大変ありがたいことに13日も日間入りました。
総合93位、二次74位でした!
今回は幕間回になります。
後半というか3分の2くらいは主人公以外のオリキャラが出張ります。
試しに地の文とセリフの間を空けてみました。
読みづらい・書きづらい等あれば元に戻します。
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時は少し遡る。
寮生活となり生徒たちも新たな生活に馴染み始めた頃、A組の全員が寮の談話室に集められた。
「全員揃ってるな」
「はい!」
集合をかけた相澤に、委員長の飯田が返事をする。
「これから話すことは口外禁止だ」
ぴりりと緊張感が走った。
寮生活のアレコレや、今後の授業や校外活動についての伝達かと予想していた生徒たちもお喋りをやめる。
「…伝えなきゃならないのは、黒衣のことだ」
「「「⁉︎」」」
「黒衣さん見つかったんですか⁉︎」「無事なんですよね⁉︎」「怪我とかしてないですよね⁉︎」
「落ち着けお前ら」
口々に質問を迫る生徒たち。
そのどれにも相澤は答えようとはせず、徐々に不安がー最悪が頭を過ぎる。
しかし、返された回答はそれ以上のものだった。
「黒衣は見つかっていない。そもそも、黒衣一花は偽名だった。あいつは通称死柄木葬…AFOの義子として奴に加担している」
「「「は?」」」
何を言われたのか、直ぐには理解できなかった。
まさか、そんな。
彼女が、クラスメイトがヴィランだなんて。
それもあのAFOの?
神野で見たあの邪悪で不気味な威圧感を思い出し、緑谷たちはゾッと背を粟立てる。
「マジかよ…なあ、先生!なんかの間違いじゃねえのかよ⁉︎なんかの個性で操られてるとかさぁ⁉︎」
「その線も視野に入れているが─」
相澤から語られた犯罪被害者が加害者へと転じたその遍歴は、全てではないものの、あまりに酷く悍ましいものだった。
「「………」」
誰もが唖然と声を失っていた。
まるで知らない世界の出来事のようであった。
騙していたのか、とか、許せない、とか、そんな次元ではなかった。
そんな目にあって、そんな傷を負って、彼女は平気な顔をしていたのか。
全てを覆い隠して、笑顔の仮面を被って。
生きるために、生かすためにヴィランになった。
青山たちが顔色を悪くし、憤りに切島が拳を打つ。
「人質…どんだけ汚え野郎なんだよ…!」
たった数ヶ月ではあるが、それでも、彼女はこのクラスの一員だったはずだ。
自分たちが、相澤やオールマイトたちがいるのに、それでも手を伸ばせなかったのか。
「助けて」と言うこともできずに。
そんな、それではあまりにも。
「相澤先生」
緑谷が相澤に訊ねる。
「黒衣さんは、今どこに?」
「目下捜索中だ」
「多分僕たちは、神野で彼女に会っています」
過ったのは、工場裏で帰るように促したヒーローを装ったヴィラン。
「あの時の…!」「あいつが…!」
飯田たちも思い出したようだ。
「あの時、僕たちを殺そうと思えば簡単だったはずなんです」
緑谷たちは狭い壁と壁の間に挟まれ、ろくに身動きも取れなかった。加えて、相手は銃も持っていたし、近くにマスキュラーやムーンフィッシュまで控えさせていた。
「だけど、黒衣さんは何もせずに僕たちに「危ないから帰れ」と。AFOや連合にも僕たちがいることは伝えずにいてくれました。結果、僕たちはかっちゃんを連れて逃げられた」
「…!」
爆豪は初耳だったのか、驚愕の表情を浮かべていた。
どういう意図があったのかはわからない。単に報告するまでもない些事と下に見られただけの可能性も捨てきれない。
「僕は、黒衣さんは僕たちを逃がしてくれたんだと、助けてくれようとしたんだと信じたい。だから、今度はこっちの番だと思うんです」
緑谷はまっすぐに相澤を見つめる。彼に引かれるように、他の生徒たちも。
「お前たちがそうでも、向こうはそう思っちゃいないかもしれないぞ。それに、あいつの傘下にはヒーロー殺しもいる。奴は搬送された病院から姿を眩まして逃走中だ。その手引きをした可能性もある」
「なっ⁉︎」
飯田や、緑谷と轟もまた驚きに目を見開く。
ヒーロー殺しステインに、飯田は兄のヒーロー生命を絶たれた。
「飯田くん…」
気遣わしげな緑谷の呼びかけに、飯田はそっと首を横に振るう。
その瞳には、以前のような闇い憎悪はない。
「俺もあの時あの場にいた。君が助けられたと言うのなら、俺もその1人だ。もし彼女がヒーロー殺しの逃走に協力したとしても、それはそれ、これはこれとして、ヒーローを志す者として、クラスメイトとして、友人として!協力させてもらう!」
家族を、尊敬する兄を傷つけられ、その怒りに暴走したこともある。当然、思うところがないわけはない。
それでも彼は飲み込んで、今度こそヒーローとして間違いはしないと、眼には強い光を灯していた。
「だったら俺もだ」
「俺もだな!」「私もですね」
轟、切島、八百万。あの時神野に赴いた者たちも、次々に賛同を示す。
「俺は救けられた何て思っちゃいねぇ」
爆豪が至極不機嫌に言い放つ。
「だがあのヴィラン女には借りがある。八百長仕組んだってんなら一発ぶち込まにゃ気が済まねえ。体育際ん時だって決着つけてねえんだ、とっ捕まえて頭下げさせて今度こそどっちが上か教えてやらぁ…!」
「八百長は考えにくい」
「ああ?」
爆豪に異を唱えたのは常闇だった。
「あの襲撃に関与していたとしたら、俺と自身を交換する必要はなかったはずだ。わざと捕まって3人とも連れ去ればよかった。青山や耳郎も逃す必要はなかった。黒衣が連合の仲間だとしても、不自然なことが多い」
「では、その件も直接聞くとしよう!」
「そうだね!」
相澤は黙って生徒たちの様子を見ていた。
緑谷はクラスの中では率先して目立つ位置にはいない。飯田のように委員長気質だとか、轟や爆豪のように一つ飛び抜けているわけでもない。
ただ、自然と彼の周りには人が集まり、皆が彼に引っ張られる。そういう存在だった。
「確かに、どんな理由であれ、やったことは消えないのかもしれない。でも、そうするしかなかった状況にいる友達を、救けが必要な人を見てみぬふり何てしたくないんです。しちゃいけない。ヒーローは、困っている人を見捨てない」
お節介はヒーローの本質。
「僕は、僕らは彼女を救けたい」
しばらくの間、相澤は何も言わなかった。
「………」
やがて深い息を吐く。
「…プロも警察も、死柄木葬は保護する方針で動いてる。もし万が一出会した時はくれぐれも慎重に動け」
「「「はい!!」」」
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ヒーロー活動仮許可免許取得試験当日。
会場となる多古場競技場には、ヒーローを志す受験生が数多くひしめいていた。
その中に雄英高校のバスが到着する。
他校の2年、3年生ら上級生に混じり1年生で試験に挑むことになった雄英生たちは、そわそわと緊張で落ち着かない気持ちを払拭するため円陣を組んだ。
「せーのっ、Puls…「Ultra‼︎」
そこに割り込んだのは、他校の生徒であった。
「おい夜嵐、何やってんだ」
「勝手に他所様の円陣に加わるのは良くないよ、イナサ」
嗜められた男子生徒は素直に謝罪した。
それは豪快に。額が割れる勢いで。
制帽に制服。
東の雄英、西の士傑と並び称されるヒーロー養成校最高峰双翼その一翼である。
「あ、血」
「行くぞ。獅郎、貴様のクラスメイトだろう。きちんと面倒を見ておけ」
「あ?んなもんアンタが見りゃ良いじゃねえか。先輩だろ」
「先輩扱いするならそれなりの敬意を示せ!まったく貴様という奴は…!」
「肉倉、野荒、ケンカはだめよ」
毛むくじゃらの生徒が静かに止める。
「しかし毛腹こいつが「っス」
毛原という先輩生徒には口は悪いが大人しく従うあたり、肉倉と呼ばれる生徒の立ち位置が透けて見えた。
「士傑にも爆豪みたいなタイプいんだな。お堅い学校かと思ってたぜ」
自由と最先端を謳い文句にする雄英とは異なり、士傑は規律と伝統を重んじる学校と謂れているが、何事にも例外はあるらしい。
例外、否、例年と異なるのは、そればかりではなかった。
ステイン動画を発端にした世論の流動、オールマイト引退によるヴィランの活性化諸々を受け、仮免試験の合否判定規定が、大幅に改訂されたのである。
合格率50%と言われていた仮免試験が、1次試験で先着100名。受験者数1500人を超える中、僅か5%の狭き門となったのである。
一次試験を通過した焦凍は待機場所へと移動した。
中には既に通過者がそこそこいた。
ふと、その中の大柄な士傑生ー夜嵐イナサと目が合う。
なぜか、その目には敵意があった。
僅かに視線が逸れたかと思えば、夜嵐は一転ぱっと和かになってぶんぶんと手を振る。
「野荒!」
振り返れば直ぐ後ろに別の士傑生が立っていた。
細身に見えるが、それは無駄な部分がないからだ。
獣のような柔靭さ。
その証拠とばかりに焦茶の立髪のような髪をひとつに括った頭上には丸みを帯びた獣の耳がある。
ゆらゆらと揺れる尾は尾白のそれより遥かに細くしなやかで、先端に房があった。
三白眼がちなのはその瞳孔が小さくなっているからか。
「後ろ詰まってんだ。退いてくれねえか」
「ああ、わりぃ」
轟は素直に退いて道を譲る。出入り口の前に立ち止まっているのは確かに邪魔だろう。
切島は爆豪みたいな奴と言っていたが、爆豪よりも話は通じそうであった。あいつなら相手が他校生だろうと「邪魔だ。どけ」だろう。
夜嵐は友人先輩と合流できて、そちらとデカい声でおしゃべりを始めた。
焦凍がその声のでかい男を、こんなうるせえ奴を、夜嵐イナサを思い出したのは、ギャングオルカによって動けなくされた時だった。
夜嵐とは、雄英の推薦入試で会っていた。
無駄に張り合って連携ゼロでお互いの邪魔をして。散々な醜態を見せてしまった。
ギャングオルカが、まだ僅かに個性を使える夜嵐に視線を向ける。
そこに飛び込んで来る影があった。
高い跳躍から、落下の速度と重力を乗せた蹴撃を見舞ったのは、先ほどの士傑生ー野荒だった。
振り払われた野荒は獣じみた動きで難なく着地する。
「1人増えたところで同じこと!」
ギャングオルカが超音波を放とうする。
野荒はスゥと息を吸い込む。
獅子の咆哮は、敵対個体への威嚇と縄張りの誇示。
空気と弱者を震わせ己が存在を知らしめるそれは、サバンナにおいては最大約8km先にまで届くという。
次の瞬間、爆音が轟いた。
ギャングオルカの超音波に対して、重低音がぶつかる。
「
「シャチョー!試験中試験中!」
「む!」
ギャングオルカ。今期ビルボードチャート10位。ヴィランっぽい見た目ヒーローランキング3位の彼は、実のところ子ども好き、本当は若者を褒めてやりたいタイプである。だがしかしキャラと立場がそれを許さない。
ついでに、少しばかり系統は違うが個性“ライオン“のライオンヒーローシシドとはライバルである。
「野荒!」
麻痺した身体から絞り出した夜嵐の声に、野荒は後ろへ大きく跳ぶ。
眼前のギャングオルカを巨大な風で巻き上げられた炎の渦が包み込んだ。
避難所に近づかせまいと轟が焚べた炎を使い、夜嵐が風で閉じ込める。
乾燥に弱いギャングオルカを助け出そうと向かって来る敵役を氷壁で阻み、残りを野荒が蹴散らして行く。
応援も駆けつけたが、轟と夜嵐に出来たのはそこまでだった。
「で?次は?」
次など、ない。
が、しかし。
「2人から離れてください!」
「次は魚料理の番だろ」
地に伏せる轟と夜嵐に代わり、上から緑谷が、下から野荒がギャングオルカへと飛びかかる。
「シャチは哺乳類だ!」
当然煽り代りの軽口であるし、それ以前に彼は人間である。
雄英と緑谷と士傑の野荒がギャングオルカと対峙するーそこでブザーがなった。
2次試験、終了である。
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激動の試験も終え、会場の内外には悲喜交々の学生たち。
そんな人混みの中を、少女は誰に気に留められる事もなくすいすいと進んでいた。
気配を消すのは慣れている。
捕まるのを恐れ、ずうっとそうして生きてきた。
なのに。
「現見先輩」
「え?」
角を曲った人気のない所で腕を掴まれた。
振り返れば、それは同じ制帽を被った、士傑生の野荒獅郎であった。
腕を引かれた事で、バランスを崩す。
「あおっと、すんません」
謝罪の言葉のはずなのに、その声音は酷く冷たい。
獅郎は支えるのにケミィを引き寄せ、耳元に顔を近づけ低く囁く。
「本物どうした?」
その瞳孔は丸く大きく開いている。
「テメエ、現見先輩じゃねえだろ」
個性“ライオン”の獅郎は常人よりもずっと感覚が鋭い。
先ほどの2次試験でも、戦闘に加わるまではその嗅覚聴覚を活かして要救助者の発見に貢献していたのだ。
彼は目の前の人物が自身の知っている現見ケミィでないことを感じ取っていた。
気配、歩き方、動き、何よりーその臭い。
嗅ぎ慣れた、血の臭いだ。
百獣の王、肉食獣の最を冠する“ライオン“の個性の影響か、獅郎の人格が好むと好まざるとに関わらず、沸るのだ。
過去にはその特性を面白がられて見せ物にされた事もある。共に生きた肉塊に牙を突き立てた感触は忘れてなどいない。
故に分かるのだ。縄張りに知らない
泳がせてみれば、仮免試験が終わったこのタイミングで離れようとした。
つまりは今日を狙って何かしらの目的を果たした、あるいは切り上げたということだ。
「下手くそな芝居しやがって。テメエがどこの犬で、目的が何かなんざ興味ねえが1つだけ答えろ。本物どうした?」
grrr…と威嚇音を鳴らし掴んだ利腕をぎりりと締め上げる。
気配の消し方や見つかりにくい視点への移動術は確かに大したものである。
しかし、2番目に長くあの地獄を生き残った彼にとっては十分に狩れる相手だ。
標的が自身や自身に連なる者達でない事は判っている。
こちらに向ける視線が、せいぜい女子生徒が自分に向ける見てくれへの好意と興味程度のものでしかないからだ。
もし仮に標的が
「素直に答えんなら見逃してやる」
獅郎にとって、夜嵐やケミィたちは縄張りの中にいる別種の生き物だ。
警戒はするが追い払ってお終いである。
安否くらい確認しておいてやろうというのは単にそれなりに面識のある相手だからだ。
あと死んでいた時に疑いをかけられない為の根回し。
ケミィの姿をした
「バレちゃった」
抑えていない方の腕が動く。その手にはナイフが握られていた。
動体視力と反射神経にモノを言わせ、獅郎はその手をもう片方で掴み取ると両腕を抑えたまま壁に押し付ける。
高校生の男女、傍から見たら壁ドンである。
「女の子に乱暴したらダメですよ?」
「
ピクリと獅郎の耳が動く。
後ろに向ければ、こちらに近づいてくる複数人の足音と声を拾った。
獅郎は舌打つ。
このままこの余所者を集まっているヒーロー連中に突き出すのは容易い。
しかし目立つのは避けたい。
態々学校内での接触を避け、カメラのない場所を狙ったのだ。人に見られるのは無しだ。
獅郎は侵入者を突き飛ばし、己も反対に距離をとる。
「失せろ」
隙は見せずに背を向ける。
侵入者は僅かに思案したが、直ぐに気配を薄めた。
「ちゃんと生きてますよ」
それだけ言い置いて。
獅郎は何事もなかったかのように歩き出す。
通りすがった学生からは制帽から「士傑だ」と視線を投げられた。
獅郎は念の為に報告しておくかと携帯を取り出す。
電話をかける先は己の恩人であり大切な家族であり、全てを捧げると決めた相手。
自分たちを養うための金を稼ぐ仕事に、まだ一緒に連れて行ってはもらえない。
こちらは首輪どころかハーネスを着けているというのに。
西の士傑と謳われるヒーロー養成校の入ったのは、将来彼女の役に立つ為、彼女を守るのに役立てるヒーロー免許を取る為だ。
万が一否億が一、彼女にもしものことがあって己が生き残るようなことがあれば、次は己が背負うのだ。
社会的信用が高い職業なので施設の支援者にもなれる。諸々の申請も通り易い。
主人と定めた者を守る為、主人が守ると定めたモノを守る為、その為の牙と爪は研いでおかねばならない。
偽装転送されている番号は数コール鳴った後に繋がった。
尻尾がゆらりと揺れる。
「忙しいのに悪ぃ。ちょっといいか?」
『どうした?』
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1-A
情報源×2とニアミス
野荒獅郎(元No.46)
夜嵐と同じクラスで出席番号と席が前後なアラシコンビ。
お留守番が不満なネコチャン。
ケミィ先輩(?)
壁ドン(物騒)されちゃいました!
獅郎くんもちょっとカッコいいなぁ
あ!でも好きなのは出久くんだからね!
お肉先輩
端的に言ってなめられている。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
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後半は改稿版で追加修正した部分です。
No′sから46の出番が増えました。
pixiv版では別会場受験でしたが、一緒にしてみました。
ヒーロー名は決めてません(笑)
チウチウどころかモグモグさせられたタイプ。
トガちゃんとオトモダチになるバージョン書いてたんですが書き直しました。
都合により次回は水曜更新予定です。