アニメ7期始まりましたね!!
葬が部屋で仕事に精を出していると、コンコンとドアがノックされる。
「失礼しまーす。お届け物でーす」
ひょっこりと顔を覗かせたのは、ホークスだった。
部屋の体感温度ががくりと下がる。他の誰かがいれば寒気を催したかもしれない。
お互いの立場を考えれば特段葬はホークスに対し恨みもないが、どの面下げてと。
ホークスにはスケプティックの監視がついているし、敵軍本拠地で下手な真似はできないだろう。向こうの出方を見る意図もある。
葬はホークスの入室を許可した。
「No.2ヒーローが荷物運びのお使いか?」
「ここじゃあペーペーの新参者ですからね。使いっ走りくらい喜んで。技術開発部からですが、何か頼んだんで?」
「お前には関係ないものだよ」
「えー?そう言われると余計に気になりません?」
向こうも答えが返ってくるとは思っていないだろうに。
単に引き伸ばし、会話のとっかかりを探りっているに過ぎない。
葬はわざと視線と声音に侮蔑の色を乗せる。
「中身はインナーの試作品だよ。他人の趣味は否定しないけど、女性人気トップのヒーローが未成年女子の服の下に興味「あ、紅茶もらっていいですか?この辺自販機ないしここのコーヒーまっずいんで」
あからさまに話を変えてくるりと背を向ける。
ちなみにCARMINEの備品ならばあれはカフェイン摂取用らしい。
味は二の次三の次な徹夜のお供だ。
砂糖とミルクを大量投入してカフェラテにするとそこそこ美味しいとトガが言っていた。
「この部屋の紅茶いいの使ってますよね。どこのです?」
「油を売っていないでさっさと仕事に戻ったらどうだ」
「お茶休憩くらい見逃してくださいよ。俺今朝方まで夜勤であんまり寝てないんです」
スケプティックもそれくらい大目に見てくれますって、と飄々としているが、内心は穏やかではないだろう。
敵連合に接触、取り入りを図ったものの、直後に異能解放軍を吸収し急激に巨大化。
早急な対応の必要性に駆られるが、そこで要監視対象の葬が幹部入りせず別行動をとる素振りを見せた。
既に荼毘を通してリーダー以外に面通しをしてしまい、かつ緊急性の高い戦線から離れることもできず。
故に強硬手段に出て葬を従わせようとしたがあえなく失敗。
以降、接触を悉く逃げられていたところに、報告会に出向いたら何食わぬ顔をして幹部席に座っているのだから、業腹だろう。
尤も、それはお互い様だが。
「じゃあ帰って寝ればいいじゃないか。他の連中には私から言っておくよ」
邪魔だから失せろ、の意を込めて退出を促す。
入って来た瞬間に画面を切り替えて重要な情報は隠したが、居座られていると進まない。
「そういえば、あの話どうなりました?ほら、葬ちゃんがオールマイトの養子になるって話」
今思い出したと言わんばかりに、ホークスが話題を振る。
彼がこの場にいる以上、監視盗聴を受けるのはホークスだけではない。
お互いに、迂闊な発言はできない。
スケプティック等に聞かれて困る話を持ち出し、反応を見るか仲間内で懐疑心を抱かせる、あるいはそれを止めるためにまた秘密裏な交渉を図ろうという算段か。
「ああ、その話か」
聞かれて困る話ではないと葬は事も無さげに返した。
「既に流れた話だろうそれは。速過ぎる男も、耳はそうでもないらしい」
言外に横槍突っ込んできたのはそっちだろうと冷めた視線が物語っていた。
あれからその話が進んだとは聞いていない。
話を進めたいオールマイトや根津と、ブランドに傷をつけたくない上層部とで揉めて暗礁に乗り上げたのだろう。
「近く会談を予定している。今度はもう少し実りのある話ができるといいのだけど」
「へえ」
一瞬。
作り物の赤眼とゴーグル越しの金眼が交差する。
お互いに牽制と腹の探り合い。
「いいんです?彼方さんと密会なんて」
「スケジュールも伝えているとも。何も革命に必要なのは血だけではない。対話による解決が可能であるのなら、それに越したことはないさ」
まるで演技じみた台詞。当然当て付けである。
「しかし、どうあっても血が流れるのであれば、犠牲は少ないほうがいい。そう思わないか?ホークス?」
「ええ、そうですね」
何を思ったっとしても、ホークスは口では是と答える以外に他はない。
「その前に、俺と2人っきりの
「CARMINE、スライディンでも誰でもいいからヒーロー呼んでくれないか」
「ヒーローならここにいますよ。No.2が」
「デートは今度元No.1とするからいいよ」
軽口を叩きながらの攻防は、それから少しの間続いた。
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そして迎えた某日。
都内某所にて、葬はオールマイト等との秘密会談に臨んでいた。
ベストジーニストおすすめの
「あの、オールマイト…?」
葬は困惑気味に声をかける。
原因はオールマイトの様子であった。
元より内臓欠損で血色は良くない人だが、土気色どころか蒼を通り越して白い。
死体を動かせる個性で動かしてますと言われても納得する有様で、部屋に入った瞬間ぎょっとした。
暗い所で見たら子供が泣く。
「大丈夫ですか?酷い顔色をしていますが。体調が優れないのであれば寝んでいては?」
「うん…心配してくれるんだね、ありがとう………私にはそんな資格なんてないんだ…」
葬とあった瞬間なぜか泣きそうな顔をして、蚊の鳴くような声量で落ち込む。
かのオールマイトにあるまじきネガティブさに、何か精神干渉系個性にでもかかったのかと疑う。
承諾するなら“感情支配“で治した方が良くないだろうか。
「あの…その……君は、怪我したりとか、危ない事はなかったかい…?」
「まあ、こんな仕事していますので危険は織り込み済みですし、今のところは見ての通り五体満足でやれてますが…?」
年末前に異能解放軍と一線交えて大量の死傷者が出たり地方都市が一部更地になったりはしたが、その時は大きな怪我はしていない。
ホークスとの密会で流血沙汰にはなったがもう跡形もなく完治している。
眉を寄せてどう言う事かと視線を付き添いのイレイザーヘッドに向けるが、黙って首を横に振られた。
「この状態で始める気ですか?」
「理由はお前だが原因が別にあるんだよ」
心労をかけている自覚はあるが、12月頭に会った時はこんな状態ではなかった。
「その…」
何か言いかけたオールマイトを、イレイザーヘッドが制止する。
「こういうことはある程度第三者から説明してからの方がいい」
葬は内心首を傾げるが、あちらはあちらで話がまとまったらしい。
出鼻を挫かれたが、仕切り直そうと居住まいを正す。
「少しばかり順番が狂いましたが、改めましてお久しぶりです、イレイザーヘッド」
「こんな形で再会したくはなかったよ」
できることなら、無事に救出された生徒と教師として会いたかった。
そんな苦い表情のイレイザーはちらと葬の背後に目を向ける。
そこにはヒーロー殺しステインと元公安直属の暗殺者レディ・ナガン。
当たり前にソファに座っている葬に対して、2人は立ったまま。
明確な立場と上下関係、そして大人2人がそれを容認している事が窺い知れた。
「うちの生徒が世話になったな」
「………」
静かな睨み合い。
「イレイザーヘッドは私が雄英にいた時のクラス担任だ。デクたちーお前が遅れをとった3人も一緒のクラスだった」
「過去形にするな。俺はまだ
「初めから存在しない人間ですよ、黒衣一花は。仕事用なので」
「辞めちまえそんな仕事」
「辞めたら食っていけないじゃないですか」
オールマイトが顔を覆った。
葬は見ないふりをして、もう一人の同行者へ声をかける。
「それからそちらは、塚内警部でしたか。前に一度お会いしていますね」
黒髪ショートヘアの特徴が薄く喜怒哀楽の読み取りづらい顔の男。
敵連合のお披露目となった最初の雄英襲撃の際に捜査指揮を取っていた刑事だ。
事情聴取の際に顔を合わせている。
「敵連合捜査本部で指揮をとっている。オールマイトとは私的な友人でもある。警察の介入は拒否と聞いていたが、今回は捜査情報の開示も含めているため参加させてもらった」
「事前に申告いただいていますので結構です」
既に信用のないヒーロー公安委員会が出張ってくるのならば即刻拒否していたが、協力体制にはあれど一応警察は公安とは別組織。
似たり寄ったりだろうから期待はしていないが、強硬に拒否するほどでもない。
世の中全てが白か黒かではないのだ。必要であれば、筋さえ通してもらえれば会うくらいはする。
「粗方の事情説明を俺からしようと思うけど、いいかな?」
「…ああ」
「本当に続けて大丈夫で?」
全くもって覇気のかけらも感じられないオールマイトの返事。
葬の懸念は黙殺された。
「まずはこれを見てほしい。君の身元がわかったんだ」
テーブルの上に出されたのは戸籍謄本ーいや既に除籍謄本か。
表記上の全員が既に死亡している。
「これは君の母親に当たる女性のものだ。ここにある死産の記載部分。ここに本来であれば君の名前が載るはずだった」
塚内が書面上を指し示す。
「私は死人ですか」
産まれてくる前に死んでいった子。
名前を付けられることもなく、その存在を消された子供。
犯罪に利用するにはうってつけだろう。
「君は脳無の素体について知っているか?」
「知らないと答えても白々しいだけでしょう」
「脳無の素体とされた死体は、幾つか摺り替えが行われていた。君の誘拐も、似た手口が使われている」
ちらりと塚内が相澤を振り返る。
「イレイザーヘッドの友人の遺体も、同じ手口で奪われて脳無にされた」
「塚内さん」
相澤が咎める。
「これは打合せにない内容だ。2人は関知していない事を前提に聞いて欲しい」
塚内はヒーローではない分戦闘力は劣るが、警察官として高い分析力とプロファイリング能力を有している。
これまでの捜査から、死柄木葬は理知的で狡猾。自身の周りは精鋭で固めるが、基本暴力による解決は望まず、交渉や対話による解決が妥当と判断すれば相手が敵対組織であっても応じる姿勢を見せる。
でなければ側近からの口添えがあったとは言え、今日この場にはいないだろう。
多少の情報開示は仕方がないとして、少しでもAFOから引き剥がさなければならない。
故に奴の非道を口にする。
同時に、これからの本題に入る前にヘイトを自身に向ける狙いもあった。
塚内は対象が黒霧であることを伏せ、ある程度の思考能力ー自我を有する脳無への葬の個性による干渉可能性を問うた。
葬はしばし考え込む。
基本、葬は脳無を使わない。あれは『弔』に用意されたモノであるし、ドクターの欲しがる個性に近い死体が出た時に融通する程度。
しかし補佐として脳無を扱うことも増えるからと、先日資料を頭に叩き込んだばかりだった。
脳無は基本、意思がなくプログラムされた行動しか取れない。
ただし、ドクターが保有する最上位種は素体から攻撃性の高い戦闘思考のヴィランを使っている。最上位種は生前の性格が反映された高度な自律思考能力を持っている。
“感情支配“で関与できる可能性は十分にあった。
「信じる信じないはおまかせしますが、私は脳無に関してはあまり関わっていない。生前の人格を呼び起こせるかは試した事がないので何とも。ただ、聞いている限りは、出来る可能性は無いとは言えない、とだけ」
最上位個体1体でも並大抵のヒーローは敵わない。
それが無力化できる可能性があるのなら、是が非でも抑えておきたいカードだろう。
「何かの交換条件で?」
「いや、あくまでお願いだ」
剣呑な空気が流れる。
背後に控える者たちからも、殺気にも似た鋭い視線が飛んでいた。
ならばと葬は否と応えた。
「死者は生き返らない。さっさと荼毘に伏してやるといい。死が救済である事もある」
葬は背もたれに身を預ける。
少しばかり口調を崩した様は、傲慢不遜にも見えるだろう。
相澤がぐっと拳を握りしめた。
「散々人死やら被害者を出しておいて何をとお思いかもしれませんが、嫌と言うほど見て来たから言っているのです」
多くを傷つけ、多くを奪った。
この腕をすり抜けていった仲間たち、長引かせまいとこの手で消えていった子たち。
それこそ、気が狂うくらいには見続けてきたのだ。
「…そうだったね…すまない。話が逸れたね、本題に戻ろう」
塚内が続いてテーブルの上に取り出したのは書類、それは荼毘に届けた事もあるもの。
血液鑑定書、いわゆる親子鑑定の結果報告書だ。
母子父子ともに99.99%以上が表記されている。
添付されている写真には葬と顔立ちのよく似た女性と、素の髪と瞳の色が同じ筋骨隆々とした男性が並んで写っていた。
変装なしで間に入れば、誰もが親子と疑わないだろう。
「鑑定にはDNAが必要な筈ですが、私の分はどこから?提出した覚えはありませんが」
「これに関してはある現場から採取した、とだけ」
雄英では人の動きが多過ぎて採取は困難だろう。更衣室なども清掃ロボが巡回して清潔を保っているし、住所として届け出ていたアパートは襲撃後すぐに業者を入れて髪の毛一本すら残していない。
おそらく、先日ホークスとやり合った時のものだろう。
奴の羽や服にはべったりと返り血がついている。
「ではこれが本当に私のものかどうかはわかりませんね」
パサりと手袋を嵌めた手に持っていた書類を卓上へ軽く投げ返す。
そも、戸籍も検査結果も、捏造できないものではない。
「許可してくれるなら後日改めて検査をさせてほしい。今日は正しい鑑定だと前提して話を進めるが、君の現状はAFOによるものと我々は見ている。人身売買に関わっていた男も、人伝に金を渡され君の身柄を引き取るように言われたと自供している」
「なるほど、マッチポンプを仕組まれたと」
誘拐し劣悪な状況に置いた上で、あたかも救いをもたらすかのように手を差し伸べて恩を売る。
高待遇で迎え入れ汚れ仕事含めとっぷりと浸し、従順である内は一切好きにさせる。
気づいたとしても、明言されずとも仲間は人質。
裏社会においてはAFO以上に力のある人物はおらず、表社会で生きたことがない子供が逃げ込める先はない。
誰かに助けを求めようにも、ヒーローが売買に関与した事実が邪魔をする。
恩と恐怖で人を縛る。
「あの人のやりそうなことだ」
当時母親である女性は入院していた病院で出産時死亡している。
病死とされているが、今となってはその死因すら怪しい。
脳無の素体調達はドクターの管轄であるし、死亡診断書の場所の記載が蛇腔総合病院の提携先なあたりで決定的だ。
加えて、ドクターは葬や弔の個性を突然変異と断言した。
突然変異種とは両親のいずれか或いは複合個性を引き継がずに、全く異なる個性が発現する事を指す。
それと断定するには、葬の両親を知っていなければならない。
ドクターが知っていたのだから、当然、AFOが関与していないわけがない。
「それと、君の父親についてだけど…会う気はあるかな?」
「おや?生きているので?」
これは本当に意外だった。
母親と思わしき女性に戸籍上婚姻歴はない。
だから結婚前に男性の方は殺されたのだろうと。
嬰児誘拐を企てるくらいだ、どちらかないしどちらもAFOの不興を買いでもしたか。
「ああ…」
未婚のまま母となったことに思うところはあったが、詮索する気はなかった。
「止めておきましょう」
誰かが息を飲んだ。
「…何故か聞いても?」
「私はヴィランですよ」
「お前まだヴィラン認定されてないだろうが」
「広義の方で、という意味です」
本来、ヴィランとは個性犯罪を繰り返しその危険性が認められた犯罪者に対して正式認定されたものを言う。これが狭義。
しかし現在では良く使われるヴィランとは個性使用の有無に関わらず罪を犯すあるいはその危険性を孕むもの、または単純に素行不良のものを指し、こちらが一般的に用いられる広義の意味でのヴィランである。
「お互い知らぬ存ぜぬでいた方がいいでしょう。もし子供孕ませといて逃げたような男なら会いたいとも思いませんし、善良な人なら尚更関わり合いには「私なんだ」
ぽつりと割り込んだ声ははっきりとは聞き取れなかった。
「オールマイト?」
ただ、その発生源が彼だと言うのは分かった。
今にも倒れそうな顔色で、しかし揃いの青い瞳は、しっかりと葬を見つめいていた。
「私が、君の父親なんだ」
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葬&レディ
は?
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