東方水妖精   作:粟飯原勘一

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 灯里「友達と同じ部屋に寝ようとすると、なんで眠くないんだろうね」
 アリス(マ)「あーお泊り会はそうかもしれないわね。私はちゃんと寝るけど」
 灯里「えーそうなの?」
 小傘「でも、実はそれって楽しいからじゃないからかも」
 灯里「えっ、どういうこと?」
 


Navigation 7.「その、眠れない夜に…」

 

「なんだか、わくわくするね、お友達と一緒に寝るのって」

「そうだね…それに、一緒にいるのが灯里ちゃんだから、わちきはもっと嬉しい」

「小傘ちゃん…うん、私もだよ」

 アリスさんの家について、お夕飯をいただいた後、リビングのソファーにアリスさん、アリスさんのダブルベッドに私とアリア社長と小傘ちゃんが寝ることにしました。

 そしてベッドに入ると、小傘ちゃんは自分の身の上について話してくれました。

「わちきね…忘れ傘なんだよ」

「忘れ傘?」

「そう。

 外の世界で、使ってくれてた人が置き忘れて、そのまま忘れ置かれて、ごみにもならないような場所に放置されて。

 それが妖怪化して…で、誰かに気づいてほしくて、人を驚かすようになったのがわちき。

 でも、気づいてさえもらえればいいから、それだけしかできなくて…だからみんなにはいつか忘れ去られちゃう」

「小傘ちゃん…」

「でも、この幻想郷に来てからは、同じように外の世界で忘れ去られたやまびこの響子とか、天狗とか、鬼とか…みんな同じような境遇で、楽しいんだ、わちき」

「そうだったんだ…」

 小傘ちゃんのちょっと重い話、かと思ったけど、よかった案外前向きな子だった。

「最も、この世界でも、外でホームレス生活してた時は…人里の怖いおじさんとかに襲われそうになったりもしたけど…。

 今は聖のおかげで、命蓮寺に住まわせてもらって、ご飯もらえて、響子や一輪に村紗、ぬえちゃんにも仲良くしてもらえて。

 だから…」

「こ、小傘ちゃん?」

 その時、ようやく私は小傘ちゃんの眼に浮かぶ大粒の涙に気づきました。

「灯里ちゃんにもこの世界に残ってほしい…でも、それはわちきのわがままだってわかってる…」

 ポロポロ涙を流しながら、小傘ちゃんは、それでも微笑みました。

「だから、灯里ちゃんにはわちきを忘れてほしくなくて…でも、最初に紫が言ってた深夜にいなくなっちゃうと、思い出も作れないなって思ったの。

 そしたら灯里ちゃんは、明日の朝までいたいっていてくれて…わちき、うれしかった。

 ありがとう、灯里、ちゃ…ん…」

 ポロポロと小傘ちゃんの眼からこぼれる涙。

 それは、小傘ちゃんの心の宝石に私は思えました。

「小傘ちゃん…うん、大丈夫。

 私、お友達のことは忘れないから。

 小傘ちゃんのことも、絶対忘れない。

 それにさ」

「ん…?」

「小傘ちゃん、妖怪さんなんでしょ?

 とっても長生きするでしょ、私たち人間からすれば」

「うん、そのはず…」

「そしたら、私が帰った時代にも生きててくれるはず。

 そうしたら、私のところにおいでよ。

 紫さんに頼めば、きっと来れるから。

 そうしたら…私が、その世界を紹介してあげるから」

「うん…ありがとう…あ、灯里ちゃん、これ上げるよ」

「ん?なにこれ…わぁ、きれい…」

 と小傘ちゃんは私に、つけていたペンダントをくれました。

「これね。わちきが鍛冶した鉄で、いらなくなった部分をペンダントにしたんだ。

 わちきが最初に鍛治した時の鉄なんだよ?」

 そう言って小傘ちゃんは嬉しそうにペンダントを説明する。

「え、でも大切なものなんじゃ…」

「大丈夫。いくつか作ってあるから。

 その中で一番きれいにできたやつを持ってたから、灯里ちゃんにあげるだけ。

 わちきは、それだけ、灯里ちゃん、大好きだから」

「小傘ちゃん…うん、私も大好きだよ、小傘ちゃん」

「えへへ…あ、そういえば…灯里ちゃんのいた世界ってどんなところ?」

「ネオ・ヴェネツィアのこと?

 そうだなぁ…」

 それからは、私のお話したり、小傘ちゃんの命蓮寺や幻想郷でのお話を聞いたり、尽きることのないおしゃべり。

 霊夢さんや魔理沙さんに退治されそうになったり、今は命蓮寺に恩を返すために人里で鍛冶職人をやってることとか。

 鍛冶職人としてはまだまだ半人前で親方からは叱られてばっかりなこと。

 でも、小傘ちゃんはちゃんと「叱られるのは見込みがあるから」だとわかってること。

 だから、厳しくてもついていけること。

 私は、藍華ちゃんやアリスちゃん、そしてアリシアさんに晃さん、アテナさん達に支えてもらって、半人前時代も楽しく過ごしてたから、本来は修行というのが厳しいものだって、小傘ちゃんに教えてもらった気がしました。

 

 ガタガタ…ビュー。

「んっ…」

 時刻は午前5時。

 日付が変わる頃にアリア社長が寝ちゃって、そのあとは2時過ぎまで小傘ちゃんとおしゃべりしながら、小傘ちゃんが寝ちゃったのを見届けて私も寝てから2時間。

 どうやら外は強風のようです。

「…」

 せっかく起きたのでお手洗いに行くためリビングに行くと、アリスさんも目を覚ましていたようです。

「あ、灯里ちゃん、おはよう。

 早いわね」

「あ、おはようございます、アリスさん。

 外の風の音で起きちゃいました」

「そうね…強い風ね。

 昨日は結構遅くまで起きていたんでしょう?」

「そうですね…2時すぎくらいまで起きてましたね。

 まだ小傘ちゃんは寝てますよ」

「そう…その2時の時は風はどうだった?」

「えっと、吹いてなかったと思いますよ」

「そう…」

「どうかしたんですか、風が?」

「あ、いえ…何でもないの」

「??」

「灯里ちゃん、朝ごはんの準備手伝ってくれる?

 今日は3人分にあなたのところのアリア社長も食べそうだから少し多めに作ろうと思うの」

「あ、はひっ!」

 

 そして、それから2時間ほどが経過しました。

「ふわぁ~…アリス、灯里ちゃん、おはよう…」

「ぷいにゅーい…」

 アリスさんが本来使っている寝室から、小傘ちゃんとアリア社長が起きてきました。

「あ、小傘ちゃん、おはよう。アリア社長もおはようごさいます」

「おはよう、アリア社長に、小傘…って小傘、両目が真っ赤よ?

 大丈夫?」

「えっ?」

 そう言って小傘ちゃんは鏡をのぞき込みます。

「…まぁ、大丈夫だよ。

 灯里ちゃん、昨日はありがとう。

 すごく楽しかった」

「あ、うん、私もだよ、小傘ちゃん。

 さ、朝ごはんにしよう」

「わーい!! いただきまーす!」

「ぷいにゅーい!!」

「いただきまーす」

「はい、いただきます」

 4人で食べる朝ごはんは、いつもアリア社長と二人だけで食べるご飯よりも楽しい気がしました。

 と、その時。

「大変だ、アリス、灯里!!」

「ん? 魔理沙?

 どうしたの、そんなに慌てて」

「今日は、幻想郷に大風が吹いてる!!」

「そうね…まぁ、そんな日もあるでしょ」

 アリスさんがのんきに答えると、魔理沙さんはとんでもないニュースを伝えました。

「そうじゃないんだ!!

 このままじゃ、灯里が帰れなくなるかもしれないんだ!!!」

 

「えっ!?」

 

  ~to be continued~

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