一輪花の咲くまで   作:No.9646

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2週間空けたのにびっっっくりするくらい何も書けない!!文字数!!
なんで!!
まあたぶんあちこちの作品一気読みしているからなんですけどね!!

次回更新は12月8日を予定しています。


76話 終わりの始まり②

 

「黒衣!おい!おいーっ!!」

 

倒れた葬を抱えようと腕を伸ばした切島が息を飲んだ。

掴んだ先に新たな罅割れが出来たのだ。

咄嗟に手を引く。

 

「切島くん!私が!」

 

麗日が慎重に五指の肉球で触れる。

“ゼログラビティ”は指先の肉球で触れたモノを無重力状態にする個性だ。

重さや揺れを極力排除して運ぶことができる。

 

「とりあえず、安全な場所まで運ぶぞ」

 

その場にいた生徒たちは決められていた行動パターンを元に散開する。

他に逃げ遅れている非戦闘員がいないか、いれば避難誘導を行うために3人をベースとしてチームで動くのだ。

この場には切島、青山、麗日が残った。

 

「うん、そうだねーきゃ!!」

「危ねえ!」

 

衝撃で飛んできた瓦礫から、切島が身を挺して庇う。“硬化“の彼に傷はない。

防御および近接戦闘を得意とする切島と“ネビルレーザー“による中距離攻撃が可能な青山が、葬を抱えた麗日を守りながら先導する陣形となる。

 

階段を降りてあと少しという時、足元が揺れる。

窓の外の景色が薄い膜越しに上昇しているのが見えた。

雄英は対死柄木に備えて、根津の采配で防衛機能を最大強化していた。

地下は崩壊対策に多重構造、緊急時つまり今はシェルターとして人々を地下そして連結している関西の士傑高校へと避難させている。

そして超高圧電磁バリアに覆われた雄英は空中に浮かび、天空の棺となるのだ。

 

「急ごう」

「うんー!?」

 

抱え直そうとした手に嫌な感触があった。

ぬらりとした、生暖かい。

 

「!!」

 

べっとりと、真っ赤な血が。

反対に、葬の顔色は蒼白になっていた。

 

「止血しないと!」

 

麗日は近くに保健室がある位置まで来ていることに気がついて、急ぎそこへ運び込んだ。

外では戦闘が行われていて、両者とも破壊力を考えれば心許ないが、時間がない。

ベッドに寝かせ急ぎ、しかし慎重に上着のボタンを外す。ベストはおそらく防刃仕様か何か特殊繊維だろう。

前を開き、息を呑んだ。

 

「っ!?」

 

葬の身体は腹部の罅が裂けて、シャツが真っ赤に染まっていた。

しっかりした生地の黒い服で、無重力状態で滴ることがなかったから気づくのが遅れた。

傷口を改め、呼吸を確かめ、脈を取る。

呼吸が細い、顔面蒼白、虚脱失神ーすなわち、失血による出血性ショック状態。

血圧が大幅に低下することにより急激な循環不全に陥り、全身の臓器や組織に十分な血液が送られず機能不全を起こす。生命に重篤な状態となり、最悪、死に至る。

 

「2人は先に行って」

「麗日さん!?」

「止血したら直ぐ追いかけるから」

 

守りがない分危険は増えるが人1人運ぶだけなら麗日1人いれば足りる。

下で人手が足りなければ、ここで2人を足止めしておくわけには行かない。

仮に雄英が高度を上げても、麗日の“ゼログラビティ“ならば問題なく脱出できる。

青山と切島はほんの少し躊躇ったが、お互いに顔を見合わせて頷く。

 

「わかった」

 

彼らが立ち去り、麗日とベッドに横たわる意識のない葬だけが残された。

 

ヒーロー科と保健室は切っても切れない縁だ。

リカバリーガールの世話になることも多いし、消毒や湿布を貼ってもらうこともしばしば。緑谷を見舞いに何度も来ているし、飯田たちと一緒に 備品を運んだり、手伝いで大体どこに何があるか、知っている。

備え付けの水場で手を洗い、使い捨ての手袋、清潔なタオル、消毒液、ガーゼ、包帯、と必要な物をかき集める。

度々、外の戦闘の余波で棚や備品がカタカタを音を立てて揺れた。

貯蔵庫に輸血用パックはあるらしいが、麗日にはリカバリーガールのような知識や技術も資格もない。

何より、葬の血液型を知らない。

思えば、そんなことも知らないのだ。

蛙吹や友人たちで血液型別の性格がそれっぽいとか、相性診断とか、そんな話をしたことくらいある。寮生活になってからは、それぞれの生活習慣や癖があって、笑いながら。

そんなたわいもないおしゃべりすら黒衣一花とはしなかった。全部のらりくらりと躱されて、嘘で塗り固められていた。

 

「落ち着け、麗日お茶子、ウラビティ!ヒーローは人命救助が最優先だ!」

 

麗日はパンッ!と両頬を挟むように打ち付ける。

 

「お茶ちゃん?」

 

背後から聞こえた声に、麗日は振り向く。

 

「トガヒミコ…!」

 

ドアの前に、トガが立っていた。

戻ってこないし連絡も取れなくなった葬を探しにきたのだ。当然止められたが、するりとすり抜けるのは彼女の得意分野である。

そして麗日の先に、探していたその人を見つけてしまった。

 

「葬ちゃん…?」

 

血がたくさん出ていて、ボロボロで。確実に死へと向かっていた。

いつもだったら高鳴るはずの胸は酷く静かだった。

 

「ヒーローがやったんですか?」

「違っ、死柄木の“崩壊”でー」

 

トガは窓の外で激しい戦闘を繰り広げる2人に目をやる。

死柄木の姿を認めると、視線を険しくした。

 

「違います」

 

ゾッとするような目。

そして憎悪を秘めた声であった。

 

「アレは弔くんじゃありません」

「それはどういう…」

 

いいやと麗日は頭を振って疑問を追い出す。

今はそれどころではないと葬に向き直り、手を動かす。

 

「ごめん、今止血してる。処置できたら下に降ろすから、ちょっと待って」

 

感染症予防にビニール手袋をはめる。

前開きの服は広げ、肌着を捲り上げて出血部分を確認できるようにタオルで傷まわりの血を拭き取る。

身体が脆くなっているから、止血帯法はキツく縛る必要があるので危ない。

その為、直接圧迫止血法を試みる。しかしこれも力加減に注意しなければ。

ガーゼを重ね傷口に当てる。あっという間に赤く染まった。

ひび割れが大きいから出血部位が覆えていないか、圧迫する力が足りないか。

もう一度、とガーゼの大きさを変える。

怪我人の応急処置は、あの数日で何度も経験した。

ただ、ただ、1人でも多く、と。

 

「死なせない…!救けるんだ…!」

 

その様子を見ていたトガが部屋へと入ってきた。

葬を挟んで麗日の正面で装備を下ろすと、かちゃかちゃと針の付いたチューブを一本外す。

吸引機と繋がっていて、刺すと自動的に血液を吸い上げてくれる仕組みになっている。

 

「前に、お茶子ちゃんになった時、お茶子ちゃんの個性を使えたって言ったの、覚えてる?」

「うん…覚えてる」

 

ギガントマキアの行進の真っ最中、住民に避難を呼びかけてた麗日はトガにおばあさんに化けておびき寄せられた。

あの時。

“ゼログラビティ“を使って、人を浮かせて、落としてー殺したと。

 

「それって、血が同じだからって事だよね。個性が使えるってことは、血も、同じになれるってことだよね」

 

トガはそっと葬の手に口をつけて、血を吸った。

どこでどう“崩壊“の効果が及んでいるのか、止まっているかわからない。

今は触れることはできたけど、遅れて伝播する可能性は捨てきれない。

しかし、トガは躊躇うことなく、葬の血を口にした。

きっと麗日も躊躇いはしなかっただろう、だって、目の前でこうして葬が死なないようにと、救けようとしてくれているのだから。

どろり、とトガの姿が覆われ葬と同じになる。

顔だけ変身を解いた彼女は言った。

 

「私の血、使って」

 

一般的に、体内の血液の30%を失うと生命に危険を及ぼず。

身体のひび割れが止まらないのだから、時間稼ぎにしかならい。

それでも、その時間が必要なのだ。

表面はざらりとしているが、大きい部分はまだ崩れるにまでは至らなかった。それでも所々、皮膚が剥がれ肉が見えていたり、血が吹き出している。

隣のベッドから、外したアタッチメントの片方を葬の上腕に慎重に刺す。

 

「前にこうして、仁くんが血を分けてくれました」

 

異能解放軍との戦いで死にかけた。怖かった。

たくさん殺して来たのに、死にたくないと思った。

血が流れて身体から力と体温が抜けて冷たくなっていく感覚を今でも覚えている。

仲間であるトゥワイスが殺されかけて、怖くて、悲しくて、憎かった。

緑谷は、それがこれまで殺してきた人やその家族や友人の気持ちだと。

葬は、自由に生きるという事は相手の自由も認めるということだと。

誰かが誰かの好きな人を奪わないために、ルールがある。『普通』がある。

 

「弔くんが全部壊そうって言ってくれて、燈矢くんが嫌いがいっぱい詰まった普通のお家、燃やしてくれて無かったことにしてくれた。嬉しかった。でも、心には残るの」

 

庭に怪我をした雀が落ちていた。

可哀想で、可愛くて、拾って血を啜った。

そこからだ、両親が、世界が一変したのは。

『普通じゃない』『普通にしなさい』『人間じゃない子産んじゃった』。

前は膝の上で髪をお団子に結んでくれていたのもしてくれなくなって、フリルの付いたピンクの可愛い洋服も、汚れてもわからない色のワンピースが多くなった。

 

「世界は生きにくくて、全部嫌いだった。でも、仲間が出来て、個性が使えるくらい同じになりたいって思える大好きな人ができて…」

 

『好き』が増えた。

 

「もっと早くお茶子ちゃんたちに会えてたら、何か変わったかな…?」

 

彼女は、苦しさを、涙を見なかったことにしなかった。

 

「変わるよ、変えよう。一緒に」

「お友達に、なってくれますか?」

「うん、喜んで」

 

麗日は腕で顔を拭う。

 

「葬ちゃんのこと、救けてくれる?」

「うん、絶対」

 

13号が最初の授業で言っていた。

個性は、誰かを簡単に傷つける力でもあるが、同時に誰かを救う力なのだと。

 

「ヒミコちゃんの個性、とっても、素敵な個性だね…」

 

横になったトガの目尻から、一筋の涙が溢れる。

 

「うん、ありがとう。お茶子ちゃん」

 

咲う彼女のートガヒミコの笑顔は、世界一カァイイ女の子だった。

ーーーーーーーーーーーーーーーー———-

 

デクと死柄木ーOFAとAFO、ヒーローたちの戦いは熾烈を極めていた。

 

「死柄木は、まだそこにいるのか」

「さあ?」

 

至極、興味がないとでも言うかのように、AFOは答える。

それを皮切りに、凄まじい攻防がはじまった。

 

「楽しそうじゃねえか!!混ぜろ!蹴っ飛ばす!!」

 

先の戦いで片腕片足を潰され、耳も一部千切れたミルコであったが、リハビリに時間を費やすくらいなら「切ってくれ」と潔く切り落とし義肢へと変えて即現場復帰、縦横無尽に跳び回っている。

その彼女の足場に、死柄木を拘束せんと気を引くように極太のワイヤーをベストジーニストが操る。

有史以来最強のヴィランとの闘いに、生徒たちは空を見上げる。

遠い、遥か上を。

 

「おいテメエら!!ボサっとしてんじゃねぞ!」

 

そんな彼らを、乱暴な叱責が一喝する。

歯噛みしたいのは爆豪も同じ、否、それ以上であった。

 

「アイツが“勝つ“、俺たちが“救ける“。どっちも獲るんだよ」

 

勝って救ける、救けて勝つ。

向こうが戦っているのなら、こちらは全員を無事に避難させるのだ。

 

「そっち行くまで死んだら殺すぞ、デク」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

お茶子&ヒミコ

これから、よろしくね

 

引き続きダウン中。力加減間違うとバキッといく。

物理的に取扱注意





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構想時点では応急処置役はオールマイトでした。
目の前でひび割れていく娘を見てもらう予定で(鬼畜の所業)。
変更したら保健室が女の子たちの集いになりました。
ただし姦しくもなければキャッキャウフフする余裕もない女子会。
39刊何度読んでもボロ泣きするんですが…


次回更新は12月8日予定です。
最終巻の発売で波がきたら早まるかもしれませんが、予定は12月8日です。
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