一輪花の咲くまで   作:No.9646

6 / 86
閲覧、お気に入り登録、評価、脱字報告等ありがとうございます!


6話 体育祭①

───────────────

前代未聞のヴィランによる雄英高校襲撃事件。

それは例によって例の如く、オールマイトとヒーローたちが応援に駆け付けたことで幕を閉じた。

あの後、三下共から情報を聞き出した一花は、義兄になる死柄木弔に加勢せず、本当に高みの見物を決め込んだ。

敵は数こそ多かったが雑兵で、一部を除き各施設に散らばった生徒たちには大きなケガはなかった。

除いた一部は、緑谷が手足の複雑骨折。オールマイトは腹部からの出血と、13号は上腕から背中にかけての裂傷を負ったが、命に別条なし。

真っ先に立ち向かったイレイザーヘッドが意識不明で病院へ搬送。両腕粉砕骨折、顔面骨折、何らかの後遺症が残ることをも危ぶまれたがー

 

「お早う」

「相澤先生復帰早ええええ‼︎」

 

事件2日後に重傷にも関わらず包帯ぐるぐる巻きのミイラ状態で復帰した。

 

「先生、無事だったのですね‼︎」

「無事言うんかなぁアレ…」

「一応五体満足(?)だからまあ無事と言えば無事なんじゃ?」

 

仕事柄、欠損くらいは割りかしあることだ。死体なんてその辺に転がっているしよく作る。

人的被害はその程度だった。

尤も、最たる被害は雄英ひいてはヒーローへの信頼であろう。

最高峰のヒーロー養成校、多数のヒーローがいるにも関わらず、大勢の未成年を預かる場所に大量のヴィランの侵入を許した。

70余名の逮捕者を出した弔の指揮官としての能力は横に置き、初陣(デビュー)の結果として敵連合の名前は売れた。

義父も最初からこの計画が上手くいくとは考えていなかったようで、弔に経験を積ませる目的もあったようだ。

余計に手出しをしなくて正解である。

敵連合が撤退した後、当日と翌日は臨時休校となったが、一花に休む暇などなく。

義父に報告を入れて、部下へ指示を出して、敵連合には黒霧と通話のみではあったが挨拶し(クレーム入れ)てと忙しない2日間であった。

案の定、敵連合は潜入員()の存在を把握しておらず、義父から受け取った情報を鵜呑みにしていたらしい。

次に何か動くなら連携をと釘を刺しておいた。

 

「俺の安否はどうでもいい。何よりまだ戦いは終わってねぇ」

 

神妙に、相澤が告げる。

 

「雄英体育祭が迫ってる!」

 

───────────────

 

体育祭当日ー天気は晴天、絶好の体育祭日和である。

雄英高校体育祭。

それはかつてのスポーツの祭典に代わり、全国的な注目を集める一大イベントの一つだ。

年に一度のチャンスとあり、スカウトを狙うヒーロー志望のヒーロー科やリザルトを目指す普通科、企業へのアピールに燃えるサポート科の生徒たちは虎視眈々と目を光らせている。

一時は開催を懸念する声もあったが、例年通り開催することで雄英の体制は盤石だと示す意図がある。

ただし、警備は例年の五倍。全国各地からプロが招集されている。

一花としては、通常警備であるなら部下の数人でも引き込むことも考えていたのだが。

青空高らか、プレゼントマイクの絶好調なビッグボイスが響き渡る。

一花はクラスメイトたちと共に控え室で待機していた。

やがて入場のアナウンスが流れ、生徒一同がステージに居並ぶ。

 

「選手宣誓!1ーA爆豪勝己!」

 

爆豪の選手宣誓は面白いくらいヘイトを稼いでいた。

話の長い校長は3年ステージとあって、1年ステージは早速の第一種目発表となった。

3年ステージのタイムスケジュールは校長に合わせて組まれているのだとか。毎回校長は時間ピッタリで終わらせるらしい。

 

「さて運命の第一種目‼︎今年は…コレ!」

 

第一種目は障害物競争だ。

このイベント、一花自身はそれほど乗り気ではない。

後々の仕込みの為にほどほどの成績は取りに行くつもりであったが、そこに義父から注文がかかった。

 

「せっかくだから、上位獲っておいで。手塩にかけて育てている有数のヒーローの卵より、君の方が優秀だったら、奴の鼻を明かせるだろう?」

 

何がせっかくなのか。

そんな義父の意向を汲んで、優勝までしてしまうと後が面倒なので、最終2〜8位が狙い目である。

 

「さあさあ、位置につきまくりなさい…」

 

スタートの合図に、一斉に狭いゲートに生徒が殺到する。

押し合い圧し合いのところに、冷気が流れた。

地面が凍てつく直前に、一花は跳ぶ。

パルクールの要領で壁を蹴り、サポート科の生徒だろう背負った大荷物の上に着地し、瞬時に再度蹴る。

 

「失礼」

「ぎゃ!」「イテェ!」「おい!」

 

なるべくガタイの良い生徒を踏み台にして行く。

悲鳴と苦情を無視して壁と人間を足場にして抜け出れば、そこには犇く仮想敵ロボの群れがあった。

尻込みし足を止める生徒たちを横目に、一花はそのまま群の中に踏み込んだ。

 

「ブッコロ!」

 

やって来た獲物にロボが殺到する。

瞬時に状況を判断して、抜道を見極める。

図体がでかい分埋められない小さな隙間も多い。

人1人通るには十分だ。

時には身を屈め、振り抜かれる腕の下を潜り抜け、時には跳躍し、踏み台にして走り抜ける。

これぞ障害物走。

前回は壊す作業があったが、避けるだけなら更に楽で良い。

 

『おいおい第一関門チョロいってよ!じゃあコイツは⁉︎第二関門!落ちたくなけりゃ這いずりな!ザ・フォール‼︎』』

 

第二関門は大仰な綱渡りだった。

これだけ太く丈夫なロープがしっかりと張られているのだから、そう危なくもあるまい。

先がつかえていれば一旦落ちて雲梯の要領で進む。

驚いた生徒が数人落ちて行ったが、見えづらいがセーフネットもあるようだし問題ないだろう。

 

『第三関門!怒りのアフガン』

 

見ればわかる地雷を避けてすいすいと駆け抜ける。

地雷よりネーミングの方が気になった。

USJといい第三種目といい、色々と問題になりそうなネーミングは控えた方が良いのではないだろうか。(T○Lもあるよ!HAHA!(ちょっと高めに)byねずみっぽい校長)

結果、危なげなく予選通過。

個性を使う場面もなかったし、予選通過で目立たない位置という意味では丁度良い。

上位42名と第二種目が発表される。

 

「コレ!」

 

第二種目は騎馬戦だ。

各選手に第一種目の順位に応じて割り振られたポイントを合計として、鉢巻を取り合うというもの。

そうすると、前はいいとして、後方の守備を厚くしたい。

尾白と常闇辺りに声をかけるかと、視線を巡らせる。

 

「尾白君」

「………」

 

目当ての人物に声をかけるが、尾白は焦点の定まらない目をして、何も応えない。

 

(これは…誰かの個性を受けたか)

 

恐らく自身と同じく精神干渉系だろう。

既に誰かのツバがついているなら他を当たろうかと離れようとした時、声をかけられた。

 

「なあ、あんた」

 

相手は紫色の髪をした気怠げな男子だった。確か、教室に宣戦布告に来た普通科の生徒だ。

 

「何かな?」

 

途端、パチリと額に羽虫が当たった様な感覚があった。

 

「なるほど。コレは君か」

「…?」

 

怪訝そうな顔をする男子に、一花はそっと耳元に顔を寄せて囁く。

 

「同系統個性同士は耐性が高い場合が多い。今後の参考に」

 

驚愕の表情を見るあたり、図星らしい。

 

「声をかけられたという事はチームアップのお誘いという事でいいのかな?」

「あ、ああ」

「ではよろしく。私は1-A黒衣一花。個性は眼を見た相手の精神を操る“感情支配“」

「!…まあ…組む以上自己紹介はするよ。1-C心操人使。個性は“洗脳“。声に応答した相手を簡単な命令なら操れる」

「もう1人はどうする?君の個性で引っ掛ける?それとも余るの待つかい?」

「個性解けとは言わないんだ?」

「今日は個性使用可の体育祭だろう?審判も何も言って来ないしね。私としてはもう1人も引っ掛けてもらった方がいいかな。1人だけこの状態だと怪しまれるし動きづらそうだ」

 

協議の結果、心操がもう1人確保する事になった。

程なくして、心操は心ここに在らずの男子生徒を連れて戻って来た。

 

「騎手は任せていいのかな」

 

騎馬を組むにあたって、一花は心操に騎手を任せた。

一花を騎手にした場合、彼女の個性を知っているA組の殆どには敬遠される。

鉢巻を首から上に巻かないといけないルールがある以上、個性の餌食になる可能性が極めて高いからだ。

狙われる事が少なくなる分、防御はし易いが警戒され攻めにくい。

 

「俺が騎手の場合、狙われ易いけど警戒もされ難いから獲りに行き易いってわけか…」

「私が前騎馬になっていれば、正面は殆ど警戒する必要はない。背後と右翼面は尾白君の尻尾で防御すれば、護るのは左翼面だけでいい」

 

終盤にPを獲りに行きたい心操の意を汲み、4人の身長差も考慮して騎手は彼に決まった。

前衛に一花、右翼に尾白、左翼にB組の男子、騎手に心操を据えて。

プレゼントマイクのカウントダウンで、第二種目残虐バトルロワイヤル騎馬戦が開戦した。

 

「じゃあ、さっきの作戦通りで。一旦ポイント手放してフリーになろう」

「了解。2時の方向奥にB組で固まってる騎馬がある。手前の葉隠さんー透明の子狙いの振りして近づこう」

 

狙い通り、B組の女子に心操はPを取られた。

後はしばらく様子見だ。周囲の隙を窺いながら、近づけないふりをして体力を温存する。

残り6分弱で上位の2組が動いた。

 

「心操君、一旦距離を取ろう。たぶん上鳴君の放電が来る」

「わかった」

 

八百万が大きめの“創造“を発動したのを見て、轟のチームから離れる。

読み通り、周囲の複数チームを巻き込んだ上鳴の無差別放電が炸裂した。

直後、轟が周囲の地面にを凍らせ多数のチームの足を縫い止める。

 

「ラッキーだな。動けない連中のP貰いに行こう」

「ああ。そうだ、心操君。彼らには『こう』声をかけるといい」

 

轟が取りこぼしたPを回収に、残ったチームに近づく。

 

「おい、大丈夫か?」

「おう…」「ええ…」

 

氷で四苦八苦しているところに心配する声をかけられ、彼らは反射的に応えてしまった。

心操の個性、“洗脳“の発動条件を満たした彼らはぼんやりと空を見つめたまま動かない。

 

「ははっ、面白い程引っかかるな」

 

遠慮なくPを貰い受け走り抜ける。

 

「…はっ⁉︎」

「おや?お目覚めかな尾白君?」

 

騎馬とぶつかった衝撃で心操の個性が解けたらしい。

 

「悪いが、今しばらくはそのままそうしていてくれ」

 

首だけ後ろを振り向いて、今度は一花が個性で“容認“をかけた。

一瞬のことである。

 

「ああ、わかった」

 

何の疑問も持たず、尾白は肯首する。

 

「へえ、それがあんたの個性?思考とか応答は可能なんだ」

「ああ。自律思考が残る分、君のように意のままに動かせるというわけではないけどね」

 

嘘だが。

 

「…よくあの試験通ったね」

「そこは地力さ。どうする?もう1組くらい貰っておこうか」

「ああ」

 

同じ要領でB組の男子のチームからもPを奪う。

そこでタイムアップとなった。

 

『早速上位4チームを見てみようか!1位轟チーム‼︎2爆豪チーム‼︎3位鉄ってアレェ⁉︎オイ‼︎心操チーム⁉︎いつの間に逆転してたんだよオイオイ‼︎4位緑谷チーム!以上4組が最終種目へ進出だー‼︎』

 

無事、第二種目も通過となった。

 

「お疲れ様」

「こちらこそ」

 

一花と心操は簡単にお互いを労い、2人とも個性を解く。

 

「「…はっ!」」

 

状況に理解が追いつかない様子の後ろ騎馬2人に一花はにっこりと微笑みかけた。

 

「君たちもお疲れさま。協力感謝するよ。おかげで最終種目進出だ、どうもありがとう」

 

理解しきれず周囲を困惑顔のB組の男子と、理解したのか頭を抱えて座り込む尾白。

かくして、体育祭午前の部が終了した。

 

───────────────

 

一花

精神干渉感知&耐性高。

やられるとちょっとぱちっとする。自転車走行中に虫とぶつかる衝撃。相手の出力高いと耳鳴や眩暈がする。

 

心操

精神系の個性であの入試通ったんだ…

こんな個性でもやっぱりヒーロー目指して良いんだと親近感。

耐性…なるほどそういうのもあるんだ。参考にしよう。

 

尾白

またしても黒衣さん…!

洗脳が解けた直後に騎馬組んで避けようがない状態で再度個性の餌食になった。

この2人のコンビ凶悪すぎだろ…

 

庄田

原作通りなのでセリフもなかった。

「動ける恵体」それってde




ここまでお読みいただきありがとうございます。
感想・評価・お気に入り登録・ここすき等いただけると幸いです。喜びます。

体育祭〜騎馬戦編でした。
心操くん登場。
傑物の真堂先輩は個性“振動“で揺れに強い、炎熱系も火や熱に強いということなので、類似個性は耐性が高いのではと想定しています。
相澤先生(発動系対人特化)の時の入試ってどんなんだったんでしょうね。

更新頻度はどれくらい?※目安です

  • 文量多めで週1がいい(7千程度〜)
  • 文量少なめで週2がいい(3〜5千程度)
  • 今くらいでいい(5千程度で週1)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。