灯里「私、ちゃんと自分の世界に帰れるんでしょうか」
アリス(マーガトロイド)「何よ急に」
灯里「いえ…幻想郷のみんなといるのが楽しくて…帰りたくなくなっちゃったらどうしようって」
小傘「それなら、それでもいいんじゃないかなぁ?」
アリス(マーガトロイド)「いや、駄目でしょう」
私たちが博麗神社に帰ると、紫さんが霊夢さんとお話ししていました。
それ以外にも、もっふもふのしっぽをした大人の女性と、小傘ちゃんと同じような猫耳した女の子に、ふわふわ巻き毛のきれいな女の子もいました。
「お、紫が帰ってきてるぜ…藍と橙もいるな。
もう一人は誰だ?」
「あ、帰ってきた。
幻想郷は楽しかった?」
「はひっ!!!」
「ぷいにゅ!」
「紅魔館や命蓮寺で、結構危険な目に合ってるのに、なんで嬉しそうかねこの子は」
魔理沙さんが少しあきれ気味。
「命蓮寺はともかく、紅魔館のはアンタのせいでしょ」
「またあんた、パチュリーの本に何かしたのね?
災難だったわねぇ灯里ちゃん」
「いえ、そんなことは…」
「命蓮寺からは小傘もついてきちゃったのね。
にぎやかなことで」
「えへへー、灯里ちゃんといると楽しいから!」
うれしそうな小傘ちゃんの笑顔に、私もうれしくなっちゃいます。
「で、紫が帰ってきてるってことは…」
「ええ、解決策が見えたわ。
あ、まず彼女を紹介するわ」
「あ、朝比奈みくるです。
時間旅行社に勤めてます」
「わぁ、時間旅行社の方でしたか」
「ぷいにゅーい」
「あぁ、そういえば灯里は未来人だったな。
忘れてたぜ」
「ええ。
彼女とようやくコンタクトとれて、彼女を介せば未来に戻れるわ」
「はひっ! 私、帰れるんですか!? よかったぁ!! よかったですねーアリア社長~」
「ぷいぷーい!!」
「…!!」
その時、私は一瞬、喜んでしまったことを後悔しました。
隣にいた小傘ちゃんの顔が曇ったのです。
「まぁでも、帰るのは今夜遅くね。
明日の未明に帰れば、ちょうどあなたがこっちに来た時間のすぐ後に帰れるわ。
それまで少しあなたとアリア社長には、お話聞こうと思うわ」
「ほへ? アリア社長にもですか?」
「ええ。
どうやら、自然発生した時空震と、火星(アクア)の何者かが関係している気がしているの…」
「そうですか…でもアリア社長は、人間の言葉は理解できますけど、しゃべることが…」
「そういうことは私にお任せ!」
不意に、隣にいた女の子が声を上げた。
「私は橙!
猫の妖怪だよ!」
「そう。
私の式神の…」
そういってもふもふしっぽの女性の方を紫さんがちらっと見ると、その女性が話し始めました。
「あ、八雲藍と申します。
紫様の式神をしております。
橙は私の式神になります」
「あ、どうも…えっと水無灯里です」
私がお辞儀すると、橙ちゃんはアリア社長に向かいました。
「にゃいにゃー?」
「ぷいぷーい!!」
「にゃ!! 大丈夫です、この子の言うこと、私でもわかりました!」
「ほへぇ…」
さすがは猫の妖怪。
でも一つ気がかりなことが…。
「…」
さっきから黙ってしまっている小傘ちゃんです。
「えっと、みくるさん」
「はい?」
「出るのは明日の午前2時、ですか?」
ふと私は、隣で話を聞いていたみくるさんに声をかけました。
「それが一番いいでしょう。
向こうの時間の午前7時少し過ぎに戻れます」
「もし…明日の午前8時とか、9時とか…そのくらいの時間に移動始めたら、どうですか?
帰れますか?」
「えっ?
えっと…その2時からだから…8時なら6時間後の午後1時、9時なら午後2時になりますかね」
「灯里ちゃん?」
「帰れますよね?」
「ええ、もちろん」
「だったら…明日の8時くらいまで待ってもらえませんか?
これからすぐ、わかることはお話ししますから。
そのあと…小傘ちゃんと、アリスさんの家に、一晩だけ止まらせてもらえませんか?」
「…アリスはそれでいいの?」
「え? ええ、もちろん。
元々、私の家に泊まろうって話をしながら帰ってきたし」
「…」
小傘ちゃんは、静かに事の成り行きを見守っています。
「でも、向こうの世界にあなたのいない時間があるわ?
そうすると、もしかすると、あなたがいないことで大騒ぎになるかも」
「大丈夫です。
今は私の会社には、私とアリア社長しかいませんし、午前中はお客様もいなかったはずなので、臨時休業ってことにできると思います」
「そうですか…私は構いませんけど、いかがですか、紫さん?」
「灯里さんさえよければ、私が反対する理由はありませんよ?」
そういって紫さんは私に笑いかけました。
「…灯里ちゃん!」
その時、小傘ちゃんが私に抱き着いてきました。
「こ、小傘ちゃん?」
「…」
そういうと、小傘ちゃんは私の胸に顔を押し付け、黙ってしまいました。
その行動に、私以外は唖然としていましたが、私は小傘ちゃんを抱きしめ「大丈夫だよ?」と声をかけると、みんな優しい目で小傘ちゃんを見ました。
それから数十分。
私とアリア社長が、紫さん、藍さん、橙さん、霊夢さん、みくるさんに事情を話しました。
「橙。
アリア社長はなんて言ってたの?」
事情を話し終わると、紫さんが橙さんに尋ねました。
「えっと…なんというか…」
橙さんは困ったように言いよどむ。
「ぷいぷーい」
するとアリア社長が、私を指さしました。
「え? あ、そうすればいいのか。
灯里さん」
「はひっ!?」
急に橙さんに呼ばれ、ぎょっとする私。
「火星(アクア)に、猫の親玉みたいな人っているんですか?」
「ほへ? …えっと…あ、うん。
います」
「その猫の親玉さんに、灯里さんは気に入られててるんですね?」
「ぷいにゅー」
「えっと…たぶん、としか言えませんが。
そうだと思います」
「それで、アリア社長は、それが関係あるかもしれない、と」
「ほへ?
どういうことですか?」
「ぷいぷいー…」
「それはわからないみたいです」
というか、アリア社長の言ってる言葉を翻訳してもらえるの、ありがたいなぁ…。
「…みくるさん」
と、そこで、紫さんが声を上げた。
「はい」
その声に、なぜか唖然としていたみくるさんが静かに答えた。
「先ほど、みくるさんとお話しして仮定が、これで証明されたといっていいでしょう。
灯里さん、あなたは、火星(アクア)を中心に発生した時空震に、その"猫の親玉"の何かが共鳴したことで、その思念の中にあったあなたが巻き込まれてここにいるんだわ。
そうとしか考えられないもの」
「ほへぇ…」
ケット・シーと、時空震の共鳴。
ゴクリ。
信じがたいその結論に、私は唾をのんだ。
「ぷいにゅ」
しかし、その結論を聞いたアリア社長は、私の腕をつかみ、ゆっくりとうなずいた。
大丈夫だよ、とばかり。
「まぁ原因究明らしいことも分かったし、あとは私の境界を操る程度の能力と、みくるさんのタイムマシンを使うことで、灯里さんは火星(アクア)に戻れるわ。
それじゃ、明日の朝、またここに…」
「はひっ!」
「ぷいにゅー!」
こうして私たちは、一晩の宿をお借りするため、アリスさんの家に向かうことにしました。
もちろん、小傘ちゃんも一緒に。
~to be continued~