東方水妖精   作:粟飯原勘一

5 / 9
 
 灯里「お日様の光を感じると、それだけで元気になるよね」
 アリス(マ)「私たち妖怪は、むしろ月の光に魔力を感じるわね」
 灯里「そうなんですね…」
 小傘「私は雨の日のほうが好き!傘だから!」
 灯里「そういえばそうでしたね」
 


Navigation 5.「その、日陰の少女と…」

  

「魔理沙さん」

「ん? どうした?」

 魔理沙さんの箒の後ろから見える景色に少し変化が現れたので、私は魔理沙さんに声をかけました。

「また湖が見えてきましたね」

「そうだな。

 さっき行った守矢神社の前の湖はあいつらが持ってきたものだが、こっちの霧の湖は幻想郷にもともとあった湖だ」

「そうなんですねぇ…」

「お、いたいた。

 おーい、美鈴~」

 そういって魔理沙さんは、その湖のほとりの大きなお屋敷の前に降り立ち、門の前にいるチャイナ服を着た女の人に声をかけました。

「美鈴…あ」

「寝てるわね」

 アリスさんが呆れたようにそうつぶやいた瞬間。

 サクッ。

「ひっ!!!」

「ぷいっ!!」

 チャイナ服さんのおでこにどこから出たのかナイフが!

 殺人事件発生!?

「魔理沙にアリス、それに小傘? どうしたのこんなところで」

「むにゃ? …っ! あ、咲夜さん…に魔理沙にアリス…どうしたの?」

「ひぇぇ!!」

 チャイナ服さんは、ナイフが刺さっているのもお構いなしに、起きて普通に話を始めました。 

 さすがに、ナイフが刺さっているのは痛そうですが…。

「おぉ、咲夜。

 相変わらずの早業だな。

 いや、外の世界の迷子が久しぶりに来たんだが、どうやら少し厄介な場所から来たらしくてな。

 紫の捜査がしばらくかかりそうだったから、暇つぶしに幻想郷を案内してるのさ」

「そう…あ、私は十六夜咲夜。

 この紅魔館のメイド長ですわ」

 そういうと突然現れたメイド服の人が頭を下げました。

「あ、え、あ、えと、水無灯里です。

 外の世界では、ゴンドラで観光案内するお仕事をしていました。

 こちらはアリア社長です」

「ぷ、ぷいにゅ?」

「そそそそ、それより、大丈夫ですか?」

「あ、私ですか?

 よっ!」

 そういっておでこに刺さったナイフを抜くと、「大丈夫ですよ?」とチャイナ服の人が笑いました。

「私は紅美鈴。

 紅魔館の門番です」

「門番さんでしたか…」

 というか、門番さん寝てるの…と思ったのは秘密。

「あ、灯里さん、それに魔理沙、アリス。

 中には入るかしら?」

「あぁ、図書館にな。

 おぜうは…寝てるだろ?」

「そうね。

 そろそろ起きる頃と思うけれど」

「おぜう?」

「あぁ、この紅魔館ってのは、吸血鬼のおぜうさまのお屋敷なのさ。

 そのおぜうさまは夜行性だからな」

 吸血鬼が夜行性って、当たり前なんじゃ…。

「まぁ、実はこの子、ちょっと面白い能力を持っててな。

 その能力をパチュリーに対峙させたらどんなことになるかなと思ってな」

「能力?

 まぁいいわ、三人とも、お屋敷へどうぞ。

 美鈴、また寝たら承知しないわよ」

「はーい」

 美鈴さんと別れ、咲夜さんについてお屋敷の中に入ります。

「広いですねぇ…」

「ええ、だからもうお掃除が大変よ?」

 私のつぶやきに咲夜さんがにっこり答えました。

「うーむ…」

「ん、どうかしたの魔理沙」

 咲夜さんと話していると、魔理沙さんが考え込むようなそぶりを見せました。

「あーいや、咲夜も自然に灯里と仲良くなってると思ってな」

「そういえば…」

「そうですね」

「ほへぇ?」

「灯里。

 咲夜の二つ名は、『完全で瀟洒なメイド』…その名の通り、コイツはクールでな。

 主人か客か、友人か敵かで対応が変わるんだ」

「ほへぇ、そうなんですかぁ…」

「でもって、咲夜。

 灯里は外の世界から来てすぐにもかかわらず、『誰とでも仲良くなれる程度の能力』を持ってるんだ」

「そういえばさっき、能力の話聞いてなかったわね。

 へぇ、そうなの…道理で話しやすいと思ったわ」

「えへへ…」

 優しい微笑みの咲夜さんからの言葉に、私は褒められたような気がしました。

「あぁ、なるほど、それでパチュリー様に会いに来たのね」

 ぽむっと手をたたいて、咲夜さんが納得しました。

「ああ。

 もしかするとパチュリーでも話しやすいんじゃないかと思ってな」

「なるほどね…さぁ、ついたわ大図書館よ。

 パチュリー様、失礼いたします」

「あら咲夜…にアリスに、えっと…」

「小傘、多々良小傘です」

「あ、水無灯里です。

 えっと、私実は、外の世界の迷子で…。

 あ、こちらはアリア社長です」

「ぷいぷーい」

「あらそう…というかこれ、猫でいいのかしら?

 どうかしたの、みんな揃って」

「さりげなくハブられたが、気にしないぜ。

 実はなパチュリー。

 灯里はどうやら普通に迷い込んだんじゃなくて、特殊な事情があるようなんだ。

 今、紫がその理由を調査してるんだが…どうだ、彼女について何か感じることとか、ないかと思ってな」

 魔理沙さん、パチュリーさんに私を合わせるのが目的だったはずなのに、そこまで話ができるなんて…すごい。

「そう?

 彼女は普通の女の子のようだけど…灯里さん、あなた外の世界では何をしていたの? 学生?」

 パチュリーさんは私に向き直って質問をしてきました。

「いえ、ミドルスクールを卒業してすぐ、お仕事を始めました。

 ゴンドラで観光案内するお仕事を…」

「そう…なるほどね。

 接客の仕事をしているならわかるわ。

 あなた、すごく話しやすいもの」

「はい、ありがとうございます」

 そういって私はにっこり。

「…」

 その時、パチュリーさんが少し私から目をそらしました。

 しかしすぐに咳払いして先を続けます。

「…でも確かに、魔理沙のいう通り、何か感じるわね。

 何か違和感が…」

「どんな感じなんだ?」

「そうね…いま私、彼女の色を見ているのだけれど…白と青のストライプが見えるわ」

 確かにARIAカンパニーのイメージカラーは、白と青。

 そのストライプというのが、私らしいような気がする。

「今の私にわかるのは、そのくらいかしら。

 あと、あなた、能力を持っている?」

「ほへ? あ、はい。

 えっと…」

「『誰とでも仲良くなれる程度の能力』、よ、パチュリー」

 横からアリスさんが補足してくれました。

「…なるほど、わかったわ。

 少し私に違和感があると思ったら…貴女とお話してみたい、と思わせていたのね」

「ほへぇ…そんなことまでわかるんですねぇ…」

「パチュリーは魔理沙や私よりもよっぽど強い魔法の使える魔法使いだからね」

 アリスさんが今度は私に補足をしてくれました。

「パチュリー、しばらく話してみるか?

 灯里、すぐ帰っちゃいそうだし」

「いいえ、私は遠慮するわ。

 それより灯里さんに幻想郷をもっとご紹介してあげて」

 そういうとパチュリーさんは、私の仕事は終わったとばかり、本の棚に向かって立ち上がりました。

「そっか。

 じゃぁ、そろそろ帰るか。

 行こうぜ、灯里」

 と、魔理沙さんが振り返った瞬間。

「魔理沙」

「なん…」

 バチーン!!!

「ひぃ!!」

 バサッ、フワサ…。

 パチュリーさんの手から放たれた光が魔理沙さんの帽子にあたり、その帽子が床に落ちました。

 よく見ればその帽子の中に、本が数冊…。

「魔理沙…本当に懲りないわねぇ…」

 咲夜さんがあきれています。

「まったくいつの間に…」

「ちぇ。

 灯里をダシに、本を借りてこうとしたんだが、失敗だったなぁ…」

 悪びれもせず、魔理沙さんは舌を出して、こうつぶやきました。

「まったく…灯里ちゃん、立てる?」

「え、あ、…えっと、腰抜けちゃって…」

「あ、じゃぁ私が」

「ほへっ?

 小傘ちゃん?」

「大丈夫大丈夫」

 ひょいっ。

「えへへーお姫様抱っこー」

「ここここ、小傘ちゃん!!」

「小傘、本当になついてるのね、灯里ちゃんに」

「よし、帰りましょう、魔理沙、灯里ちゃん、小傘。

 またね、パチュリー」

「ええ、気を付けて…」

 

「あ、出てきた。

 魔理沙また何かしたの?」

 咲夜さんと別れ、門の前に来ると、美鈴さんが呆れながらも笑顔で迎えてくれました。

「パチュリーの本を借りようとしたんだけどな。

 失敗したぜ」

「そして灯里さん…小傘ちゃんにお姫様抱っこ…」

「えへへー、灯里ちゃん軽いから、わちきでもできたんだよー」

「あわあわあわあわ…小傘ちゃん、も、もう大丈夫だから…」

「そう? 残念ー」

「あはは、灯里さん、大人気ですね」 

「まぁな。

 じゃぁ帰るか…博麗神社か、アリスの家か…。

 アリスの家にするか?」

「そうね。

 紫から何か連絡あれば、霊夢が飛んでくるだろうし。

 博麗神社によって、私の家に泊まるように伝えてきましょう」

「そうするか。

 んじゃな、美鈴」

「再見~」

 

 こうして、朝、幻想郷に来てから、夕方までが過ぎました。

 今日はアリスさんの家でお泊りすることになります。

 




  インターローグ:紫の捜査
 
「時空震が、アクアで何かに共鳴して発生した?」
「その可能性があるわ」
 八雲紫は、探しあてた未来人、朝比奈みくるにある仮説を話して聞かせていた。
「つまり、時空震の発生が、何かに共鳴して、それでその…灯里さん、でしたっけ…その方が巻き込まれた、と?」
「ええそういうことでしょうね。
 まぁでも…とりあえず、私が境界を、あなたが時をかければ、何とかなりそうね…」
「そうですね。
 ひとまずよかった…」
「その時は、あなた…」
「あ、はい。
 幻想郷に一度行きます」
 未来人は、そう明るく答えた。
 
  ~to be continued~
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。