一輪花の咲くまで   作:No.9646

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更新が遅くなり、お待ちいいただいていた方には大変申し訳ございません。
また4ヶ月空けてしまいました…
アニメの方も完結しましたね…いい最終回だった…でも!あと1話!やってくれる!!
このお話も次回で本編は最終話の予定なので、呆れずお付き合いいただけますようお願いいたします(土下座)


83話 エピローグ③

 

 

 

「言っても聞かない時は問答無用で取り上げろ。手ェ出そうとしなきゃ手出ししねえから。でも眠ってる時は近づくなよ。尖った物は持ち込まないように。ボールペンとかも気をつけた方がいい」

「タオルでも可ぁ」

「熱出ておかしくなってる奴は黙って寝てな。コイツの「大丈夫」「問題ない」は痛いし苦しいけど耐えなきゃいけないから耐えられる「大丈夫」「問題ない」だから真に受けないように」

 

レディが看護師に注意事項を伝えるのに、くったりとしたまま葬はベッドの中からもそりと間延びした茶々を入れる。日用品も意外と凶器になる。

動きっぱなしだった葬の入院生活は、側近が詰める事でようやく落ち着きを見せた。

そして蓄積と多少は緊張が緩んだのもあってか、熱が上がった。

今は観念して大人しく点滴を打っている。

解熱鎮痛剤の効果で眠気がひどいが、他人がいる内は眠る気になれず、うつらうつらしながらも意識を保っていた。

すると、コンコンとノックの音がする。

 

「はいはい」

「あ、看護師さんとお話終わって」

 

ひょっこりと顔を出したスーツ姿のホークスに、レディは即座にドアを閉めた。

しかしながら、彼も伊達にプロヒーローでもNo.2、元最速の称号持ちではなく流石の反射神経で咄嗟に靴をドアに捩じ込む。

 

「ちょっとちょっと閉めないで」

絶対安静の指示(ドクターストップ)出てるつってんだろ帰れ」

「痛い痛い脛蹴らないでくださいよ」

「ドアがいたむよ」

 

荒事要員の靴は強化仕様が基本なので、踏んでも効果は薄いのだ。だから狙いは脛である。

葬はドアの方を心配した。

ホークスは戯けた調子をすっと潜め声を落とす。

 

「今日は用があるの彼女じゃなくてアナタなんですよ」

「ああ?」

「緊急ではないので、都合が悪ければもちろん改めます」

 

どうやら真面目な話らしい。

 

「まだ起きてるから平気だよ」

「すぐ戻る。ちゃんと、大人しく、横になってろ」

 

葬に念押しし、レディはホークスと連れ立って非常階段の踊場に向かった。屋上でないのは外では両者とも戦闘になった際のアドバンテージが有り、ここなら人がくれば強制終了になるからだ。ついでに良く音が反響するので人が来ると足音で分かる。

 

「で?」

「手っ取り早く担当直入に言いますと、公安(ウチ)に戻って来てくれませんか?先輩」

「ああ?」

「先輩は今回の件、ほとんど顔も名前も出てないじゃなないですか。どの道、()()は入れる予定なんでしょう?」

「バカ言え」

 

レディは落ち着いたら元の名前に戻る予定であった。

レディ・ナガン時代の殺人は国家組織による指示であったことから闇に葬られ、口外禁止を条件にまとまった形である。

多少であれど行動制限や報告義務はつくので、これまでのように施設のスタッフとしてはいられない。

葬も彼らの元に行く事はもう叶わない。

関わりを知られるわけにはいかないから。

彼等に好奇の目や悪意が向かないように。

新しい家族を得る代わりに、これまでの家族と離れなければならない。

そのことに関して、あの少女は決して表に出さないだろう。

だから父親の方に話を通して、償った後は葬の護衛は続けようと考えてはいたが、2人の関係構築を考慮すると、あまりベッタリくっついていてもどうかとは思うのだ。

 

「だいたい、反社やその関係者は公務員になれねえだろうが」

「そこら辺はほら、こっちでどうにか」

 

ちょいちょいと。とホークスはジェスチャーをしてみせる。身分偽装、データ改竄何でもござれ。運転免許証保険証パスポート戸籍も弄れるのが強みです。

 

「テメエらさては懲りてねえな?」

「そんなことないですよ。まあまあひっどい言われようで、外で歩くのも一苦労なんですから」

 

そのため、彼は目立つコスチューム姿でなくスーツだし、“剛翼“もなるべく羽を減らして隠して、代わりに剣を佩いている。

 

「真面目な話、今はどこもかしこもガタガタです。ヒーローは激減しましたが、公安も人員が足りない。再編は急務です。だけど、誰でもいいってわけじゃない。過去の過ちを「間違っている」と受け止めて、繰り返さない人間じゃないといけない」

 

ナガンを指示していた当時の委員長からは代わったが、彼女もやり方は変えどもダーティワークの形式は引き継いでしまった。

必要な事である。そこを否定する気はない。

けれど、変えなければならないこともある。

 

「俺らの代で終わらせましょう――中から変える。手伝ってください」

 

どう変わるか、どう変えるか。

彼らに渡す未来が、少しでも明るくより良いものである為に。

ヒーローが暇だと笑える世の中に。

 

「考えとくよ」

 

ナガンは立ち去りながらひらりと手を振るう。

この年若い後輩を、眩しく思う。

ただ絶望して、救えないと諦めたのに縋るしかなくて。底なしの泥沼と知っていても一緒に沈んでやる事しか出来なかった自分とは違う。

 

「返事、待ってます」

 

見送りながら、「ああ、でも」とホークスは小憎らしい顔で舌を出す。

 

「俺ってばゴーヨクなので、諦める気なんてさらさら無いんで」

 

ーーーーーーーー

その日の検査の終わり、許可を取った緑谷はひとり葬の病室を訪れた。

 

「どうぞ」

「おじゃましま…どうしたの!?」

 

緑谷はぎょっとして駆け寄ろうとする。

表情は変わらないのに、彼女の両頬を透明な滴が濡らしていた。

 

「どこか苦しいとか痛いとか!?ナースコールは!?」

「?」

 

熱は下がったが、まだ怠さが残っていてややぼんやりしていた葬はコテンと首を傾げて、「ああ」と原因を指先で振ってみせた。

 

「目薬だよ」

 

右手が使えないので、細かい力加減が難しいのだ。

拭けばいいかと溢れるままに目をしぱしぱさせている。

涙のように見えるそれはレディにも「お前いつかそういう壊れ方しそうで恐いんだよ」と不評であった。

 

「よかった…この前倒れたって聞いて」

「君が気にする事じゃないよ。というか、君は本当に他人の事を気にするどころじゃ…」

 

途中でなんだかとても不毛な気がして、葬は言い切るのをやめた。

 

「……いいや、止めようこの話は。それで、何の用?」

「うん、この前貸してくれた資料、返そうと思って」

 

返されたのは、先日覚えておけと渡したマスコミ対策の応答集だ。

 

「連中前に一度やらかしてるけど、ああいうのは懲りるってことを知らないからね」

 

マスコミが雄英に無断侵入して警報が鳴る騒ぎになったのは1年ほど前だ。

門を壊したのは弔だが、構内にまで入り込んだのは彼等である。

 

「君は雄英の寮暮らし続行?学校に居る間は相澤先生辺りがブロックするだろうけど、ご実家の方に行くようならお母さんを避難させるのも考えなよ。お父さんは海外だっけ?そっちに引き取ってもらうのも手だよ」

「うん……」

「何?」

「君も、転弧も、ちゃんと誰かのことを考えられるのに。もっと違う形で会えていたらって。そう、思わずにはいられない」

 

先日、麗日が溢していた。

大量の血を失ったトガヒミコもまた入院措置が取られたのを、先生たちが掛け合ってくれて見舞いに訪れた時に。

 

「人に血を分けられる個性だったの…もっと早く気付けていたら、もっと、子どもの時に出会えていたら、違ったのかなぁ…!」

 

彼女の涙を、緑谷出久は生涯忘れる事はないだろう。

 

「たらればを語ってもしかたないさ」

 

トガがあと数ヶ月は未成年なので本来であれば親の介在は不可欠であろうが、彼らは既にその役目も責務も放棄した。

住んでいた家は焼け落ち残っていない。

トガも捜すのは望まなかった。

 

「私は敵だろうと誠意を見せる相手には相応に応えるよ。踏み躙ろうとするなら抵抗するしやられる前にヤる。他人の命や人生をどうでもいいと扱う連中の命や人生なんてどうでもいい」

 

連日、どこの報道も口さがない。

きっと死んだところで、それは正当であったと能書きを垂れるのだろう。

弔の心に触れ、葬の為人の一端を知り、燈矢の縁者である焦凍の苦労や、トガヒミコを気にかける麗日のことを思うと、緑谷も複雑な心境であった。

公正(フェア)だろう?」と彼女は嗤う。

 

「まあ、何にせよ。相手が一般人でも気をつけなよ。一々対応しないで上の連中に放り投げな。権力ってそう言う時のためにあるモノだし、それが人の()に立つ者の役目だからね」

 

刑務所やそれに准ずる施設が厳重なのは、犯罪者の闘争を防ぎ世間を守る為でもあるが、同時に世間から守る為でもある。

社会性動物にとって、他者を追い詰め嬲る行動は歴史上から見ても娯楽だ。

責める材料が有れば狙われる。

守りがないのなら尚更だ。

だから矢面に立つのは物理的に害する事ができない力のある弔と、押し付ける先があり壁のある葬でいい。

 

「うん、ありがとう」

「律儀だね、君も」

 

律儀と言えば、青山は雄英を去ることにしたらしい。わざわざ面会申請して別れを言いにきた。

まだクラスメイトたちには伝えていないが、彼は彼なりにケジメをつけたいと。罪を償って、また一からヒーローを目指すそうだ。

 

「それと、まだちゃんとお礼を言えてなかったこともあったから」

 

葬は記憶を探るが、恨みならいくらでもあるが、果たして彼に礼を言われる覚えは、とんと思い当たらなかった。

 

「絶望から転弧の心を守ってくれた。ありがとう」

 

AFOとOFAが混ざり合う精神世界で、彼女の個性(意志)は緑谷を導いてくれた。

激しい戦いだった。

きっと、どこかが僅かでも違えば、どちらかの命は失われていただろう。

 

「覚えがないな」

「それでも言うよ。言葉にするし、行動する。確かに過去がどうだったらって言ったところで、変えられるものじゃない。だけど未来は変えられる。歩み寄れば、手を伸ばし続ければ、必ず」

 

葬の返答はそっけないものだった。

AFOに個性を奪われた後のことだ。戻ってきてもいないから、当然知る由もない。

けれど、意識は飛びかけていたが雄英の保健室で目を覚ました時に2人がいて、並んで歩いていた。

 

「弔が君の手を取った。それが全てだよ」

 

そう言う彼女の表情は、とても優しくて。

きっと、偽りなどではなかったと、緑谷は思うのだ。

 

「用は終わり?」

 

葬が戻ってきた書類をしまおうと体を捻ると、はずみで身体が軋んだ。

 

「っ…!」

「八木さん!」

「八木…?ああ、私か」

 

一瞬誰のことかと思ったが、そういえばオールマイトの本名がそれだった。

 

「えっと、八木さん?でいいんだよね?」

「その辺まだちゃんと決まってないというか、聞いてないんだよね」

「ちゃんと話しあった方がいいよ」

 

時々オールマイトが追い返されて悄然としているので、どうにか上手く行って欲しいと緑谷は願っている。

轟家の方も問題は多いが、焦凍の表情からするに悪い方向には行っていないのだろう。

マイナスも大きいが形だけはあった轟家と、ゼロからスタートの2人ではどちらの方がというものでもないが、どちらも良い形になってもらいたい。

 

「そういえば君、頑なに黒衣呼びだったね。今は弔が転弧呼びなら私が死柄木でいいんじゃないの?」

「うーん、それは何か違う気が…」

 

前にも似たような話をしたことがあったなと会話がぐだついてきたところに、今度はノックもなしにまた客が訪れた。

 

「何か俺のこと話してんのが聞こえんだけど」

「コレ、ノックくらいせんか」

 

噂をすれば影。弔とグラントリノであった。

廊下には警備の姿もある。

 

「今日検査だっけ?」

 

仕事を取り上げられてから、必要なことは伝えられるが、情報も制限されてしまった。

弔は勝手に手近にあった椅子に腰を下ろす。

同行者のグラントリノは、弔の監視役に名乗りを挙げたというのは聞いている。

 

「俺ぁ身軽だからな」

 

独り身で家族もいないし、文字通り空も飛べるしスピードも出せる。

亡き友人への、せめてもの最後の償いだ。

弔には、タルタロスとは別の収容施設が用意されている。

既に葬が攻略してみせたからだ。

一国が誇る最新鋭の防衛設備を有した最高警備特殊拘置所が破られた事実を公にすることはできず、その事実ごと抹消された。

起きたのはただの送電トラブルによる事故だ。

よってAFOの暗殺もなかった事になっている。

彼の死に関してはほとぼりが冷めた後に老衰あるいは衰弱死と発表される手筈だ。

弔や葬を始めとした他のメンバーに関しても、敵連合発足後の罪をなるべく軽減させるカラクリはここにある。

それら全てAFOに被せたのだ。

死人に口無し。どうせ加算したところで死刑以外はなかったのだ。

そも、概ね事実で元凶である。

ついでに別のもいくつか持っていってもらったが、誤差だろう。むしろ関わっている気がしなくもない。

代わりに、弔は5歳の個性事故による心神喪失と幼少期からの洗脳教育、そして移植した個性を介した精神乗っ取りから、従犯に準じた扱いとして持っていこうという算段である。

葬を殺しかけたことも本人の意思でなかったと補強材料になるので、死にかけた甲斐があったというものだ。

荼毘とトガはどちらも中学までは表面上は通常の教育を受けていたので、その辺りの事情考慮は2人ほど見込めない。

トガは本人が容認するなら別人として生きる道も用意してやれなくはないが、彼女はそれを望まない気がしている。

荼毘は償うほど時間がない。

今は身柄の引き渡しもされて培養皮膚の移植や輸血あるいは骨髄移植による治療が検討されていた。

弔が葬にしたように、“再生”出来ないか試そうとしたが、断られたらしい。

その心境は、燈矢自身にしかわからないだろう。

弔は黒霧が自ら処分を望んだ時のように「好きにしろよ」と受け入れた。黒霧は長らく弔の世話役であったが、最期の別れを交わして送り出した。

スピナーは連合加入前の犯罪履歴はなく、一番早く片がつくだろう。

 

「スピナーがさ、本書くって言うんだよ」

「本?」

「俺たちのこと。本にして、忘れられないように、大勢に知ってもらうんだと」

「じゃあ、いつ出来上がるかわからないし、長生きしてやりなよ」

 

死柄木弔は、人々の前から姿を消しても抑止力として在り続ける。

そして友は、彼や仲間の存在を紡ぎながら帰りを待つのだ。

 

「献本貰ったら届けるよ。他に何かリクエストはある?用意させるよ?」

「何?オールマイトにでもゴリ押しさせんのかよ?」

「私関連を殆どなしにしたから多少無理でない注文をつけておいた方が、向こうも都合がいいらしい」

「はは、お役所って俺らより汚ねえな」

 

「何を今さら」「そうだな」と2人は横のヒーローとセミプロと廊下の公務員たちが苦い顔をするのは無視した。

 

「リクエスト、ねえ…」

 

これから行く所は24時間の監視も付くし敷地からは出られないが、散歩の時間くらいはねだってもいいだろうか。

(転弧)はぽつりと呟くように。

 

「犬、飼いたいな」

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

倒れて再検。しこたま叱られた。

……彼等が穏やかに生きてくれるなら、それでいいよ。

 

転弧

コーギーがいい

 

モンちゃん

けがわ!ぼくのけがわ!どこ!?

 




長く明けてしまうと「書く」リハビリが必要なんですね…
この連休でちょっとずつ戻してましたが、まだまだです。
ifの恋愛系(?)でミリオ相手のとか、リクエストいただいたクロスオーバーとかちまちま書いてます。

ホークスは羽あります。
先輩の勧誘は引き剥がしとかじゃなく、純粋に。
レディは進路悩み中。
付いていてやりたいけど、そうすると比重が>父親になりそうで。
葬は社会的な償いは軽減されたけど、いちばん大切な人たちとは会えなくなる。
彼女にとってはこれが一番の罰かもしれない。
弔たちも軽減大小あれど償いはする予定。
犯罪者の更生支援の一環でプリズンドッグプログラムというのがあるそうです。一部ですが日本でも行われています。
きっと毛皮着替えて来てくれる。
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