一輪花の咲くまで   作:No.9646

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今回も投稿予定時間変えてしまっています。
ご迷惑をおかけします。
切りのいいところで区切れず、文字数考えると見送ろうかとも考えましたが、完結させるのを優先にと前に書いたので、次に回そうか悩んだ部分も入れました。
後ちょっとお付き合いいただけると幸いです。


80話 WE ARE HERO③

 

ぱらり、と肌に礫が当たるのを感じて、瞼を開ける。

緑谷と死柄木は、両者とも瓦礫の上に転がっていた。

何秒、何分そうしていたのかは分からない。

 

「……っ、う…死柄、木」

「……聞こえてるぜ。そっちは息出来てねえじゃん」

「かヒュ…なん、とか…でき、てる」

 

息も絶え絶え、反動で呼吸もままならない緑谷は、ひゅうひゅうと喉を鳴らしながら答える。

斯くいう弔も、傷こそ塞がりつつあるものの、左上半身が欠けているような有様だった。常人であれば命はあるまい。

 

「A、FO、は…?」

「……消えた」

 

もう頭の中のどこにも、AFOの意識は感じられない。

また奥深くに隠れている可能性が捨てきれなくはないが、何となく、もういないと思った。

 

「何だか、妙にすっきりした気分だ」

 

繋がれていた枷が外れて、手足が自由に動くようになった気分になる。

実際は腕は片方以上吹き飛んでいるし、喋るのも億劫なほど疲労困憊だ。

だが、気分だけは妙に良かった。

妙に憎々しく感じていた青い空も、悪くはないと思ったくらいには。

これも“感情支配”の影響だろうか。

そこではたと思い出した。

 

「おい、アイツはー葬はどうした?」

 

覚えている記憶が正しいのなら、この手で、5本の指で触れたはずだ。

その事実が示す結果を、彼は嫌というほど知っている。

 

「そう、だった」

 

緑谷は死柄木を追ってしまったから、ウラビティ達が共にいたはずだ。

 

「彼女を、オールマイトの元へ、帰さないと…」

 

急ぎ立ちあがろうとして、べしゃりと崩れ落ちる。

拍子にころころと崩れた小石が溢れて転がった。

腕も足も限界で、ガクガクと震えが出ていた。

 

「帰してどうすんだ」

「どうって…」

「アイツはそんなこと望んでないぜ」

 

葬が身柄引渡のトップバッターに名を連ねたのはそれが一番丸く収めるから。

調整役も兼ねているが、願いでも望みでもない、ただの手段。

 

「そう、かもしれない…だけど、家族がバラバラの、ままなんて、悲しい、じゃないか」

 

ぶつかってでもちゃんと向き合わないと、何も分からない、知らないままになってしまうから。

すれ違いから生まれた悲劇は、すぐ目の前にあった。

転弧も、トガも、荼毘もー焦凍も。

友人が苦悩していたのを、緑谷は知っている。少しづつでも歩み寄って、前に進もうとしていた轟家の人たちを。

オールマイトと彼女だって、これからきっと。

 

「根本的に合わねえ家族ってのもあるんだ。大きなお世話って言うんだぜ、そういうのは」

 

緑谷はへにゃりと笑う。

 

「お節介は、ヒーローの本質なんだ」

 

死柄木はしばし緑谷を見つめて、腹筋に力を込める。

身体が重い。怠い。

散々殴られて上半身半分近く吹っ飛んでいる上に出血多量では当たり前だ。

ごろりと体勢を変えて残っている腕を支えに立ち上がる。

 

「ん」

「え?」

 

ぶっきらぼうに緑谷の前に差し伸べられたのは、死柄木の手だった。

一瞬呆けかけた緑谷だったが、その意味が分からないわけではなかった。

 

「……うん、ありがとう」

 

その手をとることに迷いはない。

制御できるようになった“崩壊”は、触れても不意に崩すようなことはなかった。

お互い支えて、それでも歩みは覚束ず。

ふらふらのまま弔はまだ残っている力で“サーチ”を発動させる。

もうずっと昔の事のように感じるが、確かどこぞのヒーローが持っていた個性で、爆豪を誘拐する騒ぎに乗じて先生が掻っ攫ったものだ。使い勝手が良い。

そのうちコレも使えなくなるのだろうなとそんな気がしながら“サーチ”で見た視界には建物の中に3つの反応があった。

 

「あっちだ」

「わかった」

 

弔の誘導で足を進める。

その先は保健室だった。

 

「誰?!」

 

ドアをノックすれば、やや鋭い問いかけが発せられた。

 

「その声は、麗日さん……?」

 

ドアを開けると、視界に飛び込んできたのは赤だった。

 

「麗日、さん…?」

「葬…トガ……?」

 

ウラビティの額には玉のような汗が浮かんでいた。

顔色は酷く青く、それなのに口元は真っ赤に染まっている。

反対に、トガと葬は紙のような色をしていた。明らかに血が足りていない。

 

「デクくん……」

「弔、くん…」

 

かろうじてトガは自力で動ける程度の意識はあった。

トガの腕には輸血チューブが抜けた跡があった。その先に繋がれていたものは、見つからない。

視界に入った赤の出所はそこだった。

 

「弔くん、葬ちゃんが……」

 

横たわる葬の右腕があったであろうシーツの上には、大量の血痕しかなかった。

それに、腹部。

確かに葬は細身だが、あんな不自然な細さではない。

まるで、存在した場所が崩れてなくなったような。

力なく横を向いた葬の唇の端から、血が垂れて酸素マスクの中に溜まっていた。

気道に血が流れ込んでいる。

ウラビティが吸い上げて吐き出しを繰り返していたから、彼女の口元が汚れていたのだ。

血液とは水分である。

それが気道を塞いでいるということは、結果は必然。

 

「おい…」

 

呼びかけに応える声はない。

応えるはずもない。

葬は、息をしていなかった。

 

「退け」

 

ウラビティを押し除け、弔は葬に近づき手を伸ばす。

その手を、緑谷が掴んで止めた。

 

「死柄木、何をする気だ…?」

 

この状況で彼が仲間に何かするとは思えなかったが、何をするか分からなかった。

 

「“崩壊“は元あった個性から可逆性を取り除いたって言ってただろ。だから今残ってる個性と組み合わせて、元に戻す」

 

イメージはある。

ヤクザ連中との宴会でマスキュラーと向こうの図体がデカいやつが殴り合いを始めて襖をぶち破り縁側を破壊した時、治崎が2人をバラすのと直すのを見た。

 

「出来るの…?」

 

トガが今にも倒れそうになりながら、弔に問いかける。

 

「やるんだよ」

 

でなければ死ぬのだ。仲間(家族)が。また、この個性()で。

一瞬“超再生“をくれてやるかと考えたが、それはリスクの大きい賭けだ。

今のダメージ量で“超再生“を手放せば弔の身体が保つか分からない。それに個性を入れるには負荷がかかる。葬の身体に適合するか、彼女の身体が保つとも限らない。

おかしなものだ。

この手で、散々殺してきたのに。

それはトガも同じだった。

罪の自覚とは、胸が裂けるほどに苦しいものなのだと今更ながらに思い知る。

だけど、縋らずにはいられない。

 

「弔くん…お願い…葬ちゃんを、救けて…」

 

弔は、笑って応えた。

 

「仲間の頼みなら、応えなくちゃなあ」

 

身勝手で上等。

好きに壊して、好き勝手やって、好きに生きるのが『ヴィラン』だ。

弔はまずは五指で触れないように、葬の胸に手をあてる。

出血多量では30分、呼吸停止で10分、心停止では3分で生存率は50%を切る。

呼吸困難から停止になって何分か。あと何分か、あと何秒だ。

体内にある個性から使えそうなものを探す。

AFOの意識が消えたからか、以前感じていたような万能感は感じられない。

きっともう奪うことは出来ないし、さっき候補に考えた個性を与えるのもできるか分からない。使える個性の数も激減している。

これからもどんどん減るのだろう。

それでも探せ。

意識の奥のさらに奥。内側を浚うように。

前にもやったではないか。

 

「……!?」

 

何かが、引っかかった。

小さいそれ。

例えるなら、幼い子どもの手。

その小さい手をめいっぱい上げて、ここにいるよと主張するような。

AFOは、生まれたばかりの転弧から、まだ見ぬ個性を抜き取ったと言っていた。

この個性は。

 

「っは」

 

思わずと、声が漏れた。

声には笑いが含まれていた。

 

「“崩壊“ー」

 

生まれて初めて使う個性。

憧れたヒーローのようなスーパーパワーだったり、おばあちゃんとお揃いでないのは少し残念だったが、これはきっと、この為の個性()だ。

いつか幼い日の転弧が望んだ、誰かを救けるための個性。

 

「プラスー“反転“」

 

それ即ちー“再生”。

五指で触れれば、巻き直るように、葬のひび割れた体が元に戻って行く。

腹に空いた穴も、欠けた右腕も。

 

「お前ら離れろ」

 

言い終わるが否や、バチッと電流が走り、葬の身体が跳ねる。

“電波”の個性を弄り素粒子でなく電荷の移動に転じさせた即席AEDだ。

 

「かはッ」

 

マスクが真っ赤に染まる。

葬が口から血の塊を吐いたのだ。

 

「しっかり!!」

「自発呼吸が戻っただけだ。酸素マスク替わりねえの?」

 

一瞬慌てる緑谷たちを宥める。

偏った教育ではあったが、効率よくあるいはゆっくり壊す為に人体構造なんかは学んでいるのだ。

興味はあまりなかったので完璧ではないが。ある程度は手当や治療は自力でやる必要もあり覚えたことだ。

 

「かはっ、ヒュ…けほ…」

 

気道に溜まった血をあらかた吐き出して、ようやく呼吸が少しできるようになったようで、葬の胸が大きめに上下した。

 

「は、ぁ………」

 

ふるりと睫毛が震えた。

数拍おいて、ゆるりと瞼が持ち上がる。

 

「「「葬/死柄木/黒衣/ちゃん/さん!!!」」」

 

3者3様、ばらばらだった。

酸素の回らない頭で、ぼんやりと見事に揃わないな、とか、緑谷はいい加減黒衣から離れた方がいいんじゃないか、とか思考が飛び飛びになりつつも、幸いにも無事だった優秀な脳みそは酸素が回りはじめて再稼働すると、最後の記憶と状況から大体の正答を弾き出した。

ついでに口からは血と共に毒も吐き出した。

 

「はあぁ……クッソあのk【不適切な表現が含まれています】…大人しく死んでおけばいいものを…」

「あっぶねえな。レーティング変えんなよ」

「今のはけっこうギリギリだったよ…!」

 

Gは常日頃ついて回るので止むなしとしても、PGとかRとかはまだついてないのだ。

 

「よかった……」

「そんだけ悪態つけりゃ、死にそうにねえな」

「そろそろ…死に損なうのに、慣れてきそうだ」

 

この1年だけで何回だ。雄英に潜る以前をカウント外にしたって、首を掻っ切ったり、宙吊りにされたり。今回に至っては言わずもがな。

 

「でも私は、まだ…やる事があるから…死ねないみたいだ」

 

今回の事で予定は大幅修正が必要だろう。

足元見られるだろうから、黙らせる材料を用意しておかなければ。

少なくとも弔はじめ幹部連中以下構成員の事もあるし、脳無の処理もしないと。

戦後処理はただでさえやる事が山積みだと言うのに、さらに追加されてそのうち雪崩が起きそうだ。

個人としての欲を言うなら、仲間たちが大人になるのを見届けたい。

レディと酒を飲む約束もある。

それに。

 

「どうやら私は、振袖を、着せて見せないといけないらしいから」

ーーーーーーーー

転弧

10番目のテンちゃん。反転のてんちゃん。

お母さんがお父さんと結婚する前の名前はね、まぎなおって言うんだよ。

「直す」って書くんだって!

 

ようやくお目覚め眠り姫。

最終盤で5話くらい出番なかったんだが??(主人公)

 

デク&弔

身体ぼろぼろ個性残り火だけど2人とも生存。

振袖…?





はい、転ちゃん個性捏造です。
おばあちゃんと同じ“浮遊”でもいいけど、変異型で弔の“崩壊”と合わせ技で治癒系が使えたらいいなって。壊理ちゃんと近い感じにしてみました。
ほらヒロアカはダブルミーニング多いから。

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