一輪花の咲くまで   作:No.9646

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3話 個性把握テスト

 

──────────────ー

春、予定通りに一花は無事新入生として雄英高校への潜入を果たした。

髪も目も今度は“色変え”の()で変えて、ヒーローの巣窟の門を潜る。

1-Aのドアを開けると、早々に眼鏡をかけた生真面目そうな男子生徒に声をかけられた。

 

「おはよう!俺は私立聡明中学出身、飯田天哉だ。よろしく!」

「おはよう。私は黒衣一花、よろしく」

 

チャイムが鳴り終わると同時、声が割り込んだ。

 

「お友だちごっこがしたいなら他所に行け」

 

廊下の寝袋に入った小汚い男。

 

「担任の相澤消太だ。よろしくね」

 

さっきからモゾモゾと視界に映るので何かと思っていたが、あれが担任か。

早速グラウンドに行けと指示されて、着替えるべく更衣室に向かう。

 

「ねえねえ!ちょっと!」

 

声をかけてきたのは、入試の時に嘔吐していた少女だった。

 

「試験の時、ハンカチ貸してくれた子だよね?あの時はありがとう!」

「どういたしまして」

 

麗日お茶子と名乗った少女とお互い自己紹介を兼ねた挨拶を交わしていると、宙に浮いた服から明るい声が割り込んだ。

 

「なになに〜?2人は知り合い?あ!私、葉隠透!個性は見ての通りの”透明“!」

 

彼女を皮切りに、女子更衣室では次々自己紹介が始まった。

 

「私、芦戸三奈!よろしく!」

「蛙吹梅雨よ。梅雨ちゃんと呼んで」

 

わいわい、きゃっきゃと賑やかな周囲に囲まれながら着替えを済ませて外に出る。

 

「「「個性把握…テストォ⁉︎」」」

 

要は、個性ありきの体力テストだ。

デモンストレーションにとボールを渡された爆豪が投擲の構えを取る。

 

「死ねぇ‼︎」

(((………死ね?)))

 

掛け声はともかくとして、計測された飛距離は700Mを越えた。

 

「なんだこれすっげーおもしろそう!」

 

興奮した誰かの言葉に、相澤がニヤリと意地悪く口の端を釣り上げた。

 

「面白そう、か…三年間そんな心算で過ごすつもりか…?よし、トータル成績最下位は見込みなしとして除籍処分にしよう」

 

入学初日に唐突な理不尽を突きつけられて、生徒たちが騒つく。

一方で、一花の感想は「妥当だろう」というものだった。

見せしめは有効であるし、負ければ死しかない中で育った身としては生温い。

 

(まあ、怪しまれない程度に適当にやるか)

 

50M走、幅跳び、反復横跳び、ボール投げと順繰りにこなして行く。

 

「お疲れー」

「お疲れ様」

「やっと良い記録出せたよ〜」

 

ボール投げで♾という記録(?)を出した麗日が戻ってきて安堵の息を吐く。

 

「そういえば、黒衣さんの個性って何?」

「私は精神干渉系だよ。目を見た相手の感情を操れるんだ」

 

一花は個性を主に眼を見た相手の感情を操る発動型精神干渉系の能力…と登録している。

副次効果については雄英側へは知らせていない。

 

「へえー」「対敵に有効だな」

 

生徒たちと雑談する傍ら彼らの個性情報を収集する。

緑谷がボール投げに回ってきた。

ここまで、彼の成績は振るわない。

それなりに筋肉は付いているのだが、使い方がまるでなっていない。

おそらくはトレーニングで培ったはいいが、実践的な使い方をしたことがあまりないのだろう。

一度目はイレイザーヘッドの”抹消“か、46Mと伸びず、緑谷は呆然としていた。

そして2度目。

ボールから手を離す直前、インパクトの瞬間、押し出す指だけが極小のスパークを放った。

 

「SMASH!」

 

ビュンと風切音を立ててボールが放たれる。

記録は、700M超ー爆豪の記録を僅かに上回った。

 

「まだ…動けます!」

 

激痛を堪えてなお相澤に宣言する緑谷に、一花はほうと内心で感心した。

 

(指一本捨てて乗り切ったか)

 

リスクとリターンを秤にかけて選び取る決断力、分水嶺において発揮できる分析力、そして一か八か、成功を掴み取る強運。

まだ為人はよく知らないが、それが伴うならば、彼はきっと良いヒーローになるだろう。

一花は別段、ヒーローを敵視しているわけではない。

欲する未来のため、降り掛かる火の粉を払うことはあるも、時には手柄をくれてやるくらいには()()()だ。

やがて、爆豪が相澤に捕縛される一幕はあったが、全員が全種目を終えた。

ほどほどに調整した順位は中の上といったところか。

ほぼ全ての種目で補助具を作成できた八百万や何かしらの種目で突出した記録を出している者を除き、全種目安定した記録を出し続けた結果である。

 

「ちなみに、除籍は嘘な」

 

クラスメイト達は少し考えれば嘘だと分かるだろうと話していたが、相澤のあれはそれこそ嘘だろう。

合理的虚偽だと告げられて、最下位の緑谷のデッサンが崩れてよくわからない絵になっていた。

それから教室に戻り、入学初日はあっという間であった。

その日は結局入学式に出ることもなく、再度着替えた後、相澤からの説明と配布物の受け取りだけで終わった。

 

「あ、黒衣さん!」

 

放課後、下校する生徒たちの中に紛れていると、緑谷、飯田と連れ合った麗日に声をかけられた。

 

「黒衣さんも駅まで?一緒行かへん?」

「じゃあ、ご一緒させてもらっていいかな」

「もちろんだとも!」「どどどどうぞ!」

「飯田君は朝に挨拶したけど、緑谷君はまだだったよね。改めまして、私は黒衣一花。よろしく」

「ぼ、ぼ僕はみ緑谷い出久です!よよよよろしく」

 

微笑みかければ、緑谷は顔を赤くする。

一花は自身の貌の使い方をよくわかっていた。

 

「指は大丈夫?大分腫れていたようだけど」

「う、うん…保健室で治してもらえたよ。」

 

ふと、麗日が「あ」と何か思い出したように声を上げた。

 

「思い出した。デクくん、入試で手足バッキバキになった時、リカバリーガールが来るまで黒衣さんが手当してくれてたんよ」

「え!そうなの⁉︎ありがとう黒衣さん…ごめん、お礼も言ってなくて」

「どういたしまして。あの時は気を失っていたようだし無理もないよ」

「君もあの試験の構造に気がついていたのか…!」

 

飯田が悔しげに呻く。

 

「試験構造…ああ、救助P?Pがついてもつかなくても、目の前に具合の悪そうな子や怪我をした子がいれば助けるものじゃないか?」

「…ああ、そうだな…全く持ってその通りだ。俺には精進が足りんようだ。試験でさえなければなんて言い訳は恥ずかしいにも程がある」

 

くっと飯田が顔を歪める。

 

「黒衣さん応急処置すっごい手際よかった!どっかで教わったん?」

「まあ、知り合いから教わったりもしたし、本とネットとかでも調べたかな。後は包帯の巻き方とかは自分で巻いて練習したり。手本と手が逆になってこんがらがったりしたよ」

「そっか…事件でも事故災害でも人命救助の時に必ず救急車が間に合うわけでもないから自分でもある程度応急処置ができるようにならないといけないんだ…意識のあるなし患部や傷の状態現場の状況でも対処は変わってくるだろうし、あ、自分が怪我した時も自分で簡易処置ができれば…ブツブツブツブツ…」

((不気味だ…))

 

麗日と飯田が若干引いていた。

 

「緑谷君の個性は、アレは増強系…と言っていいのかな?反動すごいみたいだけど…?」

 

上手く言い表せない風を装って疑問をぶつければ、分かり易く緑谷の目が泳いだ。

 

「え、あ、うん…僕、最近個性が発現して。まだ全然使いこなせてないんだ…」

「そうなのか⁉︎個性はだいたい4歳くらいまでに発現するはずだが?」

「な、なんか身体に負担がかかる個性だから、身体ができるまで脳が無意識でストップかけてたんじゃないかって…雄英受けるのに身体鍛えたから漸く発現したんじゃないかって」

「へえ、珍しいこともあるものだね」

 

緑谷は誤魔化すのが下手らしい。

しかし、初対面であまり深入りするわけにもいかない。

あまり警戒されても面倒だと、一花は納得した風に返答する。

他愛もないお喋りをしながら歩き、3人とは駅で別れた。

これから処理すべき事案を整理しながら、帰路に着く。

こうして、潜入初日、一花の初めての学生生活1日目は幕を閉じたのであった。

────────ー

一花

学校初体験。

素の身体能力が高いので個性なしでもそれなりに点数取れる。

 

担任の先生

黒衣の奴個性使ってないな…

まあ、対人向け個性だと使い所がないのもわかる(わかる)

が、マジメにやれ。

 

ケガ人

ま、また女子に話かけられちゃった…!

雄英のヒーロー科にくる人ってやっぱり良い人多いんだな(※一部除く)

 

幼馴染

除かれた人

 




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