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更新が遅くなり、お待ちいいただいていた方には大変申し訳ございません。
ま・さ・か・の!4ヶ月空けてしまいました!!
一旦筆休めてしまうとダメですね・・・勢いって大事・・・
もう少し進める予定でしたが、これ以上停滞するのも…更新しないことには!と切りの良いところでとしました。
あと数話の予定なので、呆れずお付き合いいただけますようお願いいたします(切実)
ヒーローと超常解放戦線の闘いは、ひとまずの終着を迎えた。
日本政府側と反政府武装勢力である超常解放戦線との和平協定が結ばれることとなり、超常解放戦線は武装解除および解散へと動き出す。
倒壊した建物、荒んだ人心。
それは多くの人々にとっては遠い異国の出来事であり、小さな島国の住民にとっては我が身に降りかかった厄災。
世界のどこで何が起ころうと、時間は変わらず進み続け、世界は変わらず廻っている。
同時に、少しづつ変わって行く。
「あのぅ…」
「はーい!!」
所在なさげにかけられた声に、作業に励んでいた新人ヒーローは明るく元気に返事をする。所長の方針だ。
各地で煽動されていたデモやテロ行為も収まり、人々の生活は急速に『日常』を取り戻して行く。
残る小悪党たちが騒ぎを起こすのは止まないが減少、残ったヒーローと警察が連携し鎮圧に当たっている。
やる事は山ほどあるのに人手は足りず、少し前に免許を取ったばかりの新人もあちこちに猫の手代わりに駆り出されている。
避難所にやってきた老婦人は少年を連れていた。
「この子、道でさまよってて…その、家族に置いて行かれたみたいなの」
後半は声が潜められた。
歩く厄災より今日まで続く混乱で、離散する家族も少なからずいる。
少年は薄汚れた格好をしている。痩せた体格に合わない裾の短い服、足は素足で汚れていて、何より糸で縫い付けられた口元が痛々しい。
見るからに訳アリな様子に、先刻浮き彫りになった行き過ぎた迫害か、親が子の個性を持て余したか。
老婦人はかつて同じように彷徨い歩いていた男の子を見かけて、声をかけたことがあった。
もう何年も前のことだ。10年、それ以上だろうか。
その時は、その子の形相があまりに恐ろしくて、見て見ぬふりをしてしまった。
ヒーローが、誰か来るからね、と。
あの子はあの後どうなったのだろうか。ヒーローに助けて貰えたのだろうか。今でも寝られなくなる時がある。
振り向いた少年の眼に、顔に。あの時の男の子のことを思い出して。
心残り、罪悪感、後悔。恐ろしさのない混ぜになった言い表せない記憶。
また引っ込めそうになる手を今度こそはと。
何かしようと、何かせずにはいられなくてー少年の手を取った。
「もう大丈夫だからね、“おばあちゃんが来た“からね」
もう『誰か』じゃない。
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復興に向けた活動がされる一方、超常解放戦線戦力縮小も進められている。
その一陣、脳無の放棄。
「おやすみ、しょうた、ひざし」
黒霧こと白雲は、戦線の移動手段を断つ為にも一番に措置が取られた。
最期は静かなものであった。
立ち会いを許された相澤と山田に見送られ、かつての友人は2度目の深い眠りについた。
遺体は全て焼却処分となった。非人道的な生物兵器の一片たりとも、この世に残すわけにはいかない。
遺骨を、せめて遺灰をと願ったが、彼を家族のもとに帰してやることは叶わなかった。
だから最期はせめて、見届けよう。
一般的な焼場では広さも温度も足りず、焼却施設を借りて細工がされないよう両陣営立ち会いの下エンデヴァーと荼毘こと燈矢が駆り出された。
元No.1親子とは打って変わり、父との共同作業に燈矢は始終ご満悦である。
「俺が死んだらお父さんの炎で灼いてよ」
彼は身柄引渡しの後、拘束はされるが特殊医療施設での治療が開始される算段である。
予め燈矢の診断書を見聞した医師の見立でも、現在の生存は奇跡か執念かでしかなかった。
あと、幾許か。
エンデヴァーの顔色は、蒼白い炎の反射ばかりでないだろう。
そんな様子を、葬は耐熱ガラスの窓から眺めていた。
無理を通して一時外出許可を取った彼女はいつもより深い黒、艶を消したブラックスーツー喪服であった。
この日、葬は戻していた髪をまた変え、眼にも赤いカラコンを入れている。
死柄木葬としてここに立つ彼女は、轟々と燃え盛る炎の奥を見つめていた。
「失礼」
光の刺激が強いため、長時間の目視は禁止されている。
しばらくすると同行の職員に一言断りを入れ、葬は静かに押さえ立ち去った。
処理は淡々と進んで行く。
相澤たちにもできる事など何もなく、全てが灰燼と帰すのを待っているしかない。
「顔、洗ってくる」
「俺も行くわ」
ぐずぐずになった顔を直そうと、2人は席を立つ。
手洗い場の前で異変に気が付いたのはプレゼントマイクだった。
「huh…?」
「どうした?」
音声系個性であるプレゼントマイクは人よりも聴覚に優れている。音の反響で大体の位置が分かるくらいには。
だから相澤では拾えなかったそれを、彼の耳は拾った。
聞こえたのは誰かの咳込む音、えずき、喘鳴。
苦しむ声。
少し離れた女性用の手洗い場の前には武装した男性職員が立っている。声はそこから聞こえていた。
「おい!中に誰かいるのか!?」
「お応えしてしかねます」
「ハア!?」
要領を得ない回答に思わず声量が高くなる。
押し問答をしても埒が明かないと職員を押し退ければ、彼はすんなりと引いた。
バン!とドアを開ければ、そこにはかろうじて洗面台に片手が引っかかっているーおそらく立ちあがろうとして失敗し、頽れるように床に座り込む葬の姿。
荒い呼吸を繰り返し、握りしめたハンカチには、血を拭った跡があった。
「おい!大丈夫か!?」
「…ここは、女性用ですよ」
「そんな事言ってる場合か!」
闖入者にのらりと顔を上げた彼女に手を伸ばすが、やんわりと払い除けられた。
「触らないで、もらえますか…メイクが、落ちるので」
「10代が化粧なんか気にすんな。と、お前これコルセット?肺やってんのか」
「相澤先生は、デリカシーとファッションを、学ばれた方が、良いのでは?」
1〜2割本心である。
残りは強がりだ。
メイクは顔色を誤魔化すのに、コルセットは肋骨のヒビと内臓の保護の為。ファッションとしては必要ならするがあまり興味はない。
「私の、ことは、お気になさらず…動けない程では、ありませんから…血なんて、珍しいものでも、ないで、しょう」
葬はそう言うが、どう見たって大丈夫そうではない。
血を吐いている時点で大丈夫ではない。
オールマイトもよく喀血しているし、拭われたのは鮮血だからまだ内臓から出ている血ではないので大丈夫と言えば大丈夫だが、そういう問題ではない。
「それ、とも、眺めるのがお好きな、そういう趣味、でしたら、料金、とりますよ…例の、ヒーロー、は、その気が、ありましたが」
「無理に喋んな。いや、煽って誤魔化そうとしてんのが痛みならどんどん言え。気が紛れんならマシだ。だが、俺たちをってんならやめとけ。無駄だ」
手口は分かっているし、何より今はそんな気分には到底なれそうもない。
理由を言わずまでも察したのか、葬は口を噤む。
「そこで止まれんだよなぁ、お前は」
死者を悼み、友を亡くした者を憐む。
その心をまだ持っているのなら、止まって欲しかった。
しかし、だからこそ止まれなかったし止まらない。
「とりあえず、医務室行くぞ」
「だから、いいと、言っている、でしょうに」
「ヒーローなんでな。一般人だろうとヴィランだろうとこのままにしておくって選択肢がない。それでもどうのってんなら、こう考えろ。俺たちがお前の事をどうにかしようとすんのは、お前に何かあったらオールマイトさんが悲しむからだ」
「おいおいイレイザー、さすがにそーゆー言い方はどうよ、ってナンデお前さんも「なるほど?」みたいな顔してんノ?」
「まあ、確かに…それだと拒否する理由は、無くなりませんが、止める理由も…無くなります…?」
「合理的だろうが。つーわけでだ、今からお前を医務室に連行する。拘束されたくなかったら抵抗するな」
残念ながら当然に、即行、捕縛布で縛り上げられた。
「お見苦しいところをお見せしました」
医務室に文字通り運ばれた葬はベッドの上で横になっていた。
吸入器で酸素を入れ、呼吸はだいぶ楽になる。
「しかしよお、気持ちは分からなくはねえが、ダメだろアレは」
プレゼントマイクは職員の態度に立腹していた。
「アレは監視であって護衛も救護も職務範囲外でしょう。ウチのと違って、マルチタスクを熟す能力までは期待していませんよ」
こちらに悪感情を抱いているのを隠す気はないようで、目は口ほどにものを言う。
始終あの調子であるし、あのまま葬が倒れても放置していただろう。
派遣する人員を厳選できるほどあちらに余裕はない。
恨まれている自覚はあるし、それでいいと葬自身も考えている。
「一応、オールマイトさんに連絡入れといたぞ。病院への伝達も頼んだ」
「っち…余計なことを…」
「「おい」」
通信機器類は持ち込み不可で預けられているので言い訳は立つが、病院に戻るのが億劫で仕方がない。
「最後まで居ますよ。私には、見届ける義務がある」
言葉だけならば死柄木葬として、戦線のNo.2の責務としてと取れるだろう。
「…お前も、見送りに来たんだろう」
2人もつい先ほど別の職員から耳にした話だ。
「同じ被害者の子の個性が使われていたそうです」
脳無の廃棄に積極的であったのはその所為かと納得もした。
こんなにも早く処分に至ったのは、重要な戦力である脳無を手放すのを渋る戦線の中で、葬が断行の姿勢をとった成果でもあった。
非人道的生物兵器の所有は世論に受け入れられないと説得し、頷かせた。
こういうことがあるから彼女を拘束や病院に押し留めて置けない要因でもある。一部においては非常に協力的でスムーズに事が進むのだ。
「…先日、脳無製造施設最後1ヶ所の処理が完了しました」
「…そうか」
今日で最後。今日は亡くなった友の葬いー火葬なのだ。
自分たちにとっても彼女にとっても。
「データはクローズである事を確認しハードごと物理的に溶解処分。医療研究用に一部提出したものを除き削除が済んでいます」
「あのクソジジイ、研究自体はスゲぇ事やってたんだよなぁ」
何でこんな使い方なんだと怒鳴りつけた。腑が煮え繰り返る思いが、今でも、今日だからこそ沸々と沸る。
ドクターにはその罪を命で贖われてしまい、行き場のない怒りが残った。
それでも、AFOもドクターも死に、施設もデータも消えた。
これでもう2度とあの死者を冒涜した悍ましい兵器は造られない。
「願わくば、今後は未来を生きる者の為に使われることを」
提供したのは、再生医療に関するものと、個性抑制薬に関する情報。
代を重ねる毎に強力になる“個性“を制御できない子どもらへ。
彼らが悲劇を生まないように。負わないように。
持て余す周囲から守れるように。
元よりドクターこと殻木球大を協力者として発表していたことから、彼による脳無研究の産物とした。
細胞検体として壊理を利用させない為に一部情報は改ざんしている。
個性抑制薬は事故防止以外にも、凶悪犯罪者への投与によりその個性使用を封じる事で無力化、並びタルタロスに代表される勾留施設にかかる費用予算の大幅削減の効果も期待され、この問題は世界各国も頭を悩ませる問題であり、各国との外交手段としても注目されている。
取引材料の一つとして、葬が仲介し死穢八斎会が事業化していた個性抑制薬の製造販売権を譲渡することで合意。
渋る治崎を頷かせたのは、彼や組長がその呼び名を嫌った指定予備敵団体名簿からの削除を条件の中に盛り込ませた事であった。
晴れて死穢八斎會は敵予備団体から脱し、再び看板を掲げられる。
十分に恩は売った。組長に子どもらの事を任せたが、これで代が代わっても支援は継続されるだろう。ダメ押しにレディが嫁いでくれたら安泰この上ないが、そこは彼女の意向次第。治崎の頑張りに任せよう。
さて、と葬は身体を起こそうと身動ぎする。通常なら腹筋で起き上がれるのだが、今はそれも難しい。
「もう少しじっとしてろ。まだ時間はかかるらしい」
「そうもいきませんよ。今日ここには死柄木葬として来ています。前に立つ立場の人間が、いつまでも姿を見せないわけにはいきません。口止め料は後ほど」
「要るか。軽口は叩けるみたいだが、お前結構な怪我人だろうが」
「あの人然り、貴方だって弔と脳無にやられて重傷でも直ぐに復帰してたじゃないですか」
両腕粉砕骨折と顔面骨折で搬送された翌々日には教場復帰である。
包帯ぐるぐる巻きのミイラ状態で体育祭の解説もやっていたのは、つい去年のことだ。
「オールマイトといいお前といい教師が反面教師になってんじゃねえか」
「うるせえ」
山田にも指摘され相澤は口をへの字にする。
長年の友人が昔から1人で無理をしがちなことは知っているので、改めて欲しいものである。
「しゃーねーなぁ。そんじゃあ、
意味が分からないわけではないが、差し出された手の意図が掴めず、葬は怪訝そうに首を傾げる。
「正直、俺はイレイザーほど冷静でもねえし、オマエさんにも向っ腹は立ってる。同情はするが赦せはしねえ。だけどな、俺は大人だ。怪我人突き放すほど薄情でもねえ。情に厚い男、Entertainerなヒーロープレゼントマイクだ。向こう行ったら、アイツに胸張って言いてえのさ」
空の果て、ヨボヨボの爺さんになったら、白い雲の上でふわふわにこにこ出迎えてくれるだろう友に。
「「お前の分まで立派にヒーローやって来たぞ」ってな」
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朧
なるべくゆっくり来いよ。
土産話たくさんな!
消太&久
おやすみ、オボロ
葬
おやすみ…ようやく、眠らせてやれた
…守れなくて、ごめん
今回のサブテーマは前を向くお話し。
避難所で引き受けた新人は太陽みたいなヒーローでした。暗いところにいた分照らされてね。
そして次は君も誰かを照らせる人になるといいよ。
お葬式とか弔いは、生者が区切りをつけて前を向くためのものだと言われる事があるそうです。泣くのは感情の整理。
なお前は向いても見てる先に自分がいるかはまた別。見送り。送り出す側。誰か背中突き飛ばせ。
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