灯里「お日様の光を感じると、それだけで元気になるよね」
アリス(マ)「私たち妖怪は、むしろ月の光に魔力を感じるわね」
灯里「そうなんですね…」
小傘「私は雨の日のほうが好き!傘だから!」
灯里「そういえばそうでしたね」
「魔理沙さん」
「ん? どうした?」
魔理沙さんの箒の後ろから見える景色に少し変化が現れたので、私は魔理沙さんに声をかけました。
「また湖が見えてきましたね」
「そうだな。
さっき行った守矢神社の前の湖はあいつらが持ってきたものだが、こっちの霧の湖は幻想郷にもともとあった湖だ」
「そうなんですねぇ…」
「お、いたいた。
おーい、美鈴~」
そういって魔理沙さんは、その湖のほとりの大きなお屋敷の前に降り立ち、門の前にいるチャイナ服を着た女の人に声をかけました。
「美鈴…あ」
「寝てるわね」
アリスさんが呆れたようにそうつぶやいた瞬間。
サクッ。
「ひっ!!!」
「ぷいっ!!」
チャイナ服さんのおでこにどこから出たのかナイフが!
殺人事件発生!?
「魔理沙にアリス、それに小傘? どうしたのこんなところで」
「むにゃ? …っ! あ、咲夜さん…に魔理沙にアリス…どうしたの?」
「ひぇぇ!!」
チャイナ服さんは、ナイフが刺さっているのもお構いなしに、起きて普通に話を始めました。
さすがに、ナイフが刺さっているのは痛そうですが…。
「おぉ、咲夜。
相変わらずの早業だな。
いや、外の世界の迷子が久しぶりに来たんだが、どうやら少し厄介な場所から来たらしくてな。
紫の捜査がしばらくかかりそうだったから、暇つぶしに幻想郷を案内してるのさ」
「そう…あ、私は十六夜咲夜。
この紅魔館のメイド長ですわ」
そういうと突然現れたメイド服の人が頭を下げました。
「あ、え、あ、えと、水無灯里です。
外の世界では、ゴンドラで観光案内するお仕事をしていました。
こちらはアリア社長です」
「ぷ、ぷいにゅ?」
「そそそそ、それより、大丈夫ですか?」
「あ、私ですか?
よっ!」
そういっておでこに刺さったナイフを抜くと、「大丈夫ですよ?」とチャイナ服の人が笑いました。
「私は紅美鈴。
紅魔館の門番です」
「門番さんでしたか…」
というか、門番さん寝てるの…と思ったのは秘密。
「あ、灯里さん、それに魔理沙、アリス。
中には入るかしら?」
「あぁ、図書館にな。
おぜうは…寝てるだろ?」
「そうね。
そろそろ起きる頃と思うけれど」
「おぜう?」
「あぁ、この紅魔館ってのは、吸血鬼のおぜうさまのお屋敷なのさ。
そのおぜうさまは夜行性だからな」
吸血鬼が夜行性って、当たり前なんじゃ…。
「まぁ、実はこの子、ちょっと面白い能力を持っててな。
その能力をパチュリーに対峙させたらどんなことになるかなと思ってな」
「能力?
まぁいいわ、三人とも、お屋敷へどうぞ。
美鈴、また寝たら承知しないわよ」
「はーい」
美鈴さんと別れ、咲夜さんについてお屋敷の中に入ります。
「広いですねぇ…」
「ええ、だからもうお掃除が大変よ?」
私のつぶやきに咲夜さんがにっこり答えました。
「うーむ…」
「ん、どうかしたの魔理沙」
咲夜さんと話していると、魔理沙さんが考え込むようなそぶりを見せました。
「あーいや、咲夜も自然に灯里と仲良くなってると思ってな」
「そういえば…」
「そうですね」
「ほへぇ?」
「灯里。
咲夜の二つ名は、『完全で瀟洒なメイド』…その名の通り、コイツはクールでな。
主人か客か、友人か敵かで対応が変わるんだ」
「ほへぇ、そうなんですかぁ…」
「でもって、咲夜。
灯里は外の世界から来てすぐにもかかわらず、『誰とでも仲良くなれる程度の能力』を持ってるんだ」
「そういえばさっき、能力の話聞いてなかったわね。
へぇ、そうなの…道理で話しやすいと思ったわ」
「えへへ…」
優しい微笑みの咲夜さんからの言葉に、私は褒められたような気がしました。
「あぁ、なるほど、それでパチュリー様に会いに来たのね」
ぽむっと手をたたいて、咲夜さんが納得しました。
「ああ。
もしかするとパチュリーでも話しやすいんじゃないかと思ってな」
「なるほどね…さぁ、ついたわ大図書館よ。
パチュリー様、失礼いたします」
「あら咲夜…にアリスに、えっと…」
「小傘、多々良小傘です」
「あ、水無灯里です。
えっと、私実は、外の世界の迷子で…。
あ、こちらはアリア社長です」
「ぷいぷーい」
「あらそう…というかこれ、猫でいいのかしら?
どうかしたの、みんな揃って」
「さりげなくハブられたが、気にしないぜ。
実はなパチュリー。
灯里はどうやら普通に迷い込んだんじゃなくて、特殊な事情があるようなんだ。
今、紫がその理由を調査してるんだが…どうだ、彼女について何か感じることとか、ないかと思ってな」
魔理沙さん、パチュリーさんに私を合わせるのが目的だったはずなのに、そこまで話ができるなんて…すごい。
「そう?
彼女は普通の女の子のようだけど…灯里さん、あなた外の世界では何をしていたの? 学生?」
パチュリーさんは私に向き直って質問をしてきました。
「いえ、ミドルスクールを卒業してすぐ、お仕事を始めました。
ゴンドラで観光案内するお仕事を…」
「そう…なるほどね。
接客の仕事をしているならわかるわ。
あなた、すごく話しやすいもの」
「はい、ありがとうございます」
そういって私はにっこり。
「…」
その時、パチュリーさんが少し私から目をそらしました。
しかしすぐに咳払いして先を続けます。
「…でも確かに、魔理沙のいう通り、何か感じるわね。
何か違和感が…」
「どんな感じなんだ?」
「そうね…いま私、彼女の色を見ているのだけれど…白と青のストライプが見えるわ」
確かにARIAカンパニーのイメージカラーは、白と青。
そのストライプというのが、私らしいような気がする。
「今の私にわかるのは、そのくらいかしら。
あと、あなた、能力を持っている?」
「ほへ? あ、はい。
えっと…」
「『誰とでも仲良くなれる程度の能力』、よ、パチュリー」
横からアリスさんが補足してくれました。
「…なるほど、わかったわ。
少し私に違和感があると思ったら…貴女とお話してみたい、と思わせていたのね」
「ほへぇ…そんなことまでわかるんですねぇ…」
「パチュリーは魔理沙や私よりもよっぽど強い魔法の使える魔法使いだからね」
アリスさんが今度は私に補足をしてくれました。
「パチュリー、しばらく話してみるか?
灯里、すぐ帰っちゃいそうだし」
「いいえ、私は遠慮するわ。
それより灯里さんに幻想郷をもっとご紹介してあげて」
そういうとパチュリーさんは、私の仕事は終わったとばかり、本の棚に向かって立ち上がりました。
「そっか。
じゃぁ、そろそろ帰るか。
行こうぜ、灯里」
と、魔理沙さんが振り返った瞬間。
「魔理沙」
「なん…」
バチーン!!!
「ひぃ!!」
バサッ、フワサ…。
パチュリーさんの手から放たれた光が魔理沙さんの帽子にあたり、その帽子が床に落ちました。
よく見ればその帽子の中に、本が数冊…。
「魔理沙…本当に懲りないわねぇ…」
咲夜さんがあきれています。
「まったくいつの間に…」
「ちぇ。
灯里をダシに、本を借りてこうとしたんだが、失敗だったなぁ…」
悪びれもせず、魔理沙さんは舌を出して、こうつぶやきました。
「まったく…灯里ちゃん、立てる?」
「え、あ、…えっと、腰抜けちゃって…」
「あ、じゃぁ私が」
「ほへっ?
小傘ちゃん?」
「大丈夫大丈夫」
ひょいっ。
「えへへーお姫様抱っこー」
「ここここ、小傘ちゃん!!」
「小傘、本当になついてるのね、灯里ちゃんに」
「よし、帰りましょう、魔理沙、灯里ちゃん、小傘。
またね、パチュリー」
「ええ、気を付けて…」
「あ、出てきた。
魔理沙また何かしたの?」
咲夜さんと別れ、門の前に来ると、美鈴さんが呆れながらも笑顔で迎えてくれました。
「パチュリーの本を借りようとしたんだけどな。
失敗したぜ」
「そして灯里さん…小傘ちゃんにお姫様抱っこ…」
「えへへー、灯里ちゃん軽いから、わちきでもできたんだよー」
「あわあわあわあわ…小傘ちゃん、も、もう大丈夫だから…」
「そう? 残念ー」
「あはは、灯里さん、大人気ですね」
「まぁな。
じゃぁ帰るか…博麗神社か、アリスの家か…。
アリスの家にするか?」
「そうね。
紫から何か連絡あれば、霊夢が飛んでくるだろうし。
博麗神社によって、私の家に泊まるように伝えてきましょう」
「そうするか。
んじゃな、美鈴」
「再見~」
こうして、朝、幻想郷に来てから、夕方までが過ぎました。
今日はアリスさんの家でお泊りすることになります。
インターローグ:紫の捜査
「時空震が、アクアで何かに共鳴して発生した?」
「その可能性があるわ」
八雲紫は、探しあてた未来人、朝比奈みくるにある仮説を話して聞かせていた。
「つまり、時空震の発生が、何かに共鳴して、それでその…灯里さん、でしたっけ…その方が巻き込まれた、と?」
「ええそういうことでしょうね。
まぁでも…とりあえず、私が境界を、あなたが時をかければ、何とかなりそうね…」
「そうですね。
ひとまずよかった…」
「その時は、あなた…」
「あ、はい。
幻想郷に一度行きます」
未来人は、そう明るく答えた。
~to be continued~