おかげさまで先週ランキング日刊総合18位まで上がりました!
「な、なんだぁ!?」
けたたましく鳴り響く警報に、トゥワイスは肩を跳ねさせた。
つい今しがた、個性で造った葬の分身が消えた。
葬に頼まれて造った複製。最近随分忙しいそうだったから、助けになればと。
『多数のヒーローの接近を確認!!戦闘態勢に入れ!!繰り返す!!…』
霰のように指示や伝令が飛び交う。
やがて山荘の壁が崩れて、ヒーロー共が雪崩れ込んで来る。
トゥワイスも個性で数を増やして応戦しようと飛び出そうとした。
なのに。
「どうなってんだよ」
転ばされ、転がされ、無数の紅い羽根に鋒を向けられて囲まれている。
「なァ…!」
壊れて外れた扉の前には、紅い翼の持ち主が、
「おい、おいって、なァ⁉︎ホーク」
頭を上げただけで、目の前に“剛翼“が突きつけられる。
「抵抗しないで下さい。あなたはこのまま拘束し警察に引き渡します」
「ちょっと…待ってよ…あああ、ねぇえ」
じわりと、トゥワイスの眦に涙が浮かぶ。
彼女は言った。彼は、ホークスは裏切る以前に立っている場所が違うのだと。アレがいるのはこちら側ではないのだと。
(「お前が仲間を大切にする気持ちは尊重すべきだとは思う。ただそれで目を曇らせて、守るべき仲間を危険に晒し、失う事態に陥った時。お前はそれを背負わなくてはならない」)
「葬ちゃんの言った通りだ…!トガちゃんの思いまで…俺ァ…!」
俺の居場所はあそこじゃないと、自由に飛びたいと言ったこいつを。
「信じて…信じてあげねえと、可哀想だって、思ったから…誰かが信じてあげねえと可哀想だって…!」
かつて信じた男は、静かに「ありがとう」と言った。
あなたは良い人だから、罪を償ってやり直そう、戦いたくないと諭すホークスに、トゥワイスは“剛翼“で切りつけられながらも、立ち向かった。
ボロボロになりながら、ぼろぼろと涙をこぼしながら。
分身体も皆、一様に泣いていた。
ホークスも何故か。苦しそうな顔をしていた。
2人の攻防は、あまりに一方的だった。
「生成速度は目を見張るものがありますが、倍々で増やしていくにつれ耐久性が低くなってますね」
ホークスの“剛翼“が、トゥワイスの『
速すぎて、見えなかった。
「高速化が進む敵退治。何でだと思いますか。諦めない人間が、ヒーローにとって最も恐ろしいからです。経験上、意志の固い人間は気絶してくれない」
圧倒的な実力差があるにも関わらず、立ち向かってくるトゥワイスも。
「だから、どっちも諦めないから…殺すしかなくなる」
「おめぇらは…ヒーローなんかじゃねえ…いつもそうだ、誰も彼も!あぶれた人間は切り捨てられる!」
残される側に自分たちはいないのだ、いつだって引かれる側だと。
「ただ皆の幸せを守るだけだ!」
(「後ろに守りたい仲間がいる!」)
脳裏に、あの時の葬の言葉がちらついた。
「連中に伝えておくよ」
トゥワイスの頭目掛けて、風切り羽を振り下ろす。
「伝えなくていいぜ!聞こえてる」
阻んだのは、蒼い炎。
とっさに分倍河原を抱えて回避する。ごろりと転がる先、ホークスの頭を荼毘の足が踏みつけた。
「俺に気付いてなかっただろ!?ミスってんじゃんかヒーロー!」
さらに勢いを増す炎に半身に火傷を負いながら、ホークスは分倍河原を運び出そうと思案する。
けれど、動けないだろうはず彼は、諦めなかった。
「燃やせェ!!」
僅かの隙を突いて分身をつくり、ホークスを拘束させ本体が逃れる。
荼毘が高火力で炎を放つ。それで決したかのように思えた。
トゥワイスは荼毘と手を打ち合い、駆け出す。仲間の元へ、彼らを助けねば。
しかし、そんな彼の前に、影が落ちた。
No.2ヒーローホークス。
速すぎる男。
炎に紛れて外に飛び、回り込んだホークスはその身を炎に焼かれながら、硬化させた風切り羽を、トゥワイスの背に突き立てる。
皮膚を突き破り、肉に刺さる感触。
心臓目掛けて突き刺す。
その、はずだった。
「!?」
トゥワイスの身体が、ホークスの身体が、わずかに青く発光する。
2人の身体は何かに押し戻され、弾かれ、離れた。
まるで、同極の磁石が反発し合うかのように。
「トゥワイス!!」
駆けつけてきたのは、敵連合のマグネ。
マグネの個性“磁力“は、範囲内の人物に磁力を付与する。
男性はS極、女性はN極。同じ性別のホークスとトゥワイスは、当然反発する。
「ぐぅっ…!」
ホークスは再度トゥワイスにとどめを刺そうと迫る。
あれでは浅い。
「行かせるかよ」
蒼い炎がそれを許さない。
「しっかりしなさいトゥワイス!死ぬんじゃないわよ!マスキュラー!こっち手伝って!」
「ああ⁉︎今いいとこなんだよ!」
「こっちによって来る奴片っ端からぶっ飛ばしてくれりゃいいのよ!」
「なんだそういうことかよ。そんなら任せとけ!」
階下で暴れるマスキュラーとムーンフィッシュへマグネが呼びかける。
「ま、て…がはッ!」
荼毘の足がホークスの腹を蹴り上げる。
その隙にも、トゥワイスはマグネに担がれ遠のく。
「よくもやってくれやがったな!よくもトゥワイスを!」
「それが、仲間をやられた奴の顔かよ…!」
荼毘の顔は、まるで、嗤っていた。
「なんって言い草だ!ひどい!涙腺が焼けちまって泣けねえんだよ俺ァよ!」
踏みつける足から、炎が吹き出し、さらにホークスの身を焼く。
ホークスはもはや声にならない痛みに悲鳴を堪える。
「連合の素性を調べた…!お前だけだ!何もでなかったのは!」
死柄木兄妹はオールマイトの関係者。でも、こいつは。
「誰だ、お前は」
荼毘の唇が、ひとつの名前を紡ぐ。
ホークスは驚愕に目を見開く。
「……!」
言葉を失った。
だって、その名前は。
「トゥワイスよりも誰よりも、お前は俺をマークしなきゃならなかった」
死柄木葬だけではなかった。
「連合も死柄木も、最初からどうでもいい」
初めから自覚があっただけ、最初からそのつもりだっただけ、こちらの方がより注意していなければならなかった。
「1人の人間のたった一つの執念で世界は変えられる」
2人を出会わせてはいけなかった。
最悪の組み合わせ。
ホークスにとっては、より一層。
「じゃあなホークス」
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「ホークス!」
間一髪。
床に押さえつけられたホークス。彼を踏みつける荼毘。
今にも炎を放とうする荼毘へ一撃を与えたのは、黒い影だった。
ホークスの元、彼をヒーローとしての師と仰ぐインターン生、ツクヨミである。
背に庇うホークスへ、黒影がマントでその身を焼く火を消す。
「フミカゲ、まズいヨ…」
「言うな!」
「ホークスの背中が…ナイ…!」
荼毘に焼かれた背中は、彼の“剛翼“は、憧れた紅い翼が。
「雄英の…ダセェなァ、本当に学生まで引っ張り出してんのかよ。葬の言う通りだ」
何の因縁か。
己と黒衣の身柄の引き換えを持ちかけた男との再会であった。
「アイツ切れてたぜェ。
荼毘は饒舌であった。
「何しに来た?助けに来たか?何を救けに来た?
「俺は、ただ師を案じただけだ」
「思考停止」
荼毘から、炎が放たれる。じゅうと足が焼ける。
「考えろよ焼き鳥ども。本当に救いを必要としてるのは誰だと思う?」
ここでは狭すぎて炎を避け切れない。光で黒影も力を出せない。一刻も早くこの場を離れなければ。
ホークスが焼けた喉でか細く発する声を拾いツクヨミは小声で指示を求めた。
奴の言葉に耳を貸してはいけない。荼毘のお喋り、これは時間稼ぎだ。
「誰かを救けるために誰かを殺すのがヒーローか?トゥワイスが死んだら、そいつは立派なヒト殺しだ。躊躇いもなく刺しやがって。そりゃあまあ殺せるよなぁ。なんせガキだって殺せんだから。そいつがお前のオトモダチに何したか知ってんのか?知らねえよなあ?」
「今、行け」
黒影が牽制、ツクヨミはホークスを抱えて手すりを飛び越える。
炎からは逃れた。
ここならばと黒影を纏う。
『黒の堕天使』で翼を得て、飛び立とうとした、が、しかし。
「こんな事もあろうかと、前2発弱火で節約してました」
荼毘が、奴の蒼炎が再び迫る。
強すぎる蒼い光に、翼は失せた。
ツクヨミは腕の中のホークスを抱きしめ庇う。
その時。
「「!?」」
特大の氷山が出現した。
「VIOLET!1人でも多く我らが同胞を守れ!国家の犬どもめ、楽に死ねると思うな!」
外典である。
どうやらリ・デストロたちは逃げおおせたらしい。
荼毘にとってはどうでもいい事だが、この戦い、そもそも超常解放戦線側とヒーロー側では勝利条件が違うのだ。
ヒーロー側は殺さず、殺させず、死柄木弔以下幹部から構成員全ての一斉拿捕。
超常解放戦線側は、連中の作戦を失敗させさえすればいい。
捕える一択のヒーローに対し、こちらは何でもいいのだ。
それこそ、逃げの選択肢がある。
ホークスが内情を調べまわっているのを逆手にとり、葬は直前になって内部構造に手を加えた。
既存に加え新たにひとつ、逃走ルートを用意した。
それも離れた外部への脱出通路である。
耐久性などの通路を作る場所だけあらかじめ定め、途中まで工事をした状態で上層部の一部のみに情報を伝えていたのだ。もしヒーロー側にバレてもまだ未開通。
トゥワイスの“二倍“で造られた複製にセンサーを仕込み、崩れたら報せが入るようにして敵陣へ。
ヒーローの誰かが崩せばそれでよし、誰も手を出さなければ警告込みで自決、行動不能になったとしても、あらかじめ致死毒を服毒している複製は間も無く消える。
複製でも本人と同じように自我意識を持つと言うのに、イカレてんなぁと己を棚上げして荼毘は思っていた。
新たな通路が開通したのはつい今しがた。複製に仕込んだセンサーが途切れたのが合図。
当然、ホークスはその通路を知らない。何せ存在しなかったのだから。
隠し通路の開通の役目を担ったのはー
「ヤクザ君!トゥワイスを治してちょうだい!」
葬の指示通り、個性で寸分違わぬ精度で逃走通路を開通させ、外で指揮をとっていた治崎の元に、トゥワイスを背負ったマグネが助けを求めた。
「ああ?」
治崎の“オーバーホール“ならば、通路の開通も封鎖も造作もない。
殿の部隊が抜けた後、通路は潰す。その時にヒーロー連中が巻き込まれようが、治崎にとっては知ったことではない。
「連合どもは使えない連中の集まりか?」
目眩しと感知役に使えそうな個性だからと配置されたマスタードは任務を拒否して車の中で震えている。
彼は良くも悪くも、葬と違って年相応の少年だった。
勝算が高く一方的に嬲るだけならできても、こんな、血と泥の混ざり合う乱戦など出られるほどの経験も覚悟もなかったのだ。神野の時は期間が空かなかったから押し切ったが、良くも悪くも時間が彼の精神を落ち着かせてしまった。
とりあえず余計なことはするなと車に積んで、後は葬が処分を下すに任せる。あれは年少者に甘いところがあるから、頃合いを見て家出少年扱いにして帰すか、施設で引き取るなり悪いようにはしないだろう。
治崎は渋々、血みどろの死に損ないなぞ触りたくもないが、本当に渋々手袋を外してトゥワイスの背中に触れる。
失血性ショックか意識はない。
個性絡みで人体をどういじればいいかは学んでいる。“オーバーホール“で瞬く間に分解修復してひとまず傷を塞ぐ。
全身含めたそれこそオーバーホールではないので意識は戻っていないが、これで死ぬことはなかろう。
「さっさと運べ」
除菌ティッシュで念入りに手を拭く。
「ありがと!お礼にキスしてあげる!」
「失せろ汚物」
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「ってぇ…ぶっ放しやがってあの氷ヤロウ」
場所は戻り山荘内。
氷の塊に吹っ飛ばされた荼毘は文句を言いながら上体を起こす。
鳥どもは逃げおおせたらしい。
早々に荼毘は2人のことを頭の隅から追いやった。
「まあいいか…っ」
通信機を操作し、この場にいない共犯者に繋げる。
階下には、地下から突き出た巨人の腕が覗いていた。
「よお、補佐サマ」
『何かあったか?』
「マキアが起きたぜ。
『把握している。今向かっている最中だ』
「そうかよ。ああ、そうだ。例のヤツだが、こっちのタイミングでやるぜ」
『その件に関しては任せる。好きにやれ』
「ああ」
荼毘はにいっと口角を吊り上げる。
通話を切って、眼下に見つけた人物の前に降り立った。
「ヒっ!?」
そろそろ退避しようというところに急に降ってきた人影に、男の引き攣った悲鳴が上がる。
「ひと目見た時からいいなと思ってました」
「なんの話だ!?」
荼毘は、慌てふためくスケプティックを掴んだ。
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トゥワイス
重体。
逃げ前提なので傷だけ塞がれてそのまま移送。
まだ息はあるけど意識不明なので個性は溶けた。
荼毘
告白()
スケプティック(ノンケ)
おい待て待てなんの事だ!?
ここまでお読みいただきありがとうございます。
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はい、荼毘の告白回でした(笑)
アニメの告白()はどうしても入れたかった!
漫画の戦闘描写を文字に起こすのとっても難しい!これが精一杯!
トゥワイスは原作で、自分が治崎連れてきたせいでマグネが死んだのを気に病んでいたので、ここでは逆転させてみました。(※治崎の最後の発言は差別を是認するものではありません。)
久々に脱落組も再登場。マスタードは多分受験ノイローゼからかなって。嬲るのはできても戦えはしなさそう。ムーンフィッシュはあれは癖。マスキュラーはきゃっきゃしてます。外担当の乱波はぶすくれてる。
そして今回は声を大にして言います!
トゥワイス救助できました!これは!救いのあるお話です‼︎
割食ってるホークスたちヒーロー側にも何かしら用意するんで‼︎
…まあ描写ないだけでネームドもモブも被害酷いしまだあの舞踏回残ってますが。