一輪花の咲くまで   作:No.9646

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5話 襲撃

 

───────────────

 

昼食時の大食堂ランチラッシュのめし処は混雑していた。

一流の美味しい料理を安価で頂けるのが売りとあって、盛況である。

トレイを持って空き席を探していると、麗日から声をかけられた。

 

「黒衣さん!」

「麗日さん」

「席探しとるん?ここ1つ空いとるよ?」

「じゃあ、お邪魔していいかな?」

「ど、どうぞ」

「ありがとう」

 

礼を言って、緑谷の隣に座る。

この前もそうだが、ちょっと微笑みかけるだけで顔を赤くするあたり、女慣れしていないらしい。

 

「緑谷君、怪我はもう大丈夫?入試から初日から昨日と怪我し通しのようだけど」

「う、うん…普通に動かすぐらいならなんとか…体力の関係で一気に治癒はできないから少しずつ治して行くことになってるんだ」

「そう、無理は禁物だよ。何かあったら声をかけて。手伝うよ」

「私も手伝うよ!」

「僕もだ!遠慮なく言ってくれ」

「皆ありがとう」

 

まだ人の親切に慣れていない緑谷はじ〜んと感極まっていた。

食事をしながら、話題は次に移る。

 

「でも、いざ委員長やるとなると務まるか不安だよ…」

「ツトマル」「大丈夫さ」

 

先ほどのH Rで、緑谷は投票の末クラス委員長に選ばれていた。

 

「緑谷くんのここぞという時の胆力や判断力は多をけん引するに値する。だから君に投票したのだ。光栄なことに一票入れてくれた人の期待には応えられなかったが…」

「あ、それ私」

「君だったのか黒衣くん⁉︎」

 

現在進行形で現場の中間管理職の一花には、なぜ委員長の役職が人気なのか理解できなかったので。

 

「でも、飯田くんも委員長やりたかったんじゃないの?メガネだし!」

 

眼鏡は何か関係あるのだろうか。

 

「“やりたい“と相応しいか否かは別の話…僕は僕の正しいと思う判断をしたまでだ」

「「僕…‼︎」」

 

飯田は思わず口に出たようでハッとしていた。

緑谷と麗日にガン見され、気恥ずかしさを紛らわすようにカレーを掻き込む。

坊ちゃん扱いされるのが嫌で一人称を変えていたらしい飯田は代々ヒーロー家業を営む家系らしく、鼻高々に兄を誇らしいと語る彼の表情は珍しく穏やかに笑っていた。

 

「規律を重んじ人を導く愛すべきヒーロー!俺はそんな兄に憧れヒーローを志した」

「素敵なお兄さんだね」

「ああ!」

 

和やかなお喋りがけたたましい警報にかき消されるのは、そのすぐ後のことだった。

 

『ウゥ〜‼︎ウゥ〜‼︎』

「警報⁉︎」

『セキリュティ3が突破されました。生徒の皆さんはすみやかに屋外へ避難してください』

 

機械音声が避難指示を繰り返し告げる。

 

「3?」

「セキュリティ3って何ですか?」

 

上級生によれば、誰かが校内に侵入してきたらしい。

一花はテーブルに乗って人波から逃れる。

行儀は悪いが、この際目を瞑ってもらおう。そんなことを言っている場合ではないようなので。

突然の非常事態警報に、食堂内は軽くパニック状態に陥っていた。

 

「どわー!しまったー‼︎」

「デクくん‼︎」

「緑谷くーん‼︎」

 

緑谷が人波に押し流されてのまれていった。

出入口に人が殺到していて、身動きが取れなくなっている。

一花は反対方向の厨房に駆け込むべきかと進めそうなルートを思案する。

食材の搬入口のある厨房からなら外に出られるし、あちらにはランチラッシュもいるだろう。状況確認でもしているのか。

 

「ん?」

 

視界の端に、飯田の姿が浮かび上がった。

比喩ではない。

飯田はふわふわと宙に浮いたまま“エンジン“を起動させると、バランスを取れず回転しながら壁に叩きつけられた。

 

「皆さん…大丈ー夫‼︎」

 

非常口の如く出入り口の壁に張り付いた飯田は、声を張り上げる。

侵入者はマスコミであること、危険はなく、落ち着いて行動するようにと伝えられ、生徒たちは徐々に落ち着きを取り戻していった。

その後、彼の活躍で食堂の騒動が治ったことで、緑谷の推薦で飯田が委員長となった。

 

「委員長の指名ならば仕方あるまい!」

 

一花はパチパチと拍手を送る。

しかし、思考はそこにはない。

果たして先ほどの騒動。

あれはただのマスコミの暴走だったのであろうか。

 

───────────────

 

マスコミの侵入騒動から数日。

一花を含め1ーAは本日のヒーロー基礎学「救助訓練」のため移動していた。

バスの中で、一花が携帯端末を操作しながら考えていたのは、先日のマスコミ侵入騒動の日のこと。

下校時には正門を使わないよう通達され、こっそりと様子を窺ってみれば、今朝方通ってきたその場所は瓦解していた。

警察車両に囲まれ実況見分が行われていて、マスコミ以外の何者かの関与が疑われた。

()()()の可能性もある。

ブッキングを起こした際の対処を検討しながら、一花はネットニュースに目を止めた。

『オールマイト!僅か1時間で3件の事件解決!』

記事には、雄英高校に教師として着任したオールマイトが出勤中に3件もの事件を解決したことが書かれている。

 

(…間に合うかこれ?)

 

発生場所は雄英から距離があった。

それを違う方向へ3件。後処理も考えると、常人であるならまず遅刻である。アレを常人に数えるかは賛否分かれるだろうが。

 

「あ、黒衣さんそれオールマイトのニュース?」

 

画面が見えたらしい隣の緑谷が露骨に反応した。

 

「ご、ごめん!ちょっと目に入っちゃっただけで決して覗き見たとかそういうわけじゃ」

「別に構わないよ。見るかい?」

「いいのありがとう。わあ、さすがオールマイトこんな短時間にすごいやここことここなんか結構距離あるし…ブツブツブツブツ…」

 

スマホを貸してやれば、緑谷はすぐに没頭して早口で呟き始める。

 

「黒衣さんありがとう」

「どういたしまして」

 

少しして記事を読み終わった緑谷がスマホを返してくれた。

すると、唐突に蛙吹が彼に声を掛ける。

 

「あなたの個性、オールマイトに似てる」

 

それは一花も薄々感じていた。

一見すれば単純な増強型。それも自壊するほどに強力な。

入試で0Pロボを殴り倒したパワーはオールマイトの如く強烈で凄まじいものであったが、その代償が()()だ。

切島の言う通り、似て非なる物と切って捨てることは簡単だが、つい最近発現したという緑谷の言も、どうも引っかかる。

確証はない。ただの勘ではあるが、この手の勘は無視するには惜しい気がしてしてならない。

それからは話が逸れて各人の個性の話になった。

 

「派手で強えっつったら、やっぱ轟と爆豪だな」

「爆豪ちゃんはキレてばっかだから人気でなそ」「んだとコラ出すわ‼︎」「ホラ」

 

蛙吹はなかなか剛担である。

ついでに、上鳴の「クソを下水で煮込んだような性格」というボキャブラリーもなかなかであった。

きゃらきゃらと適当にクラスメイトたちのお喋りに相槌を打っていれば、直にバスが目的地に到着した。

ついた先は、まるでテーマパークのような場所だった。

 

「すっげー!!」「USJかよ!⁉︎」

 

13号から施設の紹介がされる。

 

「その名も…嘘の災害や事故ルーム!」

(((USJだった!!)))

 

洒落にならない方でなかっただけまだマシか。(※あります)

居たのは災害救助のスペシャリスト、スペースヒーロー13号のみ。

やはりオールマイトは遅刻のようだ。

 

「えー始める前にお小言を一つ二つ…三つ…四つ…」

(((増える…)))

 

13号のありがたいお小言が終わった直後。

それに最も速く気がついたのは、プロヒーローの2人ではなく、一花だった。

チリ、とひりつく慣れた気配がした。

殺気、悪意、害心ー憎悪。

覗かれているような視線を辿ると発信源は正面広場噴水前。

視界に捉えたのは、まだ僅かばかりの点程度ではあるが、口を開こうとする黒い靄。

それは急激にぶわりと広がった。

 

「一かたまりになって動くな‼︎」

 

イレイザーヘッドの怒号が飛ぶ。

 

「あれは敵だ!」

 

ぞろぞろと靄から出てくる敵の集団。

 

(アレは…脳無?)

 

脳をむき出しにしたような黒い異形。

あの個体は覚えがなかったが、似たような物を一花は知っていた。

死体を基にして造られた改造人間。

薬物と個性で弄り回された悍ましくも哀れな動く肉塊(リビングデッド)

13号や生徒たちに指示を飛ばし、イレイザーヘッドは敵陣へと飛び込んで行く。

その戦いは正しくプロ。

しかし如何せん、数が多い。

 

「初めまして。我々は敵連合。せんえつながら…この度ヒーローの巣窟、雄英高校に入らせて頂いたのは、平和の象徴オールマイトに息絶えて頂きたいと思ってのことでして」

 

僅かな隙を這い出て、黒靄の男が退路を断つかのように立ち塞がった。

 

(敵連合…成程、こいつらか)

 

侵入者用のセンサーを掻い潜りヒーローの巣窟に入り込み、それも本校舎から離れた少数を狙ってく来ているあたり、やはりあの騒動はこいつらかと、イレイザーヘッドと同じ結論に至る。

流した情報はこれに使われているらしい。

黒靄の男はオールマイトがいない事を怪訝に思っているようだが、とりあえずニュースは見ろ。情報収集は基本中の基本だろうに。

 

「散らして嬲り殺す」

 

そして肝心、潜入中のこちらに連携を取れ。

後でクレームを入れようと決めた、次の瞬間。

視界が黒靄に包まれた。

 

───────────────

 

視界が晴れると、そこは壊れた建物に囲まれていた。

広場を含め7区画の内、倒壊ゾーン。

 

「来た来た!1番乗りィッ⁉︎」

 

襲いかかってきた男を軽くいなし、一発入れて沈める。

視界の端に、キラリときらめくコスチュームが見えた。

彼に迫る敵に、即座に銃を抜く。

当然殺傷力の低い弾だが、当たれば痛みはあるし、少しの間動きを止める事くらいはできる。

 

「イヅッ⁉︎」

 

チンピラは濁った悲鳴を上げる。それを駆け寄り様に蹴り倒す。

 

「大丈夫?」

「く、黒衣さん⁉︎」

 

脅威の真っ只中に突然放り出されたせいか、青山の顔色は悪い。

こちらが名前を呼んでいない意図も、理解していないようだ。

 

「さっきの黒靄の個性のようだ。分散された」

 

転送とは、また珍しいものを。

周囲を見渡すが、近くに他の生徒は居ないらしいーと思った瞬間、近くのビルの中から爆発音が聞こえた。

 

「彼は隠密行動には向かないなー合図したらランダムに撃って。当たっても当たらなくてもいい。撃ったら走って。いいね?」

「う、うん」

「何こそこそしてんだよ!」

「今!」

 

眩い光が連射される。

青山の個性“ネビルレーザー“。

四方八方に乱れ撃ち、襲撃者達が怯んだ隙に最も防備が薄い一点を目指し、一花の先導で駆け出す。

阻もうとする敵を殴り倒し、2人は敵陣を突破した。

瓦礫に紛れて身を潜める。

 

「大丈夫?青山くん」

「大丈夫…まだ…」

 

ぎゅるるるる…と鳴っているのは青山の腹の音だった。

彼の個性は反動があるらしい。

これ以上動かすのも得策ではない。

 

「どこ行きやがった⁉︎」

 

少し離れてはいるが、声が聞こえた。

 

「君は奥に隠れていて」

「黒衣さん…?」

「見つからないように、ちゃんと静かに隠れているんだよ?」

「でも…!」

 

shhーと唇に人差し指をあてる。

腹具合の悪い自分が足手纏いと悟ったのか、やがて青山は力なく頷いた。

 

「良い子だ」

 

ぽんぽんと同級生の頭を撫でる。

青山が奥に隠れるの見送り、自身も身を潜めながら移動する。

少し離れ、追っ手の前に自ら姿を晒した。

 

「いたぞ!」

 

瓦礫を足場に翻弄し、攻撃を避けながら引き離す。

 

「待ちやがれ!」

 

ある程度距離をとったところで、一花は足を止めた。

 

「本当に止まりやがった?」

「なんだぁ?息が切れたかい嬢ちゃん?」

 

周囲に他の生徒の気配はなく、カメラもない。

一花はくるりと襲撃者達に向き直る。

着いて来れたのは僅か数人。

誰も視線を避けようとはしない。

 

「そっちこそ大丈夫かい?お仲間が着いて来れて居ないようだけど。相手の技量くらい計れないと、この先生きていけないよ?」

 

尤も、先の事を考える必要などないのだが。

 

「あ?ガキが何言ってんだ?」

「ガキだからって油断すんなよ。ガキでもエリートだ。個性で計れって死柄木さん言ってたろ」

「死柄木?それがリーダーの名前かな?」

 

では、十中八九、アレが義兄ー死柄木弔というわけだ。

 

「バカ!ペラペラ喋んじゃねえよ!」

 

仲間内で言い合う敵を前に、一花は「はぁ」と態とらしい溜息を吐く。

 

「しかし、まあ、悩むところだね」

「ああ?」

未来のボス(義兄)がこんな程度の低い手勢しか集められないことを嘆くべきか、それとも私の擬態能力が優れていると喜ぶべきかー1つ質問をしよう」

「おい、何言ってやがんだ?」

 

立場がわかっているのか、意味が分からないと怪訝そうにするチンピラたちを気に留めてやることもなく、一花は続ける。

 

「誘拐犯が顔を見せる、連続殺人鬼が手口を明かす。それはどんな時だと思う?」

 

有無をいわせぬ突然の問いに、反射的にチンピラたちは考えて、回答してしまう。

 

「テレビだと、解決間際だよな?」「そうそう、警察とかが踏み込んでくるシーン」

「んなもん、生かして返す気がねえ時だろ?」

「正解」

 

ぱちぱちとおざなりな拍手を送りながら、一花は形の良い唇に笑みを浮かべる。

ぞわり。

男たちは奇妙な悪寒に襲われた。

作られた笑顔。

細められた眼。

そこに光はなく、ただただ底冷えのする闇があるばかり。

カチ、カチッ、と音がした。

どこから、何の。

カチ、カチ。

男たちは気付く。

知らず、歯が鳴っていた。

そこにいるのは、ただの学生、ただの子どもであるはずなのに。

 

「安心するといい。命までは取らないさ」

 

表社会においては、命は何よりも優先される。生きてさえいれば、大事には取られないだろう。

色々と聞きたいこともある。

そしてその情報を抜いたことを、ヒーローや警察に知られたくはない。

元々ヴィランなんてものは、イカれたモノとして扱われるのだ。

捕まる時に多少壊れていたとて、問題ないだろう。

連携がなかったのだ。後々こちらが(敵連合に)文句を言われる筋合いもない。

情報を吐かせるだけ吐かせて、あとは義兄のお手並み拝見、高みの見物といこう。

 

「は、はは、が、ガキひとりに、なにができるってんだ!な、仲間もいね、いねえじゃねえか!」

 

上手く回らない舌で、男は虚勢を張る。

 

「残念だけれど、彼らはここには連れてきてあげられないんだ」

 

コツリ、と一歩踏み出せば、纏った黒衣が揺れる。

 

「ここから先は視聴制限付きだ。良い子には見せられないよ」

 

───────────────

 

両手両足を撃ち抜かれた弔は、黒霧のワープからずりずりと這い出る。

 

「ってぇ…」

 

痛みに呻きながら、弔は画面越しの先生へ話が違うと不満を述べる。

 

『違わないよ』

 

ただし見通しが甘いと講評が下される。次を頑張れと。

 

『死柄木弔‼︎次こそ君という恐怖と世に知らしめろ!大丈夫、葬も手伝ってくれる。葬が入手してくる情報をどう活かすか、しっかり学ぼう』

 

弔は顔を上げるのも面倒で視線だけ画面に向けてほぼ聞き流していたが、知らない名前が出たので、つい気になって訊ねた。

 

「葬?誰だよそれ」

 

その問いに、画面の中の先生が何か思い出したように「ああ」と声を漏らした。

 

『そう言えば、弔にはまだ会わせた事がなかったか。別働で仕事を任せていてねー死柄木葬。君の妹だよ、弔』

 

───────────────

いちかおねえさん

よい子のみんなは見ちゃダメだよ!

…ん?連中?生きてるよ?

 

とむらおにいさん

は?妹?は?(混乱)

後で義理のと聞く。

 

黒霧ママ

この後、弔のお目付役だからと上司の娘さんからガチ目のクレーム来た。




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USJ編でした!
ちょっぴりヴィランモード。

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