東方水妖精   作:粟飯原勘一

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 灯里「なんだか、大変なことになりそうですね」
 アリス(マ)「風くらいで何が大変なんだか」
 みくる「風は致命的なんですよ!ふえぇ…」
 灯里「あれ?小傘ちゃんは?」
 



Navigation 8.「その、風を感じながら…」

 

「どういうことよ魔理沙!

 高々風が強くなるくらいどうってこと…」

「いいから博麗神社に行くぞ。

 みくるさんと紫からお前らを連れてくるように言われたんだ」

「もう…行くわよ、灯里ちゃん、アリア社長」

「わちきもいく!!」

 それまで成り行きを見守っていた小傘ちゃんも、力強くそう答えました。

「…好きにしろ。

 行くぜ! 灯里、アリア社長、しっかりつかまってろよ!

 アリス、小傘、気を抜くな!」

「はひっ!」

「ぷいにゅ!」

「ええ!」

「わかった!」

 

「ふえぇぇ…」

「もう、アンタのせいじゃないんだから泣かないのよ、みくるさん」

「そうはいっても…」

「よし、到着だ」

「あぁ、魔理沙来たわね。

 灯里ちゃん、アリア社長、どうやら困った状況になっているようよ?」

「みたいですね…」

「みくるさんによると、風が強い場合、彼女のタイムマシンを外で動かすと位置がずれちゃうんですって。

 それで、結界が張られている幻想郷から外の世界に直接出てしまうと危険らしいわ」

「そういうこと…」

 アリスさんがつぶやきました。

「たかが風くらいで、って思ったけど、結構大ごとね。

 灯里ちゃんを傷つけるのはこちらとしても本望じゃないし」

「アリスさん…ごめんなさい皆さん、私が…朝までいたいなんて言ったせいで…」

「…そうじゃないでしょ。

 幻想郷で別れを惜しみたかった灯里ちゃんの気持ちを考えれば、仕方なかったし。

 こんなことになるとは思えなかったでしょ」

「そうね。

 後悔しても仕方ないわ。

 少し待ってみましょう…風がやむかもしれないわ」

 紫さんも少し残念そうではありますが、冷静に答えました。

 

 しかし、予定の8時になっても、風がやむ気配はありませんでした。

 ガタガタ…。

「風、やみませんね…」

「そうだな…」

 揺れる障子を見ながら私が誰とはなしにつぶやくと、隣にいた魔理沙さんが反応してくれました。

 一向にやまない風

「…くっ」

 ガラガラ。

「あ、小傘ちゃん?」

 その時、小傘ちゃんが何も言わずに、障子をあけて出て行ってしまいました。

「小傘ちゃん…」

「大丈夫。

 あいつは、この世界の住人だ。

 何か風ぐらいじゃなんてことないさ」

「…そう、だといいんですけど…」

 なんとなく私にはその小傘ちゃんが、思いつめたような顔をしているような気がして。

「…あの子、自分のせいだと思ってるフシがあるわね」

「ほへ?」

 アリスさんがその小傘ちゃんの出て行った障子の方を見つめながら、つぶやきました。

「昨日、灯里は小傘と一緒にいるために、時間を遅らせてくれた、そう思ってるんじゃないか、小傘は」

「そんなこと…むしろ私が小傘ちゃんと一緒にいたかったから遅らせただけで…」

「小傘はそう思ってないと思うわ。

 自分が一緒にいたいなんて思ったせいだ、小傘がそう思っているように思えたの、今の顔を見て」

「小傘ちゃん…」

「いや、それはこの場にいる全員、そして昨日灯里にあった全員がそう思っているはずだ。

 もしかすると幻想郷自体が、風を利用して灯里を返したくないのかもしれない。

 でも…」

 魔理沙さんがみんなを代表してそう言ってくれました。

「でも?」

「でも、アタシたちは、灯里の友達だ!

 そんな後ろ向きな幻想郷の気持ちにあらがって、灯里が元に帰るのを応援しよう!

 まずは風止まるのをまとう、みんな」

「ふ、魔理沙…恥ずかしいセリフは勘弁よ?

 だけど、灯里ちゃんを帰すのは私たちの務めよ!」

「魔理沙も霊夢も、アツいわね…でも、それは私も同じことよ」

「ふふふ…そうね。

 迷子を返すのは私の役目だもの」

「そ、そうです!

 時空震に巻き込まれた人を返すのが私のお仕事です!!」

「魔理沙さん、霊夢さん、アリスさん、紫さん、みくるさん…はひっ!!

 ありがとうございます!!」

「ぷっぷいー!!」

 そう言って私とアリア社長は、頭を下げました。

 

 しかし、だからと言って風はやみませんでした。

 時刻は8時45分。

 そろそろ戻らないと、もしかすると大騒ぎになるかも…。

 なんて、実は私も思い始めていました。

「小傘ちゃん、戻ってこないなぁ…」

「そうね…」

「ただいま!!!」

 その瞬間、風の吹き荒れる外から、小傘ちゃんの声が響きました。

「小傘ちゃん!!!」

「やっと見つけましたよ!

 美鈴さん、ありがとう!!」

「いえいえ、小傘ちゃんのためなら!」

「文!?」

 そこにいたのは昨日ちらっとお会いした天狗さんでした。

 名前は、射命丸文さんだそうです。

「いたたた…昨日は魔理沙さんに墜落させられ、今日は強風の中小傘ちゃんに引っ張り出され…私はソンな役割ですね…」

「そうか、文か!!!!」

「…なるほど、小傘、あなた考えたじゃない!」

 その瞬間、魔理沙さんと紫さんが何かを思いついたようです。

「えへへー。

 射命丸さんを直接探すのは無理だと思いましたが、美鈴さんに気を探ってもらいました!」

「えっへん!」

「美鈴さん!

 門番は、いいんですか?」

「外出許可もらいましたよ?

 咲夜さんに小傘ちゃんが状況説明したら、咲夜さんが快く。

 灯里さんが元の世界に戻らなかったら、バツとして一週間夕飯をカロリーメイトポテト味だけっていわれましたけど」

「それで小傘。

 文を連れてきた理由は…文の能力よね?」

「そういうことです!

 射命丸さんの『風を操る程度の能力』で何とかできないかと!

 というわけで射命丸さん、お願いできますか?」

 小傘ちゃんから簡単な説明を射命丸さんにしました。

「お願いします、射命丸さん!」

「お願いします!」

 小傘ちゃんに並んで私も頭を下げます。

「うーむ…なるほど。

 よろしい、喜んで協力しましょう!!」

 すると射命丸さんは持っていた扇子をぱたぱた振ると、一瞬、その近くだけの風がやみました。

「では、紫さん、灯里さん、アリア社長さん、未来に移動しましょう!」

「そうですね、もうすぐ9時になりますし。

 皆さん、短い間でしたが、ありがとうございました!

 私、とっても楽しかったです!!」

「ぷいぷーいにゅぅ!!!」

 射命丸さんが一瞬、大きく扇子をはためかせ、風を止めた瞬間に私とアリア社長が頭を下げます。

「それから、小傘ちゃん。大好きだよ!!」

「灯里ちゃんー!! わたし…」

 ぐにゃーり…。

 その瞬間、まるで車酔いしそうな感覚に襲われました。

 その感覚がなくなると、それまで周りにいたみんながおらず、風もやんでいました。

「ふぅ、成功みたいです。

 2303年に戻ってこれました」

「あら、お早いおつきで」

「ふえっ!?」

 すると目の前には、紫さんがもう一人…つまり。

「ごきげんよう、未来の私?」

「ええ、いらっしゃいませ、過去の私」

 紫さん同士があいさつすると、過去の紫さんが現在の紫さんにかいつまんで説明をしました。

 最も、現在の紫さんはほとんどわかっているようでしたが。

「それじゃ、未来の私、あとは宜しく。

 灯里さん、お元気でね。

 みくるさん、帰りましょうか」

「あ、ハイ…じゃぁ灯里さん。

 近いうち、火星(アクア)にも遊びに行きますね」

「はひっ! ぜひ!!」

 そういうとみくるさんと過去の紫さんが、過去に帰っていきました。

 

「さて灯里さん、今から火星(アクア)の貴女の部屋に、スキマを通すわ。

 それで帰って頂戴」

「あ、はい…ありがとうございます」

「ぷいにゅーい…」

 なんだか一日ほどがすごく長かったような…短かったような。

 そんな気がしています。

「そうそう。

 みくるさんが帰ってきたら…あなたのゴンドラ、乗せてもらうから。

 よろしくね?」

「あ、はい!

 よろしくお願いします!」

 紫さんが指を這わせると、目の前の空間に切れ目ができて、その端っこにリボンが付いたかわいらしいものになりました。

 その先を見ると…見覚えのあるベッド。

 そう、ARIAカンパニーの屋根裏部屋が見えました。

「では、紫さん、お元気で…」

「ええ、また会いましょう」

 そう言って私は、そのスキマをくぐりました。

 

 スキマから出てベッドの上に出ると、スキマがスーッとなくなりました。

「はひぃ…」

「ぷいにゅーい…」

 そして窓から外を見ると、見覚えのあるネオ・ヴェネツィアの町。

「アリア社長…」

「ぷいにゅー…」

「帰ってこれましたぁ!!!」

「ぷいにゅー!!!」

 そして安堵から、二人で大泣きしてしまいました。

 

「あ、灯里!!!

 何してたのよ!!

 午前中会社が開かないから何かと思ったわ!」

「あ、藍華ちゃん…うん、ごめんね、急にお休みにしちゃって」

「あ、いや、うん、大丈夫だけど…。

 もうすぐアリシアさんや後輩ちゃんもここにきて探してもらおうと思ってたのが先に防げてよかった…。

 ってあんた、なんで泣いてたの? 目、真っ赤よ?」

「あ、うん…ちょっとね」

「まぁいいわ…疲れちゃったから、少し休んでいい?」

「うん、いいよー。

 どうぞ、入って…」

 

 こうしてようやく私とアリア社長は火星(アクア)に戻ってくることが出来ました。

 幻想郷時間で1日、火星(アクア)時間で半日程度でしたが、私たちの大冒険は、こうして幕を閉じました。

 

  ~to be continued~

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