東方水妖精   作:粟飯原勘一

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 灯里「私、ちゃんと自分の世界に帰れるんでしょうか」
 アリス(マーガトロイド)「何よ急に」
 灯里「いえ…幻想郷のみんなといるのが楽しくて…帰りたくなくなっちゃったらどうしようって」
 小傘「それなら、それでもいいんじゃないかなぁ?」
 アリス(マーガトロイド)「いや、駄目でしょう」
 



Navigation 6.「その、薄幸な少女と…」

 

 私たちが博麗神社に帰ると、紫さんが霊夢さんとお話ししていました。

 それ以外にも、もっふもふのしっぽをした大人の女性と、小傘ちゃんと同じような猫耳した女の子に、ふわふわ巻き毛のきれいな女の子もいました。

「お、紫が帰ってきてるぜ…藍と橙もいるな。

 もう一人は誰だ?」

「あ、帰ってきた。

 幻想郷は楽しかった?」

「はひっ!!!」

「ぷいにゅ!」

「紅魔館や命蓮寺で、結構危険な目に合ってるのに、なんで嬉しそうかねこの子は」

 魔理沙さんが少しあきれ気味。

「命蓮寺はともかく、紅魔館のはアンタのせいでしょ」

「またあんた、パチュリーの本に何かしたのね?

 災難だったわねぇ灯里ちゃん」

「いえ、そんなことは…」

「命蓮寺からは小傘もついてきちゃったのね。

 にぎやかなことで」

「えへへー、灯里ちゃんといると楽しいから!」

 うれしそうな小傘ちゃんの笑顔に、私もうれしくなっちゃいます。

「で、紫が帰ってきてるってことは…」

「ええ、解決策が見えたわ。

 あ、まず彼女を紹介するわ」

「あ、朝比奈みくるです。

 時間旅行社に勤めてます」

「わぁ、時間旅行社の方でしたか」

「ぷいにゅーい」

「あぁ、そういえば灯里は未来人だったな。

 忘れてたぜ」

「ええ。

 彼女とようやくコンタクトとれて、彼女を介せば未来に戻れるわ」

「はひっ! 私、帰れるんですか!? よかったぁ!! よかったですねーアリア社長~」

「ぷいぷーい!!」

「…!!」

 その時、私は一瞬、喜んでしまったことを後悔しました。

 隣にいた小傘ちゃんの顔が曇ったのです。

「まぁでも、帰るのは今夜遅くね。

 明日の未明に帰れば、ちょうどあなたがこっちに来た時間のすぐ後に帰れるわ。

 それまで少しあなたとアリア社長には、お話聞こうと思うわ」

「ほへ? アリア社長にもですか?」

「ええ。

 どうやら、自然発生した時空震と、火星(アクア)の何者かが関係している気がしているの…」

「そうですか…でもアリア社長は、人間の言葉は理解できますけど、しゃべることが…」

「そういうことは私にお任せ!」

 不意に、隣にいた女の子が声を上げた。

「私は橙!

 猫の妖怪だよ!」

「そう。

 私の式神の…」

 そういってもふもふしっぽの女性の方を紫さんがちらっと見ると、その女性が話し始めました。

「あ、八雲藍と申します。

 紫様の式神をしております。

 橙は私の式神になります」

「あ、どうも…えっと水無灯里です」

 私がお辞儀すると、橙ちゃんはアリア社長に向かいました。

「にゃいにゃー?」

「ぷいぷーい!!」

「にゃ!! 大丈夫です、この子の言うこと、私でもわかりました!」

「ほへぇ…」

 さすがは猫の妖怪。

 でも一つ気がかりなことが…。

「…」

 さっきから黙ってしまっている小傘ちゃんです。

「えっと、みくるさん」

「はい?」

「出るのは明日の午前2時、ですか?」

 ふと私は、隣で話を聞いていたみくるさんに声をかけました。

「それが一番いいでしょう。

 向こうの時間の午前7時少し過ぎに戻れます」

「もし…明日の午前8時とか、9時とか…そのくらいの時間に移動始めたら、どうですか?

 帰れますか?」

「えっ?

 えっと…その2時からだから…8時なら6時間後の午後1時、9時なら午後2時になりますかね」

「灯里ちゃん?」

「帰れますよね?」

「ええ、もちろん」

「だったら…明日の8時くらいまで待ってもらえませんか?

 これからすぐ、わかることはお話ししますから。

 そのあと…小傘ちゃんと、アリスさんの家に、一晩だけ止まらせてもらえませんか?」

「…アリスはそれでいいの?」

「え? ええ、もちろん。

 元々、私の家に泊まろうって話をしながら帰ってきたし」

「…」

 小傘ちゃんは、静かに事の成り行きを見守っています。

「でも、向こうの世界にあなたのいない時間があるわ?

 そうすると、もしかすると、あなたがいないことで大騒ぎになるかも」

「大丈夫です。

 今は私の会社には、私とアリア社長しかいませんし、午前中はお客様もいなかったはずなので、臨時休業ってことにできると思います」

「そうですか…私は構いませんけど、いかがですか、紫さん?」

「灯里さんさえよければ、私が反対する理由はありませんよ?」

 そういって紫さんは私に笑いかけました。

「…灯里ちゃん!」

 その時、小傘ちゃんが私に抱き着いてきました。

「こ、小傘ちゃん?」

「…」

 そういうと、小傘ちゃんは私の胸に顔を押し付け、黙ってしまいました。

 その行動に、私以外は唖然としていましたが、私は小傘ちゃんを抱きしめ「大丈夫だよ?」と声をかけると、みんな優しい目で小傘ちゃんを見ました。

 

 それから数十分。

 私とアリア社長が、紫さん、藍さん、橙さん、霊夢さん、みくるさんに事情を話しました。

「橙。

 アリア社長はなんて言ってたの?」

 事情を話し終わると、紫さんが橙さんに尋ねました。

「えっと…なんというか…」

 橙さんは困ったように言いよどむ。

「ぷいぷーい」

 するとアリア社長が、私を指さしました。

「え? あ、そうすればいいのか。

 灯里さん」

「はひっ!?」

 急に橙さんに呼ばれ、ぎょっとする私。

「火星(アクア)に、猫の親玉みたいな人っているんですか?」

「ほへ? …えっと…あ、うん。

 います」

「その猫の親玉さんに、灯里さんは気に入られててるんですね?」

「ぷいにゅー」

「えっと…たぶん、としか言えませんが。

 そうだと思います」

「それで、アリア社長は、それが関係あるかもしれない、と」

「ほへ?

 どういうことですか?」

「ぷいぷいー…」

「それはわからないみたいです」

 というか、アリア社長の言ってる言葉を翻訳してもらえるの、ありがたいなぁ…。

「…みくるさん」

 と、そこで、紫さんが声を上げた。

「はい」

 その声に、なぜか唖然としていたみくるさんが静かに答えた。

「先ほど、みくるさんとお話しして仮定が、これで証明されたといっていいでしょう。

 灯里さん、あなたは、火星(アクア)を中心に発生した時空震に、その"猫の親玉"の何かが共鳴したことで、その思念の中にあったあなたが巻き込まれてここにいるんだわ。

 そうとしか考えられないもの」

「ほへぇ…」

 ケット・シーと、時空震の共鳴。

 ゴクリ。

 信じがたいその結論に、私は唾をのんだ。

「ぷいにゅ」

 しかし、その結論を聞いたアリア社長は、私の腕をつかみ、ゆっくりとうなずいた。

 大丈夫だよ、とばかり。

「まぁ原因究明らしいことも分かったし、あとは私の境界を操る程度の能力と、みくるさんのタイムマシンを使うことで、灯里さんは火星(アクア)に戻れるわ。

 それじゃ、明日の朝、またここに…」

「はひっ!」

「ぷいにゅー!」

 

 こうして私たちは、一晩の宿をお借りするため、アリスさんの家に向かうことにしました。

 もちろん、小傘ちゃんも一緒に。

 

  ~to be continued~

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