一輪花の咲くまで   作:No.9646

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66話 先を見据えて②

 

 

現トップ3と元No.1ヒーローの記者会見は日本中を震撼させた。

オールマイトによるそれは、会見会場が一瞬にして静まり返る告白であった。

当時結婚間近であった女性がおり、葬はその女性との間に出来た子であったが、出産時に母子共に死亡あるいは死産とされたこと。

それにはAFOが関与していた供述もー正しくは弔を乗っ取った状態であったがー既にあり、死を偽装された娘はその後犯罪組織に譲渡され、苦渋と辛酸を舐め、敵対しヴィランとしてこの事態を作り上げたこと。

 

「誠に申し訳ございません」

 

その衝撃は並いる報道陣が声すら失くしたほど。

死柄木葬に関する報道ははほとんどされていなかった。

雄英襲撃時にはその正体はわかっておらず、トガヒミコと同じく未成年であったし、何より彼女はトガヒミコのように一般社会で生活を送ったことがない。情報が出なかったのだ。

雄英に届出がされていた児童保護施設は責任者の逮捕とともに解体されている。そこからは公安主体の極秘扱い。

過去の経歴も住所も特定には至らず、去年夏の誘拐事件の際には話題性のあった爆豪の陰に埋もれたし、神野の悪夢からはオールマイトの引退にかき消された。

画面の向こうで中継を見ていた視聴者たちも、唖然としていた。

そしてその多くが抱き親子に向けたのは、憐憫であった。

直接被害を受けたのは極一部の地域のみ。

残り圧倒的多数は、対岸の火事。他者の悲劇や醜聞は極端な言い方をしてしまえば娯楽に過ぎない。

エンデヴァーのように人気に落差があり、本人にも非があるのならば罵声の一つも浴びせただろう。

しかし相手は“平和の象徴“。

それも結婚間近であった婚約者を、我が子を奪われた被害者。

故に同情が働いたのである。

沈黙の後、はっと我に返った記者たちは我先にと質疑を投げかける。

その一つ一つに、オールマイトは丁重に答えていった。

いつ判明したかと問われた際には、映像にあった流血の際にホークスの羽や衣服についた彼女の血液から行われたDNA鑑定によるものと説明がされた。

ホークスにとっては怪我の功名とも言うべきか。

あれがなければ発覚がもっと遅れていた可能性が極めて高いのだ。

既にホークスからオールマイトへは謝罪があり受け入れている。

また4年前の件には関わっておらず、当時彼はまだ10代でデビューしたての頃。追求するにも無理があった。

となれば、鉾先が向けられるのは、主導した組織ーヒーロー公安委員会だ。

語られた内容や映像の発言が事実であるのなら、とんでもないことである。

4年前の時点で葬の存在を把握していたにも関わらず、他にも被害児童が多数いることを知りながら保護でなく検挙を優先させ失敗。大量の死者行方不明者を出した挙句、AFOの再関与を許すという大失態。

しかも、当時利用したのが、オールマイトの実の娘。

それが時を経て、雄英への潜入、敵連合による2度の襲撃と誘拐、オールマイトの弱体化へと繋がり。

恩を仇で返すどころでない。

長年、日本を守り続けた“平和の象徴“オールマイト(英雄)への、最大級の不義理であった。

果てに招いたのは、この惨状である。

オールマイトと葬の関係の公表には当然賛否両論あった。

 

「どういうことだ!!」

 

エンデヴァーも反対派であった。

 

「その話が事実ならば貴様は子どもを奪われた被害者だろうが!!貴様まで泥を被ってどうする!」

「落ち着いてくださいエンデヴァーさん」

「身体に障るぞ」

 

掴みかかる勢いのエンデヴァーをホークスとジーニストが宥める。

エンデヴァーは理解しているのだ。話題性でも依然、元No.1に届かないことを。

己の過ちから世間の目を逸らさせるのに、オールマイトと死柄木葬の話題は格好の的過ぎた。

 

「君1人に負わせたくないという気持ちはもちろんある。しかし、これは事態の打開策でもあるんだ」

 

真っ直ぐに見つめるオールマイトと周囲の様子に、エンデヴァーは冷静になった。

冷静にさえなってしまえば、事件数最多を誇るベテランヒーローである彼は情報処理能力も分析能力も高い。

 

「何かしらの算段があっての事か」

 

そこからの説明はホークスが引き継ぎ、最終的には彼も渋々了承した。

そして最も批判を受けるであろう当の公安の委員長代理が承認したのである。

全会一致とまではいかなかったが、会見は行われた。

 

『でーんわーが、来たー!でーんわが』

 

携帯が着信を告げる。ディスプレイには久しい異国の友人の名が表示されていた。

 

「もしm『オールマイト!』キャシー…」

 

キャシーことキャスリーン・ベイト。かつて己も経験を積むために留学していたヒーローの本場アメリカのNo.1ヒーロー、スターアンドストライプであった。その人であった。

 

『会見を見たんだ』

 

時差を考えればあちらは夜中だ。

それだけ日本の事態の深刻さは注視されている。

それだけ、気にかけてくれる友人がいる。

 

『正直、何て言葉をかけたらいいか…知らなかった、貴方に子どもがいたなんて』

「私も知ったのは最近の事でね…全くもって情けない』

『オールマイト…』

 

それから少しの間、話をした。自然、現状の話題は人を救ける者としての流れになる。

 

『日本からの協力要請はいつ頃?』

「検討はされているが、まだはっきりとは」

 

状況が状況なだけに、上層部の判断も慎重になっている。

そも、統括組織であるヒーロー公安委員会が機能停止状態で手続きが全くと言っていいほど進まない。

電話の向こうで、Ugh、と小さく聞こえた。

 

『力になれることがあれば、何でも言って』

「ありがとう」

『…娘さんを取り戻せたら、その後はどうするつもり?』

「償うさ。あの子にも、あの子にさせてしまった事も、一緒に』

『もし今後、日本で暮らしにくいようなら、アメリカ(こっち)に来るといい。いっそ3人で暮らすなんてどう?2人まとめて幸せにするよ、ハニー?』

 

戯けたような言葉に、背中を押された気がした。

応援してくれる人がいる。

未来のために、今は力を尽くさなくては。

 

「ありがとう、キャシー」

 

聞こえない程度に鼻を啜って、眦を指で拭う。

 

「話せて良かった。おかげで勇気を貰えたよ。いつか、君にも紹介させて欲しい」

『楽しみにしてる。Good Luck!』

 

通話を終えた携帯を見つめて、キャスリーンは呟く。

 

「冗談なんかじゃ、ないんだけどな…」

 

恩人が苦しんでいる時に、遠く離れたこの身は傍にいることもできない。

幼い頃、強盗犯(ヴィラン)の逃走に巻き込まれた時に救けてくれたヒーローの姿を忘れたことはない。

憧れて、夢見て、彼の背中を追いかけてここまで来た。

過酷な訓練も積んだ。「キャシーは女の子だから」と言われても、ぼろぼろになるまで励んだ。

少しでも近づきたくて、茶色い髪を金に染めた。

職業とコスチュームの都合でコンタクトは入れられないから瞳の色はそのままだけれど、彼のように、彼以上に平和に貢献できるように、触角は8本。

そして祖国アメリカのNo.1ヒーローと呼ばれるようになった。

並べて語られるようになっても未だ彼に追いついたとは思えない。

パンッと自分の顔を両手で叩いて気合いを入れ直す。

 

「…よっし!」

 

日本ではヴィランとの戦いで広範囲に大規模な被害が出ている。

行方不明者の捜索、物資援助、瓦礫の撤去、治安維持。行ってやれる事は山ほどあるのだ。

たった1人で街1つ破壊する強大な力を持ったヴィランー死柄木弔を相手取るのは、誰にでも出来ることではない。

出来る者は、ヒーローは、ここにいる。

何より、心の師(マスター)が困っているのだ。躊躇う理由が、二の足を踏む理由がどこにある。

自身と同じく待機命令が出ている為に詰めているチームの許に足早に向かう。

 

「Hi!お兄ちゃんたち(Bros)!私と一緒に、日本にバカンスに行かない?」

 

アグパー司令官の怒号が響き渡るのは、このすぐ後のことである。

─────────────────────────

 

「やられたな」

 

葬はニュース中継を見ながら隠しもせず舌打ちする。

自身との出自が明らかになり、AFOにオールマイトとの関係を暴露されヒーロー側にも連合にも数名に知られたが、それでもまだ極少数だった。

それが全国放送。

“平和の象徴“の実子が世間を揺るがす事件に加担したヴィラン、それも新旧No.1共にという前代未聞の醜聞。

葬はオールマイトが事実を公表しようとしても公安から待ったがかかると考えていた。

過去のことに関しては容認、秘匿、隠蔽、いずれもお互いの立場が危うくなるし、秘匿されるだろうと思っていたのだ。

 

「これは事実ですか?」

「私も知ったのはつい最近だよ」

 

トランペットの問いに肯定する。

こちらはいの一番に喋りそうなスケプティックを脅してまで口止めしたのが徒労に終わった。

なお口止めに関しては、パソコンを取り上げ胸ぐらを掴み寄せ、至近距離で視線を合わせて口を噤むか「それともお前が私のお人形になるか?」と双方の個性にかこつけて凄んだただけだが。後でネチネチ言われるだろう。

 

「やっぱこうなるよな。エンデヴァーとオールマイトじゃ、はじめっから勝ち目がねえ」

 

荼毘は不機嫌であった。

最初こそ責められるエンデヴァーを上機嫌で眺めていたが、オールマイトから自身と葬の親子関係、そして娘の身に降りかかった悲劇を語られ、記者たちの関心はすっかりエンデヴァーを置き去りにしていた。

 

「はあ〜あ、アイツが世間様から大バッシングされんの楽しみにしてたのに」

「そうでもないさ。考え方によっては、エンデヴァーはより苦しい立場に置かれる」

「どういうことだよ」

「確かに、話題性としてはオールマイトと私の方が強い。エンデヴァーの醜聞をかき消すのには良いだろう。だが、それはつまり、話題性ですら現No.1が元No.1に劣ると容認するようなものだ」

 

更には2人はこれから先、同じヴィランの子供を持つNo.1ヒーローとして比較される。

片や金で妻を買い子供を産ませ、教育を誤り長男はヴィランとなり。

片や妻となるはずだった女性を殺され、我が子を死んだと偽られ奪われ、そして娘は利用され、裏切られ、ヴィランとなった。

加害者と被害者。

同じ加害者家族であっても、もたれる印象は、明暗ははっきりと分たれてしまう。

あの善性の塊みたいな人はそこまで頭が回っていないのかも知れないが、ホークスや残った上層部は察しているだろう。

それとも、自罰を含めて本人が求めたか。

 

「荼毘、エンデヴァーをどうするつもりだった?」

「んなもん決まってる。全部焼き尽くす」

「そう。ちょっと耳を貸せ」

 

言ってもどうせ向こうから寄ってくることはないので、葬の方から歩み寄り、甘く昏く、荼毘の耳元で囁く。

 

「ヒーローが、エンデヴァー(父親)が一番嫌がるだろうことは何だと思う?」

 

ドロリとした愛憎に、荼毘は機嫌を直して目を輝かせた。

 

「へえ」

 

彼がエンデヴァーを貶めるためならば手段を選ばないこともあっての策であるなら、それは有効である。

 

「お前さっさと親父さんのところ帰れよ」

「馬鹿を言うな」

 

被害者であっても、己はすでに加害者。

娘1人守れない父親がヒーローかと、口さがないものは当然いる。

彼の人をエンデヴァーの二の舞いにしまいと自身の想いと覚悟を無駄にされた気分であった。

それでもこうなったらからにはこの身はババ抜きのババみたいなものだ。手立てを考えなくては。

 

「スピナー、スピナー!戻っておいで」

 

静かだと思ったら、顎が外れるくらいに口をぽかんと開けて呆けていた。

 

「???!?」

 

盛大にモニターに映るオールマイトと葬を交互に指差し混乱し、数回往復してようやくまともに言葉が出るようになった。

 

「おま、お前ら知ってたのかよ!?」

「逆になんでお前知らねえ?蛇腔いたろ?」

「スピナーは気絶してたし、俺が“圧縮“してたから」

 

言われてそうだったかなと荼毘は記憶を探りもせずに思考の端に飛ばした。

あの時はエンデヴァーを前にテンションが上がっていたので、正直それ以外のことはあまり気にしていなかった。

 

「トガ!お前も知らなかったよな!?」

 

スピナーが途中から別行動をしていたトガに同意を求める。

トガはあまり興味がないようで「うーん」と首を傾げた。

 

「知らなかったけど、燈矢くんは燈矢くんだし、葬ちゃんは葬ちゃんなので、どうでもよくないですかぁ?」

「そ、そりゃ、そうだけどよ…」

 

燈矢の父親であるエンデヴァーもそうだが、葬の父親があのオールマイトというのはビッグネーム過ぎた。

 

「弔の回復にはどれくらい時間がかかる?」

「万全ならば3ヶ月、動けるようになるまで1ヶ月とのことです」

 

資料を見ながらトランペットが答える。

葬は少しばかり思案して告げた。

 

「最低1ヶ月、時間を稼ぐ」

 

─────────────────────────

 

オールマイト

続けざまにあちこちの友人から連絡が来た。

いつか、皆にも会わせられたらいいな

 

スター

夜間フライトの準備してたら寸出のところで止められた。tsk.

 

アグパー司令

スター!!!

待機!命令!!

 




原作だと海外要請出されてますが、こちらではダツゴクがいなくて戦線側も72時間停戦宣言したので出されていません。人道的配慮はしてますよってアピールです。自衛隊もいるらしいので。
葬は日本行政無関係なスターの方が話聞くかもしれない。

ところでどこかにオルキャシないですか???
救けてくれたお兄さんに「大きくなったらお嫁さんになる!」って言ってる幼キャシー。
子どもの言うことだから「HAHAHA!嬉しいな!」って軽く返す若オル。
キャシーはずっと言い続けて、でも年齢差のせいか成長しても本気にされなくて。
その内ヒーローの道を歩むにつれて気持ちを押し込めて、定番のジョークにしてた。
でも神野の悪夢でオルが引退して、今度は1人の人として、私が幸せにするんだ!って奮起してグイグイ行くようになるやつ。
ハピエンなら「こんなおじさんでいいの?」「私だっておばさんよ?」って微笑い合うエンド。
曇らせなら、死柄木戦で崩れる時に伸ばした手の薬指に指輪がある。帰れなくてごめんなさいエンド。
このシリーズでなら、決着後に「新しいママなんてどう?」って唆して2人でヤギさん出荷計画。
俊典が気付く頃には外堀埋められてウェディングフォト撮ってる。

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