一輪花の咲くまで   作:No.9646

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前1〜3話は投稿テストも含め同時投稿していましたが、ここからは各話投稿となります。

毎週日曜19時投稿予定です
*都合により前後することがあります。予めご了承ください。

ここから少し文字数増えます。


4話 戦闘訓練

 

───────────────

翌日から通常日程が始まった。

皆が普通だと感じている必修科目などの授業でさえ、学校生活というものが初めてな一花にとっては新鮮であったが、仕事は仕事。

校内やオールマイト含め教員の動向など、使えそうな情報をどう収集するか考えながら過ごし、迎えた午後。

 

「わーたーしーが!!」

 

その声に教室が沸く。

 

「普通にドアから来た!」

 

No.1ヒーロー、平和の象徴オールマイト。

2Mを超える長身に筋骨隆々とした体躯。

一線を画す画風。

純粋な戦闘では決して勝ち得ない相手。

そもそも、やり合うつもりなど毛頭ないが。

ヴィランと一口に言っても、それぞれ畑がある。

一花()の本来の縄張りは2課とか4課とか公安の分野だ。

拳で解決するヒーローはお呼びじゃない。

受け取った戦闘服に着替えるべく、皆で更衣室へ移動する。

デザイン案はそれ系の専門学校に行っていたという部下に任せたが、曰く「出せばいいってもんじゃない」らしい。よくわからないが。

出来上がったのは、黒い軍服の様なコスチュームだった。

首元まで覆う詰襟タイプで強化繊維製のフード付コート。下もブーツインで足元は編上げ靴という、露出どころか内蔵プロテクターと太いベルトタイプのギミックホルダーも相俟って体型も誤魔化せる仕様だ。

武器類は被服控除で通るレベル。

まさか常用している銃や刃物を持ち込むわけにはいかない。

刃物は救助に使えるからと言い訳ができるが、それでも普段使いより刃渡りも厚みも心許ない品だ。

一通り現物に目を通し、スポーツタイプの下着の上から防刃インナーを初め着替えを進める。

コートを羽織りホルダーを装備し、同じくセットになっている薄型防刃手袋を嵌めれば、なかなか様になっていた。

夏には仕様変更が必要だが。

 

「わあ!黒衣さんかっこいい!」

「そうかな?ありがとう」

「どう?どう?かっこ良いでしょー!」

「八百万さん結構大胆な格好するんだね」

「葉隠さんがそれ言うの?」

 

きゃいきゃい、けらけら。

更衣室はとても賑やかだった。

全員が着替えを終えて集合すると、授業内容が告げられた。

2人1組、チームに分かれての模擬戦だ。

 

「先生!我々は21人なので1人余りますが!」

「残った1人は順番を最後にして、希望者か余裕がありそうな生徒をこちらで指名するよ」

 

くじの結果、一花が端数を引いた。

最後ということで、ゆっくりオールマイトと生徒たちを観察させてもらおう。

初戦メンバーを除いて、モニタールームへ移動する。

その際、オールマイトの背後へ近づいてみた。

気取られない程度に標的を観察する。

 

(…血の臭い?)

 

嗅ぎ慣れているからこそ気がつくが、だからこそ錯覚かと切り捨てられる程度の。

ちらりとオールマイトが振り向く。

視線が合った。

 

「どうかしましたか?」

「ア、イヤ皆ちゃんと付いてきてるね!」

(勘付かれてはいないようだが…流石にNo.1は一筋縄ではいかないか)

 

今これ以上の深追は止めだ。

1回戦はヒーローチーム緑谷・麗日ペアと敵チーム爆豪・飯田ペアだ。

内容は爆豪の独断暴走、緑谷は途中まで良い線を行っていたのだが、終盤に愚策行使が目立った。

保健室送りになった緑谷を除き、授業は順調に進んで行く。

とりあえず、オールマイトは指導側としてはカンペが要るくらいの初心者で尚且つ感覚派なのだろう。

そもそも設定がだいぶ無理があるし、勝利条件に核の確保があるのなら、戦闘を行う必要はないのではないだろうか。

見つからないようにこっそり外階段か隣の建物から屋上に上がって、窓でも非常口でも鍵開けて侵入。場所さえ把握してしまえば、屋根裏経由で通気口から催眠ガスでも流せば足りるのでは。

そんな戦闘訓練が本末転倒になりそうなことを考えたりもしたが、他のペアも順に行い、番が回ってきた。

 

「よし。後は黒衣少女で最後だね。誰か希望者はいるかい?」

「はい!私やりたい!何もできなかったからリベンジ!」

「俺も良いですか?」

「俺も」

 

手を挙げたのは、葉隠、尾白、障子だ。

轟が一瞬で終わらせてしまったため、ほぼ無傷で余力がある。

 

「OK!じゃあ、4人で2チームだしジャンケンで決めようか!」

 

ヒーローチームは一花と葉隠、敵チームは尾白と障子となった。

 

「頑張ろうね!黒衣さん!」

「よろしく、葉隠さん」

「よし!作戦どうする?」

 

勝つぞー!と葉隠はやる気満々だ。

 

「じゃあ、こんなのどうかな?」

 

───────────────

 

コツコツ、とヒールの音が正面口から建物内を進む。

障子は廊下の角に隠れて複製腕に作った耳でヒーローチームの様子を伺っていた。

先ほどは轟が一瞬で終わらせてしまったが、今回の組合せには広範囲高威力の個性持ちはいない。

葉隠の強みはその隠密能力の高さだが、黒衣はまだ個性を見せていないためその能力や効果は未知数だ。

加えて一通りクラスメイトの対戦を見ている分有利。

とは言え、こちらは障子自身も尾白も異形系、見てわかる個性のため知られて困るものではない。…瞬殺で終わってしまったため見られる機会もなかったが。

黒衣の個性で知っていることは、先日のテスト中に「目を見た相手を操る」と聞いたのみである。

その通りであるなら、接近戦しか手段のない敵チームが不利。

少なくとも、正面からの戦闘は愚策だ。

これが葉隠と別チームであったなら、姿の見えない葉隠がこっそり背後から近づいて、目を見ずに奇襲、確保という方法もあったのだが。

ない物を考えても仕方がないと、葉隠を警戒しつつ索敵が行える障子が隙を見て後ろから黒衣を確保する、尾白は葉隠を戸締りをして警戒という作戦に落ち着いた。

黒衣の個性発動条件の「目を見る」の効果範囲が不明で、複製腕で作った目にも効果がある可能性を考慮して、なるべく目視は控え、障子は十分に距離を保って腕と耳を駆使する。

足音が立ち止まる。

 

「じゃあ葉隠さん。作戦通りに」

「うん!わかった!」

 

ペタペタと足音が変わった。ブーツを脱いだようだ。

障子は建物の構造を思い浮かべる。

おそらく、隠密行動に優れる葉隠を迂回させ後方に回し、隙をついてこちらを捉えるか、核の確保に向かうのが狙いだろう。

進行方向を確認しつつ、途中の部屋に隠れてやり過ごし、背後から捉える。

足音が通り過ぎるのを待って、音を立てないよう慎重にドアを少し開け、確実に背後を取る為に隙間から複製腕の眼で様子を窺う。

丁度黒いコートが廊下を曲がるのが見えた。

今だ、と障子は静かに部屋を出る。

確保テープを手に、いざと廊下の曲がった先にはー誰もいなかった。

 

(いない⁉︎)

 

廊下はT字になっている。

左右を確認するが、誰もいない。

 

(どこにー⁉︎)

 

振り返ったその先。

 

「やあ、障子君」

 

黒衣の少女がいた。

目が、あった。

 

(不味い…!)

 

思わず目を背け飛び退いたところに。

 

「確保ー!」

「なっ⁉︎」

 

高らかな宣言と共に確保テープが巻き付けられていた。

いつの間にか、背後に葉隠がいた。

 

「やったね黒衣さん!作成大成功!ハイターッチ!」

「手が見えないよ、葉隠さん」

 

なぜ、と障子は2人を見る。

黒衣はコートを着ておらず、素足だった。

障子はさっきと同じように、葉隠の個性を活かすため、手袋もブーツも脱いで裸足だと思い込んでいた。

だから靴音=黒衣だろうと考えていたが、一花はそうと踏んで逆手にとった形だ。

近接戦闘しか攻撃方法がない尾白と障子ペアにとって、その個性からして正面から叩けない一花の攻略法は背後からの強襲のみ。

葉隠は籠城して出入り口を固めれば対処可能。

そうすると、真っ先に排除しなければならないのは一花の方になる。

一花が1人になれば囮と分かっていようとも来ると踏んだ。

姿が見えない葉隠がいる以上、索敵能力を考えると、尾白は核の守備に回るだろう。

向かってくるのは障子だが、障子とて見えない相手を警戒するのに極力目は使わない。

葉隠にコートを貸しブーツを履かせたまま先を歩かせ、一花は裸足になってわざと足音を立てて遠ざかり、引き返して陰から様子を伺っていたのだ。

葉隠は廊下を曲がった所でコートとブーツを脱ぎ、ブーツはコートに丸めて隠し、全裸で待機。

そして障子が囮の葉隠を捉えようと出てきたところを一花が背後から接近し、気を引いたところで姿の見えない葉隠が背後から確保、それが事の顛末であった。

仮に目視で葉隠を視認されても、その場合は葉隠を追えば一花が確保役に回り、一花を追えば彼女が囮役に、脱いで見えなくなった葉隠が確保役になるだけである。

 

「まだ勝ちじゃないよ。あと1人捕まえるか、核を回収しないとね」

「そうだね!よし!この調子で頑張ろう!」

 

確保した障子から、連絡用の小型通信機を外す。

 

「さて、障子君。核はどこにあるのか教えてくれるかな?」

「教えると思うのか」

 

彼は一花の個性を警戒してか、決して目を合わせようとしない。

一花は座らせた障子の脚の間に割るように片膝を突く。

 

「障子君」

 

つぃ、と彼の頬に指先を滑らせる。

手袋越しの細い指が、頬骨、頸筋、喉元を撫でる。

 

「くッ…⁉︎」

 

こそばゆさに障子が身じろぐ。

 

「ダメだよ。よそ見をしては」

 

一花は障子の顎に手をかけ、こちらを向かせる。

軽く上を向かせる形になり、その様はいわゆる『顎クイ』であった。

半ば強制的に視線が交わり、障子は、とろん、と目を蕩けさせた。

”服従“と”愛“の複合効果である。

 

「教えてくれるだろう?なあ、障子君?」

 

耳元での低く艶やかな囁き。

この体勢、カメラ角度や見ようによっては『そういう』絵になるわけで。

後ろとモニタールームで可愛らしい悲鳴が飛んだ。一部「お前そこ代われ」と怨嗟の声も飛んだ。

 

「…ああ、核の場所は4階の北側端の…」

 

核の在処から尾白との作戦配置まで、抜ける情報を抜いて個性を解除する。

 

「黒衣さん…すっごい…!なんか、こう、えっちだ…!」

「私の個性は精神に干渉するからね。相手が動揺している方がガードが崩れてかけ易いんだ」

 

本来であればこんな手数は不要だが、個性発動にはある程度縛りがあると思わせておいたほうが動き易い。

 

「じゃあ、行こうか」

 

耳を赤くする障子を置いて、2人は一路4階へと向かった。

 

***

他方、4階で核を守る尾白は焦っていた。

この部屋の出入り口は1つ。扉があり、ここが開かない限りは葉隠も入ってきてはいない。

しかし、入ってくるのが黒衣であった場合、彼女と正面を向き合う形になってしまう。

黒衣相手に正面切った接近戦しか手段のない自分は確実に不利。

それに、先ほどから障子と連絡が取れない。

おそらく、捕えられたのだろう。

1人になろうと、個性が不利だろうと、そう易々と負けたくない。

負けてたまるか、諦めてたまるか。

自分の個性はこの尻尾だ。それ以外は、何ら常人と変わらない。

それでも、自分はここまできたのだ。

努力して、並み居る強個性たちと争って、勝って自分はここ(雄英)にいる。

自分にはこの尻尾がある、手足がある。

 

(大丈夫、大丈夫…)

 

己に言い聞かせるよう、深呼吸する。

落ち着いて、集中して、慣れ親しんだ武術の構えをとる。

逆の発想をしよう。

入口は1つ。相手はここからしか入ってこない。ここさえ押さえればまだ勝ち目はある。

廊下に出て待ち伏せるか?いや、葉隠が近づいてきた時に危ない。

やはりここは籠城戦。

ドアの前で、開いた瞬間に仕掛ける。

葉隠がくる可能性もあるが、それならそれで1人を戦闘不能にする。ただでは負けない。

そしてその時は突然やってきた。

バンッ!と勢い良くドアが開かれる。

反射的に尻尾を叩きつける。が、触れた感触はない。

体を捻り、続け様に上段蹴りを繰り出すが、やはり誰もいない。

扉の正面を陣取ったまま、攻撃の構えを解かず神経を研ぎ澄ませて出方を待つ。

そこに彼女は現れた。

ドアの陰から、悠然と、コツ、コツ、と靴音を響かせて。

 

「やあ、尾白君」

 

フードが外される。

手の動きにつられて黒衣と、吸い込まれるように、目が、あった。

ぞわりと背を這うような悪寒。

 

「っ…⁉︎」

 

一拍遅れて、不味い、と思わず距離をとって顔を背ける。

 

「ダメじゃないか」

 

まるで子供を嗜める様な声音。

 

「敵から眼を背けてはいけないよ。守るべきものから目を離すのも頂けない。大切なものは、あっと言う間に奪われてしまうからね」

 

はっと顔を上げたその瞬間。

 

「核!確保‼︎」

 

何もないところから声が上がった。

 

「なっ⁉︎」

(しまった、黒衣は囮、葉隠もいた!)

 

気を取られて尾白はつい振り向くが、その隙を見逃がされる訳もなく。

肉薄した黒衣にテープを巻かれる。

 

「確保」

 

勝利宣告前の敵2名確保と核の回収成功。

ヒーローチームの完封勝利であった。

 

───────────────

 

初めてのヒーロー基礎学、戦闘訓練を終えた出久は保健室で目を覚ました。

リカバリーガールからお小言を頂戴し、体力の関係で治癒ができないと教室に帰される。

先生にどやされるだろうなと消沈して帰った教室では、クラスメイトたちに出迎えられた。

麗日にも心配されたが、会いたい相手は見つからなかった。

急いで、昇降口に走る。

 

「かっちゃん!!!」

「ああ?」

 

爆豪に睨まれる。

これまでなら、脅えて、口を噤んでしまっていた。

けれど、今は。

 

「君には、言わなきゃいけないと思って…!」

 

母にも言っていない秘密。

 

「人から授かった“個性“なんだ」

 

口から出る言葉は支離滅裂で、自分でも途中から何を言っているか分からなくなってしまった。

 

「僕の力で君を超えるよ」

 

結局、爆豪を怒らせて、というか、火をつけた。

秘密を話してしまったことはオールマイトからもお叱りを受けてしまい、とぼとぼと来た道を戻る。

やがて、下校した爆豪も、着替えに戻った出久も、職員室へ向かったオールマイトも居なくなった。

誰もが、物陰にもう1人、この会話を聞いていた者が居たと気付かぬまま。

 

 

黒衣

ヒロスは顔以外露出なしの黒軍服イメージ。

ほぼ全員の個性を見られた有意義な授業だったよ。

 

葉隠

ヒーローTのペア。露出度では対極。

勝った‼︎リベンジ成功‼︎

透明だけど囮ができるって新たな発見!Plus ultra!

 

尾白

1人だけ2連敗…黒衣さんの個性、心が折れそうになる…

今回は組み合わせが悪かったが、それを乗り越えてこそヒーローだ!Plus ultra!

 

障子

大人っぽくてもまだまだ初心な15歳。このドキドキは黒衣の個性の所為だよな?

先入観と個性対策に気を取られすぎた。今後の課題だな。Plus ultra!

 

オールマイト

先生初心者。初授業は(緑谷以外)無事終了。

自分の個性と味方の強みを活かした黒衣少女の作戦勝ち!この調子でPlus ultra!

あとこれ人に個性を向ける危険性を学ぶ授業でもあるからね!

 

 

 

部下A(デザイン担当)

「昨今の女性ヒーローは露出や身体のラインを強調しすぎなんですよ出せばいいってもんじゃないんです見えないからこそ掻き立てられるものがあるじゃないですか最近の連中はそこがわかってない!普段カッチリしてる人がたまに着崩すのがそそるんです!脱いでこそ顕になる隠された細腰!首元を緩めてチラ見えする首筋から鎖骨のライン!厚着故に少し汗ばんだ肌!袖口から覗く手袋との絶対ry(゜o゜(○=(-_-○B




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戦闘訓練回でした!
ヒロスは機能性重視の迷彩服風か見た目重視の軍服風かで迷いましたが、
ヒーローはある程度キャッチーな見た目も必要な職業なので軍服風採用にしました。

趣味です、はい。

更新頻度はどれくらい?※目安です

  • 文量多めで週1がいい(7千程度〜)
  • 文量少なめで週2がいい(3〜5千程度)
  • 今くらいでいい(5千程度で週1)
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