一輪花の咲くまで   作:No.9646

28 / 86

閲覧・お気に入り・評価・感想・ここすき等ありがとうございます!

前回、行間を開け忘れていましたので後日修正します。

※warning
次回一部原作キャラに対して厳しめの表現が含まれています。



28話 ヴィランアカデミア②

 

────────

後日、ドクターとの連絡が取れ、落合う約束の日が来た。

用心深いドクターは大人数に居場所を知られることを嫌がり、日時を指定され“転送“の個性で赴くことになったのだが。

 

「ゲホッ、ごほッ…!」

「くさい」

「はぁ…何で私まで…!」

 

場所を知っているのに巻き込まれた葬は口の中に残る匂いを吐き出しながら毒吐いた。

転送された先には、床には無数の配管が這い、大型の機材が所狭しと置かれていた。

そしてガラスに閉じ込めたれた液体のなかに浮かぶのは、黒い人型の物体。

 

「脳無…?これまでのと少し違う…」

「ほほう!わかるのか差異が‼︎」

 

荼毘の呟きに、乱雑に積まれ床にも散らばる資料に囲まれた小柄でずんぐりとした人影が振り向きながら唾を飛ばしてスーパー脳無『最上位』について熱弁を振るう。

 

「さて、死柄木兄妹以外は初めましてかな?どこかで会っているかもな。AFOの側近、氏子達磨じゃ。今適当につけた名じゃ。まあ、ドクターと呼べば良かろう」

 

ドクターは自走座椅子に腰掛けたまま、協力を求める弔に問いかける。

己の命も技術も脳無も全てAFOのもの。弔はそのおこぼれを預かっていたに過ぎない。

 

「何も為していない二十歳そこらの社会の塵がワシに何を見せてくれるんじゃ?死柄木弔。今のおまえさんでは妹分以下じゃ。裏社会の連中の中にはお前さんじゃなく葬の方を担ぎ上げようと考えてる者どももおる」

 

視線が一斉に葬に向く。

 

「そういう動きがあるのは把握している。義父の後継は義兄だと断ってはいるけどね。私はあくまで兄さんの補佐であり予備だ。お父様の遺したものを管理して兄さんが使えるように。万が一兄さんが失敗した場合、次までの繋ぎ。その為に私がいる」

「して、どうなんじゃ?」

 

弔の答えは「一旦全部壊そう」だった。

空っぽだった心、断片的な記憶のかけら、無尽蔵に噴き出す怒り、吐き気を催す苛立ち、息づく全てが嫌いという感情。

 

「じゃあもう壊そう。一旦全部。あんたは世にも美しい地平線を見られるよ。だから手を貸せドクター。地獄から天国まで見せてやるよ」

 

これを、ドクターは一笑に付した。と思えば一転、弔を承認した。

 

「良いじゃろう力を貸そう死柄木弔‼︎やってみろ‼︎ヴィランとは戯言を実践する者のことじゃ‼︎」

 

ドクターは息を切らせて笑う。

 

「え、チョロ」

「弔くん、物騒なこと考えてたのですねぇ。ねェ、私の好きなものまで消しちゃうの?」

「仲間の望みは別腹さ。好きに生きてろ」

「やった!」

 

ようやく笑いが収まったらしいドクターから、協力と条件が提示される。

 

「最低限の格は身につけてもらう。アレは純朴。ワシと違って心の底からお前を認めておらん」

「アレ?」

「ギガントマキア。かつて身辺警護としてAFOを支えた男じゃ。AFOが最も信頼する人間の1人。尋常ならざる耐久力を持ち、複数の個性所持に改造なしで適応している。黒霧が探しておったという戦力というのもそいつじゃろう。ヤツを屈服させて見せろ。それが条件じゃ」

「ギガントマキア…それが黒霧が探してたヤツか。にしても長いチュートリアルだったぜ」

「俺は手伝わねーぞリーダー。勝手にやっててくれ。良い仲間ができそうなんだよ。そっちに時間を使いたい。リーダーの心中なんか知ったこっちゃねェ。俺は俺の為に動く。いいだろ?」

「紹介楽しみに待ってるよ」

 

荼毘の協力拒否を、弔はあっさりと認めた。

 

「ならば荼毘にはハイエンドのテストに協力してほしいのう‼︎趣味が!審美眼がとても合う!接しやすい!葬なんぞちっとも脳無の素晴らしさをわかっとらんからの!」

「材料アレだし正直気色悪い」

「可愛くないです」

「かーッ!これだから凡センスどもが!このデザイン性がわからんのか!ジョンちゃんなんて超絶ぷりチーじゃろうが!」

 

当然ながら肯定の声は誰からも上がらなかった。

 

────────

今度転移させられたのは、どこかの壊れかけの小屋だった。

 

「どこだよここ」

「無人のようだな。最近使われた形跡はない」

 

床やテーブルに積もった砂埃からして、人が出入りした様子はなかった。

他の部屋も同様で、窓から外を窺うが、周囲にも人影らしき物は見当たらない。

外には土砂や資材が中途半端に積まれていて、錆びた重機が置かれている。

周囲は切り出した崖に囲まれていて、その上には木々が生い茂っている。

場所を特定できるような物はないのでGPSで確認する。

そこに。

 

「何の音だ?」

 

地割れのような、地響き。

全員慌てて外に出る。

建物を傾けるほどにぼこりと地面が盛り上がった。

 

「探したーやっと見つけた。ずっと合図を待っていた」

 

地中から姿を現したのは、異形ともされる個性あふれる世の中にあっても周囲を圧倒する筋骨隆々とした見上げる程の巨体。

岩石のように刺々しい顎部と背面、雄々しい鬣のような頭髪、衣服類は着用しておらず、唯一文明を思わせるのは首から掛けられた古びたラジオのみ。

潜伏していた近隣周辺にて野人と噂されていた大男。

AFO直属配下ーギガントマキア。

 

「これが力かぁ…⁉︎黒霧!」

「黒霧さんこんなの求めて旅立ってたのかよ⁉︎」

 

ギガントマキアは吊り下げていたラジオを外し置く。

 

「俺はAFOに全てを捧げる。さァ後継…その価値、お前に在るのか示してくれ」

「上等。未来の王様だ、頭下げろよデカブツ」

 

────────

巨大とはそれだけで脅威である。

ギガントマキアは3Mほどであった身体はさらに膨れ上がり、指を弾いた風圧だけで吹き飛ばされる。

尋常でない剛腕から繰り出される怪力に、その場の地形が一瞬で変えられた。

 

「おいおいオイオイ‼︎こんなんどうしろってんだ⁉︎まるっきり蟻と象だぞ!」

「ってかさっきからリーダー狙い撃ちじゃね⁉︎無視されてんぞ!」

 

6対1でも削れている気が全くしない。

近づけないし、そもそも近付いてもどうするか。

ナイフは刃が通りそうにない。通ったところで浅いだろう。入試の0Pロボのように電源系統を断ち切れば良いという話ではない。

銃も同様。

ルミリオンに使った薬弾も有るにはあるが、打ち込む為の針が負ける。

現にトガの投げつけた吸血針がばきりと折れた。

手持ちの装備では打開策になりそうにない。

 

「埒が明かない!一旦止める‼︎」

「止めるったってどうやって⁉︎」

「止めらんねえから困ってんだろう!」

「兄さん!」

 

集中的に狙われているらしい弔に呼びかけながら、ギガントマキアの猛攻を凌ぐ弔と会話のできる距離まで詰めた。

 

「なんか策あんのかよ?」

「私が個性をかけてみる。その為には奴の視界にいなきゃならない。どうやら兄さんが標的の様だから、なるべく離れず、傍にいてくれ」

「俺は囮かよ。てかお前の個性って」

 

弔が言い終わらぬうちに、地面が割れて再びギガントマキアが襲い掛かる。

寸でのところで2人同時に飛び退く。

一旦離れ、繰り出される暴風と拳を躱す。

吹き飛んでくる岩や木を避け、互いに位置を確認しながら、機を測る。

弔と葬が再び並び立つ。

ギガントマキアが巨木の如き腕を振り上げる。

2人は、真正面。

 

「しくるなよ。失敗したら後で殺してやる」

「失敗したら2人ともミンチだよ」

 

両者、口元に軽く笑みすらを浮かべたまま、軽口の応酬。

葬の左眼に光の花が咲く。

個性『感情支配』発動。

盲目的で狂信的なAFOへの忠誠心。

それを少しばかり弄り、許容させる。

ビタリ、とギガントマキアが停止する。

そして号泣し出した。

 

「あああああああ!俺は!俺は主の後継とご息女に何てことを‼︎」

「「うわ」」

 

予想だにしていなかった反応に、兄妹は揃って別の意味での悲鳴を上げた。

 

「おい葬、こいつどうにかしろ」

「ちょっと効きすぎてるな…」

 

感情支配の個性は相手が動揺していたり理性を保っていない方が掛けやすいのは確かなのだが、ギガントマキアはそれとは別に素直過ぎる質のようだ。

仕方なく宥めすかせば擦り寄られるしゴロゴロと咽喉まで鳴らす。

 

「ハァ…助かった…葬ちゃんいてくれてよかったわ」

 

他の面々も座り込んで、一先ず息をつけたことに安堵していれば、そこにドクターの声が通信機から割り込んだ。

 

『こりゃ‼︎葬!お前さんが個性使ったら弔の試験にならんじゃろうが‼︎』

「だったら何で私まで飛ばした?」

 

結局、ドクターから横槍が入り、葬がいては試練にならないと1人先に戻される事になった。

転送される直前、葬は振り返って言い逃げた。

 

「そうだ。個性切るから、今のうちに離れておく方がいい。正気(?)に戻るから、たぶんさっき以上に暴れる。じゃあ、後はガンバレ」

「「「ふざけんな!!」」」

 

────────

「これで必要なものは大体揃ったかな」

「ようやくか。さっさと帰ろうぜ」

「お前たちの為の買い物なんだが?」

 

少し遠出をして大型ショッピングモールに足を運んだ。

ギガントマキアの調伏に明け暮れる弔たちへの食糧含めた物資の買い出しだ

あれは48時間と33分の間、休むことなく攻撃を続け、その後約3時間の睡眠をとる。

後継である弔をどこにいても見つけ出し、寝込みを襲おうとも即反応してくる。

とんだ耐久力と感覚の鋭敏さだ。

これを弔達は相手取っている。

葬は個性を使われると試験の意味がなくなるのでドクターに手出しを禁止された。

なお、あの後、案の定AFOへの忠誠を弄ばれたマキアは泣きじゃくりながら大暴れしてくれたらしい。

そのため、通常業務は部下に任せて連合絡みの実務の整理と引き継ぎ、そして支援担当である。

今日は対マキア部隊には加わらず、ドクターの元で脳無の試験運用に協力している荼毘も一緒だ。

同行者はまちまち。

嵩張るもの重いものがある時はコンプレス(トゥワイスの個性で増えた分身でも可)を連れてくるし、寒くなってきたのでコートが欲しいとトガとショッピングになることもある。

マキアの標的はあくまで主の後継たる弔ひとりなので、他はあまり深追いされないのだ。

交代で休憩をとりつつ巨獣征服に勤しんでいる。

今回の荷物持ちの荼毘は弔たちと別行動であったのが幸いしたのか、合流した時もあまりくたびれていなかった。

広範囲の火傷こそあれど、顔は整っているので適当に遊び相手でも捕まえれば生活くらいは凌げたのだろう。

もちろん元の容姿が目立つのでしっかり変装させている。

運転はジェントルに頼んだ。ラブラバもついてきた。

その帰り道。

 

「なあ」

「ん?」

「お前、リーダーの予備なんだよな」

「ああ。その為の私だよ」

「ふうん」

 

それきりの沈黙。

会話の途切れた後部座席より、前方の2人の方が何故か居心地が悪そうだった。

道が狭まった所で対向車を通すのに車が止まる。ふと、外を眺めていた荼毘の視線が一点に向いていたので後を追うと、その先には若い女。

 

「どうした?」

 

所々に赤の混じった白髪の眼鏡をかけた、柔和そうな顔立ちをした女性が買い物帰りだろうバッグを下げて歩いていた。

 

「停めろ」

 

その後には、今しがたすれ違ったのろのろと走る白い車。

見るからに怪しい。

 

「あの車、やるな」

 

言った側から、車は歩行者を追い抜くふりをして横につけると、ドアから手が伸びて女性が引き摺り込まれた。

 

「出番のようだ。怪傑紳士」

「おまかせあれ!」

「頑張ってジェントル!あなたの勇姿は私がばっちり抑えるわ!」

 

応えるや否や、ジェントルは帽子とコートを脱ぎ捨て“弾性“を足場に車へ迫る。

 

「待ちたまえ!」

 

車が狭い路地に入ったところで、ジェントルは宙を駆けて前に回り込み進路に“弾性“を仕掛ける。

 

「うわあああ⁉︎なんだ⁉︎」

 

BOINGと見えない幕に弾かれ車は操縦を失い急ブレーキをかけて激突スレスレで静止した。

 

「不埒な婦女誘拐犯め!この怪傑紳士ジェントル・クリミナルが成敗してくれる!」

 

犯行を邪魔された男たちがいきりたち殴りかかってきた。

 

「何だテメエ⁉︎」

「へぶっ⁉︎」

 

しかし彼らは見えない“弾性“の壁に突っ込み、弾き返される。

倒れた所に更に“弾性“を付与。地面と宙に重ねたそれに強烈に弾き飛ばされて、男たちは壁に激突した。

弾性が消えた頃を見計らって、ジェントルは車内に残された女性を救出する。

女性は気を失っているか眠らされているようだったが、後から追いついた葬はその顔に見覚えがあった。

 

「これは…ちょっと待て」

 

倒れている男を1人つかまえ、個性をかけて服従心を植え付ける。

 

「素直に答えろ。なぜこの女性を狙った?」

「金を、誘拐して身代金取ろうとしたんだ。デカい家に住んでるから、金持ってそうだって」

「彼女の誘拐は誰かに頼まれたことか?」

「違う。俺たち3人で考えた」

「彼女が眠っているのは薬か?個性か?」

「そいつの個性だ。催眠ガスを出す奴なんだ、しばらくすれば目を覚ます」

 

男は仲間を指差す。

葬は個性を解くと用は済んだと荼毘に振り向く。

 

「聞きたいことは聞いた。荼毘、燃やすなら車ごとやってくれ」

 

正気を取り戻した男は後ずさる。

 

「た、助けてくれ!」

「じゃあな薪」

 

青い炎は容赦なく男たちを焼き尽くした。高温の炎に灼かれて悲鳴もなく消し炭と化している。

 

「ヒェッ」

 

目の前であっさりと行われた殺人に、ジェントルとラブラバは身を寄せ合っていた。

 

「そろそろ慣れてくれないか」

「いやいや慣れてはいけないだろうコレは」

 

野次馬やヒーローが来ても面倒だと、一先ず荼毘に女性を背負わせて車に戻る。

荷物の中から身分証を探し出せば、やはり知っている名があった。

 

「やはり間違いないな。轟冬美。エンデヴァーの娘だ」

「エンデヴァーの家族まで調べてんのかよ?」

「ああ。エンデヴァーには体育祭で声をかけられてな。彼女とも前に一度だけだがあった事がある。轟君ー末の息子が元クラスメイトだったんだ。ちょっと気になる話を聞いて調べさせた。まあなかなかの屑野郎だったよ」

 

目当ての個性を持つ女性と実家への援助を引き換えに結婚。所謂個性婚だ。

目的がそもそも『オールマイトを超えるヒーローになり得る個性を作る』ため。

妻との間に4人の子を設けたが、長男は個性制御を誤り山火事を起こして死亡、長女次男にも無関心。

理想の個性を受け継いだ未子には虐待紛いの訓練を施し、妻は荒んだ家庭環境に精神を病み、未子に煮湯を浴びせて精神病棟に10年間入院中。

家事は家政婦がしていたが、辞めてからは長女冬美が義務教育の頃から家を切り盛りしている。

 

「引き続き調べさせている最中だ。あった」

「へえ」

 

冬美の所持品から携帯をあさり、ロックを外す。

自宅にかけるが、誰も出なかった。続けて見覚えのある名前にコールする。幸いすぐに相手が出た。

 

『もしもし』

「やあ、こんにちは。轟君」

 

──────────────

マキア戦から退場くらった。じゃあ飛ばすなよ。

パワーはないけど対人特化。

モグラ状態じゃなければ装甲無効。

 

 

対マキア部隊

おま、お前ほんとふざんなよ!

 

荼毘

冬美を車まで負ぶった。

兄貴の予備ねェ…あれ?でもなんか面白いことしてんなぁ(わくわく)

 

ジェントル&ラブラバ

後で助けた女性が現No.1の娘と聞いて慄いた。残念だけど映像はお蔵入り。

 




ここまでお読みいただきありがとうございます。
感想・評価・お気に入り登録・ここすき等いただけると幸いです。喜びます。

次回、原作キャラに対する厳しい表現などが含まれます。ご注意ください。

また、葬送のフリーレンの2次創作「エルフを愛した魔族の話」も掲載していますので、そちらもよろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。