視して、葬は3人を引き連れ戦場へ躍り出る。

「マスキュラーは弔を連れて離脱。マスタードはマスキュラーと共に、弔が抵抗するようならガスで無力化を。間違っても5本指で触れられるな。ムーンフィッシュは私と共に2人を援護」

「おうよ!」「わかってる」「はぁい」

AFOとオールマイトの凄まじい攻防に関与できず立ち尽くす弔の元へ、3人が駆けつける。

「お前ら…」

「ようリーダー、詳しい話は後にしようぜ。とりあえず逃げんぞ」

「待て、ダメだ…先生…あんたそんな身体じゃ…」

「ごめんリーダー」

弔に、マスタードが即効性の弱神経毒ガスを纏わせる。

「⁉︎」

動けなくなった弔がカクリと地に手をつき、それをマスキュラーが担ぎ上げた。

そこに、小柄な体躯の老練なヒーローが迫る。

「逃すか‼︎」

「あああああ邪魔するなああ‼︎」

「‼︎」

ムーンフィッシュの歯刃を躱したグラントリノへすかさず、マスキュラーが空いている方の剛腕を振るうが、避けられた。

「速えな爺さん!また今度遊んでくれや!」

強肩に担がれた弔が、動かない腕を必死に伸ばす。

「ま、て…はな、せ…先、生‼︎」

ワープゲートへ飛び込む3人へ再度グラントリノが追い縋った。

パンッとグラントリノの軌道上、弔たちスレスレへ牽制を一発入れる。

初めから荒事予定。気を逸らせる狙いもあって、サイレンサーはなしだ。

「ちっ‼︎良い腕してやがる‼︎」

本命に逃げられたグラントリノが狙いをこちらに変えて飛来する。

その合間にムーンフィッシュに、残る面々へ撤退命令を伝えさせる。

立て続けに三発。軌道が逸れた隙間に警棒を展開。

特殊合金製のそれで繰り出される蹴りを防御、個性で補助効果をかけつつ噴出されるジェットを回避し、銃を牽制に攻防すること数手。

(流石に、早いな…!)

(こいつなんつー反応速度してんだ…!)

そこに聞こえた、連続した爆発音。

続けて鈍い衝突音がして、頭上に影が差す。

Mt.レディの巨体が倒れ込んで来た。

「「‼︎」」

お互い飛び退き、分断される。

爆豪は切島たちが奪還、残る2人も脱出。

好機だ。

「敵連合!今の内に撤退‼︎急げ!」

「言われなくても‼︎」

残るメンバーも次々にワープゲートへ向かう。

「待て‼︎」

突如、グラントリノがごぼりと黒い泥を吐いた。

「すみません‼︎」

強制的に転送したグラントリノを盾にしたらしい。

オールマイトは仲間を殴りつけてしまっていた。

衝撃を跳ね返されたか、彼の腕はボロボロである。

その隙に、葬はAFOのもとへ駆けつけた。

「撤退完了しました」

「ご苦労さま」

「新手か⁉︎」

振り向きざまにAFOがオールマイトをいなす。

「オイオイ、不粋な真似をするなよオールマイト。親子の語らいを邪魔するなんて」

「親…子⁉︎」

信じられないとばかりに、オールマイトは驚愕に目を見開く。

「16になった娘でね。とても優秀でカワイイ子なんだ」

「親なら子どもに恥じない生き方をしたらどうだ‼︎子どもまで巻き込んで‼︎自首なら絶賛受付中だ‼︎」

「それは遠慮しておくよ」

何度目かの爆風を生み出した義父が、葬へ振り返る事なく声をかける。

「弔を頼んだよ」

「はい、お父様ー御武運を」

葬は1人ワープゲートへと飛び込んだ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「全員、いるな」

ワープゲートを潜れば、先に逃した敵連合の面々が揃っていた。

他のメンバーに大きな怪我がない事を確認するが、昏倒させられた荼毘と黒霧以外は問題なさそうだ。

「起きろ」

葬は足元に転がる黒霧の腹を爪先で蹴飛ばす。

「うぐっ…」

それで目を覚ました黒霧の腹を踏み、そのまま胸ぐらを掴み上げ上体を起こさせれば、さらにかかった圧に苦しげな呻き声が漏れた。

「おはよう能無野郎。何か事を起こす時は連携しろと伝えおいたはずなんだけどね?覚える(アタマ)もないのか?」

「ううっ…」

「ちょっと⁉︎さっきの仮面男もだけど!あんた味方って事でいいのよね⁉︎」

「自己紹介が未だだったね」

フードとマスクと外し、黒髪のウイッグを毟り取ると、連合の面々が眼を剥いた。

出てきたのは、カラコンで目の色こそ違えど、数日前に爆豪と共に誘拐してきた雄英生の顔だったのだ。

「改めて、AFO直属配下にして継子、黒衣一花こと死柄木葬。そこにいる弔の義理の妹さ。尤も、こうしてお互いちゃんと顔を合わせるのは初めてだけれど」

「こいつは驚いた。お仲間だったとはね」

「全然気付かなかったぜ!バレバレだぜ!」

「わあ!カアイイ女の子!私、トガヒミコ!よろしくね!」

「ああ、よろしく」

直後トゥワイスが「あれ?ってかもしかして俺、蹴られ損じゃね?得したな!」と首を捻っていたが、答える者はいなかった。

「死柄木葬、今回に関しては…」

「聞いている。お父様の指示だろう」

「聞いてるならなんで私今踏まれたんでしょう…」

「保須の分だと思っておけ。そうだろう、ステイン」

呼び掛ければ、暗がりから外の警備を任せていたステインが姿を表す。

「ステ様⁉︎」「ほほほ本物⁉︎」「嘘⁉︎捕まったんじゃなかったの⁉︎」

JKのトガと格好からしてリスペクトしているスピナーがご本人様登場に興奮する。

「私の所は福利厚生(フォロー)も充実させているんだ。首尾は」

「ハァ…問題無い」

それだけ答えて、ステインの視線は一点モニターへ向けられる。

モニターでは、中継ヘリが半壊滅状態の神野の惨状と、AFOとオールマイトの激突を報じていた。

「化け物だね、どっちも。逃げて正解」

両者攻撃の応酬で地面は割れ、瓦礫が飛び、土煙が上がる。

その度にオールマイトは血を流し、彼の剛腕がAFOの仮面を砕く。

やがて繰り出された大きな一撃。

後ろを庇ったのか、攻撃を相殺したオールマイトの姿が映し出される。

その姿は、かつてUSJで見た彼の正体。

痩せ細った骨と皮だけの、まるで骸骨のようなそれだった。

報道を通して驚嘆が伝わる。

「なあオイ!これ勝てんじゃねえの‼︎ダメだな!負ける‼︎」

「平和の象徴オールマイトもこれでお終いかね」

否と発したのはどちらが先か。

「「勝つのはオールマイトだ」」

葬とステインの言葉が重なる。

「アンタたちどっちの味方なのよ」

呆れと困惑の混じったマグネに、ステインは何も返さない。一瞥すらくれず映し出される映像を凝視していた。

「義父の状態もあまり良いとは言えなくてね。試合に負けて勝負に勝つ。オールマイトは勝つだろうが、もう前線では戦えないだろうね。まあ、悪の帝王の引退試合だ。平和の象徴との相打ちなら次代への餞としても申し分ないだろう」

葬は画面を食い入るように見入っている弔へ目をやる。

ヘリが煽られ中継が乱れるほどの爆風。

土煙が晴れた後、映し出されたのは大きく陥没した地面に臥すAFO。

そして高々と左腕を天に突き上げるオールマイトー勝利のスタンディング。

液晶の向こうの英雄が、指差す。

平和の象徴と呼ばれた男の声が、静かに告げる。

『次は君だ』

かくして、後に『神野の悪夢』と呼ばれる惨劇は終わりを迎えた。

オールマイトの決死の活躍により、元凶となったヴィランの捕獲、誘拐事件の被害者少年1名を救助に成功。

一方、実行犯である敵連合の捕獲失敗、メンバー全員が逃走。

神野区は半壊、建物の崩壊・倒壊多数、それに伴う大量の死傷者行方不明者は一夜明けてもその正確な数は知れず。

その後も懸命な捜索救助活動がなされるが、72時間を超えてもなお、誘拐被害者残る1名ー黒衣一花は依然として生死不明のまま。

終ぞ発見されることはなかった。

 

ーーーーーーーーーーーー

敵連合

全員集合‼︎

 

オールマイト

お前子どもいたの⁉︎と本気で驚いた。

けれどそれ以上に驚愕の事実が。

お師匠の、孫…?

 

AFO

良くて逃亡成功、悪くて相討ち。

予定調和の退場劇を演じた主演。




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