一輪花の咲くまで   作:No.9646

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65話 先を見据えて①

 

蛇腔および群訝山荘を中心とした大規模戦闘終結後、超常解放戦線は声明を発表。以降最低72時間の戦闘活動停止を宣言した。

 

「あ、葬ちゃん!」

 

時間間際に葬が連合の面々の前に顔を出すと、すかさずトガが駆け寄ってきた。

 

「具合大丈夫ですか?」

「ああ。ちょっと視界がチカチカするくらいで、動く分には問題ないよ」

 

個性起点の左眼は眼帯をしている。

過負荷を掛けた左眼の他、個性増強薬の副作用で視覚に感覚過敏を起こして失明しかけたのである。

3日ほどベッドに縛り付けられた。比喩ではない。

 

「トゥワイスとスピナーは?」

「あー…トゥワイスは合わせる顔がないって引き篭っちゃってさ」

「マグ姉が一緒です。スピナーくんは弔くんの所です」

「その内出てくんだろ」

 

あまり長引くようなら今後は治療も検討しよう。メンタルケアに関してなら“感情支配“は有用だ。

 

「葬ちゃんも無理しちゃダメですよ」

「そっちにも言ってやるといい」

 

身体のボロボロ具合なら荼毘こそである。

荼毘は髪色を黒から地毛の白に戻したままであった。エンデヴァーたちを前にした時と変わって今は気怠げにソファでくつろいでいる。テンションの落差が激しい。

 

「スケプティック」

 

床上げの挨拶を切り上げて、通信端末を操作して呼び出す。

 

『その歳で重役出勤とはいいご身分だな。碌な大人にならんぞ』

「連絡手段が無くてね。状況の確認と今後についての話をしたい。リ・デストロは?」

 

面会謝絶の上、通信機器類に制限かけられたのだ。口頭では聞いているが、限度がある。

トップ2人の不在にスケプティックがブチ切れたが、レディが「二十歳と16のガキ2人いないだけで潰れる組織なんざ潰れちまいな」と寄せ付けなかった。

 

『臨時会議室だ』

 

キーボードを叩く手を止めずにそれだけ言って通信を切り、スケプティックはストローを挿した缶コーヒーを啜る。

葬の直属配下の女(モンペ)から話は聞いたが、とんでもないことをする。

せかせかとこまねずみのように忙しなく動き回っていたのは知っていたが、荼毘と共に現ツートップを陥れ、難攻不落のタルタロスでAFO暗殺を成功させるとは。

これで名実ともに表裏両サイドの玉座が空になり、混沌は加速する。

異能解放軍ーリ・デストロの悲願が達成される日も近い。

異能解放軍はリ・デストロの血で保っていた。

今は死柄木弔の許に下り、最高指導者が二十歳を過ぎたばかりの若造とその補佐が10代の小娘という有様だが、依然としてスケプティックたちが仰ぐのはリ・デストロだ。

担ぐ神輿は軽い方がいいが、貧相では困る。

破壊の権化と化した死柄木弔、現No.1に作られ捨てられた荼毘、そして英雄の血を継いだ死柄木葬。

ヴィランたちが恐れ慄き、世界平均を遥かに下回る犯罪発生率を数十年に渡り保持し続けた“平和の象徴“。

方向性は違えど、血は争えないものだ。

スケプティックは己が天才であると認識している。

自負ではない。単純に事実だ。

世の中には自分のような一握りの天才とその他多くの凡才がいる。

凡才共はただ上を見上げて間抜け面を晒すだけだが、凡才の中にはごく稀に秀才と呼ばれる連中がいて、己ら天才に届かんと手を伸ばし齧りつこうとする。

それで身を滅ぼす者もいる。そういう連中が顧みられるかと言えば、答えはNOだ。

それに天才の中にもいるのだ。嵐のように現れ、遥か高みから時々思い出したように振り返って、早く来いよとばかりに手を振って駆けて行ってしまうのが。

鈍間と嘲笑う事もしない。嘲笑するということは相手を上下はあれど同じ舞台にいると認識しているからだ。

ああいうのはそれすらしない。

歯牙にもかけない。

追いつけないのを本気で不思議がって首を傾げるのだ。

そういう連中をなんと呼ぶか。

スケプティックは、ずずっ、と缶コーヒーを空にすると「フン」っと鼻を鳴らして吐き捨てる。

 

「化け物め」

 

─────────────────────────

 

ヒーロー・警察による対超常解放戦線大規模作戦。

建物被害に比べ人的被害は少ない見込みであったが、それでも深刻な爪痕を残した。

被害地域はまだ正確な被害状況の把握も完了しておらず、救助活動が継続されている。

既に48時間を経過しており、救助部隊の人員にも終わりの見えない活動に疲労の色が濃く出ていた。

応援も見込めず。

超常解放戦線幹部ほか大多数の構成員の取り逃し、全国各地、どこにテロリストが潜んでいるかわからない状況。

こちらも警戒を続けなければならないため、人員を割く事ができない。

加えて抑止力が大幅に弱まったことで小悪党が羽目を外して騒ぎを起こす。

警察がこれの対処にあたっているが、個性を使用した戦闘を前提にしていない彼らでは消耗も大きく、ジリ貧状態に陥っていた。

更には改人脳無の存在が拍車をかけた。

死柄木らと共に姿を消したニア・ハイエンド複数体。

得体の知れない存在への恐怖は恐慌を呼んだ。

最も深い傷は、市民の信頼であろう。

これまで社会の基盤であったヒーローへの信頼失墜。

荼毘の暴露動画は世間を震撼させた。

長年検挙数トップのNo.2ヒーローとして活躍した現No.1ヒーローエンデヴァーによる女性蔑視とも取れる前時代的な個性婚、家庭内暴力、児童虐待、功績詐称疑惑。

現No.2、異例の速さで上り詰めた『速すぎる男』ホークスの出生秘密と殺人未遂、未成年への脅迫。

公安職員含め関係者が入院する病院の外には説明を求める報道陣らが詰めかけている。

それでも緑谷出久が意識を取り戻したのは、オールマイトにとってはひとまずの僥倖であった。

 

「あの…」

 

緑谷が言いにくそう口ごもる。

 

「黒衣、さんの、ことなんですが…その、オールマイトの…」

 

グラントリノには肯定されたが、まだ落ち着いて話を聞けていなかった。

 

「…ああ、彼女は、私の娘だ」

 

膝の上で握られた拳がぎりと鳴る。

 

「ダメな父親さ。娘がいたことも知らず、辛い目に遭っていたことも、奴に利用されていたことも、目の前にいたことにも気づかずにヘラヘラと笑っていた、父親としてもヒーローとしても失格な男だよ、私は」

「そんなことはー!」

 

コンコン、とドアがノックされた。

返事をすれば、姿を現したのはホークスとベストジーニストであった。

 

「初めましてオールマイトさん。少しお時間いいですか?」

 

全身火傷で喉を痛めているホークスは、スマホの読み上げ機能で会話をしていた。

 

「もしかして、緑谷くんヤバい状況ですか?」

 

緑谷に付添っていたオールマイトの瞳は潤んでいたし、目元も赤くなっていた。

患者である緑谷は両手両足をギプスで固定され、全身包帯だらけであった。

ひょっとして今後の生活に支障が残るのではと危惧した。

 

「いえ、僕は大丈夫です」

 

オールマイトは涙を拭う。

 

ホークスたちがやってきた直後に麗日たちも緑谷の見舞いにやってきたので、入れ違いにオールマイトは場を譲った。

廊下では場所が悪いからと、3人は部屋を移る。

エンデヴァーはまだ家族と話すことがあるようなので、邪魔をしたくはない。

ある程度まとまってからで良いだろう。

空いている部屋を借りて人目がなくなると、まずはとオールマイトは深々と頭を下げた。

 

「申し訳ない」

 

ぎょっとしたのは下げられた側である。

 

「私が至らないばかりに、あの子が…」

「いえ、謝罪すべきは俺の方です。お嬢さんのこと、誠に申し訳ありませんでした」

 

ホークスはオールマイトの言葉を遮り、急ぎ補助器を外して自らの声で述べる。

こちらも最敬礼での謝罪。

轟家ー荼毘と異なり、葬に関してはホークスにもヒーローとしての非があった。

 

「如何に連合の情報取得確保が優先事項であったとはいえ、犯罪被害者であるお嬢さんの保護を疎かにしてしまいました。本当に、申し訳ありませんでした」

 

ホークスは葬が元は被害者であると知っていた。

抗いようのない幼少期に人身売買により犯罪組織に売られ、そこで悲惨な境遇を過ごしていたことも、一度は公安が把握していたことも。

現在は加害者側とはいえ、4年前に早急な保護を行なっていればここまでの事態に発展しなかったことも。

上層部や現場の己の焦りと判断ミスが招いた結果であった。

 

「あの話は本当だったのか…」

 

死柄木葬がオールマイトの実子だという話は現場で聞いていたが、半信半疑だったベストジーニストは思わずと呟く。

 

「委員長から話は聞いているよ…」

 

そこには自身が守り続けてきた社会の闇が広がっていた。

オールマイトはホークスもそこに取り込まれた1人だと思っている。

けれど彼は闇の中にあっても、その翼で力強く羽ばたいて飛ぼうとしているのが感じ取れた。

彼もエンデヴァーほどではないが、窮地に立たされていた。

父親が強盗殺人犯であるという事実は子供である彼自身に罪はない。

明かさなければならない規約もないが、批判は避けられないだろう。

何より、彼が葬に羽を突きつけて脅している場面が映像で流れたのが悪かった。

オールマイトも聞いていたとはいえ、娘が首を掻っ切る瞬間は、血の気が引いた。

 

「しかし、そもそもは私がもっと警戒していれば、もっと早く気づいていればよかったんだ」

「ですが…」

「2人ともそのくらいにしたまえ」

 

2人の謝罪合戦を止めたのはベストジーニストであった。

 

「人質役として私もホークスたち公安の計画に加担していた。接触する機会は少なからずあったが、説得できなかった不甲斐なさを詫びよう。情状酌量を求める際には私も協力する。先日の避難勧告は彼女の指示のよるものだ。あの時、私は彼女の個性の支配下にあった」

 

ベストジーニストは情報のすり合わせとして、人質生活の様子と“感情支配“による洗脳下にあった時のことを話した。

 

「結果的に早期の避難誘導はできたが…アレは恐ろしい個性だな」

「少し耳に挟んだ程度ですが、タルタロスの方も個性をかけられていた刑務官は似たような供述をしているらしいです。まさかあそこで暗殺を成功させるとは思いもしませんでした」

 

再びアプリでの会話に戻したホークスが高速でタップする。

タルタロスでAFOが殺害されたことはまだ公表されていない。

国の最新鋭の防衛設備を有している対個性最高警備特殊刑務所の所員が個性で操られ、システムをハッキングされ、設備の一部を爆破され所内での殺人を許したなどとは知られてはならないからだ。

タルタロスはその機密性や特殊性も相まって、AFOの暗殺は秘匿される予定にある。あちらからまた暴露されない限りは。

しかしながら、掃討作戦の失敗と世論操作、死柄木弔の目覚め、AFO暗殺。

僅か1日で起きた出来事は、どちらの勢力にとっても多大な影響を与えた。

 

「下手したらAFO本体と死柄木弔の2人同時相手にしなきゃならなかった。考えただけで鳥肌もんですわ」

 

更には大量に逃走している解放戦線構成員や隊長格である連合もいる。

対して、こちらは着実に戦力が減っていた。

エンデヴァーは一命を取り留めたものの、精神面でだいぶ参っている。家族と話して持ち直してはいるようだが。

ホークスも荼毘に背中を焼かれようやく羽が生えてきた程度。飛ぶことはおろかろくに飛ばせる羽もない。

ベストジーニストが3人のうちでは比較的軽傷ではあるが、それでも肺はかけたままだしギガントマキア拘束での負荷は完治しきれていない。

そして最大の戦力減は、ヒーローの大量辞職。

元No.9ヒーローヨロイムシャの引退を契機に、旗色悪しとみたヒーローたちの辞職が相次いでいる。

ここに来る前にも商店街で小悪党が騒ぎを起こしていたが、担当区域のヒーローは事務所を畳んでとんずらしたらしかった。

 

「そういえば、聞こうと思ってたことなんですが、“ワン・フォー・オール“って何ですかね?先の戦いに参加していたヒーローが辞職の際にメディアに伝えたものです。そして今しがたエンデヴァーさんから緑谷くんが死柄木弔に狙われていたと伺いまして」

「ああ…うん、全てを話そう」

 

OFAの秘密。社会の混乱を防ぐため、緑谷を守るための秘匿であったが、すでにその時期は過ぎた。

オールマイトは2人に全てを話した。

元はオールマイトの個性であったOFA。

AFOから生まれたそれは、歴代継承者たちから受け継がれ、オールマイトが神野でAFO本体を打ち破り、今は緑谷に渡った。

死柄木弔を乗っ取りOFAを奪わんとしたAFOの精神は葬により弔の中に封じられた。

 

「死柄木弔が“感情支配“の影響下にあるとするなら、奴は彼女の制御下にあるわけだ」

 

つまり、葬は大量破壊兵器のボタンを手にしているにも等しい。

彼女の意向一つで、街一つがあっという間に崩壊する。

 

「つくづく、俺のミスが悪手でした」

 

葬に公安に対して強い敵対心を抱かせてしまった。

結果、策略に陥り公安は機能停止状態。

物質的な損失はリ・デストロの複製によるものだが、信用的な損失はそれ以上。

まだ動けるものたちは常にパンク状態の殺到する非難や問い合わせの対処に追われている。

すでに関係者に危害を加えられたり、施設に危険物が投げ込まれる、送りつけられるなどの被害が相次いでいた。

ホークスの事務所も例外ではない。

 

「さぞ恨まれてるでしょうね」

「はたしてそうだろうか?」

 

疑問を投げかけたのはベストジーニストだ。

 

「彼女とは話す機会があったが、憎しみや怒りのような感情に囚われているとは思えなかった。共に手作り雑煮を突いた仲だが、ホークスに対する恨み言も一つとして出てこなかった。自身の感情も個性で制御できるというのならば尚更、どちらかといえば、敵対するならば容赦はしないが、それ以外には寛容なタイプではないか?」

「雑煮?」

 

どういう状況だったのかはとりあえず横に置く。

 

「私に対しても同じだったよ」

 

何一つ責任を果たして来なかった、守ることもできなかった父親に対して、何も言われなかった。

 

「家族や穏やかな生活を望む個人の感情より、仲間の安全や生活の方が重いと言われたよ」

 

ただ信用や信頼が足らなかった。

 

「重ね重ね、申し訳ありません」とホークスは再三謝罪を述べる。

 

「オールマイトさんには今日こうして謝罪の機会を与えてもらえましたが、彼女本人に対しては何もですからね。許すも何もない。当然の結果ってやつです」

 

それに巻き込まれたのは、罪もなき一般市民。

公安からもオールマイトへは謝罪があったが、娘である当事者の葬はまだ何も受け取ってはない。

会見でどこまで話すかは、この後委員長代理となった目良と要相談である。

 

「彼女の存在は劇薬です。彼女1人の存在で戦局が大きく変わる。それこそ、こっちにとっての特効薬にもなり得る。毒になるなら、その毒は俺たちだけに向けられるべきだ。なので、もし可能ならですがー」

 

ホークスが今後の動きについて考えを語る。

そして数日後の記者会見。

エンデヴァーにより自身と轟家の悍ましい過去が明かされた。

ヒーロー殺し逮捕の功績詐称についても仔細は語られなかったが、一部容認。

滔々を事実として語り、謝罪した。

ホークスからは父親の件とトゥワイスこと分倍河原を刺した事実の容認。

そして死柄木葬について、非道な犯罪被害者の未成年であると承知していたこと、公安指示による脅迫および傷害を認める。

過去の公安による事件隠匿、要保護対象者の悪意の放置などに関しては現在当局が機能不全に陥っていることを理由に後日改めて会見を行うことを通知するに留めた。

ベストジーニストもTOP3として同席。

同じく、元No.1ヒーローオールマイトの姿もあった。

初めは荼毘の告発動画を受け、父親であるエンデヴァーの謝罪が主であり厳しい言葉が投げつけられた。

記者の中に、ギガントマキア縦断により負傷した被害者家族がいたのだ。

また、ホークスにも白い目が向けられた。

質疑が飛び交う中で、オールマイトがマイクを取る。

 

「己の過ちがヴィランを、今の惨状をもたらしてしまった。仰る通りです。責められるべきはエンデヴァーだけではありません」

「それはどういう意味でしょう?」

 

続けられたのは、爆弾発言であった。

 

「死柄木葬は、私の娘です」

 

─────────────────────────

 

ほんとに縛りつけるやつがあるか!?

たぶんミルコと気が合う。

 

スケプティック

褒め言葉だが?

残りの連合メンツが使えないから呼びに行ったが追い返された。

ええい!モンスターペアレントか!?

 

マスコミ(+エンデヴァー)

は??

 

モンペ

お前確か拘束監禁はトラウマなかったよな?

(目隠し、コントロールミット、手錠他)





さてストック無くなりました本気でどうしましょう
更新頻度は極力落とさないつもりですが、落としたら申し訳ありません。

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