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午前の部を終えて昼休憩。
移動の最中、通路の先に爆豪の姿を見つけた。
「ばk…む?」
「バカ声出すんじゃねえ!」
素通りも変だろうと声を掛ければ、小声で爆豪に口を塞がれる。
あえて抵抗せず、爆豪の視線の先、廊下の曲がり角から2人で覗けば、出入り口のそばで緑谷と轟が話しているのが見えた。
「オールマイトの隠し子か何かか?」
(((は?)))
図らずとも、轟以外の3人の内心が符合した。
尤も、その意味合いは若干のズレがあったが。
「違うよ、それは…って言ってももし本当にそれ…隠し子だったら違うって言うに決まってるから納得しないと思うんだけどとにかくそんなんじゃなくて…」
緑谷も早口で否定する。
爆豪も、海外赴任で滅多に帰ってこないとは言え、幼い頃には出久の父親とは顔を合わせたことがあるからして、至極当然に「何言ってんだこいつ」状態である。
一花としては、なぜ轟がそんな考えに至ったのかを知りたかった。
「俺の親父はエンデヴァー。知ってるだろ」
そして耳にしたのは、
爆豪の腕にも力が篭る。
一花は拘束を解くよう、彼の腕を軽くタップした。
「…!」
「あの2人止めてくるよ」
「オイ…!」
爆豪の制止を無視して、一花は緑谷と轟の会話に割って入った。
「こらこら、そんなプライベートな話を、こんな所でするものじゃないよ」
「黒衣さん⁉︎」
「黒衣…?」
唐突な第三者の登場に、2人は驚いていた。
「誰が聞いてるか分からないんだ。この前みたいに、マスコミ連中が無断で入り込んでる可能性もある。気をつけないと。特にそんな胸糞悪いネタは連中の大好物だからね」
「胸糞悪いって…」
「子どもの虐待を聞いて気分を害さない輩なんざ、それこそエンデヴァーと同類の屑だろうさ。まさかそんなのがNo.2ヒーローとはね。今日エンデヴァーは来ているのかな?」
「来てるが、なんでそんなこと聞く」
「なに、ちょっとファンのフリして握手でも強請ってくるよ。謝られても轟君の傷も癒えなければ時間が戻るでもなし、それで済むような話ではないだろうど、少しくらい溜飲が下がるかもしれないしね。全国生放送で土下座謝罪させてやろうじゃないか」
プロヒーロー、それも現No.2に個性をかけようというのだ。
なおここまで一花はずっと笑顔である。
「黒衣さん!それじゃあ黒衣さんが個性使用違反になっちゃうよ…!」
「まあそれは冗談だけど」
その程度で済ませる気はない。
エンデヴァーに関しては要調査だ。
「でも、君のそれは冗談で済ませていい話でないのは確かだよ、轟君。聞きたい事言いたい事はあるけど、君はそれを望んではいなさそうだ。さ、他の人に見られる前に解散、解散」
轟はすでに言うだけ言ったとさっさと立ち去った。
2人を追い払い、隠れていた爆豪にも「出てきていいよ」と声をかける。
「なんて顔をしてるんだ」
驚愕、唖然。
知らない世界を除いたような。知ってはいけないことを知ってしまったような。
「テメエこそ…んだよその顔」
「何が?」
にこにことまるで貼り付けた笑顔。
顔は笑っているのに、目が全く笑っていない。
一花の琴線は分かり易く地雷型であった。
的はとても狭いが、同時に軽く触れられるほど浅い。
生まれてこの方十数年、道具として扱われ消費されて行く子どもたちを見送って来た一花にとって、始めから道具とするために子どもを作るなどというエンデヴァーの行いはまさに的確に地雷を踏み抜くものだった。
「他人ん家のことでよくわかんねーキレ方してんじゃねえよ」
「どうもこの手の話には我慢が効かなくて。しかしまあ、クソはどこにでもいるものだね」
「…おいテメエ、女がクズとかクソとか言うんじゃねえよ」
「君は言ってるじゃないか。もしかして、案外女の子に夢見てるタイプだったりする?」
「んなわけあるか!クソ!飯食う時間なくなるじゃねえか!」
ズンズンと肩をいからせて立ち去る爆豪を見送って、一花は笑みを消す。
(しくじったな…少し頭を冷やそう)
大抵の事は上手く取り繕うのだが、子どもが絡む事になるとどうもいけない。
仕事に余計な感情を持ち込むのは御法度だ。
瞬きの間に“感情支配“を自身にかける。
すっかり冷えた頭と心で、一花も昼食をとりに向かった。
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昼休憩を空けて、レクリエーションが行われる。
その前にー
『どーしたA組⁉︎』
「何でチアガール?」
クラスメイトの女子たちがチアの衣装になっていた。
偵察も兼ねて外で食事を取った一花は巻き込まれなかったが、聞けば上鳴と峰田に騙されたらしい。
「相澤先生からの言伝だと…!」
「そんな「君のママに頼まれたんだ」と唆す誘拐犯の手口みたいなものに何で引っかかるかな…」
八百万はまたも峰田の策略にかかったことに落ち込んでいたが、結局みんな、割り切って楽しむことにしたらしい。
レクリエーション前に、最終種目トーナメントの組合せくじが行われた。
「俺、辞退します」
尾白の宣言に、周囲がどよめく。
「尾白君!何で…⁉︎せっかくプロに見てもらえる場なのに…‼︎」
「騎馬戦の終盤まで、ほとんどぼんやりとしか記憶がないんだ。多分、奴の個性の所為で…!」
視線を向けられた心操は挑発するように嗤って一花を指し示す。
「言っとくけど、A組のあんたのオトモダチも共犯だからね」
指名された一花はひらひらと手を振る。
ネタが割れているのにまんまとかかってしまった己の不甲斐なさに尾白は深い溜息を吐いた。
周囲の説得にも、彼は断固として応じなかった。
「俺が嫌なんだ…あと何で君らチアの格好してるんだ…!」
上鳴と峰田の謀である。
続いて庄田も辞退を申し入れ、主審ミッドナイトの好みにより、2人の棄権は認められた。
繰り上がりでB組から鉄哲と塩崎を加え、くじが行われる。
最終種目はガチンコバトルトーナメント。
1対1の個性ありの勝負。
怪我上等、道徳倫理観は一旦捨て置いてOK。
ただしあまりにクソな場合は止められるので気をつけよう。
目潰しや指手足折るのはダメとか金的はアウトとか、そのあたりもう少しはっきりして欲しいなと思いつつ、ルールを聞く。
レクレーションも終わり、始まった1回戦第1試合は緑谷対心操。
『緑谷開始早々完全停止ー⁉︎』
「ああ!緑谷折角忠告したのに!」
「え?なに尾白君?それじゃあ緑谷君、知ってて引っかかったの?」
尾白は先ほどの騎馬戦で心操と一花2人の個性にかかっていた。
故に、1回戦で心操とあたる緑谷に忠告しておいたのだろう。
「そうだけど…何だろう黒衣さんに言われると釈然としない…」
「ははは」
適当に笑って流し、視線をステージに戻す。
緑谷が“洗脳“されて場外へと向かう。
しかし、その間際、彼が踏みとどまった。
どういうカラクリかは知れないが、“洗脳“を解いたらしい。
それからは緑谷は心操の
健闘した両者へ、拍手を送る。
第2試合、轟対瀬呂は轟の瞬殺で終わった。どうやら彼はご機嫌斜めらしい。会場にはどんまいコール。
第3試合までが終わり第4試合、一花の出番が回ってきた。
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「ザ・中堅って感じ⁉︎飯田天哉!対1人だけチア回避!黒衣一花!」
初戦の相手は飯田だ。
「黒衣くん!お互い正々堂々戦おう!」
「お手柔らかに頼むよ」
『START‼︎』
合図と共に、飯田の“エンジンが“が音を立てる。
機動力に物を言わせ、背後に回り込んでそのまま場外に出すつもりだろう。
「捉えた!」
動かない一花の横を猛スピードで通り抜け、背後から掴もうと腕を伸ばす。
個性の相性上、飯田は己が不利と判断していた。
(隙をつくらず、速攻で決める!)
果たして、伸ばした腕は、空を切った。
「おっと」
掴もうと伸ばされた腕を、一花は姿勢を低くしてひょいと避けた。
視線だけで飯田の動きを追う。
移動速度は速いが、来ると分かっているものなら避けられる。
「くっ…!」
初撃を避けられた飯田は、一度距離をとり、再び攻めに転じる。
(流石にノーダメージで確保は無理か!ならば!)
DRRRRとエンジンをふかし、横なぎに蹴り入れる。
今度は屈んでこれを逃れる。頭があった位置を超速の蹴りが掠めた。
(かかった!)
そこに間髪入れず、上段からの踵が落とされる。
が、一花は僅かに横にずれて避けた。
「なっ⁉︎」
切り返しに繰り出された横蹴りを、今度は身体を反らせるだけで躱す。
「これも避けるか⁉︎」
「随分とお上品な蹴りだね。君、喧嘩したことないだろう?」
「ない!」
余裕綽々の黒衣に対し、飯田はまだ諦めていなかった。
飯田天哉の個性は”エンジン“。
機動面においては実に恵まれた個性だ。
ただし、生真面目な彼は、生まれ持った個性の上に胡座をかかず、修練を怠らない。
そして得たのが、彼の恵まれた体格であり、個性を活かしきるスタミナだ。
黒衣一花は正面からはやりあえない相手。
「はあっ!」
ならばと、死角を狙って背後や背面から周り繰り攻撃を繰り出す。
しかし蹴りや掴み取ろうとする腕を、黒衣はひょいひょいと軽く躱す。
飯田は完全に動きを見切られていると理解しながらも、絶えず攻め続けた。
常に視線を交わさないよう回り込み、一蹴しては避けられ、引いて距離をとり、再度攻める。
寄せては返す白波のごとく。
そして、時は来た。
「今!」
DRRRRと、飯田のエンジンが音を立て始めた。
「仕切り直しかな?」
「いいや!勝たせてもらうぞ!黒衣くん!』
飯田が先ほどとは違うエンジン音を響かせる。
“トルクオーバー・レシプロバースト“
飯田のスピードが爆発的に上がった。
一花は飯田の攻撃に備える。
足がスレスレ、白線の手前を踏んだ。
一花がいる場所は、ステージの角、場外間際だ。
『おおっと黒衣!逃げ場がないか⁉︎』
飯田が避けられることを承知で攻め続けたのは、この為だ。
白線間際、逃げ場のないところまで誘い込み一気に押し出す。
「これで決まりだ!」
(と、思うだろうな)
自分の立ち位置も、飯田の思惑も、一花は織り込み尽くだった。
突進してくる飯田に一花は逃げず、わずかに身体を捻って躱すとそのまま飯田の腹に膝を叩き込んだ。
「かはっ…!」
推進力を利用された一撃に、飯田は肺から堪らず空気を吐き出す。
そして一花は伸ばされたまま空の腕を掴み、身体の向きを場外側へ変え、そのまま投げ下ろした。
飯田が叩きつけられた先は当然、場外である。
『いっっっっっっぽぉぉぉん!キレイに決まったー!』
「飯田くん場外!勝者黒衣さん!二回戦進出!」
『追い詰めてたつもりが実は誘い込まれてた⁉︎飯田場外ー!ってあれ黒衣個性は⁉︎』
『敵が個性使わしてくれる相手とも限らねえだろ』
会場がわっと沸く。
一花は未だ立てない飯田に手を差し伸べた。
「飯田君、大丈夫かい?結構いいの入った感じがしたけど」
「けほっ、ぐっ…だ、大丈夫だ…黒衣くん」
律儀にありがとうと礼を言って、飯田は一花の手をとる。
「君の個性を警戒したんだが、まさか投げ飛ばされるとは…悔しいが、この敗北を糧に俺も精進するよ。この後も頑張ってくれ」
「ああ」
内心は穏やかでないだろうに。飯田の眦には僅かに光るものがあった。
お互い向き直り、改めて握手を交わす。
『いいねえ!互いを讃え合うスポーツマンシップ!これぞ青春って感じだ!』
無事、一回戦突破である。
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その後、一回戦は切島対鉄哲の真っ向勝負の末の延長戦や、麗日対爆豪のみっともない三流プロの野次(プレゼントマイクの私情たっぷり実況付き)などがあったが、ベスト8が出揃った。
二回戦第一試合、轟対緑谷。
両者鬼気迫る試合となった。
緑谷の言葉に動かされたのか、心境の変化があったらしい轟が右側をー炎を使った瞬間上がった一際野太い歓声はエンデヴァーか。
直後、散々冷却された空気が瞬間的に熱されたことで膨張、大爆発を起こし、緑谷は場外、試合はステージ修繕のため一時中断となった。
「「「デ緑ク谷くくん‼︎」」」
「みんなノックくらいしようよ。緑谷君、大丈夫?」
担架で運ばれた緑谷を心配するクラスメイトたちと見舞いにきたが、彼らが飛び込んだ拍子に痩躯の男性がびくりと肩を跳ね上げる。口から出ているのは血ではなかろうか。
「びっくりした…」
「初めまして…?」
見知らぬ男性に、麗日は誰だろうと首を傾げていた。
一花も探りを入れたいところではあったが、あれよと言う間に手術だとリカバリーガールに追い出されてしまった。
セメントスによるステージ修繕も終わり、試合が再開される。
『二回戦第二試合!今回のカードは女子対決!塩崎茨対黒衣一花!』
二戦目の相手はB組の塩崎茨という女子生徒だ。
彼女は一回戦で上鳴を、油断も多分にあっただろうが瞬殺している。
普段の仕事であれば、中距離相手でも全くもって困ることはないのだが、残念ながら手ぶらだ。
(少しは使うかな)
両者向かい合った状態で試合は開始される。
『START‼︎』
一花はスタートの合図と共に、敵意がないと示すように両手を上げた。
「ええと、塩崎さん、だったよね?始める前に少しいいかな?」
「何でしょうか?」
「初対面だし、挨拶しておこうと思ってね。B組とは接点なかったから。改めてまして、私は黒衣一花。お互い、良い試合にしよう」
にこりと笑顔で、握手を求めて手を差し出す。
「まあ…!ええ、こちらこそ」
スルスルとツルを引っ込めた塩崎は楚々と歩み寄り、お互い握手を交わす。
「改めまして、B組の塩崎茨と申します。正々堂々、スポーツマンシップに則り、お互い存分に力を尽くしてたたか……うなんてそんな事!そんな恐ろしい愚かしい真似など!私にはできません!」
まんまと個性にかかった塩崎がわっと顔を覆って崩れ落ちた。
(((ですよねー‼︎)))
やると思った、とは客席クラスメイトの総意であった。
すっかり戦意喪失させた塩崎を口八丁で丸め込んで場外に出す。
「塩崎さん場外!勝者黒衣さん!準決勝進出!」
『心操に続いて精神干渉系個性の真骨頂発揮!戦わずして勝利を決めたー!ただしちょっと小狡いぜ小悪魔girl!一回戦の爽やかさはどこ行った⁉︎』
個性を解くと、青ざめた塩崎がブリキのようにギギギと振り向く。
「神聖な選手同士の握手を謀るように使うなど…な、なんたる卑怯…!なんたる卑劣…!」
「やった私が言うのもなんだけど、流石にコレに引っかかるのはどうかと思うよ」
ともあれ、二回戦突破となった。
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小悪魔girl
順調に準決勝進出。
意図せず立ち聞きした。
エンデヴァーは後で探らせよう。
ザ・中堅
惜しくも一回戦敗退。
家族から緊急連絡が来て早退する。
B組からの刺客
2回戦敗退
生真面目純粋な正々堂々精神が仇になった。
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体育祭中盤。
戦闘シーンはふいんきだけで…
雰囲気ってふいんきでも変換できるようなってるんですね
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